詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 あらすじ
 丹羽君、自分が百合の間に挟まる男(無性)だと自覚する。
丹羽「やべぇよ、やべぇよ。こうなったら女の子になるしか」
汀のん(ノーマルエンド丹羽)「やめとけやめとけ」
丹羽「お前は…白い西住ま〇さん?」
汀のん「俺は別の可能性のお前だ。女体化したら俺みたいになるぞ」
丹羽「えぇ…(困惑)」
汀のん「ぶっちゃけ、犬吠埼さんと三好先輩からの殺意めいた視線がきつい」
丹羽「なぁにそれぇ」
汀のん「あと勇者部の皆に胸をおもちゃにされてよく揉まれる。あと休日高い確率でそのっち先輩に着せ替え人形にされる」
丹羽「それは今の俺とそんなに変わらないような…よく女装させられるし」
汀のん「お前、女性ものの下着をつけさせられるのとそうじゃないのはすっごい違いがあるんだぞ。わかるだろ?」



【グッドエンドルート】三ノ輪銀奪還!

 乃木園子が大赦に反旗を翻し、他の勇者の犬吠埼風、犬吠埼樹が人類の仇敵に洗脳されたとされている東郷美森と共にゴールドタワーに立てこもったという話は大赦で瞬く間に広がった。

 唯一の希望として結城友奈だけは大赦側が保護することができたが、その現場を目撃していた大赦仮面によると結城友奈は乃木園子に手も足も出なかったらしい。

 四国を滅ぼしかねない人類の仇敵に勇者が4人とらわれた。

 さらに絶望的なことにゴールドタワーは壁の外の調査をする防人たちの本拠地である。勇者ほどではないにしろ、バーテックスと戦う戦力を持っている人類の希望だ。

 その両方を人類の仇敵に奪われたことで大赦は大混乱となっていた。

 まさか人類を守護する勇者たちが神樹様の敵である人類の仇敵の手に落ちるとは。

 勇者4人と防人たち、さらに連絡が取れない三好夏凛も恐らく人類の仇敵に洗脳されたと考えるべきだろう。

 こちら側に残されたのは結城友奈という勇者1人。

 四国中の少女を調べた結果勇者適性の最高値を叩きだした存在ではあるが、彼女1人で四国とそこに住む人類を守れるのか?

 大赦が出した答えは、否であった。

 だが新しい勇者を選出しようにも勇者適性の高い候補生であった防人たちもおそらく人類の仇敵に洗脳されている。

 新たに勇者の適性を持つ人間を調べて選出するには時間がない。まさに八方ふさがりだ。

 いや、1人だけそれを満たす人間がいた。

 今は昏睡状態だが、勇者適性とバーテックスとの交戦経験がある元勇者が。

 三ノ輪銀。2年前の戦いで死んだとされていた少女だ。

 まさか乃木園子が防人隊たちを使って壁の外にいた彼女を連れて帰るだなんて誰が予想できただろう。

 おかげで大赦は関係各所への根回しや三ノ輪家への賠償など大小様々な事柄に奔走することになった。それは2か月経った今も終わっていない。

 なにしろ死んだと大赦が正式発表した人間が生きていたのである。下手なことをすれば大赦の存在を揺るがしかねない信用問題に発展してしまう可能性があったのだ。

 だからこそ大赦の上層部は三ノ輪銀の対処を慎重に協議していた。

 目が覚めたらまたお役目につかせるのか、それとも元の少女に戻すのか。

 だがこうなっては彼女にすがるしかない。なんとか次のバーテックスの襲来までに、彼女の意識を覚醒させ戦力としなければ。

「病院の医師たちからの報告は?」

 大赦の奥、会議室の席に座る最高責任者の言葉に、大赦仮面は首を振る。

「未だ意識不明とのことです。肉体的には問題ないのですが、いつ意識を取り戻すかは不明と」

「巫女たちによる祈祷は」

「はっ、大赦に所属する巫女全てに三ノ輪銀様の意識が戻るように祈祷させております。しかし…」

「神頼みなど意味がないと? 我々は神樹様に仕える大赦の職員ですよ。言葉に気をつけなさい」

 巫女たちの神託を統括する大赦仮面の言葉を、大赦の最高責任者が叱責する。

 困った時の神頼み。彼らにとって神樹様がまさにそれだが、これが原因で自分たちがさらに窮地に陥るとはこの時誰も予想していなかった。

「しかし人類の仇敵の次の手は一体…勇者を懐柔し、バーテックスとの戦いに出させないつもりか? それともバーテックスと一緒に神樹様を滅ぼそうと」

「まず我々の希望を奪おうというのではないでしょうか? 乃木様と東郷様を最初に洗脳したという手口からもその狡猾さがうかがえます」

「然り。さらに大赦の職員の中にも丹羽明吾が勇者だという者たちがいました。その頭には寄生虫が」

「いずれもある日突然人が変わったように善良になった者たちばかりです。いったい奴の狙いは何なのか」

 ちなみに園子が友奈を大赦仮面に渡す際に言った言葉はこの会議にいる人間の耳には届いていない。

 報告、連絡、相談ができない組織構造は相変わらずだった。丹羽のことを憶えている人間を洗脳されたと思い込んで勇者に吹き込んだりと本当にろくなことをしない。

 そのせいで現在友奈は自己矛盾に苦しみ心を病みかけているのだが。

「ほ、報告します! 三ノ輪銀様が病室より何者かに拉致されました!」

「何⁉」

 そしてまた最重要人物とされる勇者を奪われるというちょっと考えれば防げただろうという事態を引き起こし、本編並みに大赦は後手後手でダメダメだった。

 

 

 

「にわみん、正座」

「はい」

 病室から突如姿を消し、メブにぼ、にぼメブの百合イチャを観察していた丹羽を4人の勇者が取り囲んでいた。

 園子以外の顔は完全に表情が消えていて、人間、限界を超えて怒るとこういう風になるんだという見本のようだ。無言なのがさらに怖い。

「なんでみんなが怒ってるかわかる?」

「大体は」

「ん? 大体?」

 にっこりと笑う風の言葉に恐怖を感じる。完全にお冠のようだ。

「俺が突然気絶して皆に心配かけたくせに百合イチャ見たさに勝手にいなくなったからです。すみませんでしたー!」

 それはそれは見事な土下座だったと、園子は語る。

 3人の視線を後頭部に受けながら、丹羽はこれで俺のことを見限ってくれたらなぁ…と希望的観測を抱く。

「まぁ、アンタがそういうやつなのは知ってるし」

「そうだね。まあ、丹羽くんらしいって言えば丹羽くんらしいし」

「私も少し取り乱しすぎました。丹羽君が元気ならそれで」

 どうやらそんなことはないらしい。この娘たちいい子すぎるだろう!

 普通なら絶縁状態、ハブられるのも当たり前の行動もこの娘たちにとってはまだ許せる範囲らしい。懐が深すぎて涙が出る。

「ねぇねぇ、にわみん。ひょっとしてわっしーたちにわざと嫌われようとあんなことした?」

 園子のささやきに、思わずびくりと反応してしまう。どうやらお見通しらしい。

「だめだよそんなことしたら。そんなことをしてもわたしやみんなは君のこと嫌いになんてなってあげないんだから」

「でもそのっち先輩。このままじゃ俺、百合の間に挟まる男に…最低の存在になってしまう!」

 丹羽の言葉に園子も同じ趣味を愛する者として思うところがあったのか、優しく肩を叩く。

「にわみん。逆に考えるんだよ…挟まっちゃってもいいさって。至近距離で百合イチャを見られる喜びを楽しもうよ」

「でも、百合に男を挟むのは禁忌! そうならないように俺は一定の距離を保って来たのに」

「え? あれで? 嘘でしょ?」

「ねえ、さっきから乃木と丹羽は何を話してるの」

「さあ? 多分丹羽くんの趣味のことじゃないの」

 突如土下座した丹羽にノーリアクションの犬吠埼姉妹は丹羽と園子の会話の方が気になるらしい。

「丹羽君、そのっちと仲良くして…これは折檻が必要かしら」

 一方で東郷は仲良しの2人から仲間外れにされたようでスネていた。久しぶりにかわいがり(物理)が発動しそうだ。

「にわみんはまじめだなぁ。常識は破るためにあるのに。そんなの、にわみんが女の子になれば解決することじゃない」

 いや、そうは言いますがそのっち先輩。俺は男として百合イチャが好きなんですよ。

 そう言おうとした丹羽が顔を上げると、園子の目がらんらんと輝いていた。

 あ、コレはあれかな? 夏祭りのときにやった例の…。

「と、いうわけでにわみんを女の子にするよー! みんな手伝ってー!」

「「「待って、どうしてそうなった」」」

 園子の突然の提案に、3人は思わずツッコむ。

「実はふーみん先輩が起きたら話そうと思ってたんだけど、そろそろ次の一手を打とうと思ってね」

 にっこりと笑う園子に、3人は聞く体勢になる。

「ミノさんを大赦の職員がいる病院から奪還する。そのためににわみんとにぼっしー、わたしの3人が変装して潜入。皆には別のことを頼みたいんだぁー」

 

 

 

「で、この格好なのね丹羽は」

 園子の手により女装した丹羽を見て、髪型を変えて変装した夏凛は言う。

 今の夏凛は長いツインテールを纏めて三つ編みに瓶底眼鏡をしている文学少女だ。元の写真を見ても同一人物だとは気づかないだろう。

「そうなんよー。かわいくできたでしょー」

 自慢げに言う園子は逆に長い髪を帽子に隠して男装している。顔がいいのでキリっとした表情をすればまさしく美少年。ここに来るまでにも何人もの女性が園子を見て振り返っていた。

 さすが風雲児DNA。世代を超えてもイケメン若葉ちゃんの血は流れているんだなぁと改めて丹羽は感じた。

 で、その丹羽はというと夏祭りの時とは違いタレ目気味の柔らかい雰囲気の少女になっている。

 セミロングの髪のウィッグをポニーテールにして、髪の色が違う友奈のようだ。友奈が元気で活発な女の子なら今の丹羽は引っ込み思案なお嬢さんといった感じだろうか。

 雰囲気以外は本当に友奈とそっくりだったので仕上がったこの姿を見た時、東郷が「友奈ちゃんが2人⁉」と非常に興奮していた。

「今度3人でお買い物に行きましょう! ね? ね?」と必死に言われて思わず同意してしまったが大丈夫だろうか。

 園子が告げた三ノ輪銀奪還作戦。

 大赦に銀を人質に取られる前に自分たちで保護してしまおうという作戦は、第一関門である病院に思いのほかすんなり入ることができて3人は拍子抜けてしまった。

 てっきり大赦の人間ががっしり固めているのかと思いきやそんな人間は1人もいなかった。病院も通常診療をしているようだ。

 園子が大赦に反抗したことがまだ伝わっていないのだろうか? 警戒しながらも園子と夏凜は病室へ移動するためのエレベーターに乗る。

 一方で丹羽は大赦は相変わらずのガバ警備だなぁと思っていた。原作でも風先輩の大赦襲撃も他の勇者や園子頼みだったし、この前の有能な大赦が異常だったのだろう。

 ちなみに奪還部隊がなぜこの3人かというと、機動力と病院の構造をよく知っているということから選ばれた。

 園子は同じ階の病室に入院していたので言わずもがな。丹羽はほぼ毎日銀の病室に見舞いに行っていたので。夏凜は機動力からメンバーに選出されたのだ。

 病院のことをよく知っているということならばほぼ毎日園子と一緒に見舞いに来ていた東郷も当てはまるのだが、彼女には別のことをやってもらっている。もちろん銀に関係のあることだ。

「さすがに病室の前には、警備の人がいるわね」

 エレベーターから銀のいる病室についた3人は、銀の病室の前にいる大赦仮面の警備員2人をどうすべきか目配せする。

 答えは決まっていた。というかここに来る前に園子からレクチャーを受けていたのだ。

 丹羽は大赦仮面の前に行くと、こほっこほと咳をする。それに気づいた大赦仮面が「どうしました?」と持ち場を離れて近づいてくる。

 おいおい、平和ボケしすぎだろうと思いながらも丹羽は「胸が苦しくて…薬を飲むのにお水を」と夏凜からもらったサプリを手にしながら言う。

 それに気をとられて丹羽の背中をさする大赦仮面。親切にも持ち場を離れて水を買いに行こうとしている大赦仮面の1人を変身した夏凜が延髄チョップで昏倒させる。

 残った大赦仮面は帰ってこない相棒に不審に思い追おうとしたところを丹羽が延髄チョップで昏倒させた。

 なんだかうまくいきすぎて逆に申し訳ない。この作戦、ここまでうまくいったのは警備員の大赦仮面が善良だったからだ。

 せめて意識を取り戻すまでの間に風邪をひかないように素っ裸にしようとするのを止めておいた。通信機とスマホを奪い手足を拘束するだけにする。

 病室に入るとそこには相変わらず昏睡状態の三ノ輪銀がベッドの上で眠っていた。

「これ、そのまま運んで大丈夫なの?」

「大丈夫。先生の話だと身体は回復してるから、後は意識が戻るのを待ってる状態だって。ゴールドタワーにもここほどじゃないけど機材はそろってるし、1か月は何の問題もなく治療を受けられるよ」

 夏凛の疑問に園子が答える。

 1か月と聞いて丹羽は安心した。結城友奈は勇者である本編1期が終わるのは10月までだ。少なくともそれまでの間にはすべてケリがつくだろう。

 そうすればたとえ銀が目を覚まさなくてもバーテックスをすべて倒した後なので問題はない。2期までは平和な時間が流れているはずである。

「じゃあ、さっさとずらかりましょう。そのっち先輩が運びますか?」

「うん。思ったより警備が薄くて助かったんよー。これならわたし1人でも大丈夫だったかも。ありがとね、にわみん、にぼっしー」

「そうね。じゃあ、あたしが先行して園子が中央。丹羽が殿で。行くわよ!」

 夏凛の号令の下園子が勇者服に変身し、銀をお姫様抱っこで抱えて病室から屋上へと向かい、そこから跳躍して屋根伝いを移動しゴールドタワーを目指す。

「ごめんねミノさん。でも、絶対にわたしが助けるから」

 園子のつぶやきに応えるよう腕の中で銀が身じろぎしたように感じ、着地した瞬間園子は思わずビルの屋上で停止した。

「そのっち先輩?」

「ごめん、気のせいだったみたい」

 しばらく銀を見つめていたが、何も変わらない。先ほど感じたのは気のせいだろう。

 そう結論付けて園子は先行している夏凜を追ってゴールドタワーを目指した。

 

 

 

 ガキン! と鎖に斧が叩きつけられ、衝撃が銀に響く。

『よっしゃ、もうすぐ切れそうだ。やれ! 小さいあたし!』

『セイヤー!』

 大きく振りかぶられた斧が再度振り下ろされ、銀の右手を拘束していた鎖が断ち切られた。

 これで両足と右手、3つの拘束が切断され自由に動かせるようになった。あとは左手だけだ。

『このぉ! ふんぬぅううう!』

『さがってろアタシ! セイヤー!』

 小さな銀とそっくりな精霊、スミの持つ斧が何度も銀を拘束する鎖を両断せんと振り下ろされる。

 銀もスミだけに任せていられないと鎖を引きちぎろうとしたり、切断しやすいようにねじったりといろいろ創意工夫をしていた。

 息の合ったコンビネーションに、今ではもう相棒と言っても差し支えないほどの絆が2人の間には生まれている。

『結構ガタガタになって来たな。もう一息だぞ!』

『よーし。じゃあいくぞー! 渾身のぉ…ダイナミック・チョップゥウウウ!』

 スミの掛け声と共に最後の鎖が切断され、銀の手足は自由となる。

『ふっ、アタシの強さにお前が泣いた』

『いや、泣いてねーし。そりゃ嬉しいけどな』

 訳の分からないことを言う自分そっくりの精霊に、銀は思わずツッコむ。

 しかし本当に鎖を断ち切ってしまうとは。この状況に絶望し、何もしなかった自分が馬鹿みたいだ。

 こいつがいなかったら絶対こんなことはできなかっただろうな、と銀は改めて自分そっくりの精霊に感謝する。

『さて、じゃあどうやってこの世界から帰るかね』

 銀は改めて口にして、どうしたものかとおもう。

 正直この世界は謎だらけだ。どうしてこの世界に閉じ込められたのかも不明だし、以前突然やって来た園子がなぜ帰れたのかも不明だ。

 自分はどうやったら元の世界に帰れるのだろう? とりあえずこの荒涼とした世界を駆け抜ければいいのだろうか。

 そう考えていた銀の身体と精神が、ズレた。

 ズレた。そうとしか表現しようがないほど奇妙な感覚。まるで魂と肉体がそれぞれ別の場所に引っ張られていくような強制力が自分の身体を襲ったのだ。

『くっ、おい、お前! 手を取れ! あたし、なんか引っ張られてる!』

 銀は薄れゆく意識の中で、必死に自分に似た精霊に向け手を伸ばした。

 あと少し、あと少しで届く。だからお願いだ、気を失わないでくれ。

 その時久しく感じていなかった身体を切り裂くような姿なき暴風が銀を襲った。痛みに思わず身体を固くしたが、それからかばうように自分そっくりの精霊が前に出てくれる。

 それだけで痛みは嘘のように消え去った。こいつ、またあたしを守ってくれたのか。

 それと同時に銀の意識が引っ張られる力がより強くなる。もうこの身体にとどめておくことはできぬというように。

(ふざけんな! あたしを守ってくれた恩人を…こいつを助けなくてなにが勇者だ!)

 ここで頑張らなくちゃ女が廃る。

 なにより命の恩人を見殺しにしたとあっては元の世界で自分を待ってくれているであろう家族や親友の須美と園子に顔向けできない。

(お前は、あたしと帰るんだよぉおおお!)

 銀の伸ばした手が自分そっくりの精霊をつかみ、強く抱きしめる。

 もう2度と話さないというように。

 それと同時に意識は限界を迎え、暗闇に落とされた。

 深い、深い暗闇。音もなく、ただただ静かだった。

 だが銀に後悔はない。たとえ次に目を開けた時そこがまた別の地獄でも、今度こそ自分はあきらめずに抵抗してみせる。

 なぜなら自分にはこの相棒がいるのだから。と、腕の中にいる自分そっくりの精霊を見た。

 浮遊感。上に落ちているのか、下に向かって浮上しているのかわからない感覚が続く。

 それは永遠に近いような長い時間に感じたが、ひょっとしたら一瞬の出来事だったかもしれない。

「え?」

 目を開ければ、そこには光が満ちていた。

 明るい室内。清潔なクリーム色の壁。天井にある暖色の照明器具。

 ふかふかの安心する感触に手をやれば、それはベッドのようだ。頭には枕があり、身体には布団が掛けられている。

 今までいた曇天の空も、荒涼とした世界も、真っ黒の太陽もここにはない。

 いったいここはどこだろう? 疑問に思いながらも体を起こした銀の耳に、ガチャンと何かを落とす音が聞こえた。

「ミノ…さん?」

 顔を向ければそこにいたのは園子だった。胸がでかくなって身長が伸びていたが、間違いない。親友の自分が間違えるはずがない。

「おう、園子。何とか帰ってこれたみたいだぜ」

 声は自分で出したものとは思えないくらいかすれていた。それに驚きながらも、健常なことをアピールするために腕を動かす。

「ミノさん! ミノさん! よかった! 意識が戻ったんだね! 本当に良かった!」

「おいおい、泣きすぎだろお前。まったく、身体は大きくなっても園子は泣き虫だな」

 自分に抱き着く園子をなだめるように抱き返しながら、帰って来たんだと銀は実感する。

「そういえばあいつは…なあ、園子。あたしに似た精霊を知らないか? あいつがあたしをあの世界から助けてくれたんだ」

「え? スミちゃんのこと? それなら」

 園子の視線を目で追うと、そこには信じられないというような顔をした長い黒髪の美少女が銀を見守るように椅子に座っていた。

 多分成長した須美だろう。2Kだった胸がエベレスト並みになっている。すごいな!

 その胸元に、自分そっくりの精霊がすっごくいい顔で顔をうずめていた。

『久しぶりのスミのおっぱい枕…好き』

「スミちゃん? それに三ノ輪銀さんも…本当に意識を取り戻して、帰って来たのね」

 なんて羨まけしからんことを…。

 おっぱい枕。あの世界で聞いていたとはいえ、本当にやっていたのかと銀は思った。

 しかも須美もまんざらでもない顔をしてるし。なんかズルイ!

「うわ、なんで入り口にうどんがぶちまけられて…東郷、乃木? すごい音したけど一体どうしたの?」

「お姉ちゃん、今この部屋は病室なんだから静かに…って、銀さんが目を覚ましてます⁉ それにスミちゃんが!」

「え、嘘でしょ⁉ って、本当に起きてるじゃない! ちょっとあたし丹羽の奴呼んでくる!」

 どうやら銀が聞いた音は園子がうどんを落とした音だったらしい。時計を見ると夕食時だ。

 それを聞きつけた他の女の子たちが3人来て、室内は一気ににぎやかになる。

 こうして三ノ輪銀は意識を取り戻し、わすゆ組の3人は2年の時を経て再び集合したのだった。




 スミちゃんが頑張ったので銀ちゃんが自力で戻ってこれました。
(+皿+)「神樹の体液吸わなくてもいいのか」(わすゆルート)
(+皿+)「説得と引き抜きしなくてもよかったのか」(ノーマルルート)
 あとは双子座とレオ・スタークラスターを倒して終わりだな!
 大赦のガバガバ警備については原作からこうなんだからしょうがないね。1期は暴走した風先輩の対処は園子任せだし、2期で最重要アイテムのスマホを簡単に奪われるし。
 情報規制だけして伝えなきゃいけないことは秘密にして伝えなくていいことは伝える。うん、原作通りだな!
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