詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
三ノ輪銀は、その日人生最大の危機に陥っていた。
3日前、2体の巨大バーテックスが同時に襲ってきたときもここまでの脅威は感じなかった。
地面を揺るがすカプリコンと強風を操るリブラの連携攻撃。風で須美の矢も届かず序盤は苦戦したが園子のひらめいた作戦により今回も怪我人なしで勝つことができた。
巨大バーテックスが2体同時に現れるという神託にない事態に大赦は少し混乱していると安芸先生が言っていた。
これも園子と須美が言っていたアイツの策略なのか。と銀はソレと対峙した時のことを思い出す。
たしかに最初見たときは怖かった。足が震え、今考えれば攻撃にも腰が入っていなかったように思うし、園子の作戦を読んで歯で槍を受け止めたときは正直負けたとしか思えなかった。
せめて須美と園子だけでも逃がそうと虚勢を張って敵の前に立ちふさがったが、相手はそのまま逃げてしまった。
なぜ攻撃してこなかったのかは今でも疑問だが、今度会ったら負けない。
あれから自分たちは強くなって、巨大バーテックスを3体も倒せるようになったのだ。須美と園子と自分。3人がチームならきっと負けないだろう。
そう、須美と園子。
思い出して銀の口から疲労そのものが形になったため息が出る。戦闘訓練でもここまで疲れたことはなかった。
不自然な体制で固くなった身体をほぐそうとしたが、着ている服が邪魔をした。
普段着ている服と違って、腕の可動域が制限されている上着。大股に歩いても気にならないズボンではなく短いスカート。
もちろん銀の趣味で着ている服ではない。着せられたのだ。他でもない親友で同じ勇者の2人に。
そう、今銀を襲っている危機とはほかならぬ須美と園子。銀と同じ勇者の手によるものだった。
「いやー、やっぱりミノさんかわいいんよー」
今日何度目かになる言葉を銀にかけ、乃木家のお嬢様、乃木園子が目を輝かせる。
お世辞でないのは声と表情でわかっていた。だからこそ少し腹立たしくて、照れくさいのだが。
「いつものパンツスタイルもいいけどミノさんにはメイド服も似合うと思ってたんよー。普段はクールだけど学校ではちょっぴりギャルで、機械に強くてなんでもできる完壁超人だけど母親の前ではポンコツになるような」
「なんだその具体的な設定!?」
思わず銀が言うと、メイド服の銀を様々なアングルから写真に撮っていた須美が満足したのか一息つき、次の衣装を提案する。
「ねえ、そのっち。次はお姫様なんてどう? 頭で2つ結びにしてひらひらのお洋服も似合うと思うわ」
「あ、じゃあウィッグ持って来てもらうねー。お手伝いさーん」
「御意」
「やめろー! そんなフリフリした服着たくなーい」
服を手ににじり寄ってくる2人に、銀の叫びは届かなかった。
今、銀は乃木家で同じ勇者である須美と園子の着せ替え人形になっている。
きっかけは何だったか。
学校で「うちは弟多いから制服以外でスカート履いたことないなー」と以前2人にこぼしたことだろうか。
それとも休日に服を見に行こうと誘ってきた2人に、「やめとくよ。あたし、須美や園子みたいにかわいい服似合わないし」と返したことだろうか。
いずれにせよ今朝突然三ノ輪銀かわいさ向上委員会と名乗る園子と須美の2人に強引に乃木家のリムジンに乗せられ連れて来られた銀は、乃木家の広間にこれでもかと用意された衣装を次々とあてがわれていた。
「おー、かわいい! かわいいよミノさん!」
「アリよ! これは断然アリだわ! 銀、むしろ今のあなたは金よ!!」
髪と一体化するタイプの長髪のウィッグを被され、ツーサイドアップに髪をセットされた銀は白いドレスに身を包んでいた。頭には銀のティアラ、首元には水色のハートに象った宝石とリボン、肘まである長い白手袋、足元の靴はヒールが高い白い編み上げのブーツと小物まで徹底している。
姿見の鏡に映る童話からそのまま抜け出してきお姫様のような自分の姿に、思わず顔が熱くなる。もう、なんなんだよこれ。
園子は目がシイタケみたいになってるし、須美は普段の堅物さからは考えられないようなハイテンションでアリアリアリアリと繰り返し叫びながら写真を撮っている。
正直かわいいと言われ悪い気はしない。普段着ない服を着るのも背中がムズムズするようなかゆさを感じるが結構嬉しかったりする。
だが限度がある。朝の7時に拉致同然に連れてこられ、現在は午後4時。1度昼食のために休憩したがその後もぶっ通しで2人の選んだ服の着せ替え人形になっている。
昼食の時、逃げていればよかったと後悔した。あの後トイレに行くふりをして逃げようとしたが必ず須美か園子のどちらかがついてくるし、ちょっとした施設並みに広いこの乃木邸からこんな動きにくい服で逃げられる気がしない。
それにもし銀が逃げ出してもあの2人は勇者の姿に変身してでも連れ戻しに来るだろう。なぜだかわからないが確信があった。
「なぁ、もういい加減いいだろ? この服ヒールが高いし歩きにくいし」
「じゃあ次はリラックスした服にしようかー。パジャマとかネグリジェなんかどう?」
「気分を変えるために和服なんてどうかしら? 十二単は着たから、今度は小姓の男装とか」
「だめだよわっしー。今日はミノさんをかわいくするための会なんだから。ああ、でもそういうのもありかもー」
遠まわしにお開きにしようと伝えても、残念ながら2人の耳には届かなかったようである。
というかこれまでも間接的にも直接的にももうやめようと伝えたのだがはぐらかされたり次の服を着せられたりとこいつら聞きやしない。
キャーキャー言ってる2人に、すでに銀は諦めの境地に入っていた。それどころか服を着せられても文句を言わないマネキンのプロ根性に尊敬の念すら抱きつつある。
(鉄男、金太郎、ごめん。今日ねーちゃん帰れそうにないわ)
家で自分の帰りを待っているであろう弟たちに心の中で謝りながら、今日は自分のためにかわいい服を選んでくれる親友2人にとことん付き合うことを決めたのだった。
ああ、うまくいかないと俺は嘆いていた。
今取り掛かっているのは星屑のbotを統括して命令するAIの開発だ。
アタッカやカデンツァ、フェルマータなどのゆゆゆいバーテックスの開発が終わり、次の作業に移る前にしなければならないことがあった。
それは星屑の管理である。
御霊のおかげで食べる星屑の量は申し分なくなったが、その分四国付近の宙域に自然発生する星屑をカバーするのが難しくなった。
無論その分星屑を増やせば解決するのだが、そうするとまた管理ができなくなって脳がパンクしてしまう。
だから星屑を食べる、群れから逃げる、異常事態を知らせるという単純作業を俺の代わりに管理する指揮系統のAIが必要だったのだ。
だが、AIなんて作りかたがわからない。AI関連の書籍なんてここにはないし、パソコンで調べようにもここは壁の外。情報がないのだ。
ああ、俺の意識から考える力だけをコピーして星屑に移すことができたらいいのに。
そんなことを考えながら賽の目にワイヤーでカットされた星屑の肉塊をこねていく。
今作っているのはお面だ。星屑丸出しの顔だと人間に怖がられるのでできるだけ警戒心を与えないよう人間に近い顔を作っていた。
さて、できたのは…この5つか。
(*^▽^*)( ゚Д゚)((+_+))(';')(:_;)
嘘っ。俺、芸術センスなさすぎ……っ!?
アタッカとかカデンツァとかは完全再現と呼べるくらいの出来で作れたのに、お面だけなんでこのクオリティなの!?
顔文字みたいなのしかできなかった。ぴえんみたいなホラーゲームに出てきそうなやつは作った瞬間即破壊したので残ったのはこれでもマシだったやつらなのに。
とはいえ歯むき出しの星屑よりはマシだろうと俺は穴が4つ空いたような仮面をつけてみる。水球を出して鏡代わりにして見立ててみると、仮面をつけた人間と変わらないように見える。
いや、表情が見えない分こっちのほうが怖いのか? うーむ。どうしたものか。
考えていると御霊付近にいた6体の巨大星屑たちがこちらに向かってくるのが見えた。とりあえず食事をしてから考えよう。
リブラの御霊付近にいた巨大星屑にかみつき、肉を食らう。むう、ほとんど味がないがほのかにカカオの香りが。
ひょっとして星座級まで巨大化したバーテックスのみ味があるのだろうか。前回食べた俺の体躯がアクエリアスのように味が変わったのは、アクエリアス以外の星屑を食べてなかったからか。
逆に今回食べた巨大星屑はあれから御霊に群がる星屑をたくさん食べていたから味がほぼ無味無臭になり、ほんのりリブラの味が残り香として残っていた。そう考えるとつじつまが合う。
また1つ。バーテックスについて詳しくなってしまった。
ああ、それにしてもAIだ。と俺は頭を悩ませる。
動物なんかいれば生体パーツとか使えるのになー。でもここは人間どころか地上の生き物も存在しない世界。漂っているのも星屑ばかりだ。
星座級なんかはかみつかれると抵抗したし、自分の意思もあるのだろう。キャンサー、スコーピオン、サジタリウスも徒党を組んで襲ってきたことから、星座級の巨大バーテックスには作戦を考えるだけの知恵もあるようだし。
――おっとぉ?
自分でも重大なことを見落としていたことに気づいた。そう、巨大バーテックスには意思と知恵という求めていたものがあったのである。
とりあえず肉を食ってた1体は他の5体に食ってもらって…そう、まずは4つで試してみるか。
俺は1体を残し、他の巨大星屑に意識を移すと人型になった時のように体躯を圧縮させる。
違うのはその形だ。今回は腕や足を生やさず、ただただ身体を圧縮させていく。
やがて普通の星屑サイズになったそいつら4体を、残った巨大星屑に埋め込む。これが脳みそ、もといAIの代わりになるはずだ。
試しに現在いる星屑の様子を確認すると、6体中2匹が十分すぎるほどの大きさになっていた。アクエリアスの御霊付近にいた星屑たちだ。
これに10体に分裂するように指示を出し、1度星屑を埋め込んだ巨大星屑に意識を移し、分裂した星屑のうち2体は御霊付近で、残りは四国付近に散るように命令する。
再び人型に意識を移しアクエリアスの御霊付近にいる星屑と視界を共有すると、2体が残り他の8体は四国宙域周辺に散っていった。
うん、とりあえずは成功だ。あとは星屑を埋め込んだ巨大星屑…面倒だな、サーバー星屑と名付けよう。それが今の星屑を管理できているのか確認すればいい。
サーバー星屑に意識を移すと、数字と共に10匹分の視界の画像が飛び込んできた。これは、パソコンで急に複数のウィンドウが開くウィルスにかかった時似たような画面を見たな。
数字を指でなぞるようにイメージすると、画像が拡大されて表示される。他の画像は小さくなっていて、消えるようにイメージすると選んだ星屑の視界だけになった。
今度は別の数字…そうだな、最初が1だから4にするか。をなぞるようにイメージ。すると拡大された1の画面の上に4と書かれた画像が出てきた。大きさは1より小さくパソコンの画面でウィンドウが重なっているような感じだ。
1と4を同じくらいの大きさに映せと念じると右と左の2画面で表示された。最後に全画面を縮小して表示と念じると10分割された星屑たち10匹の視界が共有される。
なるほど、これは便利だ。
俺は問題が起こった場合は赤、何か発見した場合は黄色、問題ない場合は緑になるように念じると数字はすべて緑色になった。あとはサーバー星屑に何かあった場合自分に知らせるよう指示を出して意識を元の人型星屑に戻す。
これで星屑の管理問題は解消した。Xデーのバーテックス襲来に星屑が混ざる混戦になるという事態は回避されるだろう。
あとは、とAI問題にかかりきりで放置していた実験の様子を見るため俺はサーバー星屑から離れ、西暦遺物の塊であるデブリに入っていく。
そこでは12体の白い糸に包まれた繭が明滅していた。
青虫だけを知っている人間は、これが将来蝶になるといわれても信じない。あまりにも形が違いすぎるからだ。
カブトムシなどの甲虫もそうだ。子供にカブトムシの幼虫を見せても成虫と違いすぎる容姿から気持ち悪い、こんなのカブトムシじゃないと泣き出す子もいる。
つまるところ卵→幼虫→さなぎ→羽化→成虫という完全変態のシステムを知らない人間からしたら、幼虫と成虫の姿を見せて一緒の生物だと伝えても「またまた御冗談を」という反応しかしないのである。
今俺はその完全変態で精霊を作ろうとしている。
精霊とは勇者のサポート係というか、敵の攻撃から勇者を守ったりする存在だ。アニメ本編では神樹に選ばれた勇者には最初から1体精霊がつき、満開すると増える。
アプリゲームのゆゆゆいでは勇者に装備させると勇者の性能を上げたり必殺技のゲージをためやすくなるという利点がある。
さて、そんな便利な存在。勇者だけに使わせるのはいかがなものか。バーテックスである俺も使えるものなら使ってみたい。
というのは半分冗談で、これは勇者との意思疎通のためだ。
精霊には様々な能力があり、その中には遠くにいる相手と意思疎通できる能力もあるはずだ。
ゆゆゆいで秋原雪花の精霊がテレパシーの能力を持っていたし、もしその能力を持つ精霊を作ることができれば勇者たちとも対話できるだろう。
もし、この能力を持つ精霊を自分が取り込み、受信用の精霊を勇者たちに渡すことができれば会話もでき戦力もアップする。一石二鳥のアイディアだと思った。
問題は素直に受け取ってくれるかだ。人型になったけど喋れないしボディーランゲージもする前に攻撃されるのがオチだろう。
だから勇者たちに自分は敵ではないと伝えるために、この精霊はぜひとも欲しい存在だ。
だが、作るのは難しかった。記憶にある通りに星屑の肉塊を整形してもそれは精霊の形をした星屑にしかならなかった。
そもそも精霊は神樹の力で作られた存在なので、バーテックスである自分に作れっこないのではとも思った。
だが、とあることを思い出して俺はできると確信し直した。赤嶺友奈のことだ。
彼女は造反神から与えられた精霊を勇者とほとんど見分けがつかないほどそっくりな人間体にすることができた。
つまり逆説的に言えば、人間とほぼ見分けがつかないほどそっくりに変身できる星屑であれば精霊にできるのではないか?
自分でもおかしいことをと1度は捨てた案だったが、今はこれにすがりつくしかない。
なぜなら俺は……須美ちゃんや銀ちゃん、そのっちがキャッキャウフフしている世界を守りたいから!
中学生になった3人組を見たいから!!
こうして様々な方法を試した結果、俺はサナギのなかで一度ドロドロに溶けて羽化した結果人間の形になった星屑を作ることに成功した。
俺のように全身タイツで顔が星屑ではなく、目や耳や鼻があり、髪の毛もある。
星屑の時にはできなかった喋るという動作もできる。肌が白い以外は普通に人間みたいだった。
こいつを見た瞬間こっちに意識を移して本体として使おうと思ったのだが、デブリから外に出た瞬間壁の外の環境に耐えられず消滅した。
そういえば壁の外って勇者や防人じゃないと耐えられないんだっけ。完全な人間の姿だと身体が星屑でも人間並みの強度しかないようだ。
ともかく人間型の星屑を作れたということは、精霊型の星屑も作れるはずだ。
こうして生まれた12体の人間型星屑を再び繭の中に閉じ込めてもう1度身体を変態させれば精霊型星屑を作れるかもしれない。
だが、それだけではだめだ。なにかダメ押しの要素がなければ。
そう考えた俺は精霊について思い出せる限りの情報を整理していた。
神樹から大地の記憶をもとに生まれた存在。妖怪や歴史上の人物の名前。ゆるキャラのような姿。
憑依するとパワーアップして切り札と呼ばれる必殺技を使うことができる。ただし精霊と一体化すると
穢れ…バーテックスは神樹にとって穢れの塊みたいな存在だ。だから星屑を使って精霊を作るという方法自体は間違っていないはず。
あとは神樹の力があれば。あるいは勇者の力をこの繭に加えてみたら?
思いついたら行動あるのみだった。
2回の巨大バーテックスの襲来を観察し、どの程度の距離でどのくらい近づけば神樹の結界に入るかはわかっている。
あとは樹海化警報が発令される前に神樹のエネルギーを吸収し、この繭に注ぎ込めば疑似精霊になるのではないか。
勇者の力は大橋の慰霊碑で回収しようと思ったが、結界の中なのでバーテックスは入れない。なので今回はバーテックスには猛毒かもしれないが神樹の力を頼るしかない。
作戦はこうだ。
まず結界の中に最速のフェルマータを突っ込ませ結界の中にある神樹の根をちゅーちゅーして樹海化警報の鳴る前に戻ってくる。
次に俺がそれを回収し、繭の中で変態している星屑人間に濃度を薄めて注入する。
あとは神樹の力に耐えられたものだけが疑似精霊として生まれてくるという寸法だ。
事前の準備として星屑に樹海化警報が出るギリギリの距離を行ったり来たりしてもらって誤報の割合を多くした。結界に入っても何もないことに首をひねる勇者たちには悪いことをしたと思ってる。
その時間があれば、もっとイチャイチャできたろうにと。
むしろ無駄にした時間でイチャイチャしてくれたらと。
そんな百合展開を期待してドキドキしながら観察していたが、一向にその気配はなかった。誤報でも最後まで気を抜かず周囲を警戒する姿はさすが勇者だと恐れ入った。
まだ、小学生なのにな。
本当に、この世界は子供が背負うには大きすぎる問題がありすぎる。
そしてそれを全部子供に押し付けてのうのうと生きている大赦の大人はクソだな。おのれ大赦。
思わず原作を見たときにも感じていた憤りを思い出してしまった。
2期の神婚騒ぎといい、1期で風先輩に潰されてたほうがよかったんじゃないかあの組織。
とにかくあとは結果を待つだけ。
俺は結界付近に待機していたフェルマータに指示を出し、神樹の結界へ突入させた。
「さあ、銀。新しいカメラの準備ができたわよ」
「ミノさーん。今度は山ガールの格好にしようよー。それと今夜はうちで夕飯食べて行ってよー」
「勘弁してくれ」
時刻は午後6時半。三ノ輪銀は完全に憔悴していた。
あれから2人の勢いは衰えるどころか、ヒートアップしている。いつの間にか乃木家のお手伝いさんも照明やレフ板を持って参加しており、撮影会はまだ続きそうだ。
そんな中、スマホからけたたましい警報音が鳴ると共に樹海化警報の文字が表示される。
この時ばかりは銀もバーテックスに感謝したい気持ちだった。この状況から抜け出せるのだ。
ありがとうバーテックス。さあ、急いで変身だ。とスマホを取り勇者アプリをタップしようとしてもう警報音が鳴っていないことに気づいた。
画面を見ると樹海化警報の文字も消えている。どうやら誤報だったようだ。
「最近、こういうの多いわね」
同じくスマホを手に取り戦闘の時の顔になっていた須美が緊張を解きこぼす。
たしかに2体の巨大バーテックスを倒してから結界に入っても星屑1匹もいないことが何度もあった。それでも結界がはれるまで3人は周囲を警戒していたが。
「大赦でも問題視しているそうだよー。結界の管理はどうしているんだ。巫女は何をやってるんだって年取ったお爺さんが言ってた」
大赦に1番関わりの深い乃木家の園子が言うことだ。間違いないだろう。
本人はなんでもないように言っているが実際はもっと厳しく当たり散らすように言っていたのではないか。なんとなく想像できる。
大赦との連絡役である安芸先生も最近顔に疲れが出るようになった。このままでは本当にバーテックスが来る前に人間のほうが参ってしまうのではないか。
「早く、平和になるといいな」
何気なくつぶやいた言葉に、自分で驚いた。
そうだ。こんな風に3人で遊んで、帰ったら弟たちの面倒を見て、家には両親がいて。
そんな毎日を守りたい。そんな毎日を続けたい。
だから、自分は勇者でいるのだ。
「違った。今の間違いだ。早く平和にしようぜ。あたしたち3人で」
銀が言うと、2人は驚いたような顔をして、須美は「もちろんよ」と不敵に笑い園子は「そうだねー」とほわほわしたいつもの調子だ。
だが銀は知っている。樹海化警報のアラームに1番早く反応したのが園子ということに。
そんな人間だからこそ、リーダーを任せたんだろうな須美も。
「それはそうと、ミーノーさーん」
感心していた銀は近づいてきた園子の表情を見て、嫌な予感がした。
これは自分が面白いと思うことに周りを巻き込むときの表情だ。
「今日はお泊りしていってねー。ちゃんと3人分お布団あるから気にしなくていいよー」
「要求がレベルアップしてる!? いや、あたし帰って弟の面倒見ないと」
「あ、お家には私が連絡しておいたわ。ご両親は快く認めてくださったわよ」
「わっしーナイス!」
「須美ぃいいい!?」
困惑の混じった銀の悲鳴が広い乃木家にこだまする。須美、お前そんなことするキャラだったっけ?
こうして第2回ドキドキ、勇者3人組パジャマパーティーが開催されるまで銀が2人から解放されることはなかった。
【おまけ】
三ノ輪銀かわいい向上委員会によるコスプレ衣装と元ネタ一覧
普段はクールだけど学校ではギャルなメイド:かぐや様は告らせたい(早坂愛)
十二単 :胡蝶記(帰蝶)
ツインテのお姫様 :エガオノダイカ(ユウキ・ソレイユ)
パジャマ :魔法少女育成計画(ねむりん)
和服の小姓の男装 :BAKUMATSUクライシス(森蘭丸)
山ガール :ゆるキャン△(各務原なでしこ)
ブレザー(ネクタイ) :あんハピ♪(花小泉杏)
セーラー服 :ポプテピピック(ポプ子)
ベトナム戦争返りの兵隊 :ポプテピピック(ランボーポプ子)
アイドル :アイドルマスターシンデレラガールズ(佐藤心)
動物娘のコスプレ :えとたま(いのたん)
卓球ウェア :灼熱の卓球娘(旋風こより)
野球ユニフォーム(女性用) :八月のシンデレラナイン(宇喜多茜)
妖精 :リルリルフェアリル(りっぷ)
ファンタジー系魔法剣士 :転生したらスライムだった件(シズ)
戦艦擬人化少女 :アズールレーン(マスケティーア、マッチレス)
などなど
半日以上も友達のためにいろんな服着てくれる銀ちゃんはマジ女神。
中の人は少年声もイケるのでいろんな役をやっててすごいなぁと思いました。