詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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【60話突破特別編!】
 ハメドリくん要素はないと言ったな……あれは嘘だ。

【caution】ヘテロ注意報【caution】
 主人公(星屑)は無性でそれが操る丹羽も無性ですが、作中にヘテロ表現があります。
 勇者部の女の子同士の百合イチャを期待される読者の方、またはヘテロ表現に著しいアレルギー反応のある方は読み飛ばすことを推奨します。
 よろしいですか? よろしいですね?
 では、本編をどうぞ。



【ヘテロ】バッドエンドルームへようこそパコ(風ルート)【注意】

 気が付けば犬吠埼風はそこにいた。

 自分の手すら見えない真っ暗な空間。どうやら自分は椅子のようなものに腰を掛けているらしい。

 ここに来るまでの記憶が曖昧だ。たしかいつものように樹と明吾、精霊のナツメと一緒にご飯を食べて、洗い物が終わった後明吾と一緒に手をつないでテレビを見ていたところまでは憶えているが…。

 わずかにだが人の息遣いを感じる。ということは自分以外にも人がいる?

 明かりをつけようと自分の身体を探る。だが常に身に着けているはずのスマホが見当たらなかった。

 これでは変身して戦うこともできない。状況は絶望的らしい。

 とりあえず自分以外の人物に声をかけようと口を開きかけ、急に空間の一部がスポットライトを浴びたように光が集まったのに目を奪われた。

『みんなー! シコんにちわー』

 そこにいたのは白い鳥だ。

 いや、鳥なのか? 微妙にむかつくご当地ゆるキャラのような顔をしている。

 大きさもなんか人が入っていそうな着ぐるみみたいだし、かけているタスキにも「中の人なんかいないパコ」と書かれていた。

 そのツッコミ要素の塊みたいな生物(?)は、高らかに声を上げる。

『ボクの名前はセキレイ。イザナギ様とイザナミ様にズッコンバッコンと小作りの包け…もとい方法を手取り腰取り教えた由緒正しい精霊だハメ。古事記にもそう書いてあるハメ』

 事実だ。マジで古事記に書いてある。

 しかし精霊ということは神樹様の使い? それにしては言動が少しおかしい。

 いや、しゃべれること自体がおかしいのだ。明吾の精霊じゃあるまいし。

「お姉ちゃん?」

 声に顔を向けるとそこには妹の樹がいた。彼女も自分と同じようにここに連れてこられたらしい。

 というか周囲を見渡すとここにいるのは友奈、東郷、夏凜と勇者部にいるメンバーだ。

「樹、みんな! みんなはどうしてここに?」

「私は気が付いたらここに。みんなは?」

 友奈の言葉に「私も」とそれぞれ返事をする。なるほど、状況はみんな同じなわけか。

 風は自分たちを拉致して集めたであろう自称精霊をにらみつける。こういう時こそ年長者の自分がしっかりしなければ。

『ただ、ボクを生み出したご主人様は『百合の楽園たる新世界にお前のように下品な精霊はフヨウラ!』と即消滅させられたパコ。悲しいハメねぇ』

「おい、そこの自称精霊! アタシたちを集めて何しようっていうのよ」

 風の言葉に1人…1匹自分語りをしていた精霊、セキレイは向き直りぺこりと頭を下げる。

『ん~、まだ自己紹介とあいさつの途中なのにせっかちパコ。早いのは色々嫌われるハメ。ちゃんと順番に説明してイク~ッ! からア〇コ濡らして待ってるパコ』

「樹、耳をふさぎなさい。耳が腐る」

 妹の純真な心を守るために風は耳をふさいだ。こいつ、言動が下ネタ満載で最低だ。

『ちなみにシコんにちはというのは四国こんにちはの略だハメ。決していやらしい意味ではないんだパコ』

 あ、そこは下ネタじゃなかったんだ。

『……いやらしい想像したハメ?』

「してねーわよ!」

『だったらなんでスパ〇キングしたお尻みたいに顔が真っ赤になってるハメ? 言ってみ? 言ってみるパコ』

「~~っ!」

 顔を赤くした風にセキレイが嫌らしい顔で微笑む。ぴょんぴょんと跳ねまわり、壁際らしい場所に立つとビシっと羽を上げる。

『ここはバッドエンドルーム。いわゆるヘテロエンドした世界線ハメ。ご主人である丹羽明吾が百合厨を貫けなかったもしもの世界を観測する部屋パコ』

 その言葉に勇者部一同の頭に?マークが浮かぶ。

 確かに丹羽明吾は百合イチャが好きな男だが、それだけではない。

「まあ、アイツの百合イチャ好きには困ってるけど…それを含めて明吾はアタシの恋人よ」

「え、何言ってるのお姉ちゃん。明吾くんはわたしの恋人だよ? ちゃんと祝福してくれたじゃない」

 姉の言葉に樹が抗議する。それに「え?」と風は驚く。

「ちょっと待って! 明吾はあたしの恋人なんだけど」

「違うよ夏凜ちゃん。明吾君は私の恋人だよ」

「あらあら。私に内緒で勇者部みんなに手を出していたなんて。これはちょっとお仕置きが必要かしら?」

 続いて勇者部2年組も自分こそが明吾の恋人だと主張する。東郷に至っては黒いオーラが出ている。

「どういうこと?」

『みんなの認識はどれも間違いじゃなくて正常〇なんだハメ。皆さんはそれぞれボクのご主人である丹羽明吾という存在と男女の仲で結ばれた世界線の女の子なんだパコ。だから浮気とかじゃないハメ。君たちの恋人は君一筋だパコ』

「要するに私たちはそれぞれが丹羽君と結ばれた平行世界からこの場所に招待されたということ?」

 セキレイの説明に東郷が私見を述べると、大きくうなずいた。

『その通りだハメ。さっすが東郷さん。理解が早くて助かるパコ。さすがご主人に乳首弄られたら秒でイクだけのことは』

「ふん!」

『ハメ―!? ちょっと、今の突き、当たってたら無事じゃすまなかったパコよ?』

「ええ。もちろんそのつもりで攻撃したのだけど?」

 慌てるセキレイに東郷の黒いオーラが増している。

 一方風は心からほっとする。よかった、浮気したんじゃないんだ。

『そう。ご主人は樹ちゃんのパ〇パンマ〇コみたいに恋人一筋だパコ』

「樹!?」

「お姉ちゃん離して! そいつぶっ飛ばす!」

 樹が怒りのあまり我を失っている。ていうかあんたそうだったの?

『質問があれば受け付けるハメ。それはもう友奈ちゃんを想って毎夜ナスやキュウリを呑み込んでいる東郷さんの下のお口と同じくらいなんでも受け入れるハメ』

「東郷ェ…」

「でたらめです! おいそこの鳥! 私はまだ処女よ!」

 セキレイの言葉に白い眼が向く東郷が必死に抗議する。

『あ、間違えたパコ。気の強い夏凜ちゃんをふにゃふにゃにするギンギラ棒を呑み込むア〇ル並みに何でも受け入れるハメ』

「ちょっと! 誰がアナ〇が弱いですって!?」

 東郷に引き続き下ネタの餌食にされて顔を真っ赤にした夏凜が立ち上がる。

『現に弱いパコ。ご主人様に舌を使って2時間じっくり後ろの穴をほぐされた夏凜ちゃんの顔写真がコレハメ』

 そう言うと真っ暗な室内にスライドの写真が映し出される。

 そこには顔をトロトロにして快感から口からだらしなく舌を出している夏凜の顔が――。

「だーらっしゃー!」

 夏凜がセキレイをぶっ飛ばし、スライドの電源を落とす。ついでに映っていた写真も回収した。

『恥ずかしがることはないパコ。食事と同じく排泄は生物が生存するために苦痛ではなく快楽を感じる要素が多分に含まれているんだハメ。だから後ろの穴で感じるのは当然なんだパコ』

「へー、そうなんだ」

「友奈ちゃん、聞いちゃダメ! 耳が腐るわ!」

 無駄なエロ知識に目を輝かせている友奈に東郷が耳をふさぐ。

『しかしあんなに気の強い夏凜ちゃんがあんな風になるなんて…今度明吾君に頼んでやってもらおうかしら。ハメ』

「人の心を捏造しないで!」

 セキレイの言葉に普段は冷静沈着な東郷が顔を真っ赤にして怒っている。

 駄目だ。全然話が進まない。

「質問、いい? ここにいる皆がそれぞれ明…丹羽と付き合っているのはわかった。じゃあなぜ集められたの?」

 比較的冷静な風が代表して質問をする。するとセキレイは東郷のデンプシーロールを器用に避けながら話し出した。

『1つはサービスパコ。みなさんにこういう世界線もあったというもしもの世界を見せるための…まあ乱〇パーティーみたいなものだと思ってほしいハメ』

「例えで台無しよ!」

 下ネタしか言わない自称精霊に、夏凜がツッコむ。

『もう1つはボクの趣味だパコ! 決してご主人様に消滅させられた意趣返しというわけではないんだハメ』

 あ、そうなのねと5人は納得する。こいつ、丹羽明吾のことを恨んでこんなことをしたのか。

「だったらこいつはアタシたちの共通の敵ね」

「そうだね、お姉ちゃん」

「うん。なんだかわからないけど明吾君に悪いことしようとしてるのはわかったよ」

「彼と私の平穏を脅かすのは誰であれ許さない」

「あたしとあいつしか知らないあんな姿をみんなに見せた償い、させてあげるわ」

 自分を囲む敵意剥き出しの勇者部女子に、セキレイは慌てる。

『ま、待ってほしいパコ! みんなは見たくないハメか? ご主人が他の女性とどんな馴れ初めで恋愛関係に堕ちたのか?』

 その言葉に、ピタっと5人の動きが止まった。

『ボクは平行世界の記録を見せることができるパコ。それはもう勇者部のみんながんばえーな大きな股間の大きなお友達大満足な世界から、女の子同士のイチャイチャを求めるスケベニストが望むものまで幅広く見ることができるんだハメ』

「つまり、何が言いたいのよ」

 夏凜の言葉にセキレイは邪悪な笑みを浮かべる。

『見たくないパコ? 自分以外の女の子とご主人がどういう感じで強くパコって流れでシコったのか。ボクなら見せられるハメ』

 その言葉に5人はそれぞれ顔を見合わせる。

「まあ、ちょっとはね」

「参考までに1回くらいはいいんじゃないですかね」

 と犬吠埼姉妹。

「明吾君が私以外とどんな風に恋に落ちたかか~。うーん、興味はあるけど」

「あたしは嫌よ! そんな、あいつが他の女とイチャイチャしてるのを見るなんて」

「あら、2人は反対なの? 私は見たいわ」

 難色を示す友奈と夏凛に、東郷が言う。

「そうすればどんなことがあれば明吾君が浮気するかもしれないって対策できるから」

「「!?」」

 その言葉に全員の心が決まった。

『じゃあ、誰の世界線から見るパコ?」

「「風先輩で!」」

「風で!」

「お姉ちゃんで!」

「ちょっとアンタら!?」

 あっさりと自分を売った部員たちに部長の悲鳴が響く。

「だって部長ですし。こういう時こそ見本を見せるべきでは?」

「何気にお姉ちゃんが1番明吾くんと距離近いし、警戒するに越したことはないから」

「あー、わかる。部活の依頼でもあいつと一緒のことが多くて恋人としてはやきもきするもの」

「私も明吾君を信じてるけど、風先輩が本気を出したら勝てる気がしないので」

 上から東郷、樹、夏凜、友奈の台詞である。

 最後の友奈の台詞はともかく、別世界線とはいえ妹にそんな風に思われていたなんてショックだ。

 というか、別世界のアタシってどんだけ私怨買ってるのよ。と友奈の次にパーソナルスペースが近い勇者部部長は嘆く。

 要は自分の次に丹羽との距離が近い彼女をみんな警戒しているのだ。

「嫌よ東郷、アンタのを見せなさいよ!」

「それは…恥ずかしいので」

『風パイパイセンでいいハメね。それじゃあみんな、目の前の画面に集中するパコ』

 セキレイがそう言うと周囲が暗くなり、目の前の画面に映像が流れ始める。

『それではよいドスケベライフを~!』

 

 

 

 夏休み中盤、お盆を数日後に控えた日のことである。

 その日犬吠埼風はお隣さんである丹羽明吾を連れて大橋を訪れていた。

「ごめんね、丹羽。つきあわせて」

「いえ。基本暇なのでいつでも頼ってください」

 今日向かうのは大橋にある犬吠埼家。大赦に取り上げられていた風と樹が両親と暮らしていた実家である。

 家の権利書が手に入った後何度か向かおうとしたのだがバーテックス討伐や勇者部活動で忙しく、訪れるのにこんなに時間がかかってしまった。

「でもいいんですか? 犬吠埼さんと一緒じゃなくて」

「うん。でも、本人にもぜひ行ってくれって頼まれたから」

 丹羽の言う通り、本来なら今日ここに一緒に来るはずだった妹の姿はない。

 理由は昨日自分で作ったぶっかけうどんを食べたからだ。

 最近丹羽の協力により10回に1回はまともな料理が作れるようになり自信が付いた樹は、何を血迷ったのか今日の夕食は自分が作ると言って譲らなかったのだ。

 当然できたうどんは紫色のスペシャル仕様。姉と丹羽が止めるのも聞かず一口食べ、そのまま昏倒。病院へ運ばれた。

 診断結果は異常なし。ただしひどい吐き気と幻覚を見ているようなので大事をとって1日入院することにしたのだ。

 病院につきそった姉に樹は言った。

「ごめんねお姉ちゃん。明日は特別な日だったから、お姉ちゃんに少しでも休んでほしくて」

 そう言う顔が真っ青な妹に、風は涙を流しながら抱き着いた。

「馬鹿! それであんたが倒れちゃダメでしょ! 家なんていつでも行けるんだから、また今度」

「ううん。それはダメ」

 訪れる日を延期しようとする姉に樹は言う。

「今度お母さんとお父さんに会う前に、お家はきれいにしておかなくちゃ。じゃないと2人とも安心できないよ」

 亡き両親のことを言われては風も弱い。だが、今の自分は生きている妹が最優先だ。

「ダメよ。やっぱり延期しましょう。お母さんやお父さんもわかってくれるわよ」

 風の言葉に樹はふるふると首を振る。

「ダメだよお姉ちゃん。また我慢しようとしてる。」

「え?」

「今度家に行ったとき、伝えようとしてたんでしょ。丹羽くんにお姉ちゃんの気持ち。知ってるよ」

 樹の言葉にギクリとする。内緒にしていたはずなのに、なぜ知っているのか。

「お姉ちゃんがそんなんじゃ、いつまでたっても伝えられない。わたしを告白できないことの言い訳に使わないで。じゃないと嫌いになっちゃうから」

「樹…」

 自分が1番恐れることをさらりと脅し文句にする妹に風は敵わないなと思う。

 姉である自分はこの世界で1番大切な妹にはどうやっても勝てないらしい。

「わかった。明日予定通り丹羽を連れていくわ。そこで伝える」

「うん。お母さんも応援してるよ」

 にこりと笑い、儚げな声で言う。

 なんだか今にも死にそうなシーンであるが、樹はいたって健康体でただ吐き気と幻覚がしているだけである。

 そんな妹の言葉に後押しされ、風は大橋の実家に丹羽を連れてきた。

 胸にある決意を抱いて。

「ここね」

 まだきれいな門構えの一軒家に、風は懐かしく思う。

 中学1年生までこの家に住んでいた。家に帰ると小学生の樹と母がいて、父の帰りを待ち4人で一緒に食事をする。

 そんな、どこにでもある家庭だった。

「犬吠埼風様ですね」

 突如聞こえてきた第3者の声に、風は思い出から引き戻された。

 見るとそこには1人の初老の男がいた。60、いや70代くらいだろうか。黒い髪よりも白い髪の方が目立っている。

 そしてその顔に風は見覚えがあった。

「あなたは…マンションのアタシたちの部屋まで来て謝っていた大赦の」

「元、大赦の者です。今は大赦を退き隠居の身。今まで自分が犯してきた罪穢れを少しでも何らかの形で償うために生活しております」

 深々と頭を下げる男は、以前風と樹の部屋に突如押しかけて来た大赦の偉い人だった。

 仮面を外し、深々と頭を下げていたから忘れたくても忘れられない。なにしろ帰ってという風の言葉をガン無視し、ひたすら謝罪の言葉を唱えていたのだ。

 あの時は割と本当に警察を呼ぼうと思ってた。

 結局風が根負けし、許すということで納得して帰ってくれたと思っていたのだが。

「なんでこんなところに?」

「犬吠埼様のご家族には特に迷惑をかけていたので、償いとしてこの家の修復や敷地内の雑草の刈り取りなどをさせていただいておりました」

 その言葉に風は驚く。

 そんなこと、自分は頼んでいない。なのにこの人はそんなことをしていたのか。

「犬吠埼先輩、家は人がいなくなると途端に廃れるといいます。この家がここまできれいなのも多分」

 丹羽の言葉に風はようやく思い至る。

 そうか。2年たっても自分たちの生家があの日のままなのは大赦が管理していてくれたから。

 家の権利書が風にわたってからは風が管理しなければならなかったのだが、中学生である自分には思い至らなかった。

 ただ大橋の家に行けば元の記憶のままの生家があるものだとばかり思っていたのだ。

 風はかつて自分に頭を下げていた元大赦の有力者の手を取り、感謝を伝える。

「ありがとうございます。本当なら、アタシがやらなくちゃいけないことだったのに」

「いえいえなんのなんの。犬吠埼様はまだ中学生の子供です。あなたが成人するまでは勝手ながらワシがお力添えをさせていただきます」

「せめてなにかお礼を」

「およしください。この程度のことでワシが犯した罪が消えるとは思っておりません。勇者のことを口止めしていたことも、その細い肩に重責を背負わせたことも、今となっては恥ずかしい限り」

 深々と頭を下げる姿に、風は申し訳なく思う。

 いつぞやは勝手に家まで訪れて一方的に謝罪の言葉を告げに来たうさん臭い迷惑な相手だと思っていたが、この人がいなければ風が思い出に浸ることもできなかっただろう。

 そして見返りを求めることなく贖罪として自分に尽くしてくれる姿には尊敬と感謝しかない。

「あなたのこと、疑っていてすみませんでした。アタシと樹の思い出の場所を守ってくれて本当にありがとうございます。本当に、本当にありがとう」

 風の言葉に元大赦の有職者は「おお、おお」と口にしながら大粒の涙を流して風を拝んでいる。

 それは丹羽が大赦の人間をバーテックス人間とした結果勇者にとって優しい組織にできたという証明のような光景であった。

 

 

 

 家の中はほこり1つなく掃除が行き届いていた。

 おそらくあの元大赦の有力者が雇った業者か本人がここまできれいにしてくれのだろう。風の心には感謝しかない。

「懐かしいな。ここに冷蔵庫があって、そこにタンスがあったの。で、この部屋で家族一緒にご飯を食べてね」

 1部屋1部屋巡りながら、風は丹羽に思い出を語っていく。それを聞いて丹羽は優しい顔でうなずいていた。

「ねえ、丹羽」

 風はリビングだった部屋に足を踏み込むと、丹羽に向かって振り返る。

「卒業したら…アンタが大赦に務めるようになったらここに住まない?」

 風の提案に丹羽はどういうことかというような顔をしている。

「ここからならアンタが務めるだろう大赦からも近いし、部屋も余ってる。姉妹2人だと何かと不安だし、気心の知れた男手が欲しいというか」

 違う。

 これは言い訳だ。自分が心地いい環境で居続けたいための。

 2学期になれば丹羽が学生寮に帰るという話は本人から聞いていた。

 だから樹と一緒に必死になって説得し、隣の部屋に居続けてもらうようにしたのだ。

 だが、あと3年経てば? 丹羽が自活できるようになれば隣の部屋から出ていくだろう。

 そうすれば自分と丹羽のつながりは何もなくなる。

 風が卒業してもまだ2年はお隣さんでいられるが、卒業してしまっては妹の同級生という肩書もなくなってしまうのだ。

 だから、女々しく丹羽にメリットを提示し、この居心地いい関係を続けようとしている。

 今の関係を変えてしまうのが怖くて。

 そう、いつの間にか犬吠埼風は丹羽明吾を1人の男性として見ていた。

 妹の同級生で百合イチャ好きの変態。そう思い気の迷いだと何度も心の中で打ち消してきた。

 だがダメだった。日ごとに募る想いは強くなり、丹羽が隣の部屋から寮へ戻ると聞いた時、ついに爆発した。

 ああ、自分は彼のことが好きなのだと。

 彼のいない生活など、もう考えることができないほどに執着をしているのだと。

 きっかけは何だったか。

 初めてデートして胸が高鳴ったときだろうか?

 もしくはあの射手座の無数の矢から自分を守ってくれたこと?

 それともずっと勇者部の皆をだましていた胸の重荷を取り除いてくれた時?

 それはどれもあっていて、多分どれも違う。

 それらを含めた日々の積み重ねが犬吠埼風にとって丹羽明吾がかけがえのない存在となってしまったのだ。

 だから、今日伝える。「あなたが好きだ」と。

 だが、一方で踏み込んで拒絶されるのが怖くて仕方がないのだ。

「犬吠埼先輩。多分俺は先輩の望む関係にはなれません」

 だから、丹羽がそうはっきり自分に告げた時は、足元が崩れる感覚を味わった。

「え、なん…で?」

「俺は犬吠埼先輩…いえ、風先輩が好きです。1人の女性として好ましく思いますし、樹ちゃんをここまで育てたことに尊敬もしています」

 その言葉に胸が温かくなる。こそばゆくて、ウキウキしてくる。

「でも、それとこれとは話が別です。これ以上、風先輩たち姉妹の生活に関わることはできません」

 と思ったらまた拒絶された。風の胸はまた氷河期のようになる。

 なんなんだこいつは。アタシをからかっているのか?

 なんか段々腹が立ってきた。

「以前にも言いましたが、俺は女の子同士の百合イチャが好きです。でも、先輩と一緒にいたら俺は甘えてしまう。そうしたら風先輩と樹ちゃんの時間を奪ってしまう」

 なんだその理由は。アタシの気持ちなんて無視か!?

 そんなに百合イチャが好きかこの野郎!

「だから、風先輩と樹ちゃんが仲良くいられる時間がもっと多くなるためにも、俺は」

「さっきから聞いてりゃなによそんなの」

 風は丹羽の襟首をグイっと引っ張る。

「ふざけんじゃないわよ! そりゃアタシだって樹は大事よ。でもねぇ、アンタ1人が入ってきたところで薄くなるような絆じゃないのよ!」

 突然の風の行動に、丹羽は目を白黒させている。

「そんなに百合イチャとやらが好きならうちでいくらでも見ればいいじゃない! アタシと樹が仲良くしているのを見て変な顔してる時があるけど、あんなのでいいならいくらでも見せてやるわよ!」

「え、いいんですか?」

「いいの! アタシが許すって言ってんだから」

 ちなみにこの時の樹ちゃん、病院から自宅に帰りプリンを食べていた。

 本人からしたら聞いてないよそんなの!? と抗議をする案件だろう。

「アタシはねえ、学校を卒業しても…ずっとずっとアンタと一緒にいたいの!」

「風先輩」

 叫ぶような風の声に、丹羽は神妙な声で言う。

「今はわかってもらえなくてもいいですけど、多分風先輩と俺はそういう関係になれません。もしなったとしてもきっと後悔します」

 なぜなら自分はバーテックスで、風先輩は人間だから。

 喉元まで出かかった言葉を飲み込み、丹羽は風を見つめる。

「それって、アタシが嫌いってこと?」

「そんなわけないじゃないですか!」

 強い否定の言葉に風は混乱する。

 なんだ? いったい何のことを言っているんだ?

「多分、俺は近いうちにいなくなります。その時風先輩の悲しむ顔を見たくないんです」

 合宿の最終日、夏凜に言われたことを丹羽は思い出していた。

 百合好きを免罪符に告白を断らず、相手と向き合い話し合えと。

 だから、自分の本音を彼女に伝える。

「それだけじゃない。もしかしたら俺と一緒にいれば風先輩や樹ちゃん…いや、勇者部のみんなに迷惑がかかるかもしれない。だから、全部が終わるまでは」

「何よそれ…」

 風の目には涙がたまっていた。

「そんな話で煙に巻こうとして! アタシのこと嫌いなら嫌いっていいなさいよ! そんな、誰かのためとか言ってごまかしてるんじゃないわよ!」

「違います。聞いてください、風先輩!」

「聞きたくない!」

 リビングから逃げようとする風の手を取ってしまったことを丹羽は一瞬後悔する。このまま風に嫌われてしまった方が良かったのではないかと。

 だが、そんな気持ちを夏凛の言葉が叱咤した。

 ――ちゃんとみんなの言葉を受け入れて話し合いなさい。そして自分がどうしたいか、どうするべきかを話し合うの。妥協点を見つけるともいうけど、納得できる結論が出るまで何度でもね!

 そうだ。まだ全部自分は言っていない。風も自分に言っていないことがある!

 まだ全部吐き出していないんだ。

「風先輩。先輩は俺と一緒にいたいって言ったけど、なんでですか?」

「うぇえ!?」

 自分を見つめる丹羽の真剣な瞳に、風は顔を赤くする。

「そ、そんなの、言わなくてもわかるでしょ」

「わかりません。ちゃんと全部言ってくれないと。じゃないと俺は自分の意見を曲げません。隣の部屋も解約して学生寮に戻るし、勇者部にももう顔を出しません!」

「なんでそうなるのよ!」

「お互い全部言い合っていないからです! 俺は自分がしたいことは全部言いました。今度は風先輩が全部言ってください。納得いかないならその理由も全部」

 その言葉に風はブチギレた。

 感情のまま聞くに堪えないような罵詈雑言を言ったような気がする。

 心にもない丹羽の悪口も言ったような気もした。

 理性を取り戻した時、襲ってきたのは後悔だ。これは完全に嫌われたなと丹羽の顔を見ると、風を真剣に見つめている。

「それで終わりですか? それがしてほしいこと全部ですか? だったら俺は受け入れられません。自分の考えも変えません」

 その言葉に、瞳に、風は今度は自分が情けなくなる。

 自分が子供のように喚き散らしたのに、こいつはそれを全部聞いて受け止めてくれた。

 まったく、これではどっちが年上かわからない。

 風は丹羽の肩に頭を預け、蚊の鳴くような小さな声で言う。

「ごめん、さっきまでの全部嘘。感情的になって、ひどいこと言った。ごめん」

「そうですか」

「本当は、ずっと丹羽と一緒にいたい。頑張ったって、ヨシヨシしてほしい。ぎゅってしてほしい」

「そのくらいならお安いごようですよ」

 風の背中に腕を回し、ぎゅっとしてくれた。それから丹羽が頭をなでてくれて、気持ちがぽかぽかと温かくなる。

「アタシの作った料理を食べておいしいって言ってほしい。久しぶりに丹羽が作ってくれたコーヒーが食後に飲みたい」

「最近樹ちゃんのコーヒーばっかりでしたからね。今日くらいは俺が作っても許してもらいましょう」

 その言葉に胸が躍った。我ながらチョロいと思う。

「一緒の布団で寝たい。寝るまで頭撫でてほしい」

「一緒の布団はちょっと…寝るまで頭撫でるのはOKです」

 受け入れられなかったお願いにむーっとほっぺたが膨らむ。だがもう1つの方は了承してくれたのでよしとする。

「一緒に服買いに行きたい。前にアンタの服選ぶって言ったのに、いつ誘ってくれるのかずっと待ってた」

「あー、ごめんなさい。すっかり忘れてまし…痛い痛い!?」

 すっとぼけたことを言う後輩を抱きしめる手の力を強くする。

「ここまで言って、アタシの気持ちがわからないなんて嘘でしょ」

「わかりませんよ言ってくれなきゃ。俺は鈍いんですから」

 その言葉に、風は腹を決めた。肩から顔を離し、至近距離で丹羽を見つめる。

「アタシは、アンタが、好きなのよ! どう、これで満足?」

「はい、俺も風先輩が大好きです。でもだからこそ風先輩や皆には悲しんでほしくない。だから」

「アタシはアンタがこの気持ちを受け入れてくれない方が悲しいわよ」

 その言葉と表情に、丹羽は息をのんだ。

「大体悲しんでほしくないって何よ。どんな理由があるにせよ、1人で格好つけているだけじゃない。女子力と勇者部なめんな!」

 丹羽の頭に衝撃が走る。どうやら頭突きをされたらしい。

「アタシや、アタシの仲間の気持ちをアンタなんかが勝手に察して勝手に離れていこうとしてんじゃないわよ! 悩んだら相談! それが勇者部でしょ」

 額を赤くして、風は笑っていた。

 それはかわいらしいやきれいとも違う。犬吠埼風にしかできない笑顔だった。

「俺と一緒にいたら、後悔しますよ? それでも?」

「後悔するかどうかはアタシが決める。だけど、ここで今アンタを逃がした方が後悔する自信がある」

 はっきり言う。

 これは完全に丹羽の負けだった。彼女の方が強い。

 臆病で、見守るだけでいいと思っていた自分より踏み込んできた彼女の方が強いのは道理だが。

「あ、今1つしてもらいたいことができた」

「なんです?」

 風の言葉に丹羽が問いかける。

「察しなさいよ。さっきアタシのこと大好きって言ったんだからもうアタシの彼氏でしょ」

「風先輩の言葉によれば俺は勝手に察して皆から離れようとしてただけみたいですから。思いもよらないことするかもしれませんよ」

「性格悪いわね」

「嫌いになりましたか?」

「そんなことで嫌いになるくらいなら、好きになってないわよ」

 そう言うと風は丹羽の首に腕を回し、入部した頃より身長が伸びて自分よりちょっと高くなった少年につま先を伸ばして顔を近づける。

「ね? これならわかったでしょ」

「さあ、口にしてもらわないと。俺は察しが悪いので」

 と言いつつ丹羽の顔は真っ赤だ。このむっつりスケベめ。

 仕方ない。ここは先輩として自分がリードしてやるか。経験ないけど。

「アタシ、今キスしたい気持ちで待機中なんだけど」

「奇遇ですね。俺もこの状態で我慢するのがもう限界でした」

 そう言うと2人の唇が近づき――

 

 

 

『おおっと、ここで映像は終了ハメ。続きが気になる生ハメイトのみんなは18禁版の詰みシコRをプレイして風先輩の寝室を見ようパコ!』

 




 犬吠埼風ルート確定条件
〇8月までに親愛度がmax。
〇デート(部活の買い出しを含む)を10回以上達成。
〇樹の信頼度Max。
〇サブクエスト「樹ちゃんのお願い」のお料理関連のクエストを全てこなす。
〇水着購入イベントで風の水着をほめる。
 風先輩は信頼度と親愛度が高くなる「一緒に食事」が1日1回は発生するキャラなので、比較的信頼度と親愛度が上がりやすいキャラです。
 ただ、部活の買い出しではランダムで友奈と出かけてしまうこともあるので注意。東郷さんの機嫌も悪くなります。
「樹ちゃんのお願い」の料理関連クエストは樹の料理の腕が未熟だと体力と精神力がごっそり減るので体調管理には注意。
 それさえ気を付ければ1週目でも攻略可能なルートです。

セキレイ(ベースなし)
色:白(星屑専用)
レアリティ:レア
アビリティ:日本最古のエロ本の物語はボクから始まったパコ
効果:移動速度が1段階ダウン。

 見た目はまんま白いハ〇ドリくん。Qruppo様、お許しください!
 基本下ネタしか言わないのは本家と一緒。
 初心な女の子に下ネタを言わせるのが大好きで、今のところ勇者部メンバーがターゲット。くめゆ組の亜耶ちゃんとは絶対会わせてはいけない存在。
 平行世界のえっちぃ場面を見せる能力を持っており、言動にさえ目をつぶれば有能だが百合厨とヘテロ主義という決定的な解釈違いによりたもとを分かった。
 ちなみに本当は人型バーテックスの手によって生まれたが、なぜか丹羽の方をご主人様と呼んでいる。

 そうそう、このセキレイと似た青い鳥のマスコットが大活躍するPCゲーム、【抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?】は好評発売中です。
 箱買いは値段が高騰しているからDL販売サイトがオススメイトだパコ!(媚を売る)
 2からでも普通に楽しめるから興味を持ったら体験版をやってみてね。面白くなかったら木の下に埋めてもらっても構わないよ!
 あと18禁だからよい子は大人になるまでプレイしちゃダメハメ!

 今回キャラ的に下ネタ多かったけど伏字多めにしたから大丈夫だよね(ドキドキ)
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