詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 あらすじ
 勇者部みんなで夏祭りに来たよ
~お祭り開始から2時間ほど前~
丹羽「そのっち先輩。お伝えしたいことが」
園子「ごめんにわみん、今日わたしこれから用事があるから手短にお願い」
丹羽「ようやく2人がふうにぼに至りました」
園子「なにそれ詳しく」
~数分後~
仲人「お待たせしいたしました。しきたりの元に御本人同士と私、仲介人の初顔合わせを…あら、乃木様は?」
乃木父「それが、急用ができたといきなり飛び出して行ってしまい」
二条城父「なんと!?」
乃木母「申し訳ありません。今人をやって連れ戻している最中で」
二条城母「いいえ、とんでもない。実は今回のお話、どうお断りのお返事をしようかと思っていたもので」
乃木父「へ?」

東本願寺 麗華「薫子が誰かの物になるなんて耐えられない! 私と一緒に逃げましょう!」
二条城 薫子「ごめんなさい、父さん母さん。私は愛に生きる!」

二条城父「ということがありまして…」
乃木家親族「どっひゃあ!?」ドンガラガッシャーン
 丹羽君、図らずもそのっちのお見合いイベントを回避。


勇者部夏祭り

「遅いわねー。丹羽と樹と乃木」

「あんたねぇ、伝説の勇者様に対する敬意ってものが」

「でも本人がいいって言ってるのに様付けするのは失礼だよ、夏凛ちゃん」

「そうよ。そのっちはそんなこと気にしないわ」

 ついてこない3人を心配しながらかき氷をむさぼる風に、小言を言う夏凜、それをいさめる友奈、友奈に同調する東郷と勇者部はいつも通りだ。

 バラバラなようでそれぞれが彩を引き立てあい絶妙にバランスが取れている。まるでこれから上がる花火のようだ。

「ごめーん。遅れてー」

「おまたせしましたみなさん」

 園子の呼び方について話し合っていると、件の園子と樹が1人の女性を連れてやってくる。

 身長は風と同じくらいで、結構長身だ。顔の輪郭はどちらかと言えばかわいい系。だが目と眉はりりしいカッコイイ系だ。

 体格がいいことから何かスポーツでもやっているのだろうか?

 長い茶髪は先端に行くにつれ紫に染まっている。

 着け髪のエクステという奴だろう。勇者部メンバーは使ったことがない…というか縁がないオシャレアイテムだ。

 体育会系の部活にいる女子に声援を送られそうな女子とビジュアル系のバンドをしている女子を掛け合わせたような見た目といえばわかりやすいだろう。

「えっと樹、その人は?」

「ふふ、誰でしょう? ヒントはお姉ちゃんや皆が知っている人だよ」

 姉の質問ににこにこしながら逆に問いかける樹。はて? と4人は首をかしげる。

 今まで勇者部に依頼に来た人間の関係者? それともクラスメイト?

 だが思い返してもどれにもヒットしなかった。というか、多分初対面だ。

 するとその少女はため息をつき、園子をじろっとにらむ。

「そのっち先輩。悪ふざけもほどほどにしてくださいよ。みんな固まってるじゃないですか」

 その聞き覚えのある声に、4人は驚く。

「「「「に、丹羽ぁ!?」」」」

「えー。楽しいのに? ねー、いっつん」

「はい。丹羽くんがどんどんきれいで可愛くなっていくのは見ててすごく楽しかったです」

 丹羽とは対照的に園子と樹は「ねー」と笑顔で顔を見合わせキャッキャとはしゃいでいる。

 どうやら丹羽をいじっている間に意気投合したらしい。

「え、丹羽? マジで」

「マジです」

 固まっている風に、丹羽は大まじめにうなずく。

「その髪どうしたの?」

「そのっち先輩の私物のウィッグとエクステです」

 短髪だった髪が長髪のビジュアル系になっていることに驚く夏凛に、パチンと1部を外して見せる。

「お化粧してるんだ。かわいいねー」

「結城先輩。かわいいって女の子専用の褒め言葉なんですよ」

 近くに寄って整えられた眉毛やファンデーションを注意深く見ている友奈に丹羽は返す。

 ただ1人、東郷だけが何も言わなかった。これは相当呆れられているな。

「どうするんですかそのっち先輩。東郷先輩ドン引きしてますよ?」

「あれれー? わっしーはカッコイイ系よりかわいい系の方が好きだったかな? ゆーゆみたいに」

 一言もしゃべらない親友に流石に園子もあせりだす。

「ち、違うんよわっしー。にわみんが女の子の中に男の子が1人でつらいって言ったから」

「いや、俺はつらいなんて一言も」

「言ったよね?」

「言いました」

「折れるの早っ」

 園子の言葉に秒で折れた丹羽に夏凜が思わずツッコんでいた。

 何か弱みでも握られているんだろうか? 屈辱的な格好だろうにされるがままというのもそれなら納得だ。

 夏凛はこっそり丹羽に近づくと、耳打ちする。

「丹羽、丹羽! あんた園子さ…園子に何か弱みでも握られてるの?」

「え、全然?」

「じゃあなんでそんな恰好をしてるのよ?」

「そのっち先輩が喜んでくれるからですけど」

 なにを当たり前のことを…というような丹羽の言葉に、「え?」と夏凜は固まる。

 それは丹羽がバーテックス人間だった記憶を受け継ぎ園子の悲しむ顔が見たくない。喜ぶ顔が見たいという気持ちからだったが、夏凜は別のことに思い至ったらしい。

「そっか。まあ、あんたが決めたことならあたしから言うことはないわ。樹とは(恋愛的な意味で)話したの?」

「ええ。そのっち先輩と(女装の手順や化粧品について)いっぱい話してましたよ」

「いやあんたが話さないとダメでしょうに。で、どうだった?」

「最初は(女装について)反対してましたけど話しているうちに(女装に)理解を深めて、最終的には納得してました。むしろノリノリで意気投合って感じです」

「そ、そう。まあ、樹が納得したならいいわ」

 丹羽の言葉に若干引いていたが、夏凜はうなずく。

 どうやら自分がアドバイスした通り、納得いくまで話し合いはしたらしい。

 そうか。いつかこんな日が来るとは思っていたが園子様とねぇ。風か樹とくっつくと思っていただけに、まるで鳶が油揚げをかっさらっていったような結果に少しは思うところがある。

 だが本人たちがそれでいいというのなら、夏凜からは言うことはない。

 後日完全な誤解だと判明するのだが、この時の夏凛は優しい顔で樹を抱き寄せ連れていく。

「樹、今日はあたしのおごりよ。好きなだけ食べなさい」

「え、いいんですか夏凜さん。でも悪いですよ」

「いいってことよ。今日はとことん食べて、嫌なことも忘れちゃいましょう」

「はっ、あまりの可愛さにちょっと意識が飛んでたわ」

 東郷がようやく丹羽の女装に反応する。どうやら怒っていたわけではないらしい。

 よかったーと園子が安心していると、友奈が屋台を指差す。

「あ、射的だ。やろうよ東郷さん」

「ええ、任せて友奈ちゃん!」

 自分の得意分野を生かせる屋台の登場に、東郷が静かに燃える。

「いらっしゃーい。…げぇ、勇者部!?」

 にこやかな店主だったが東郷の顔を見るや驚き青い顔した。

「あんたらは出禁だよ。帰った帰った」

「えー? どうして?」

「どうしてだぁ? 去年あんたらが何したか考えてから言いやがれ!」

 めずらしい反応に丹羽と夏凛は首をひねる。逆に心当たりがあるのか、風と樹は乾いた笑いをしていた。

「去年? 何したのよ」

「東郷が百発百中で景品を落として、全部かっさらっていったのよ。あの時のおっちゃんと一緒の人だったのね」

 その言葉に気の毒そうな顔で丹羽と夏凛は店主を見る。なるほど、それでは商売あがったりだろう。

 というか、店主が違えばそのまま景品を根こそぎぶんどるつもりだったのだろうか?

「じゃあ、私がやります。それならいいでしょ?」

「まあ、黒髪の嬢ちゃんじゃなければいいぜ」

 あ、これアカン流れの奴や。

 丹羽は思ったが黙っておくことにした。なぜならこれによってゆうみもが接近するチャンスだからだ。

 百合イチャは全てにおいて優先される。

「いい、友奈ちゃん。銃を撃つときは心の中で十字を切るのよ」

「わかったよ東郷さん」

 現に東郷が友奈にくっついて射撃を教えている。ちょっと顔の角度を変えればチューできるくらいの距離。

 あら^~と思わず丹羽と園子の顔がほころぶ。やはりゆうみもは夫婦。

「なんか、女の姿だとあの不審者顔もかわいく思えるから不思議ね」

「だねー。あ、夏凜さんこのかき氷練乳多めでおいしいですよ」

「そう、よかったわね。にしても園子まで同じ趣味だったとは」

 それを見ていつもと違う格好の丹羽が見れる表情なのに戸惑う風と同意する樹。夏凜はそんな変態と同じ趣味の園子を遠い目で見ている。

「あ、落ちたよ東郷さん!」

「うふふ、よかったわね友奈ちゃん」

「わっしーはとっくにゆーゆに堕ちてるけどね」

「そのっち先輩、誰がうまいこと言えと」

 はしゃぐ友奈と笑顔の東郷を見て、にっこりとする丹羽と園子。

 とても2週間前会ったばかりだとは信じられない。ひょっとしてこいつら血がつながった姉弟じゃないのか?

 まあ、そんな不敬なこと夏凜は口が裂けても言えないが。

「アンタら仲いいわねー。まるで姉弟みたいよ」

「ちょっ、風!?」

 だが隣にいる勇者部部長は違うらしい。こいつ、心臓に毛が生えてるのか?

「そうかなー? もしにわみんみたいな弟がいたら毎日着せ替えして遊んじゃうよー」

「そのっち先輩。俺が女装させられるのは確定なんですか?」

 笑顔で言う園子に若干引いている丹羽。

 よかった。逆鱗には触れなかったらしい。

 心からほっとしている夏凜に、友奈と東郷がこちらに近づいてきた。

「みんなー、お待たせ」

「今年も大漁よ」

 見ると大きなビニール袋に景品をたくさん入れたホクホク顔の2人としくしく泣いている屋台のおっちゃんが目に入った。

 ああ、今年も景品根こそぎ持っていかれたのね。かわいそうに。

「あんたら、少しは手心ってものを…そのうちここら辺の出店出禁になるわよ?」

「だって友奈ちゃん呑み込みが早くて。私も教え甲斐があったわ」

「東郷さんの教え方がうまいからだよー」

 とまたイチャイチャする2人。これは…と丹羽と園子を見る。

「「ビュォオオオ!」」

 やっぱり。目を輝かせて謎の擬音を口にしていた。

「あ、そろそろ花火が始まりますね」

 と樹が声を上げる。見ると屋台に集まっていた客もぞろぞろと移動している。

「じゃあ、わたしたちも移動しよっか」

「うん。そうだねそのちゃん」

 そう言って話していた友奈が人の流れにさらわれた。

「あれぇ~?」

「友奈ちゃーん!」

 どんどんと遠くへ運ばれていく友奈を見て東郷が悲痛な声を上げる。

「みんな、離れないように手をつないで!」

「樹、あたしと一緒に」

「はい。夏凜さん!」

 風の言葉に樹と夏凛が手をつなぐ。

「そのっち!」

「うん。わっしー! にわみんも…あれ? にわみんは?」

 東郷と手をつないだ園子がすぐそばにいたはずの後輩の姿を探す。

「ふう、どうやら収まったみたいね…みんないる?」

 風の言葉に勇者部は点呼をとる。

 風、樹、夏凜、東郷、園子。

 友奈と丹羽がその場にいなかった。

 

 

 

 花火を見ようとする人の流れから何とか抜け出した友奈は、気が付けば勇者部の皆とはぐれていた。

 皆のもとに帰らなくちゃ。

 そう思った友奈が足を動かそうとすると痛みが襲った。どうやら浴衣に合わせた下駄型サンダルの鼻緒の部分で靴擦れを起こしたらしい。

 下駄なのに靴擦れとは変な感じだ。とりあえずどこか休める場所へ行こうと周囲を見渡していると、3人の男が自分に近づいてくるのが見えた。

「お、かわいい女の子が1人でいるじゃん。保護しなきゃ」

「ねえ君、1人で来たの? 不用心だぜ」

「いや待てよ、この娘靴擦れしてんじゃん。救護室に運んであげようぜ」

 同人誌のぐへへ的な展開になるかと思ったら、結構いい人たちだった。

「え、あの?」

「いいからいいから…。俺がおんぶしてあげるよ」

「いや、ここは俺が」

「は? お前ら何抜け駆けしようとしてんだ? ジャンケンだろ」

 バチバチと3人の男がにらみ合う。

「こんなかわいい女の子とお知り合いになる機会なんてこれからの人生あるかないかわかんないだろうが!」

「俺だって同じだよ! お前妹いるんだから希望あるだろ! 譲れや」

「そういうお前は姉貴いるだろ。ここは1人っ子の俺が」

「「てめぇは同居してる年下の従妹がいるだろうが! 1番恵まれてる奴が生意気言ってんじゃねえ」」

 なんだか剣呑な雰囲気だ。今にも喧嘩に発展しそう。

「あのっ」と友奈が声をかけようとしたのとその声が聞こえてきたのは同時だった。

「探しましたよぉ、結城せんぱーい♡」

 その姿に友奈は呆気にとられる。

 丹羽がすっごい女の子走りでこちらに来ていた。

 しかも周囲に光の粒子というか、美少女オーラがあふれている。

「もー。東郷先輩が探してましたよ。さ、帰りましょ?」

 それに見とれている男たちに囲まれている友奈の手を引くと、その場から移動しようとする。

「おいおい、ちょっと待てよ姉ちゃん」

 が、いち早く正気に戻った男の1人が丹羽の肩をつかむ。それにちっ、と丹羽が怖い顔で舌打ちするのが友奈から見えた。

「なんですか、お兄さん?」

「(お兄さん…いい)その子は足怪我してるみたいだから、俺たちが救護テントに」

「わぁ、お兄さんやっさしー! でも悪いですよ。私が先輩に肩を貸して移動しますから」

 と言って友奈に肩を貸す丹羽。

「いやいや、女の子2人じゃ危ないって俺たちが送っていくよ」

「ありがとうございます。でも、私も結城先輩も空手道場に通っているんです。変な奴には負けませんよ」

「え、丹羽くん。いつの間に空手をむぐっ」

「黙って」

 余計なことを言いそうな友奈の口をさりげなく光の速さで手で押さえる。

「それにぃ、お兄さんたちみたいなかっこいい人たちにそんなに優しくされたら…私勘違いしそうだから」

 美少女2かわいい5ぶりっこ3の計算された丹羽の声と流し目に、3人はどっきーんとした。

 と同時に丹羽の美少女のなりきりぶりに友奈はドン引きしていたが。

「か、勘違いじゃなくて俺と付き合ってみないか?」

「てめえ! 抜け駆けか!?」

「この娘は俺と一緒にお祭りを楽しむんだよ、邪魔すんな!」

 ぎゃいぎゃいと言い争いを始めた3人組。その光景を確認した後、丹羽は注意がそれた隙を見逃さず素早く友奈を連れ出した。

 やがて3人が完全に見えなくなった神社の外周までたどりつくと、袖から手ぬぐいを取り出し近場にあったベンチの上に敷き、その上に友奈を座らせる。

「大丈夫ですか結城先輩。あいつらひどいことされてませんか?」

「え、うん。大丈夫だけど」

 友奈の言葉を聞いて丹羽は安心したように息を吐いていた。

「よかった。お祭りではぐれた女の子が乱暴されるテンプレ展開は回避された」

「えっと、丹羽君。さっきの何?」

 あまりにも自然な女の子っぽいしぐさや声に困惑している友奈が尋ねると、丹羽は遠い目をする。

「ああ、あれはそのっち先輩による演技指導のたまものですよ。…そう、演技指導の」

「そ、そうなんだ」

 なんだかそれ以上聞いちゃいけないような気がしたので友奈は納得したフリをしてあげた。

「それより結城先輩、足怪我してますよね。見せてください」

 言うや否や丹羽はもう片方の袖から巾着を取り出し、中から消毒液、ばんそうこうなどを出す。

「い、いいよそんな大げさな」

 と友奈が言っている間にも下駄型サンダルを脱がせ、手早く消毒してばんそうこうを靴擦れした場所に貼っている。

 手際いいなぁと友奈が感心しているとさらに靴擦れの原因となった鼻緒の部分に巾着から取り出した新しい布を入れて調整していた。

 風先輩も言ってたけど、丹羽君何でも持ってるなぁ。

「ちょっと履いてみてください。どうですか?」

 友奈が感心していると丹羽が下駄型サンダルを差し出してきた。履いてみるとぴったりで、痛みもない。

「すごいね丹羽君は。それに比べて私は…」

 どこか沈んだ様子を見せる友奈に、丹羽はおや? と思う。

「どうしたんですか、らしくない。悩み事があっても明るいふりをして周りに気づかせようとしない結城先輩が」

「えっ!?」

 丹羽の言葉に思わず友奈は顔を上げる。

「気づいて、たの?」

「え、何がですか?」

 キョトンとする丹羽に、友奈は勇者部の皆にさえずっと秘密にしていたことを問いかける。

「私が、その…元気なふりというか、明るいふりしてたこと」

 その言葉に丹羽は「あ」と思わず声を上げる。

 そうか、本人は隠していたんだ。公式設定だったからすっかり周知の事実だと思っていた。

 結城友奈の普段の能天気さや空気の読まず初対面でもグイグイ距離を縮めたりしている道化じみた行動が実は演技で、本当は人並みに悩み、誰よりも周囲の人間関係を気にしている少女だということを。

 そっかー。本人は隠していたつもりだったんだ。視聴者である「俺」も勇者の章のトラウマシーンを見るまで分からなかったからなぁ。さもありなん。

 しかし言ってしまったものは仕方ない。いっそのことぶちまけてしまおう。

「ええ。結城先輩が鋼メンタルかと思いきや人の気持ちをすごく気にする臆病なところとか、グイグイくる攻略王の癖に人に嫌われるのが嫌で距離を慎重に測っていたこととかバレバレでした」

「そうなの!?」

 あ、すごい驚いてる。

「でも、それが何なんですか?」

「え?」

「たとえフリでもそれはもう結城先輩の一部ですし、内面も含め結城先輩の魅力です。それで救われてきた人もいますし。東郷先輩、三好先輩、犬吠埼先輩、犬吠埼さん勇者部のみんなもそう言うと思います」

 丹羽の言葉に友奈が目を見開く。

 みんなをだましているようで後ろめたさがあった自分ではマイナスだと思っていたことを肯定してくれるなんて、思いもしなかったからだ。

 ただ、他人のためなら冗談抜きで命を懸けられる自己犠牲的な考えは受け入れられないですけど。

 と、丹羽は内心で思うだけにしておく。

「すごいな。丹羽君は、やっぱり役立たずの私なんかとは違うや」

 え、なんて?

 本編の友奈からは考えられないような言葉が聞こえ、思わず友奈を見る。

「私、最後の戦いで全然役に立てなかった。1番危ないところも丹羽君に任せて、本当はどこか安心してた。私じゃなくてよかったって」

 そこには膝を抱えている友奈がいた。膝に顔をうずめていることから顔を見られたくないのだろう。

「丹羽君に満開しても役に立たないって言われたとき、本当にどうしようもないと思った。みんなが危険なのに、役割がある東郷さんや夏凛ちゃん、風先輩と樹ちゃんに嫉妬してたんだ」

「それは、相性的に仕方ないですよ。それに封印の儀に協力してくれたじゃないですか」

 事実物理攻撃があまり効かない水瓶座の水球が相手でなければ友奈の1人舞台だっただろう。本編を見ればそれは明らかだ。

「私がいなくてもできたよ。結局私は私じゃなきゃできないことがなければ嫌で、そんな自分に気づいたら余計に嫌で。自分が嫌いになっちゃったんだ」

 声には少し鼻声が混じっていた。泣いているのだろうか?

「そんなの、誰でも一緒ですよ。誰だって自分は特別でいたくて、それが普通なんです」

「でも、私勇者なのに。仲間に嫉妬しちゃった。本当はそのちゃんからバーテックスがまた襲ってくるって聞いた時喜んじゃったんだ。また私が特別でいられるって…みんなが危険な目に合うかもしれないのに」

 友奈の独白は続く。

「そのちゃんの身体が治って私たちと戦えるって聞いた時、心のどこかで嫉妬するのが分かった。そんなこと考えちゃいけないのに。また私が役立たずになっちゃうんじゃないかって不安で」

「不安に感じるのは仕方ないですよ。自分の領域を冒してくる存在に不安を感じるのは当たり前です。俺だって百合イチャ好きの同志が増えるのを喜ぶと同時にいつ追い抜かされるんじゃないかと不安なんですから」

「そんなんじゃない!」

 叫ぶような声に丹羽は驚いた。やっぱり百合イチャ好きと勇者のお役目を同列に話すのはマズかったか?

「友達なのに、大切な仲間なのにそんなことを考えちゃった自分が許せない。そんなの、全然勇者じゃない!」

 そうだ。彼女は勇者という存在にとらわれている。

 それは彼女の元になった■■■■という存在が原因かはわからないが、その執着は異常だ。

 だから、丹羽はそれを完全に断ち切ることができない。

 こうやって別のものに目を向けさせ、固い結び目をほぐすことしか。

「結城先輩。勇者ってそんな清廉潔白なものじゃないと思いますよ。ド〇クエとかのゲームはやりますか?」

「え、うん」

「あいつらやってることと言ったら民家に不法侵入して泥棒したり、遺跡の墓荒らしをしたりとかとても褒められたもんじゃないです」

「それは…魔王を倒すために必要なことだから」

「それなら何をしたっていいんですか? 多分そんな勇者より魔物と戦わなくても命がけで手に入れた交易品をみんなに売る商人や家族を守るため働いている荒くれや町人たちのほうがよっぽど清廉潔白だと思います」

 丹羽の屁理屈に友奈は混乱しているようだ。

「それに、結城先輩はそう考えるのが間違いだって自分を顧みることができる冷静さを持ってるじゃないですか。魔王を倒せばすぐ平和が訪れると思ってる短絡的で思考放棄してるよりずっと立派ですよ」

「それは…でも、ゲームだし」

「そう。ゲームです。単純明快で、誰でも楽しむことができるよう簡略化された世界と物語。でも、現実はそうじゃありません」

 丹羽の言葉を友奈はしっかりと聞く。

「いろんな考えのいろんな人がいて、人を傷つけたら罰せられていいことも悪いことも入り乱れていて正解がない」

 なんだそのクソゲーは。と言っていて丹羽はちょっと思う。

「だからこそ、そんな風に悩む結城先輩も正解であり、不正解でもあるんです。完璧超人を演じるために内面の弱さを隠して表に出さないことも正解で、そうやって1人で抱え込むのが不正解ですね」

「うん、そうだね。だからつらかったんだ」

 丹羽の言葉に友奈も告白する。

「夏凜ちゃんが丹羽君のこと自己犠牲的って言った時、自分のことを責められているみたいでびくっとした。東郷さんが相談してほしい、1人で悩まないでほしいって言った時は自分のことを言われたようで思わず逃げちゃった」

 膝から顔を上げ、友奈はうるんだ瞳で丹羽を見る。

「ねえ、丹羽君も私たちに何か隠しているの? 風先輩と樹ちゃんの隣の部屋から寮に引っ越したのと何か関係があるの? そのちゃんと一緒にいるのとは?」

 怒涛の質問に丹羽は脳内でこれは隠した方が逆にこじれそうだなと自分の本音を語ることにした。

「寮にもどったのは最初からそういう契約だったからです。これ以上犬吠埼先輩たちに迷惑はかけられませんし、寮の方が学校に近いし。そのっち先輩と一緒にいるのは三ノ輪さんの治療についていろいろ話し合っているからです」

「でも、風先輩と樹ちゃんは戻ってほしくなさそうだったよ。お昼だって」

「あれは酒の上の言葉ですから。そりゃ、素面で言われたら俺も考えますけど、俺が寮へ帰ることを話したら反対はしませんでしたし」

 事実だ。丹羽が大赦に用意された部屋から寮に戻ると犬吠埼姉妹に言った時、2人は反対しなかった。

 ただ賛成しなかっただけで、消極的には隣の部屋へ居続けてほしいとは思っていたかもしれないが。

 丹羽はなんとなくそれを察していたが、何も言わないので2学期になると同時に寮へ戻る準備をしている。

 もし風か樹が一言「今まで通り隣の部屋に住んでくれ」と言えば残り続けるつもりだが、言われないということは彼女たちにとって自分はただのお隣さんという存在だったんだろう。

 百合姉妹の間に挟まっているような今の状況を改善しなければという決意も多分にあったが。

「でも風先輩は…ううん。なんでもない。そのちゃんとは?」

「そのっち先輩が2年間やりたくても我慢していたことにお付き合いしているんですよ。いざというとき、近くに俺がいた方が身体に異常があったときすぐ対応できますから」

 これは本当。それと2年前の出来事が知らぬ間に丹羽の中で負い目となり頼みを断れないという面もあったが。

「他にみんなに隠していることは」

「そりゃありますよ。でも、全部話す必要ってあるんですか?」

 その言葉に友奈は「え?」と思わずつぶやく。さっきと言っていることが違うような。

「そりゃ、悩んで抱え込んでいたら話さないといけないですけど、誰にだって秘密にしていることはあります。結城先輩の気付かれていないと思っていた内面みたいに」

 その言葉に「あっ」と言葉を漏らす。

「俺はそれを悪いことだと全然思っていません。むしろ健全だと思います。人に話したくない部分を認め、冷静に客観視できている結城先輩はすごいですよ。俺なんて百合イチャ好きが皆さんに迷惑をかけてるとわかっているのにやめられませんから」

「そっか…ふふ。うん、そうだね」

 その言葉に、みんなに注意されている丹羽の不審者のような顔が思い浮かび思わず笑ってしまう。

 友奈の胸を包んでいた黒く濃いモヤのようなものが晴れた気がした。

「とりあえず今の話、皆はともかく東郷先輩には話してみてもいいと思いますよ。きっと力になってくれます」

「そうだね。ありがとう、聞いてくれて」

 丹羽の言う通り、皆に話してみよう。きっとそれで心配もしてくれるが、それ以上に安心してくれるはずだ。

 そんなことを考えた時、友奈のスマホが鳴った。風からだ。

「もしもし、風先輩?」

「友奈? 今どこ? 近くに丹羽いる?」

「はい。えっと、テントからちょっと離れたところにいます。足がちょっと靴擦れしたので丹羽君に治してもらって」

「そう。だってみんな。あれ、東郷は?」

「もう友奈さんを探しに行ったよ」

「ちょっと、合流場所まだ言ってないんだけど!?」

 そんな話をしていると「友奈ちゃぁあああん!」と東郷が呼ぶ声がどんどん近づいてくる。

「あ、東郷さんだ! おーい!」

「こっちはまだ位置特定してないのに、あいつはエスパーか何かなの?」

「赤い糸だよにぼっしー。そっちの例えの方が素敵だよね、にわみん」

「はい。ゆうみもはやはり夫婦ですから」

 本当にこっちに来ている東郷を見つけ、声を上げて手を振る友奈を見ながら丹羽は園子の言葉に同意する。

 その後神社の鳥居に再集合という運びとなり、通話は終了した。

 東郷は友奈が男たちに囲まれたとき丹羽が助けてくれた話をすると「えらいわね」と言って丹羽の頭をなでてくれた。その後男の特徴を聞き出した東郷が少しお手洗いに行ってくると言って、数分後にすぐ戻って来る。

「夏になると虫が多くて嫌よね」と言う彼女を見てまさかとは思ったが、確認する勇気はなかった。触らぬ神に祟りなし。

 ちなみにその日友奈を救護テントに運ぼうとしていた親切な3人の男がなぜか救護テントに運ばれたのだが、誰も犯人は見ていないらしい。

 かなりの手練れらしく一撃で気絶させられ、誰も目撃者がいなかったそうだ。

「おーい、こっちこっち」

 友奈と東郷、丹羽の3人が鳥居が目に入る距離にたどり着くと風がこちらに向かって手を振っていた。

 園子は祭りを満喫した様子で、手に色々な食べ物を持っている。夏凛がその隣で憔悴した様子でビニールに入った食べ物の山を持ち、樹が笑っていた。

 どうやら丹羽が負うはずだった園子のお守を引き受けてくれたらしい。ご苦労様です。

「お、ナイスタイミング。たーまやー!」

 全員そろうと同時に夏の夜空に花火が上がり次々と大輪の花が咲く。

 それを見てそこかしこから風の言うように「たーまやー!」とか「かーぎやー!」と聞こえる。

「楽しかったんよー。来年もまた来ようね! みんな」

 笑顔で言う園子に全員がうなずく中、丹羽だけは複雑な思いだった。

 来年。多分そこには自分はいないはずだ。

 ゆゆゆ1期終了まであと1月。園子と東郷の散華した部分を人型精霊を使い治療することができた。

 これで東郷が四国を守る壁を破壊せず、レオスタークラスター戦で友奈が無理やり満開して身体のほとんどを神樹に作り替えられなければ勇者の章は発生しない。

 もちろん丹羽も人型のバーテックスもトラウマまみれの勇者の章を発生させるつもりはない。友奈には甘酒をおいしく飲んでもらい、風先輩には姉妹2人か勇者部の皆とクリスマスを過ごしてほしい。

 そのためならどんなことだってしてみせる。

 決意を新たに夜空に大輪の花を咲かせる花火を6人と見上げる。

 咲いた花はあとは散るだけ。だが散ってもなお人の心に残るその光景を見ながら、丹羽はこの6人の笑顔でいられる世界を守ろうと誓うのだった。




(+皿+)「ついに恐れていた事態が…あわわ」
天の神(百合好き)「度し難い! 男の娘ハーレムは度し難い!」(憤怒)
(+皿+)「鎮まりたまえ~、怒りを鎮めたまえ~」
天の神(百合好き)「ただでさえ古事記が日本最古のエロ本なんて呼ばれているのに、日本書記で男の娘トラップだと? 度し難い!」(古傷をえぐられたようです)
(+皿+)「あばばばばば」
天の神(百合好き)「お姉さんのこと本気で怒らせちゃったねぇ……ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
神樹「お、あの子超マブいじゃーん。神婚候補にしちゃおっかなー」(丹羽みんこちゃんを見ながら)
(+皿+)「え?」
天の神(百合好き)「え?」
神樹「え? って何? え?」
天の神(百合好き)「……貴様、本当に目が節穴だったんだな(憐憫の視線)」
(+皿+)「強く生きろよ…これやるから(同情の視線)」つ【「女装山脈」「女装海峡」「女装学園(妊)」詰め合わせ】
神樹「え? いいの!? やったー! かわいい女の子のゲームだー! なんか知らんがラッキー!」

 君は知るだろう
 異なる性癖の作品に出合うことが 新しい性癖の目覚めとは限らないことを
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