詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 あらすじ
 人型のバーテックス、神樹様の中の神霊を電撃引き抜き。
 丹羽君と人型のバーテックス、勇者の章へ続くフラグをバッキバキに折りまくる。
東郷「丹羽君は満開しても大丈夫なの? 散華とか」
丹羽「バーテックスですから。欠けても最悪俺を作った奴に直してもらえますし」
友奈「そっかー。切り札といい丹羽君はいろいろできるんだね」
(+皿+)「そういえば満開の時間が長すぎると神樹の毒で身体が溶けて維持できなくなるって伝えてなかったけど…いいか別に。無事だったし」



【ノーマルルート】百合の尊さを知る者よ【完結】

 双子座との戦いから2週間ほど経った日曜日。

 その日、丹羽明吾は東郷と共に三ノ輪銀の病室を訪れていた。

 扉をノックし、声をかける。

「三ノ輪先輩、丹羽です。東郷先輩とお見舞いに来ました」

「おう、丹羽と須美か。入っていいぞ」

「え、にわみん来たの? わーい!」

 その言葉にドアを開けた丹羽が目にしたのは、銀の白い背中だった。

 あれ? 今確かに入っていいって言ったよね?

「す、すみません三ノ輪先輩! 着替え中に」

「え? いいっていいって。あたしら女同士だろ」

 銀の笑顔と共に放った言葉に、ズーンと丹羽は落ち込む。

「いえ、男です。男なんです。無性でついてないけど、心は男なんですよ三ノ輪先輩」

「銀、からかうのはやめなさい。そのっちも」

「あはは、バレたかぁ」

 丹羽をからかうために今回の計画をしたであろう首謀者をにらみつけ、東郷が言う。だが園子はどこ吹く風といった様子で銀の着替えを手伝っている。

 あれから昏睡状態だった三ノ輪銀はすぐに意識を取り戻した。

 東郷も2年前の記憶を取り戻し、神樹が人型のバーテックスとの約束を守ったのだと丹羽は確信する。だが、予想外のことが起こった。

 それは三ノ輪銀の筋力不足。

 なにしろヒーリングウォーターの中に2年間いたのだ。四国に来てからも寝たきりで、ろくな運動をしていない。

 結果、目が覚めたはいいが箸も持てない状態が1週間程続いた。

 銀が目覚めた後、丹羽が胸に手を当て語り掛けてもスミは出てこない。何度呼びかけてもだ。

 恐らく銀の意識と融合したのだろう。そう伝えると東郷は涙を流し、銀は昏睡していた間に自分に起こった不思議な体験を語った。

 なんでも以前園子の精神体と出会った荒野のような場所で、自分そっくりの白い小さな子供にあったのだという。

 そいつは銀をつなぐ鎖を斧で断ち切ろうとしたり、東郷や勇者部の皆のことを銀に話したりといろいろしてくれたらしい。

 おかげであの世界にいてもくじけずにいられたと。もし来てくれるのがもう少し遅かったら、自分は自分でいられたかわからなかったと語ってくれた。

 その話を東郷は涙を流して聞いていた。姉妹のように仲の良かった存在の献身に、思うところがあったのだろう。

 その後銀の魂が肉体に戻るとき一緒に連れてこようとしたが、スミは首を振ったという。その時銀は初めてスミの身体がボロボロなのに気付いたそうだ。

 おそらくだが銀が受けるべきその世界での責め苦をスミが代わりに受けていたのだと推測する。だから銀は無事でいられた。

 丹羽が自分の推測を語ると、銀は「そっか…」ともういない自分そっくりの精霊に深く感謝しているようだ。

 それからだ。銀がリハビリに人一倍励むようになったのは。

 見舞いに来る東郷や園子が心配するほどの張り切りようで、オーバーワークなのではないかと思われたが丹羽はそれを見守った。

 そして必要ならばミトとシズカの精霊の力を使って彼女を癒し、手助けしたのだ。

 医師の話ではリハビリに半年はかかる見込みだったが、銀は驚異の回復力を見せ10日目には手すりを使ってではあるが歩けるようになった。

「で、今日のお土産はなんだ」

「お土産の前に、私がやるように言っていた宿題はできたのかしら?」

 わくわくとしている銀に東郷が言う。

 現在銀はリハビリと並行して2年間の間に行うはずだった勉強を東郷と園子に教えてもらっていた。

 勉強に関しては英語以外は成績優秀の東郷と本編で1年上の風の家庭教師もしていた園子がつきっきりでそばにいるから問題はないだろう。

 これならば思ったよりも早く讃州中学に編入できるかもしれない。

 三ノ輪銀は今東郷と園子と一緒の学校に通うため猛勉強している。このペースなら10月中には友奈や夏凜と同じクラスに編入できるだろう。

 その光景は丹羽が人型のバーテックスであった時に思い描いていた理想の光景だ。それを見るためならば丹羽は力を尽くそうと思う。

 丹羽が今日来たのは、銀の経過観察といつもの差し入れのためだ。

「須美は固いなー。ほら、自力で解いたぜ」

「えっ、すごいじゃない! 早速採点するわね」

「ぶっちゃけリハビリして寝るだけの生活だからなー。教科書でも娯楽になるってある意味すげーよ」

「もともとミノさんは頭いいんよー。人と接する時の感じとか、困った人を助けるための思いやりとか、頭の回転が速くないとできないしねー」

 感心する東郷に得意げに言う銀。園子はそれに対し自分なりの評価をしている。

 確かに園子の言う通りだ。勉強嫌いというだけで自頭は悪くないのだろう。

「うん。ちゃんとできてるわ。銀もやればできるじゃない」

「じゃあ、三ノ輪先輩。ご褒美にこれを。今日はスーパーで売っているちょっとお高いポテチとコーラです。ちゃんと病院の人には許可をもらいましたからどうぞ」

 丹羽の差し出した差し入れに銀は目を輝かせる。

「さっすが丹羽! わかってるなー。入院してるとこういうジャンクなものが無性に食べたくなるんだよ。ピザとか」

 味気ない食事をしているだろうから濃い味と刺激の強いものをと持ってきたのだが、彼女の好みにヒットしたらしい。

 早速封を開けようとする銀の手からポテチの袋が消える。不思議そうな銀が顔を上げると、ポテチは東郷の手元にあった。

「ご褒美は今日の分の勉強が終わってからよ。それにこれは身体に悪そうだから、没収」

 東郷の言葉に、「そんなー」と銀は涙目になる。その身体に悪そうなのがいいのに。

「おやつなら、今日は私が作って来たぼたもちがあるからそれで我慢して。それとも銀はぼたもちよりそっちのほうがいいの?」

「え、須美のぼたもち⁉ 食う食う! あたしそれ大好きだから!」

「わたしもー」

 にっこり笑顔で言う親友たちに東郷も悪い気はしないのか、東郷の口元が緩んでいる。

 あら^~。小学生組てぇてぇです。

「丹羽君。顔」

「あ、すみません。戻しますね」

「おぉ~。これが園子の言ってたやつか。初めて見た」

「でしょー。にわみんのあの顔かわいいよねー。すぐ戻っちゃうけど」

 園子の感想に「え?」と東郷、銀、丹羽が声を上げた。感性が独特でいらっしゃる。

 

 

 

 東郷が四国を守る壁を壊した行為に、大赦はただでさえ混乱していたのにさらに混乱し収拾がつかなくなったらしい。

 それを収めたのは他ならぬ彼らが信奉している神樹の神託だった。

 乃木園子、東郷美森が自分に対して行った行為を不問とし、許すこと。そして丹羽明吾を人類の敵としたのは誤りであり、これからは神の使いである巫女としての待遇を用意せよとのことだった。

 わけがわからずこれもまた人類の仇敵による精神攻撃ではないかと混乱するかと思われたが、意外なことにすんなりと受け入れられた。

 続いて受けた神託が大赦にとって、いや四国に生きる者たちにとって魅力的すぎる内容だったせいだ。

 丹羽明吾を巫女とすることで四国以外の地を再生する神の協力が得られること。さらにその神の恩寵によりその土地で採れた作物を四国へ分け与えてもらえることが告げられたのだ。

 これには大赦は大いに喜んだ。神樹以外に人類に味方してくれる神の存在の出現。さらに年々減っていく作物や食糧問題を解決してくれる上に四国以外の土地に人が住めるという可能性が示されたのである。

 あの時程宗教家の熱い手のひら返しを感じたことはなかっただろうと丹羽は思う。丹羽は乃木家や上里家ほどではないにしろ手厚くもてなされ、考えられないほどの好待遇を受けた。

 だが提示された内容をほぼすべて断り、丹羽は犬吠埼家の住むマンションの隣の部屋に住んで今まで通り讃州中学に通う道を選んだ。

 樹とそう約束したのもあるが、何より丹羽自身がそう望んだからだ。

 名前も丹羽明吾という名前から(みぎわ)のんというものに変えた。人類の仇敵だった人間と同じ名前というのに混乱する人間がいるだろうし、身体が完全に女になったのに男の名前のままなのは変だと思ったからだ。それにこれは大赦のための対外的な措置でもある。

 勇者部の面々のように親しい人間たちからは今まで通り丹羽と呼ばれているのであまり意味はないのだが。

 それと勇者部の皆は夏凜以外大赦にスマホを返還し、また大赦の人間を混乱させた。

 どれだけ大赦の最高責任者が言葉を尽くしてももう大赦や神樹のために戦うつもりはないらしい。大赦の人間は非常に残念がっていたが、これで確実に天の神のタタリを受けるフラグが消滅したので丹羽としては嬉しい限りだ。

 それに勇者はもう必要ない。なぜなら人型のバーテックスが四国のそばにいる星屑たちを食らう星屑の群れを配置したので、出現した瞬間から食われていくからだ。

 これで樹海化警報のアラームがスマホから鳴ることは永遠になくなった。大型の星座級バーテックスが出現しても四国周辺に配置されたゆゆゆいバーテックス達が倒すし、最悪人型自らが駆けつけるので問題ないだろう。

 天の神もこちらが攻勢に出ない限りは静観を決め込むはずだ。油断はできないが、人類が思い上がらず日々自然の恵みに感謝していれば西暦のようなことは起こらないと人型のバーテックスは思っている。

 まあ、神様は気まぐれだし絶対はない。それでも天の神はものぐさで、手を出さない限り何もしてこないと思うが。

 こうして四国の恒久的な平和は約束された。

 ただ予想外だったのはあの戦いの後東郷が星屑恐怖症になったことだ。しきりに「星屑こわい星屑頭こわい」と繰り返し、白いものを見るたび怯えていた。

 丹羽と園子が「あれは悪い人(?)じゃないんだよー」と言っても効果は薄く、友奈が常時ハグすることでようやくまともに会話できるほどのトラウマを彼女に植え付けてしまったらしい。

 それと風が散華で失った左目もちゃんと治った。銀の魂と東郷の記憶が治ったことで心配はしていなかったが、彼女の供物も返されたらしい。

 その後丹羽は園子と夏凜、防人隊と一緒に人型のバーテックスによってテラフォーミングされた広島を訪れた。

 空が赤いことを覗けばほぼ四国と変わらない自然に夏凜と防人たちは言葉を失い、園子は大いにはしゃいだ。「ここはいいところだぞー! みんな早く戻って来ーい!」と某ヒゲが特徴のガ〇ダムの主人公の台詞に似た言葉を叫んでいた。

 園子と防人隊が独自に調べていたデブリで発見した種や植物の植え替え作業や四国にいる魚や動物の移住作業も進んでいて、四国の外にバーテックス以外の生命体が増える日も近いだろう。

 園子や防人隊のアドバイスにより現在中国地方は朝、昼、晩、夜の概念ができていた。やはり赤一色の空というのは丹羽と人型のバーテックスは平気だったが人間には精神的にきついらしい。

 それとついにテラフォーミングの手が出雲にまで到着し、大量の神霊が解放された。次に目指すのは三重県の伊勢神宮があったあたりだと人型のバーテックスは言っている。

 こうして乃木園子と防人隊は人類にとって大きすぎる成果を持ち帰り大赦へと報告した。

 これにより乃木一族のより一層の繁栄は約束されたことになる。まあ、本人はそれほど地位に執着していなかったが、発言力は大きくなるに越したことはないだろう。

 防人の地位も向上し、弥勒夕海子の悲願である弥勒家再興もある程度果たされたと言ってもいいだろう。あとは将来的に園子の元で働けばもっと繁栄するかもしれない。

 夏凛は勇者部の皆と違い、丹羽や人型のバーテックスと四国の人々をつなぐ園子の手伝いをする道を選んだらしい。

 神樹と大赦には思うところがあるのか、もう勇者として働くつもりはないらしいが壁の外に行くために勇者システムは重宝している。

 防人隊の隊長である芽吹も「三好夏凛なのは残念だけど、戦力が増えるのは正直助かる」と憎まれ口を言っていたが、実際は飛び上がらんばかりに喜んでいたらしいとメル友である夕海子から丹羽は聞いていた。にぼメブ、メブにぼてぇてぇです。

 新天地で採れた作物の輸送も人型のバーテックスにより水球に包んで無事四国へと運ばれた。

 四国の外で採れた穀物や野菜を食べても問題ないのかと疑っていた大赦職員もいたが、園子が食べても何の異常もなかったことで心配は杞憂だったという結論に至る。

 むしろ四国でできた物よりおいしいらしく、風にもその小麦で作ったうどんをざるで出したところ薬味なしで15杯もお替りしたのには丹羽も驚いた。

 こうして四国の食糧問題の解決もテラフォーミングも順調に進み、彼女たちを取り巻く平穏な日常は守られている。

 

 

 

 病室にカリカリとシャーペンがノートの上に走る音が響く。

 銀が時々難しい顔をしてペンを止めると東郷がアドバイスし、その言葉になるほどとうなずきまたペンを走らせる。

 その光景を園子と丹羽は優しい顔で見守っていた。

「はぁ…ぎんみもてぇてぇです」

「ありがとう、にわみん」

 いつもの不審者モードになっている丹羽に園子が声をかける。

「なんです急に」

「ミノさんのこともあるけど、わっしーを止めてくれて。壁を直してくれて。多分、わたしじゃ壁を壊したわっしーをかばいきれなかったから」

 なんだそんなことかと丹羽は思う。

 あれはトラウマまみれの勇者の章へ続かせないための必須条件だったのでほぼ自分のためだ。それに銀の魂を戻したのは創造主である人型のバーテックスのおかげで自分は何もしていない。

「以前にも言いましたけど、あれは俺のためなんですよ。東郷先輩を助けたかったし、勇者部の皆が悲しむ顔を見たくなかった。だから」

「それでもありがとう。わたしは何度だって言うよ。あなたはわたしの恩人。親友を助けてくれた、大切な人だって」

 いつものぽわぽわモードとは違う真剣な顔で言われ、丹羽は戸惑う。

 園子に会うたびにこう言われるのだ。最初の2,3回は真剣に聞いていたが、ここまでしつこいと少し辟易する。

 それほど彼女の感謝が強いということなのだろうが。

「ん? 何の話だ?」

 そんな雰囲気を察したのか、銀が尋ねてくる。それに園子は笑顔で答えた。

「にわみんが将来うちにお嫁に来てくれないかなーって話をしてたんよー。ねぇねぇどう?」

 いや、そんな話してませんでしたよね? と丹羽は言いかけ口をつぐんだ。

「そのっち? 冗談でもそういうことは言わない方がいいわよ」

 東郷が黒いオーラを出していた。それに銀も若干引いている。

「だからー、わっしーもお嫁においでよ。ミノさんも。3人でにわみんをお婿さんにしてずっと一緒に暮らそうよー」

 そう。変わったことといえば園子のこの言動もそうだった。

 丹羽がバーテックスであると知っても園子は受け入れてくれた。それはいい。

 だが、顔を合わせるごとに先ほどの感謝の言葉と共に求婚してくるのだ。

 今のように冗談めかして。時には真剣に。丹羽としてはどこまで本気なのかわからず困惑するしかない。

「おいおい、園子。女同士は結婚できないんだって。前にも言っただろ?」

「そうよそのっち。それができてたら私も友奈ちゃんと」

「須美はそればっかだなー。丹羽、ちょっとこっち来てくれ」

 銀の言葉になんだろうと丹羽は近づく。すると銀の瞳がキランと光る。

「ビバーク!」

「うひっ⁉」

 突如胸部をわしづかみにされ、変な声が出てしまった。

 本家ビバークは胸の谷間に頭をうずめる行為だが、今の銀の状態ではこれが限界らしい。それでも驚いたことに変わりはないが。

「ちょっと、三ノ輪先輩。いきなり何するんですか。びっくりした」

「丹羽よぉ…お前自分が男って言ってるけど、このおっぱいで男は無理があるだろ」

 言葉と共に銀は胸をつかんだ指をもみもみする。完全に言動がスケベな親父だ。

「それ、言わないでくださいよ。自分でももぎってしまいたいんですから」

 残酷な現実を突きつけられ、丹羽は落ち込む。

 同じクラスの樹と新天地への派遣のために一緒にいることが多い夏凜から着替えのたびに親の仇のように見られるDカップの胸。

 精神が男のままである丹羽にとってそれは身体が女であることを突き付ける証なので、正直言及してほしくない。

 それもこれも女性型の素体しか用意しなかった創造主の人型のバーテックスのせいだ。新天地で土地の再生作業をしているもう1人の自分を恨めしく思う。

「しかも、この触り心地…丹羽、お前またノーブラで来たな」

 その言葉に園子と東郷が無言で立ち上がった。表情から笑顔が消えている。

 なにこの2人怖い。

「にわみんさぁ…。この前わたし、プレゼントしたよね。ブラとショーツのセット。使ってくれてないの?」

「いや、さすがにあれを着ると完全に男としてのプライドが…。それに俺、バーテックスだから体系崩れないし」

「駄目よ丹羽君。成長期なんだから。というか銀、いつまで揉んでるの? そんなうらやま…もといけしからんこと。私だってしたことないのに」

「えー、いいじゃんかー。丹羽もやめてくれって言わないし」

 と言いつつ銀は丹羽の胸を揉みしだいている。

 会う度に揉まれているので最初の不意打ち以外は慣れてしまった。ただどんどんテクニックが上がっているのか、時々自分の意思に反して声を上げてしまうこともあるが。

 あの時の東郷と園子の悪鬼のような顔は丹羽と銀のトラウマだ。なぜか被害者である丹羽が正座させられ、2時間も2人に説教を受けた。

 それ以来銀もおとなしくしていたが、最近になってまた揉みたくなったらしい。

 丹羽としては精神が完全な男なので、元男の胸を揉んで楽しいのか? と思うが楽しいらしい。ちなみに東郷にも内緒だが園子も揉んだことがある。

「っと、これ以上揉むとさすがに怒られそうだからやめとくか」

「そうしてください。というか、揉むなら東郷先輩の方をお願いします」

「お前、あたしに死ねっていうのか?」

 ようやく手を収めた銀に丹羽が提案すると、真剣な顔で質問された。

 ゆゆゆい時空では喜んで触らせてくれてるから大丈夫だと思うが銀の表情から察するに命がけの行為らしい。

 丹羽としては推しであるぎんみもポイントなのでぜひやってほしいところなのだが。

「だったら、ごにょごにょごにょ」

「ええ⁉ そりゃ、聞いてたから興味はあるけど…でもなぁ」

 耳打ちする丹羽の言葉に銀は難色を示している。それに対し親指を立てて答えた。

 大丈夫、きっといける!

「えっと、須美さん。お願いがあるんですが…」

「なあに銀? ぼたもちは今から出すわよ」

「いや、そうじゃなくて。勉強を頑張ったご褒美が欲しいなぁと」

 その言葉に東郷は首をかしげる。いまそのご褒美のぼたもちを出そうとしているところなのに。

「その、スミっていう精霊にやっていた…おっぱい枕をぜひ堪能してみたいんだが」

「なっ⁉」

 銀の言葉に東郷は顔を真っ赤にする。

「だって、あの世界であいつあんなに自慢してたから! スミのおっぱいはすごいって! 柔らかくてふにふにで、とにかくすごいって!」

「スミちゃんが?」

 ここにはもういない精霊の名を出され、東郷は考え込んでいる様子だ。

 逆に銀は冷や汗が止まらない。丹羽は大丈夫だと言ったが、言わなきゃよかった。

 そりゃ、ちょっとは興味があったけど、命の危険を冒してまで頼むようなことでは…。

「いいわよ」

「だ、だよなー。さすがに精霊と同じようなことは……え?」

 東郷の言葉に銀は目を点にする。見れば東郷はベッドの上に座り銀の頭を下ろす位置を調整していた。

「恥ずかしいから…ちょっとだけね」

「お、おう」

 言葉と共に銀は東郷の胸元に頭を下ろす。

 なにこれすごい。

 言葉が出てこない。とにかくすごい。すごいということしかわからないくらいすごい。

 柔らかいのと東郷の匂いに全身が包まれるような感覚。すっごく安心できる。

 これはたしかにあの精霊が自慢するだけのことはあるわ。こんなの知ったら普通の枕じゃ眠れないかもしれない。

「すげぇよ…おっぱいってこんなにすごかったんだな」

「なによそれ。はい、おしまい」

「もうちょっと! もうちょっとだけ! あと少しで宇宙の真理が見れそうな気がする!」

 銀の言葉に「なによそれ」と言いつつ東郷はまんざらでもない表情だ。目を閉じた銀の前髪を優しく手ですいている。

「あら^~ぎんみもはいいぞ。もっと流行れ」

「だねぇ。ビュォオオオ!」

 それを見て尊いモードになる園子と丹羽。

 そんな感じで三ノ輪銀の入院生活は過ぎていった。

 

 

 

 10月に入り、讃州中学勇者部に新たな部員が増える。

 それは人型のバーテックスが夢見た光景。

 丹羽明吾が守りたかった、物語のハッピーエンドにふさわしい光景だった。

「えっと、2年の三ノ輪銀です。あたしは須美と園子と友奈と夏凜と同じクラスで、元勇者。2年間ずっと眠ってて最近起きました。小学校中退です。あと…なんかあったかな? まあ、いいや。よろしくお願いします!」

 銀のあいさつに勇者部の面々は拍手を送る。

「ようこそ勇者部へ。といっても元勇者たちのいる勇者部だけど」

 部長の風の言葉を皮切りに、部員それぞれが言葉を発していく。

「よろしく銀ちゃん。話には聞いてたけど、本当にスミちゃんそっくりだね!」

「勇者部へようこそ、銀。この娘が結城友奈ちゃん。私の大切な人よ」

「よろしく銀。あたしの使ってる勇者システムの元の持ち主って考えると感慨深いわ」

「ミノさんようこそー。えへへ、またいっしょだー。うれしいなぁ」

「銀さんよろしくお願いします。スミちゃんみたいにいきなり胸に突撃してきたりしませんよね…?」

「よろしくお願いします。三ノ輪先輩」

 上から友奈、東郷、夏凜、園子、樹、丹羽の発言だ。

 友好的な勇者部の面々の言葉に戸惑いながらもうれしそうな銀の姿を見て、改めて丹羽は思う。

 見ているか、俺。お前が守りたかった世界はここにあるぞ。

「さーて、じゃあさっそく歓迎会と行きましょうか! かめ屋いくわよかめ屋! そのあとはあたしん家!」

「マンションの1部屋に8人は狭くない? 東郷の家か園子が住んでる家にしましょうよ」

 風の号令に夏凜が意見を述べる。今ではすっかり園子のことを様付けせず呼べるようになった。

「それもそうね。いい、東郷、乃木?」

「じゃあ私の家にしましょう。銀にも私の友奈ちゃん映像館に来てもらって、是非友奈ちゃん大好きクラブの会員に」

「わっしー。ゆーゆのこと好きなのはわかるけど、人に押し付けるのは違うと思う」

「あはは。東郷さん、私の写真や映像なんて見ても楽しくないよー」

 東郷の言葉にいさめる園子。友奈は慣れたものなのかスルーしている。

「また先輩が増えたね、丹羽くん」

「そうだね犬吠埼さん。あ、かめ屋に行く前に三ノ輪先輩。いいですか?」

 樹の言葉に同意した丹羽が、風を先頭に部室から出ようとしている一団に向け声をかける。

「ん? なんだ丹羽?」

「これ。この前買い物したらもらったんです。よかったら」

 差し出された犬のマスコットを見て、東郷は息をのんだ。

「おっ、かわいいじゃないか。もらってもいいのかこれ?」

「ええ。入部祝いということでもらってください。俺にはこんなかわいいの似合わないから」

 笑顔で受け取った銀は「お前だってかわいいの似合いそうだぜ」と笑っている。

「あの犬の置物…ひょっとして」

「偶然じゃないよ、わっしー」

 呆然としている東郷の横から、ひょっこり園子が出てくる。

「ついこの間、わたしの持ってるやつを見せてくれって訪ねて来たんだ。真剣に見てたよ。で、気になって後をつけたらいろんなお店をはしごして、似たような置物を買って見比べてた」

 その言葉に東郷は納得する。

 そうか、丹羽らしい。なぜ彼があの祭りでとった園子とおそろいの犬の置物のことを知っているのかは知らないが、気を利かせてくれたのだろう。

 そしてその苦労を一言も口にしないところに、彼らしさを感じる。

「にわみん、いい子だよね。バーテックスとか元男の子だとか忘れちゃいそう」

「そうね。本人は最初から無性だって言ってるけど関係ないわ。丹羽君は丹羽君だもの」

 園子の言葉に東郷は同意する。

 今度、鷲尾の家に行ってみよう。自分の荷物は東郷の家に全部送ってくれたと言っていたが、その中にあの置物はなかった。必ずあの家にあるはずだ。

 園子と一緒にあの犬の置物を出したら、銀はどんな顔をするだろう。想像して東郷は今からわくわくする。

「やっぱり好きだなぁわたし。にわみんのこと」

「そうね。私も好きよ。丹羽君のこと」

「うん。わっしーは和式と洋式のどっちがいい? わたしはドレスが着たいから洋式かなぁ」

 ん? 何の話?

「そのっち? いったい何の話を」

「え、にわみんとの結婚式で何を着るのかって話だけど」

 なにを当然のことをというような園子の態度に、東郷は絶句する。

 え、結婚式? 誰が? 誰と?

「もしかしてわっしー。前に行った私の夢、忘れちゃった?」

「そのっちが言ってた昔の夢? 作家さんになりたいってやつ?」

「それじゃなくて、もう1つの方。忘れちゃった?」

 園子の言葉に東郷は神樹から取り戻した記憶を検索し、思い至る。

「まさか…本気なの?」

「にわみんにはまだ内緒だよ。びっくりさせたいんだぁ」

「で、でも相手はバーテックスだし、同じ女の子で」

「違うよわっしー。にわみんは無性。つまりどっちにもなれるってことだよー」

 にっこりと笑う園子に、東郷は再び絶句した。

「それに、いざというときはあの人型さんを頼るし。バーテックスと人間の婚姻なんて、歴史的な出来事になると思わない?」

「そのっち、あなた…」

 乃木園子の語った夢はもう1つある。それは本編ではない、この世界でのみ語られた目標。

 女性同士が婚姻できるように政治家になって法律を改正する。

 あの時は冗談かと思ったが、まさか本気だとは。

「わたし、にわみんのことを女性だから、バーテックスだからって理由だけで諦められない。それはわっしーだって同じでしょ?」

 その言葉に東郷は何も言えない。

 自分は彼の理解者として1番近くにいられればいいと思っていた。それなのにこの親友は自分の感情のために自分たちを取り巻く世界まで変えてしまおうとしているのだ。

「いざというときはテラフォーミングされてる四国の外に駆け落ちって方法もあるし。でもそれじゃにわみんは喜ばないだろうから、みんながなるべく幸せになる世界を作るため、少しがんばるんよー」

 事実10年後。乃木園子は四国初の最年少女性議員として国会に進出し、同性婚の法案化を可決させる。

 それは歴史の教科書に乗る偉業中の偉業だった。

 その傍らには百合イチャを愛し、常に彼女を支える存在があったという。

「そろそろ行こうか、わっしー。みんなとはぐれちゃう」

 気が付けば部室には東郷と園子しかいなかった。2人は急いで部室のドアに鍵をかけ、昇降口へと浮かう。

 そこには当然のように自分たちを待っている丹羽がいた。

「鍵閉めご苦労様です東郷先輩、そのっち先輩。みんなもうかめ屋に行っちゃいましたよ」

「にわみんは待ってくれてたんだー。ありがとー」

「一緒に行けばよかったのに」

「いえ、何かあったら心配なので一応」

 本当にこの子は自分たちを気遣ってくれるんだなぁ。東郷と園子は嬉しくなる。

「えへへ。にわみーん。大好きだよ」

 園子がぎゅっと丹羽の腕に抱き着き言う。それを見て丹羽は優しい顔で園子に返事する。

「俺も好きですよ。そのっち先輩。東郷先輩も」

 それが「愛している」ではなく、「好き」という意味だと園子は承知していた。

 だから、いつか変えて見せる。自分と同じような焦がれるような、独り占めしたいと思えるような気持ちに。

「そのっち、くっついてないで早くいきましょ。丹羽君も」

 園子がくっついた腕とは逆の腕を引っ張り東郷が言う。どうやらライバルは多いようだ。

 口には出さないだけで、勇者部の皆もきっと。

 だから、園子は口にする。彼女たちが怖くて言えないこと。恥ずかしくて言えないことを。

 自分が彼の心の1番近くにあるように。

「にわみん。将来結婚しよ。わたし、にわみんのこと大好きだから」

 たとえ今は冗談として受け止められてもいい。

 だが、自分は本気だ。彼が本気になってくれるまで、この本気の銃弾を込め、撃ち続けるつもりだ。

 これほどまでに乃木園子という人間を本気にさせたのはおそらく彼が初めてだろう。

 だから今度は園子が彼を――丹羽明吾を本気にさせて見せる。

 これはある意味勇者としてのお役目の時よりも難しい戦いかもしれない。

 だって、彼は誰にでも優しい。自分も彼に優しくされているうちの1人でしかないのだから。

 だけどその愛情を独り占めして見せる。絶対に!

 園子は決意すると、東郷に負けじと丹羽を自分の元に寄せ、くっつく。

 そして本気の言葉の弾丸を込め、撃った。

「にわみん、これからはわたしがあなたに恩返しする番。ずっとずっと、一生かかっても返していくからね」

 答えはわかっている。そんなこと気にしなくていいですよと彼は笑って園子の銃弾を躱すだろう。

 だがそれでいいのだ。いつか彼の元へ届くまで、園子は本気の言葉を告げ続けるだけ。

 決してあきらめない。乃木園子の新しい戦いは始まったばかりだ。




 トロフィー【勇者を守る勇者】を獲得しました。
 トロフィー【神樹と心を通わせたモノ】を獲得しました。
 トロフィー【百合の伝道者】を獲得しました。(百合小説投稿コンプリート特典)
 トロフィー【勇者の章阻止】を獲得しました。

 実績:〈もう1人の自分〉を獲得しました。
 実績:〈西暦の四国以外の勇者精霊全員集合〉を獲得しました。
 実績:〈鏑矢組精霊全員集合〉を獲得しました。
 実績:〈勇者部所属〉を獲得しました。
 実績:〈TS経験者〉を獲得しました。
 実績:〈百合の間に挟まる百合厨〉を獲得しました。
 実績:〈星屑を億匹食った星屑〉を獲得しました。
 実績:〈奉火祭阻止〉を獲得しました。

 minowa gin
   ↓
 niwa mingo
   ↓
 migiwa non
 大体こういう経緯の改名。
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