詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 まさか百合アニメで脳が少し破壊されるとは思わなんだ。
 NTRじゃないけど、NTRじゃないけど…うん。しまむらはカップリングの左側ですわ。
 ネタバレしない感想だと今週も島村はイケメンでした。
(+皿+)安達としまむらは…ゴフッ(吐血)


 あらすじ
東郷「この距離ならバリアは張れないな!」
夏凛「封印開始! 御霊破壊! 本編より活躍するわよ!」
樹「2人はわたしが運びました」ドヤァ
アクエリアス・スタークラスター(モハヤコレマデー)
水人形わらわら
東郷「この友奈ちゃんの人形、持って帰ってもいいかしら?」
風「東郷がフリーダム過ぎる」
友奈「満開が…私の見せ場が…」


たたかいおわって

 7月8日。7体の御霊を持った水瓶座を撃退した勇者部一行は大赦が経営する病院に身体検査を受けに来ていた。

 昨日の戦いで水瓶座に受けた傷を調べ、肉体や精神に影響がないか。

 特に東郷は精密検査を含め念入りに調べられる。

 これは水瓶座を倒すための作戦を立案した丹羽からの頼みでもあった。

 もしも切り札を使った影響が何らかの形で東郷の体調に現れたら知らせてほしいと。

 もっともその心配も杞憂に終わった。東郷はいたって健康で、今朝もご飯をお替りしたほどだ。

「2人とも、大丈夫だった?」

 検査から帰って来た夏凛と樹に友奈が声をかける。

「あたしは問題なし。勇者システムのおかげもあるけど、あのミトって精霊の子のおかげかしらね」

「わたしもです。本当にあの精霊さんにはお世話になりました」

 怪音波で鼓膜が破れた夏凛と水瓶座に跳ね飛ばされた樹も健康診断を受けたが、問題なしということだった。

「お帰りみんな。東郷もさっき帰って来たわ」

「東郷さん!」

 風の言葉にぱっと友奈の顔が輝く。

 精密検査を受けていた東郷の車いすを押していた看護師と入れ替わりに、友奈がそれを引き継ぐ。

「代わります。ここからは私が」

「よろしいんですか?」

「ええ、ここが私の指定席ですから!」

 原作好きなら生で見たいシーンベスト10に入るゆうみもイチャイチャシーンである。

 あぁ^~ゆうみもの音ぉ~!

 ちなみにそれを1番見たがっている丹羽は今切り札の使い過ぎで病室で眠っている。合掌。

「みんな集まったわね。じゃあ、これ」

 昨日の戦いが終わってから眠り続けている1人を除いて勇者部全員がそろったことを確認すると、風は友奈、東郷、樹にスマホを渡す。

「風先輩、これは?」

「新しいスマホ。今まで使ってたのは大赦で預かって、データを取って次の勇者に引き継がれるんですって」

「次の勇者…じゃあ」

「ええ、あんたたちのお役目はおしまいよ。おつかれさま」

 事前に知らされていたことなのか、ひらひらと手を振って夏凛が言う。

「あんたらって、夏凛ちゃんは違うの?」

「あたしは大赦所属の勇者だからね。要請があればまた次の勇者がいる学校に転校して戦うわよ」

「転校ってそんな…。せっかく友達になれたのに」

 夏凛の言葉に暗い顔になる友奈に、風は励ましの言葉を送る。

「大丈夫よ。バーテックスはアタシたちが全部倒したんだから、もう襲ってくることはないでしょ」

「あ、そっか! じゃあ卒業するまでずっといられるね!」

「そうね。夏凛ちゃんもそのことがわかってるから冷静なんだと思うわ。もし転校しろって言われてたならもっと慌ててるはずだもの」

「夏凛さん、顔に出やすいですからね」

「う、うっさい!」

「でもそっか。本当にもう変身できないんだ」

 スマホを開き、NARUKOのアプリがどこにも見当たらないことに友奈はそれを実感する。

「牛鬼に最後のお別れ、言いたかったなぁ」

 その言葉に東郷、風、樹も自分たちの精霊のことを思い出したのか、しんみりした。

 だがそれ以上に風はこれ以上部員の皆や妹を危険な戦いに巻き込むことがなくなったことがわかりほっとしている。

 夏凛も讃州中学勇者部に所属したままだし、これで全部元通りだ。

 5人は入院患者用の共有スペースまで移動し、人数分ジュースを持ってきてテーブルの上に置く。

 少し遅いが勝利の祝杯だ。昨日はいろいろ忙しくてできなかったので、翌日の検査後になってしまったが。

「にしても、心配していた本人が1番重傷ってどういうことよ」

 風の言葉に友奈、東郷、樹、夏凛は苦笑いする。

 水瓶座打倒の作戦を立案し、囮役を買って出た丹羽は今ここにはいない。病室のベッドでぐっすり眠っている。

 大赦の医師曰く、おそらく切り札と呼ばれる精霊の力を使った影響だろうとのことだ。

 作戦を発表した後、散々東郷と夏凛と樹に戦闘が終わった後病院に行ってきちんと検査を受けてくれと念押しした本人がこれではどの口が言っているのかと言いたくなる。

 ちなみに3人の付き添いで病院に来ていた風と友奈もついでに検査を受けさせられた。結果はもちろん異状なしの健康体である。

 明日から普通に学校に通えると太鼓判を押されて、期末テストがちょっと不安な友奈はもうちょっと休ませてもらえませんか? と交渉していたのには和んだ。

「ほんと、起きたら喝を入れてやるわ。心配させるんじゃないわよって」

 そう言う風の目にはアニメ本編であるはずの眼帯はない。

 本編では厨二病全開な台詞を言うための小道具なのだが、考えてみればどこで手に入れたのだろう。病院の購買にはないだろうから自前で用意したのだろうか?

「でも、お姉ちゃんが1番丹羽くんのこと心配してたじゃない」

 本編で散華の影響により声帯を失うはずの樹も声を出して姉の昨日の行動について話している。

 水瓶座の御霊を破壊し、樹海化が解けた後。気を失ったままの丹羽にいち早く気づいたのは風だった。

 あの時の取り乱しようは同じように取り乱そうとしていた樹が逆に冷静にならざるを得ないほどだったのだ。

 結局救急車の手配は夏凛がしたのだが。

「そうですね。風先輩と丹羽くんは仲良しさんですもんねー」

 と言う友奈は目の前に置かれたレモンサイダーのジュースを飲んで、思いのほかすっぱかったのか目をパチパチさせている。

 本編で味覚を失うはずだった彼女がちゃんとまだ味を感じられている証拠だ。

「仲良しって、違うわよ。あれは手のかかる弟みたいなもん。仲良しなら東郷でしょ」

「風先輩、発言には気を付けてくださいませんか」

 心外だと言わんばかりの東郷に、3人は今までのことを振り返りながら言う。

「だって2人にしかわからないことたまに話しているし」

「ただ戦艦や駆逐艦、大東亜共栄圏について話していただけです!」

「たまに2人とも同じテンションでカメラ構えてるし」

「誤解よ友奈ちゃん。私がカメラを向けるのはあなただけだわ」

「わたしが料理を作ろうとすると2人で必死に止めようとするし」

「風先輩!」

「え、アタシなの? まあ、うん。それに関しては姉のアタシの失態だわ。ごめん」

「お姉ちゃん!?」

「元気ねえあんたら」

 わいわい姦しい勇者部4人娘に、夏凛はジト目を向ける。

「こっちは昨日の戦いの報告書作りでへとへとよ」

「にしては丹羽の様子を見に来てたじゃない」

 風の言葉に夏凛は「うっ」と言葉に詰まる。

「アンタはアタシが寝てると思ってバレてないと思ったんでしょうけど、ちゃんと起きてたから。あの時丹羽に「死ぬんじゃないわよ、馬鹿」ってツンデレ満載の言葉を」

「わー! わー! わー!」

 昨夜誰もいない面会終了時間ぎりぎりを見計らってこっそり病室を訪れ見舞いに来ていたことをバラされ、夏凛の顔が真っ赤になる。

「クールぶってるけど、ちゃんと優しいところあるんじゃない」

「風先輩、夏凛ちゃんはずっと前から優しいですよ」

「ですね。この前なんか預かってもらった猫を里親に渡すとき、涙を見せまいと後ろを向いてましたけど」

「泣いているのバレバレだったわよ。夏凛ちゃん」

 ニヤニヤ笑う4人に、夏凛は「うっさい!」と返しそっぽを向く。

「だって、仲間が意識不明だったら…心配するのは当たり前でしょ」

「夏凛(ちゃん、さん)」

 出会った時からは信じられないデレを見せる夏凛に、4人は感動していた。

「アタシたちのこと、仲間だって思ってくれてたのね」

「あ、当り前じゃない! なに? 嫌なの?」

「まさか! えへへ、夏凛ちゃんと仲間ー」

「ちょ、友奈! くっつくな!」

「おめでとう夏凛ちゃん。でも友奈ちゃんは私のだから、それを忘れないで」

「黒っ! なんか東郷から黒いオーラみたいなものが出てるんだけど!?」

「ありがとうございます。うれしいです、夏凛さん」

「樹。あんたはいい子ね。姉と大違いだわ」

「何を―!?」

 騒いでいると看護師に「病院ではお静かに」と叱られてしまった勇者部一行。しゅんとしながらジュースを飲む。

「今、丹羽くんがいたらどうなっただろう」

 ぽつりと樹が漏らした。

「アイツのことだから、夏凛とくっついている友奈を見て目を輝かせてるわよ」

「そうですね。想像できます」

 と、風が目に浮かぶ光景を告げると東郷が同意する。

「あれ、一体なんなの? あいつにもらった小説読んだけど、なんか女の子同士? の恋愛が好きみたいだし」

「百合イチャ? だっけ。女の子同士仲がいいのが好きなんだって。そうですよね風先輩」

 夏凛の疑問に友奈が答える。

 そう、考えてみればすべてがそれから始まった。

 友奈と東郷がイチャイチャしているのを気配を殺して見ていた不審者。

 そいつがなぜか勇者に変身出来て、バーテックスの攻撃や攻略法を知っていて。

 しゃべる人型の精霊を連れて、気が付かないほど自然にこちらに気を使ってくれている1年生。

 大橋の方にある家の権利書も自分の物になったし、風の口座には今まで滞っていた支援金が入金された。

 あいつが来てから大赦が自分たちに優しくなったような気がする。偶然だろうか?

 そういえば学生寮の工事っていつ終わるんだろう? 工事が終わったら隣の部屋から寮に戻るのだろうか。

 食卓から丹羽と大食いの精霊たちがいなくなるのは、どこか寂しいな。と風は思った。

「お姉ちゃん?」

「いや、何でもないわ。じゃあ、そろそろ解散しましょうか」

 風の言葉に全員がジュースを飲み干し、紙コップをごみ箱に捨てる。

 友奈はいつもの定位置である東郷の車いすの後ろに行きにっこり笑った。やはりここが自分の指定席だということだろう。

「風先輩はこの後どうするんですか?」

「1回家に帰るわ。昨日は泊ったけどシャワー浴びたいし、樹のご飯も作らなきゃだし」

「あんたまた泊るつもり? そういうのは親が…あっ」

 自身の言葉が失言だったと夏凛は気づき、口を閉じる。

「夏凛ちゃん、昨日の今日でその話題は」

「そうね。腹に据えかねる話だけど、ここではね」

 昨夜の会話を思い出したのか、東郷も憤りを隠せていない。

 丹羽が病院に運ばれたとき、当然保護者である大橋のじいさんにも連絡がされた。

 だが電話に出た娘は丹羽明吾は自分の家と一切関係ない。父親も病院にはいかないの一点張りで取り付く島もなかった。

 その言葉に誰よりも怒ったのは勇者部部長である風だった。

「もういいです! 丹羽明吾君は今後うちで引き取ります!」

 そう言って一方的に電話を切ると、その日は風が病室に泊まり込み様子を見ると強引に決めたのだ。

「ごめん、風。でも連日の泊まり込みはきついだろうからあんたは家に帰って寝なさい。あたしがつきそうから」

「大丈夫よこのくらい。アタシがしたいの」

「だけど学校とかどうするのよ。まさか休む気?」

「それは…」

「あ、じゃあ勇者部交代で泊まり込むのはどうですか? 昨日は風先輩だから今日は夏凛ちゃん。明日は私!」

「駄目よ友奈ちゃん。密室で男子と2人きりなんて! 泊まり込む日には私も行くわ!」

「東郷先輩…」

 友奈の提案に通常運転の東郷がストップをかける。

 話し合いの結果、「夏凛を男のいる部屋に一緒にするわけにはいかない」となぜか大赦の連絡役の春信が泊まり込み、意識が戻れば知らせることになった。

 そして全員帰宅することになったとき、東郷の胸が光り精霊のスミが現れた。

 水瓶座戦の後、スミは丹羽の元に戻ることなく東郷の内にいた。時々飛び出してくることはあるが、それ以外は睡眠時間を含めずっと東郷の中にいる。

「どうしたの、スミちゃん?」

 急に出てきたスミはどこか一点を見つめている。まるでその先に何かあるように。

『ソノコー』

「そのこ? 人の名前かしら?」

「東郷さん、知り合いにそんな名前の人いる?」

「いいえ、初耳だわ」

「丹羽の知り合いなんじゃない?」

「もしくは丹羽くんが記憶をなくす前の知り合い…とか?」

 友奈の質問に首を振る東郷。それに犬吠埼姉妹が持論を展開していく。

 ソノコ…そのこ…園子?

(まさか、乃木園子!?)

 先代の勇者でもあり大赦が所有する最強の勇者と一致する名前に、夏凛は驚く。

 だが、同時にまさかそのソノコがあの園子なわけないと否定する。

 どこにでもある一般的な名前だ。きっと偶然の一致だろう。

「ほら、いつまでもそこにいたら迷惑でしょ。行くわよ」

 だから大して気にはしなかった。報告するまでもないことだと報告書に記載することもない。

 ただ、スミだけが東郷が呼ぶまでじっと乃木園子が入院する病室のある方向を見つめていた。

 

 

 

 様々な管が付いた機械に囲まれ、未だ意識を取り戻さない親友を見る園子は思う。

 彼女はいつ目を覚ますのか。

 人型のバーテックスから取り戻すことはできたが、あれから4日経っても彼女は眠ったままだ。

 医師の話によればすぐ目を覚ますという話だったが、やがてそれはすぐ目を覚ますかもしれないという見解に変わった。

 彼女を探していた年月に比べればまだほんの4日だが、それでも1日が1年のような長さに園子は感じている。

 今日は目を覚ますだろうか。明日は目を覚ますだろうか。

 そんな思いだけが胸を満たしていた。

「園子様、そろそろ三ノ輪様のご家族が」

「わかったんよー。じゃあね、ミノさん」

 お付きの大赦仮面の言葉に園子は病室を去る。

 ここからは家族の時間だ。2年もの間待っていたんだ。きっと積もる話もたくさんあるだろう。

 たとえ眠っていても、声は彼女に届くかもしれない。

 そう思って園子も時間いっぱいまで話しているのだが、すぐ話題がなくなりじっと寝顔を見つめてしまう。

 待つのはつらいなぁ。

 そんなことを思いながらも自分の病室に帰り、三好夏凛からの報告書に目を通す。

 7つの御霊と能力を持つ水瓶座のバーテックス。蛇のような触手を持つ姿。そして勇者の形をした水の人形。

 驚くことばかりだ。できれば実際にどのようなことがあったのか直接その口から訊きたい。

 だが、それを大赦の上層部はよく思わないだろう。現在の勇者との接触は大赦に禁じられている。

 もっとも、数日後にそれは解消されることになるのだが、彼女はそれをまだ知らない。

 そして大赦で開発していた様々な道具が役に立ったことを感謝する文章もあった。

 これに園子は首をひねる。大赦が勇者を使いつぶしの道具として使うのではなく、逆に支援する道具を与えるなど信じられなかったからだ。

 報告書によれば水瓶座を倒すための作戦を立案した勇者は囮として魚座用の振動音波兵器を使い、切り札を連続で使った影響で現在昏睡状態らしい。

 その勇者の名を見た園子は思わず口にしていた。

「丹羽明吾君か」

 男でありながら勇者に変身できるイレギュラー。

 そのことを園子はずっと憶えていた。

 報告書には丹羽が自分ともう1人の勇者を精霊を使って傷を治したという報告もある。

 彼の精霊を使えばミノさんも…。

 一瞬期待が浮かんだが、すぐ打ち消した。

 彼に会いたいと言っても許してくれないだろう。ましてやその力を借りたいというのも。

 だが、なんとか接触できないだろうか?

 とりあえず三好夏凛にはこのまま報告を続けてもらおう。できることなら彼が昏睡状態から回復したら真っ先に知らせてもらいたい。

 園子は親友が目を覚ますためならば藁にもすがりたい思いだった。

 

 

「おはよう、■■■■」

 登校し、席に座っている■■に声をかける。いつものように机の上には猫のようなぬいぐるみが置かれていて、それを枕にしていた。

「あ~、わっしー、おはよ~。ふわぁ…」

「相変わらず眠そうね。□も…相変わらず来ていないわね」

「あはは、□□さん、また遅刻ぅ?」

 ぽわぽわした雰囲気の少女が笑顔で言う。見ているとこっちまでなごみそうになる。

 この娘の名前は■■■■。私の親友で、同じ勇者の仲間。

 そしてこの場にいないもう1人の□□□□の3人と一緒にお役目としてバーテックスと戦っている。

「笑い事じゃないわ。□の遅刻癖は相当なものよ。この間の訓練にも遅れてきたじゃない」

 そうだ。□はよく遅刻してくる。トラブルに巻きこまれやすいというか、自分からトラブルに突っ込んでいくというか。

 困っている人がいたら放っておけない。優しい子だというのはわかっている。

 だけど、それで自分のことがおろそかになっては本末転倒だ。今日こそはきちんと言わないと。

 その時チャイムが鳴り、教師である安芸先生が教室に入ってくる。

「ギリギリセーフ!」

 と同時に□が教室に入って来た。だが無情にも安芸先生がアウト判定を出す。その後出席簿で優しく頭を小突かれ、お小言を言われていた。

 まったく□ったら仕方ないんだから。

 今日はどうして遅れたんだろう。□のことだからまた困っている人を見捨てていられなくて遅刻しそうなのに手伝ってきたのだろう。

 今日こそしっかり言わなければ。

「ちょっと…」

 とそこで自分が彼女の名前を言えないことに気づいた。

 おかしい。さっきまで□のことを□って…。

 そんなことお構いなしに席に着いた□は私のことを不思議そうに見つめている。

「どうした須美? 変な顔して」

 須美? 私の名前は東郷美森…そんな名前じゃ――。

『スミー!』

 とそこで目の前の少女が丹羽の精霊のスミとそっくりなことに気づく。髪の色は違うが、それ以外はそっくりだ。

「あの、スミちゃん?」

 そう呼びかけるとその少女は変な顔をして、こっちを見つめている。

「何言ってんだ? 須美はお前だろ? 変な須美」

 そう言って席に着くと前を向いてしまった。

 え、どういうこと? スミが私の名前?

 じゃああなたは……。

 

 

 

 東郷美森は目を覚ました。

 目覚まし時計を見るといつも起きる時間より30分早い。早く起きすぎてしまったようだ。

 だが2度寝するには微妙な時間だ。こうなったら少し早いがいつものルーティーンをこなした後友奈ちゃんのところへ行って、寝顔をいつもより長く楽しむことにしよう。

 そう思い身体をひねりベッドの上で体をほぐそうとしていた東郷は、自分の頬が濡れていることに気づいた。

「えっ?」

 触れてみると、涙だった。自分の目じりから流れている液体に困惑していると、先ほど見た夢が断片的によみがえる。

 決して涙を流すような悲しいものではなかったはずだ。むしろどこか懐かしく、温かいような…。

 あの名前が思い出せなかった少女は誰なんだろう。スミちゃんに似ていたが、それは私の名前だというし。

 考えても答えは出なかった。仕方なくそのことは保留にして、まずは朝のルーティーンをこなさなくては。

「あら?」

 今一瞬、足が動いたような…。

 考え、まさかと思い直す。

 医師から原因不明だと言われ、2年も車椅子と一緒に過ごしてきたのだ。

 ある日急によくなるなんて、そんな奇跡のようなことが起こるはずもない。

 朝のルーティーンである運動とマッサージを終え、車椅子に乗る。

 その頃には先ほど見た夢のことなどすっかり忘れていた。




樹「ねえ丹羽くん、わたしのことおねえちゃんがいないと何もできない子って言ったよね?」
丹羽「うん、言ったけどなんで俺は犬吠埼先輩によって椅子に縛られてるんだろう?」
樹「それが違うってことを証明するために、香川名物の和三盆を作ってみたよ」
丹羽「どうして簡単な料理じゃなくてそんな職人にしか作れないものをいきなり作ろうとするかなぁ!?」
紫色をした不定形の何か『ママァ…』
風「ごめん、丹羽。かわいい妹の頼みは断れなかった」
夏凛「まあ、身から出た錆なんだから。今回はおとなしく受け入れなさい」
友奈「樹ちゃんにひどいこと言ったらめっ! だよ」
東郷「確かに奮起させるためとはいえ、あれは言い過ぎだったわね」
樹「これが終わったら丹羽くんのお部屋お掃除して、洗濯もしてあげるね。わたしだってできるってこと証明してあげる」ふんす!
一同「あ、これ丹羽(君)の生活スペース無茶苦茶になるな」
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