詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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そのこのにっき(大赦未検閲版)

神世紀297年4月9日

 今日から5年生。新しいクラス。

 自己紹介で乃木園子ですというとクラスメイトがざわつく。

「あの乃木家の」とか「初代勇者の」って聞こえる。その反応にも慣れたものだ。

 わたしの名前は乃木園子。ご先祖様は初代勇者の乃木若葉。

 勇者としてバーテックスから人類を守ったすごい人らしい。

 そのせいか、四国中から集められた100人の勇者候補の1人に選ばれてしまった。

 なんでも近いうちにまたバーテックスが人類を滅ぼしにやってくるのでそれを撃退する勇者が必要らしい。

 嫌だなー。わたし、お昼寝と小説だけ書いていたいのに。

 でもお昼寝できなくて誰も小説を楽しむことができない世界になるのはもっと嫌だった。

 なので、勇者の訓練がんばるんよ。

 学校の後、集まるように言われた大赦の訓練施設に行くとクラスメイトの三ノ輪さんと同じ学校の鷲尾須美さんと山伏しずくさんがいた。

 三ノ輪さんはすっごく明るい人で、初対面のわたしにも気さくに話しかけてくれた。鷲尾さんはちょっと嫌がってたけど、多分2人はすぐ仲良くなると思った。

 鷲尾さんはマジメな人って有名だった。クラスの学級委員長をやっていたり、積極的に学校の美化活動にも参加している。

 力の抜きどころがわからなくて無理すると壊れそうなタイプなので今度お昼寝に誘おう。うん、それがいい。

 山伏さんは…話したことがないのでよくわからなかったけど、はかないっていうのかな。目を離すと消えてしまいそうな感じだった。

 どうやら彼女たちも神樹様の勇者候補らしい。他にも結構人がいて最終的に10人くらい集まった。

 戦闘担当の教官さんからお話があった後、軽く自己紹介をする。

 わたしが名前を言うと、三ノ輪さん以外の人はざわざわする。なかにはあからさまににらみつけてくる人もいてちょっとこわい感じだった。

 戦闘訓練が始まるとみんなわたしのほうに注目しているような気がした。そんなに見られるとやりにくいんよ。

 教官さんが「今まで何か武術をやっていたのか?」って聞いてきたけどはずかしながら箸より重いものを持ったことがない人生だった。

 そう伝えると教官さんはすっごく驚いていて、筋がいいってほめてくれた。 

 訓練は結構ハードで、終わるころには体中が痛くなっていた。

 帰ってからお手伝いさんにシップを貼ってもらった。明日は筋肉痛が心配だ。

 

 

5月7日

 今日大赦の訓練施設に行くと、山伏さんがいなかった。

 戦闘の教官さんから訓練の前に勇者候補が100人から80人に減ったと告げられた。

 そういえば他にもいなくなった子がいる。教官さんは周りを蹴落としてでも自分が生き残れるように精進しろと言っていたけど、私にはわからなかった。

 勇者って、みんなを守る存在じゃないの?

 どうしてつまづいた人に手を差し伸べるんじゃなくて、相手を出し抜いたり蹴落とせって教えるんだろう。

 わたしがおかしいのかな?

 

6月10日

 勇者候補生が50人になった。この施設で残っているのはわたしと鷲尾さんと三ノ輪さんだけになった。

 お家に帰ると、大赦でよく見るおじいさんがお父さんを一方的に怒っているのを見てしまった。

「私の孫が勇者になれなくてお前の娘がなれるのはおかしい」とか「乃木の今の繁栄があるのは誰のおかげだと思っている!」とか言っていた。

 それ以上聞きたくなかったので耳をふさいだんだけど、悪口を言っているのはわかった。

 気が済んだのかおじいさんは行ってしまったけど、わたしは動けなかった。

 その人は、大赦でわたしに優しくしてくれていた大人の1人だった。

 訓練後にアメやお菓子をくれたり、頑張りを褒めてくれたりとわたしを乃木と知ってもおべっかを使ったり距離をとったりするような大人とは違う人だと思っていた。

 なのに、いつも笑顔で優しかったその人は、わたしの知らないところでわたしの大切な人に嫌なことをしていた。

 あとでお手伝いさんに聞いたら、「内緒ですよ」と前置きして教えてくれた。

 その人の家は昔、大赦ができる前は四国ではすごい権力を持っていたんだって。

 でも大赦ができて、勇者が選ばれるようになってからどんどん発言力が弱くなっていって。

 今まではかつて勇者を援助した先祖の功績にしがみついて大赦の要職にいたんだけど、今回自分の血縁者が勇者候補から外されたことでお仕事が別の場所に変わったんだって。

 怖かったのは、次の日大赦の訓練所で会った時のことだ。

 おじいさんは昨日のことなんて嘘だったみたいにいつも通りわたしに優しくしてくれた。

 訓練を終えたわたしに「園子ちゃんはがんばってえらいねぇ」と頭をなでながらお菓子をくれた。

 怖かった。あんなに怖い顔で怒っていたおじいさんが、何事もなかったように笑っているのが。

 まるで仮面をつけているようだった。笑顔の下で、あんなに怖い顔で酷いことを言えるなんて信じられなかった。

 その日、わたしは生まれて初めて人からもらったものを捨ててしまった。持っていることが気持ち悪くて。

 ごめんなさい。 

 

7月23日

 夏休みを前に、勇者候補が10人にしぼられたことを大赦で教官さんから告げられた。

 これからはもっと訓練が厳しくなるらしい。鷲尾さんと三ノ輪さんも厳しい顔でその話を聞いていた。

 わたしはお昼寝する時間はあるかなーって考えてた。もちろん鷲尾さんに怒られた。

 鷲尾さんはちょっと不器用だ。武器の使い方じゃなくて、人間関係とか気の抜き方とか。

 張り詰めた糸ほど切れやすい。切れないためにはたわんだ、ゆるやかな状態でいることが望ましいのだ。

 だから適度に気を抜いて、精神に余裕を持つことが結果的に正解につながる。

 そう思ってお昼寝にお誘いしたんだけど、余計に怒られた。なぜ?

 

7月30日

 今日、かわいい子に会った。

 大赦で訓練していると、「あんたが乃木園子ね!」とツインテールの女の子がやってきた。

 話を聞くと他の地区の勇者候補らしい。

 訓練してた鷲尾さんに、「あたしと勝負しなさい!」って絡んでた。どうやら鷲尾さんをわたしと勘違いしたらしい。

 鷲尾さんはため息をついて、「乃木さんならそこで昼寝してる子ですよ」とすぐバラしちゃった。もうちょっとかん違いしたままのほうが面白かったのに。

「うそでしょ、こんな不真面目なのが成績ナンバーワンなの?」と驚いていた。

「そうですわたしが乃木園子です。みよしかりんさん」とわたしが言うと、みよしさんはすごく驚いていて、「さすが乃木園子。完成型勇者のあたしのことを知ってるなんてやるじゃない」とご満悦の様子だった。

 でもわたしが名前を知っていたのは持ってた竹刀袋に「みよしかりん」って大きく書かれてたからなんだけどなぁ。

 なんだかこの子、すごい導き(いじり)がいがありそう。

 話もそこそこに、すぐ実戦訓練になった。まず最初はわたし、次に鷲尾さん、最後に三ノ輪さん。

 みよしさんは全員と戦って、全員に負けてた。でもすっごく強かった。

 特に三ノ輪さんとは双剣と2丁斧という武器の種類が近いこともあってか、すごい白熱した試合だった。

 あんなに強い子が他の地区にもいたんだ。頼もしいな。

 試合の後、わたしたち3人が全員神樹館小学校の生徒だと知るとみよしさんはショックを受けたようで、「家柄だけの奴らに負けたー」って言ってた。

 それが鷲尾さんには面白くなかったらしく、「乃木さんと三ノ輪さん、私の3人が勇者候補になったのは実力です!」ってみよしさんに怒ってた。

 おー、なんか鷲尾さんに初めてほめてもらったかも。

 鷲尾さんの言葉でわたしたちを傷つけたと思ったのか、みよしさんはごめんなさいしてくれた。

 三ノ輪さんは笑っていいよって言ってたし、わたしも家柄のことを言われるのは慣れてるからべつにいいよって答えた。

 帰り際、「最後に残るのはあたしたち3人だから」って言い残してみよしさんは去っていった。

 あんなに強い子が他に2人もいるんだ。わたしもがんばろう。

 

8月30日

 今日はわたしの誕生日です。お父さんとお母さんと一緒にたくさんの人がお祝いしてくれました。

 たくさん人と会ってつかれたので、今日はもうおわり。

 

9月1日

 今日から新学期。学校が始まった。

 クラスへ行くと三ノ輪さんから「誕生日おめでとう」って言われた。

 はじめ何を言われたのか分からなかった。同じ年の子に誕生日をお祝いされたのなんていつぶりだろう。

 思わず泣いちゃったわたし、変な子じゃなかったかな?

 三ノ輪さんは「昨日は夏休みの宿題に追われてたからわたせなくてごめん」って謝りながらかわいいメモ帳とペンをくれた。

 わたしが小説書いてるって知ってたのかな?

 今までお父さんとお母さん以外の大人からもらったどのプレゼントよりうれしかった。

 学校が終わって大赦の訓練施設に行くと、勇者候補がここにいる3人を含めて5人に絞られたことを伝えられた。

 夏休みに会ったみよしさんを思い出した。彼女も残ったのかな?

 聞いてみようかと思ったけど、彼女が「あたしたち3人」って言ってたのを思い出して聞けなかった。

 もし鷲尾さんか三ノ輪さんが勇者候補から外れたら、わたしだったらすごい落ち込むだろうから。

 

9月28日

 今日、嫌なことを聞いてしまった。

 大赦のお昼寝スポットでサボ…めいそうしていると、大人たちの声が聞こえてきた。

 いわく、実は最初から勇者になる人間は決まっているということ。

 勇者適性の高いわたしに鷲尾さんに三ノ輪さんの3人。

 最初にたくさんの候補が集められたのは、互いに相手を蹴落とさんとすることで訓練の効率をアップさせるための方便だということ。

 さらには勇者候補にするために適性のない子供の親やおじいちゃんたちからお金をもらっていたとも言っていた。

 怒りはわかなかった。大赦の大人が考えそうなことだなってちょっと呆れただけだ。

 ただ、玉を磨くための石は多いほうがいいという言葉に同意する大勢の笑い声が耳にこびりついて離れなかった。

 その日、お気に入りのお昼寝スポットが1つなくなった。 

 

10月30日

 大赦の訓練施設に行くと、最終選考にわたしと鷲尾さんと三ノ輪さんが残ったことが告げられた。

 鷲尾さんと三ノ輪さんは喜びのあまり泣いていた。訓練してくれた教官さんたちも鼻が高いと喜んでいた。

 わたしだけが、心から喜べなかった。

 

11月8日

 今日はすごいことがあった! 何から書こうかな。

 えっと、まずわっしーとミノさんと仲良くなりました!

 あ、わっしーは鷲尾須美さんで、ミノさんは三ノ輪銀さんです。

 大赦の訓練が終わった後、部屋で小説を書いていたらスマホが鳴って、神樹様の結界に送られた。

 その時わたしはミノさんと一緒だったんだけど、先に来たわっしーがおそわれてた。

 白い体と大きな口で、大赦で勉強した星くずだってわかった。

 そいつが今にもわっしーを食べそうで、ミノさんが飛び出そうとしてた。

 わたしは怖くてまだ動けなかったんだけど、友達のピンチにすぐ動けるミノさんはすごいなぁと思った。

 でもこのままじゃミノさんもあぶない。わたしはあわててミノさんを止めて、簡単な作戦を伝えた。ミノさんに攻げきしてもらって星くずが逃げた先にわたしが待機して、はさみうちにしようというものだ。

 結果は失敗したけど、その後わっしーが訓練でも見せてくれなかった4連射を星くずに放ったのは驚いた。すっごーい。

 でもそれもよけられて、攻撃してくるかと思ったけどすぐ逃げて行った。

 おそらくあれはセッコーだったのかな? 多分今の勇者の実力を見に来たんだと思う。

 そのあとわっしーがわたしにリーダーをやってくれって言ったのは本当に驚いた。発想に光るものがあるってほめてくれた。

 てっきり自分がリーダーをやりたいと思ってたのに。ミノさんが明日は雪が降るかもって言ってた。

 明日から猛特訓って言ってた。大変そうだけど楽しみだ。

 

11月10日

 今日はミノさんの誕生日をわっしーとわたしでお祝いした。

 わたしのお家でお祝いしたんだけど、ミノさんは「家広い! 敷地内に定時バスがあるとかなんで!?」って驚きっぱなしだった。

 初めての友達の誕生日で、ちょっとテンションがあがりすぎちゃった。

 ミノさんが喜びそうなプレゼントとかお料理をいっぱい用意してもらったんだけど、困った顔されてしまった。

「あたしは園子のお誕生日おめでとうが聞けたらそれで十分だよ」って言葉にはっとさせられた。

 なんか、嫌いだった大人と同じようなことを自分もしたみたいで、すごく、すっごく恥ずかしかった。

 わたしがごめんなさいするとミノさんは笑って許してくれた。それからは楽しい誕生日パーティーだった。

 ケーキを食べさせあいっこしたり、わっしーが手品してくれたり、一緒に歌ったり踊ったりすっごく楽しかった。

 来年は今回の反省を生かして、わたしが心からミノさんに送りたいと思うものを自分のお金で用意しよう。

 早く来年が来ないかな。今から待ち遠しい。

 

12月10日

 昨日、わっしーに訓練方法について相談された。

 どうやら小さくて素早く動くものを射る訓練をしたいらしい。

 さっそくわたしはお手伝いさんに相談して、あるものを手配してもらった。

 訓練場でそれを的にして訓練しようとしたんだけどできなくなった。

 ほんとは1匹ずつ出すはずだったんだけど、わっしーに渡した瞬間それを入れてた瓶が落ちて割れてしまい、全部逃げ出したのだ。

 おかげで訓練所はパニック。ミノさんも泣いて逃げるしで結局訓練どころではなくなった。

 わっしーもショックだったようで、固まったままだった。あとで確認したら気絶していたらしい。

 苦労したんだけどなぁ。冬で見つかりづらかったし。

 え、訓練の的って結局何だったのかって? ゴ〇ブリだけど。

 ※東郷(須美)さんのゴキ〇リ嫌いは公式設定です

 

12月24日

 今日はクリスマスだ。ミノさん家でミノさんの家族とわっしーと一緒にパーティーをした。

 友達の家のクリスマスパーティーに行ってもいいかとお父さんとお母さんに尋ねたら、驚いた顔をしたけどその後「いいよ」って言ってくれた。

 後で聞いたらどうやらわたしをパーティーに誘ってくれる友達がいることに驚いたらしい。失礼しちゃうんよー。

 わっしーは「外国のお祭りなんて」ってパーティーが始まる前は言ってたけど、いざパーティーが始まると結構熱中してた。

 ミノさんの誕生日会の時も思ったけど、わっしーって雰囲気に流されやすいよね。

 ミノさんの弟くんはかわいかった。わっしーをずっと見てて、ミノさんに「何顔赤くしてんだよー」ってからかわれてた。

 赤ちゃんにも触らせてもらった。わたしが差し出した指をちっちゃい5本の指がつかむのがすごかった。すごかったって表現できないくらいすごかった。

 わたしも小さいころあんなだったのかなー。今度聞いてみよう。

 ケーキとわっしーが作ってきたぼたもちを食べて、すごく楽しかった。また来年もできたらいいな。

 

12月31日、神暦298年1月1日

 大みそかと元旦はゆーうつ気分。

 お家に誰かがひっきりなしに来て、あいさつをする。もちろん乃木の娘としてわたしもそれにつきあわないといけない。

 でも人と会うのって、すごいつかれるんよー。特に会いたくない相手に作り笑顔をするの。

 向こうも会いたくないなら来なければいいのに。

 そんなことを考えていると、お父さんとお母さんに友達と初詣に行っておいでと言われて驚いた。

 初詣どころか正月の間はずっと四国中から集まってきた人に挨拶するのが乃木家の正月の過ごし方だと思っていた。

 わっしーとミノさんに電話すると、2人も同じように言われたらしい。わたしたちは神社で落ち合った。

 晴れ着姿のわっしーはすっごくきれいだった。ミノさんも着てくればよかったのに。

「あたしにはそんなの似合わないよ」って言ってたけど絶対そんなことない! うちに晴れ着がたくさんあったから今度いろいろ着せ替えしよう。うん、絶対。

 2礼2拍手1礼をして、おさい銭を入れてお参りをした。

 元旦ということもあって参拝者が多いかと思ったけど、別にそんなことはなかった。ミノさんによると1月1日は朝から始まるお笑い番組がお昼ぐらいまでやってるから、逆に人がいないんだそうだ。

 3人でおみくじを引いた。わたしが小吉。わっしーが大吉。ミノさんは大凶だった。

 わー、わたし大凶って初めてみたよ。なんて声を掛けたらいいかわからなかったけど、ミノさんは「大凶ならあとは良くなっていく一方だな!」って笑ってた。すごい考え方だ。

 でもさすがに縁起が悪いのでもう1回引き直すと今度は大吉だった。むー、わたしだけ仲間外れ。

 大凶のおみくじを枝に結んで、甘酒をいただこうとしたら姉妹なのかな? 茶髪の女の子2人が甘酒を飲んで泣いたり笑ったり大騒ぎをしているのを見て、やめておこうということになった。

 帰りにミノさんがお家に誘ってくれて、1度家で着替えてからお邪魔した。

 こたつで食べるみかん美味しかったんよー。赤ちゃんも大きくなっていて、この前会った頃から少ししか経っていないのにびっくりした。

 今まで生きていた中で1番楽しいお正月だった。この思い出があれば嫌なあいさつ回りもたえられる。

 よーし、がんばるぞー。おー。

 

2月14日

 今日はバレンタインデー。わっしーとミノさんとお互いにチョコを交換しあった。

 この時期は小説のネタに事欠かないから大好きだ。

 チョコの交換を提案したのはわたしだった。もし提案しなかったら横文字嫌いなわっしーはぜったいチョコなんてくれなそうだったし。

 前日まで文句を言ってたわっしーだったけど、ミノさんが自分が作ったチョコを食べてくれる様子にまんざらではない様子だった。

 おやおや、これは…。

 新しい小説のネタ…もとい友達同士の友情をもっと深めてもらうため、わたしは2人を密室に閉じ込めて観察することにした。

 でもすぐにバレてわっしーにすごい怒られた。録画してたカメラも没収された。ひどい!

 でもそのっち知ってるよ。2人の顔が赤いの、夕日のせいだけじゃないってこと。

 言わなかったけどね。言ったらミノさんにも怒られそうだったし。

 

4月8日

 今日はわっしーの誕生日。

 前回の反省を生かし、自分が選んだものをプレゼントに持って行ったよ。

 わっしーはすっごく喜んでくれた。そしてミノさんからのプレゼントはなんと下着だった。

 わっ、大胆!

 あとでそれはジョークで本物のプレゼントは別にあったってわかったんだけど、わっしーがすごい怒ってた。

 それはもう、訓練の時にお昼寝が見つかった時以上に。人間って沸点超えると逆に冷静になるんだっていう例を目にしたよ。

 ミノさんは正座させられて、こんこんとお説教された。プレゼントは別にあるってわかって許してもらったんだけど、問題はその後だった。

 なんとミノさんが用意したブラのサイズが小さかったのだ。

 ミノさんはおっぱいソムリエとしての自信を打ち砕かれたらしく、すごく落ち込んでた。わっしーも顔を真っ赤にして何も言わなかった。

 わたしは成長期ってすごいなーと思った。

 

4月9日

 新学期が始まり、新しいクラスになった。

 わっしーとミノさんと同じクラスだ。そこに大赦の思わくが関わっているんだろうけど、素直に嬉しい。

 これからずっとずっと友達といっしょなのは、本当にうれしかった。

 

4月20日

 大赦が予測していたバーテックスの襲撃の日。

 大型のバーテックスがやってきて、わたしたちはその撃退に成功した。

 でも、半年前に現れた星くずは1体もいなかった。おかしい。ご先祖様の記録ではすごい数の星くずと戦うことになるはずなのに。

 わっしーと相談した結果、半年前にセッコーとして現れた星屑の背後にいる存在が何か企んでるんじゃないかという話になった。

 ひょっとしたら、バーテックスの中でも内部分裂とかあるのかも。

 詳しいことは可能性も含めて『そのこのせんりゃくのーと』に書いてまとめておこう。

 ミノさんが大赦にこのことを知らせようといったけど、大赦の大人がわたしたちの意見なんて聞くのかな?

 せっかくの祝勝会だったのに、暗い雰囲気にしちゃった。

 

4月29日

 大赦から初勝利のご褒美で大赦の保有する施設で1泊2日の合宿をすることになった。

 海が近くにあって、わっしーとミノさんの水着が見れるぜ! と期待していたわたしだったけど、その期待は裏切られることになる。

 なんと施設に来て早々2人は勇者服に着替えて連携の訓練を始めたのである。

 どうやら前にわたしが言ったことが気になっているらしく、油断せず精進すると決めていたらしい。

 そんな…2人の水着姿を収めようと持ってきたこのカメラはどうすればいいの?

 しかたなく、ほぼヤケクソだったけどわたしも訓練に加わり3人の連携はさらに強化された。

 その結果は夜に襲撃してきた天秤座と山羊座との戦闘でいかんなく発揮された。

 

5月17日

 昨日私がお昼寝してた時に魚を釣った夢を見た話をしたら、ミノさんとわっしーと一緒に釣りに行くことになった。

 でも肝心の釣竿を忘れてしまい、川の中に入って素手で取ることになった。

 5月とはいえ川の水は冷たくてこごえそうだったよー。

 魚はなかなか捕まえられなかったけど、わっしーが捕まえてくれた。すごい!

 帰って3人でお料理したけどわたしのだけ見るからに炭だった。

 でもミノさんは涙を流しながら食べてくれた。

 「なんちゅうもんを…なんちゅうもんを食わせてくれたんや」って。

 話を聞いたら昔ミノさんのお母さんが作ってくれた焼き魚に似ていたらしい。

 思い出補正って、大事だよね。

 今度はちゃんと2人みたいにおいしいものを作れるようにわたしも勉強しよう。

 

5月23日

 最近小説がスランプ気味だったので、わっしーとミノさんに助けてもらうことにした。

 具体的にはかわいい服を着たり、小説の中のシチュエーションを再現してもらう。

 そう、第2回三ノ輪銀かわいい向上委員会開催だ!

 でもミノさんは1人着せ替え人形にされるのが不満だったようで、わっしーも一緒ならという条件でやってくれる事になった。

 だめだ…まだ笑うな…。ここまで計画がうまくいくと自分の才能が怖くなる。

 わっしーは「こんな格好、非国民よ」って言ってたけどまんざらでもなかったことは明らかだった。

 お姫様抱っことか壁ドンからのあごクイとか色々やってもらった。その様子は余すことなくカメラに収めさせてもらったよ。

 まさに眼福の一言に尽きる。枯れかけてたイメージがどんどんと湧き出してくるのを感じた。

 おかげですっごいはかどった。今度2人にはお礼しなくちゃね。

 

6月14日

 3人でプール!

 大赦のご褒美で運営前のレジャー施設を貸し切りにしてプールを楽しんだよ! 

 これに関しては大赦グッジョブと言いたい。2人の水着が拝めるんよー。

 でも2人は学校指定の水着だった。まぁ、わたしもそうだったんだけど。

 でもこれはこれではかどるんよー。小説のネタが次から次へと沸いてくる。ビュォオオオオオ!

 わっしーのお胸はまた成長していた。いったいどこまで大きくなるんだ。

 そのことでミノさんがおやじみたいなことを言って、わっしーに怒られていた。

 でも、結構まんざらでもないこと、そのっち知ってるよ。

 アッツアツですなぁ。まったく。ほんまはかどるわぁ。

 次の小説のテーマは君たちに決まりだ!

 帰りに寄ったうどん屋で、3人で大きくなったら何になりたいかという話になった。

 わっしーは西暦時代の学者さん。ミノさんはお嫁さんになりたいんだって。

 わっしーはなんとなくそんな気がしてたけど、ミノさんの夢は意外だった。正直ギャップでキュンとなったんよー。

 わたしが大きくなったら女の子同士でも結婚できるように法律を改正しよう。固く心に決めた。

 でもミノさんの心が第一だからね。相手が男の人でもわっしーが認めたらわたしも認めよう。

 わたしとしてはミノさんの相手はわっしーしか考えられないけど。

 その夜、髪の長い女の人に「若葉ちゃんの子孫ちゃん、がんばってください!」ってすっごい握手されて応援される夢を見た。

 あの人、ご先祖様と一緒に写真に写ってた巫女の女の人に似てたような…。

 

7月9日

 明日は待ちに待った遠足。

 この日のためにわっしーはすっごく分厚い旅のしおりを作ってくれた。

 わっしーってなにげにイベント事好きだよね。

 初めて会ったときはすっごいピリピリしていて、わたしがお昼寝しようとするとすっごい叱ってきたのに変われば変わるものだ。

 まぁ、いまでもお昼寝すると怒られるんだけどね。

 それもこれも、ミノさんのおかげかな。わたしだけだったら、わっしーの心をここまで開けなかったよ。

 やっぱりミノさんはすごいなぁ。人の心を開かせる天才だと思う。

 困った人を放っておけないし、トラブルに巻き込まれやすいし、本当生まれながらの主人公体質なんじゃないだろうか。

 クラスでも結構隠れファンも多いし、わっしーもうかうかしてたら誰かに取られちゃうかも。

 ま、そうならないためにわたしがいるんだけどね。

 明日も2人が仲良くなるように暗躍…もとい仕込みは万全なんよ。2人が仲良しだとわたしもうれしいからね。

 決して小説のネタのためではないんよー。本当だよ?

 明日はいろんなネタが回収できそうなんよ。ビュォオオオオオ!




ちなみに夏凛の言っている3人とは夏凛、芽吹、弥勒さんの3人です。

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