詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

92 / 105
 あらすじ
 ジャンケンの結果、人型のバーテックスがテラフォーミングしている大地に来たわすゆ組。
 そこは人型のバーテックスの作った百合の楽園だった。
 目を輝かせて取材する園子。さくひまに案内される東郷と銀。
 果たして彼女たちを待ち受けるものとは……?
 あと久しぶりの出番なのにこんな感じでいいのか主人公(星屑)?


【グッドエンドルート】おいでませゆるゆり村

「ご案内ー、ご案内―、お客さんをご案内―♪」

「櫻子、あなた浮かれすぎですわ。まあ、大村長様に大役を任されて浮かれるのはわかりますが」

 銀の手を引きテラフォーミングされた中国地方の人間型星屑の集落を案内するのは、ゆるゆりの大室櫻子の記憶をインプットされた人間型星屑である。

 創造主である人型のバーテックスによって精神だけでなく身体もほぼ原作通り再現されているので、人型のバーテックスはある意味2次元の推しキャラに囲まれるという全ファンの夢をかなえているのだ。

 ちなみに彼女たちは本来の世界では中学生だが、そこらへんは都合のいいように記憶改変をしている。

 生徒会長が村長。理事長的立ち位置が大村長。学校の授業はほぼ農業などといったように。

 つまりこの村にとって人型のバーテックスは理事長として村に住む皆を見守る存在なのだ。

 ということで原作で次期生徒会副会長を争っている幼馴染の櫻子と向日葵の2人は次期副村長候補となっている。

「なあ、2人は普段ここでどういうことをやってるんだ?」

「んーっとね。生徒会で杉浦先輩や池田先輩と一緒にお仕事したり、おつかいとかしてるんだー。あ、あとあかりちゃんやちなつちゃんと一緒に遊んだりとかいろいろだね」

「櫻子、あなた初対面の人に杉浦先輩や赤座さんたちのことを言ってもわからないでしょう。すみません、アホの子で」

 銀の質問にすらすら答える櫻子に、向日葵がツッコむ。それに対し「誰がアホの子だー! このおっぱいめー!」と櫻子はご乱心だ。

「いえ、なんとなくあなたがその子に振り回されてるのはわかるわ。大変ね、お互い」

 実感はないが園子と銀に振り回されていた過去を夢として見たり、園子から話を聞いていた東郷は向日葵に同情的だ。体系といい声といい、余計に他人に思えなくて親近感を抱く。

「いえ、この娘の扱いは慣れてますから。むしろわたくしが目を離すとよそで何をやらかすかわからなくて」

 向日葵の言葉にあー、わかると東郷はうなずく。自分も銀が他の娘の胸を勝手に揉んで迷惑をかけたりしないように監視せねばと思っていたのだ。

「え、須美。なんだその反応?」

「誰がやらかすって? このおっぱい!」

 戸惑う銀と敵意むき出しで向日葵の胸を叩こうとした櫻子が振り下ろした腕を、向日葵は華麗に避ける。

「とりあえず、まずは生徒会にご案内いたしますわ。わたくしたちの先輩が今お仕事中ですがそれでよろしければ」

「えー。そんなの見てもお客さんはつまんないでしょ。ごらく部であかりちゃんたちと遊ぼうよー。杉浦先輩と池田先輩の2人も来てるかもしれないしー」

 櫻子の言葉に、それも一理あるかと向日葵は考え直す。先輩である副村長の杉浦綾乃はよくごらく部という組織に顔を出しているからだ。

「では、そうしましょう。櫻子が言ったことに従うというのは癪ですが、そこならば退屈はしないでしょうし。お客様に楽しんでいただくよう大村長に言いつけられていますので」

「なーに自分が考えたように言ってんのよこのおっぱい! ふっふーん。向日葵もあたしの冴えたアイディアにぐうの音も出ませんかなー?」

 得意げな櫻子にはいはいと向日葵はうなずき前を歩く。

「櫻子にしては珍しく冴えた考えでしたわ。普段もそれくらい頭が回ったらいいですのに」

「なんだとこのおっぱいめ! ちょっ、待て! 逃げんなよー」

 つないでいた銀の手を放し、櫻子は向日葵にくっつく。それはもうイチャイチャという擬音が付くくらいの密着具合だ。

「今、ここに丹羽君がいたら間違いなく変な顔をしてるわね」

「そうなのか?」

 まだ丹羽の不審者フェイスを1度しか見ていない銀は彼がどういうときにあの顔になるのか知らない。

 それと丹羽が女の子同士がイチャイチャしているのを見るのが好きな百合厨ということも。

「つきましたわ。ここがごらく部です」

 そんなことを話していると目的地に着いたらしい。

 茅葺屋根の家なのは同じだが、中に入ると現代的で立派な和室だった。畳が敷かれており、その上には大きな木の机。「みらくるん」と書かれた掛け軸や木刀が飾られていたりと外から見た印象とはまるで違う。

 てっきり竪穴式住居のような内装を想像していただけに、東郷と銀は驚いた。その2人を置いてふすまを開けた櫻子と向日葵は室内にいる6人に声をかける。

「杉浦先輩は…いましたわね。池田先輩も」

「あれ、櫻子ちゃんと向日葵ちゃん? どうしたのー?」

 声を上げたのはショートカットの少女に引っ付いていたツインテールの女の子だ。その女の子に頭にリボンを付けた長い髪の女の子がさらに引っ付き、「ちなちゅー」と口をタコのようにしながら迫っている。

「大村長のお願いでお客さんを連れてきたんだー。これでうまくいけば次期副村長はあたしに決まったも同然!」

 えっへんとない胸を張る櫻子に、「そうなんだーすごいねー」と笑顔で言うお団子頭の女の子を向日葵が紹介する。

「あのお団子頭の娘が赤座あかりさん。箸を忘れた櫻子に割りばしをくれたりする優しい子ですわ。で、さっき返事をしたツインテールの子が吉川ちなつさん。彼女たちは私たちと同じクラスの1年生ですの」

「へー同級生…ん? 1年? ひょっとして大室さんと古谷さんは1年生なの?」

 バーテックスなので実際の年齢は1年未満なのだが、櫻子と向日葵は東郷の言葉に設定された年齢を答える。

「そうだよ。13歳の中学1年生だ!」

「同じく13歳ですわ。そういえばお2人の年齢を聞いていませんでしたわね」

「えっ、マジか。13歳でその胸⁉」

「こら銀! 私たちは14歳の中学2年生です。…あ、銀はまだ13歳だったわね」

「いや、あたしあの時から実質眠ったままだから記憶的には小6のままなんだ。まあ、実質小学校中退だし」

 2人の言葉に櫻子と向日葵の2人は慌てた様子で頭を下げた。

「「と、年上とは知らずにすみませんでしたー!」」

「い、いえいいのよ。古谷さんしっかりしてるからてっきり同学年か1つ上だと思ってたのはこっちも同じだし」

「えー。向日葵はわかるけど櫻子はどっちかというと年下っぽいだろ」

 と銀が言うと櫻子が横にいる向日葵の巨乳を見る。

「またおっぱいかー!」

「痛っ、何をしますの櫻子⁉」

 突如親の仇のような顔で向日葵の胸を全力で叩く櫻子に、部屋にいる6人はいつものことかというような顔をしている。どうやらこのやり取りは日常的に行われているらしい。

「ぼいーん! ぼいーん! ぼいーん! ぼいーん!」

「いい加減に…しなさい!」

 おっぱいドリブルしていた櫻子に向日葵の膝が決まった。一発KOで櫻子は畳の上でうずくまる。

「こほん、お見苦しいところを。それでその吉川ちなつさんにくっついている長い髪の女性が歳納京子先輩。絵がとても上手な方ですわ。そしてちなつちゃんにくっつかれて困り顔をしているのは船見結衣先輩。この2人と赤座さんは幼馴染だそうです」

「よっろしくー。ねえ、ひまっちゃんこの娘たちかわいいね。とくに黒髪が長くておっぱいが大きいあなた、コスプレとか興味ない?」

「こら、京子。お客さん困ってるだろ」

 向日葵が紹介している間に東郷に詰め寄った京子を結衣が引きずって元の場所に連れて行っていく。それにあははとあかりが苦笑していた。

「で、こちらにいるポニーテールの方がわたくしの憧れである現副村長の杉浦綾乃先輩。勉強のできる秀才でしっかり者の頼りになる先輩です。その隣の眼鏡をかけている方が池田千歳先輩。2人はわたくしたちと同じ生徒会のメンバーなんですの」

「初めましてお客様。副村長の杉浦綾乃といいます。あなたたちと同じ中学2年生よ」

「池田千歳やでー。どうぞよろしく~」

 挨拶してくれる綾乃と千歳に、こちらこそよろしくと東郷と銀はあいさつする。

「で、2人はお客さんを連れてどうしてここに? 私たちはそこにいる歳納京子がプリントを未提出だったから来たのだけれど」

「実は」

 かくかくしかじかと人型のバーテックスに頼まれ東郷と銀を観光案内していることを向日葵は話す。それに京子は大きくうなずいた。

「なるほど。それでうちに目をつけるとはさすがさくっちゃんとひまっちゃん。よろしい! ならばここはごらく部流おもてなしをせねばなりませんな」

「なんだよごらく部流おもてなしって。聞いたことないよ」

 京子の発言に結衣がツッコむ。その間にあかりが座布団を東郷と銀、それと生徒会4人の分も用意しどうぞとお茶も勧めてきた。

「えっと、じゃあお言葉に甘えて座らせていただくわ」

「おう。ありがとな。あかりちゃん」

「あ、どうも赤座さん。櫻子は放っておいてもいいので」

「えっ、かわいそうだよぉ。櫻子ちゃん、お腹まだ痛い? おなかさすろうか?」

「だ、大丈夫あかりちゃん。向日葵のへなちょこキックなんて、全然効いてねーし!」

「赤座さん。私もお茶いただくわね。……ふぅ。おいしいわ」

「えへへ。ちなつちゃんほどじゃないですよぉ」

「いやいや、赤座さんは気遣いができるええ子やわぁ。妹にしたいなー」

「千歳、あなた妹はもう千鶴さんがいるじゃない」

「はぁ、結衣先輩今日もかっこいい」

 くつろぐ生徒会と東郷と銀。なんだか勇者部の部室みたいな雰囲気だと東郷は思う。

 お茶を一口飲むとほっとする味だ。なんだかすごくリラックスできる。

「で、具体的には何やるんだよ」

「それはぁ…これで決めまーす!」

 言葉と共に京子が出したのは「話題BOX」と書かれた箱だった。なぜか「抽選Box」「目立ちたgirl」という文字が横の二重線で消されていたが。

「この中にやりたい遊びを書いてもらって選びます。で、それをみんなでやると」

「いえ、歳納先輩。わたくしたちはお客さんの観光案内をしているので、できればそれに沿ったことを」

「えー。でもこの辺って田んぼと畑しかないよー。だったらここで遊んだほうがよくない?」

「いいわけないでしょうとしのうきょーこ! そんなのノンノンノートルダムだわ!」

 京子の言葉に綾乃が反論する。確かに正しい意見だが、東郷と銀は綾乃の言ったノンノンノートルダムという言葉が気になっていた。

 え、なにそれ? バーテックスだとそれが正しい言葉なの?

「ノンノンノートルダム…くくく」

 声にそちらを見ると結衣がこらえきれないというように笑っていた。

 え、今の笑う要素あったっけ? と東郷と銀は首をかしげる。

「えー。綾乃はまじめだなー。もっと一緒に遊ぼうぜー」

「え? べ、べつに歳納京子がどうしてもって言うならそりゃ少しは」

 悪い顔をして綾乃の肩を抱いた京子を見て、千歳は眼鏡をはずす。

 

『綾乃、私とイケないことしちゃおう? ね、一緒に悪い子になっちゃおうよ』

『歳納京子…だめぇ、でもそんなに強く迫られたら、断れない!』

 

「あっかーん! ぶっはぁ!」

「きゃー! 池田先輩が鼻血出して倒れたー⁉」

「千歳―⁉」

 突如鼻血を出した千歳にちなつが悲鳴を上げ、綾乃が慌てて駆け寄る。

「ぐふっ。綾乃ちゃん。ええもん見させてもろたで」

「ちょ、何わけのわからないこと言ってるのよ千歳ー!」

「えっと、あれ大丈夫なのかしら?」

「いつものことなので大丈夫です。池田先輩が時々ああいう風になるのは」

「なぜかごらく部に来た時によくこうなるんですよー」

 東郷の疑問にいつものことと向日葵はお茶をすすっている。櫻子は不思議だなーというように感想を漏らしていた。

「池田先輩。どうぞ、冷たいタオルです」

「ありがとうなー赤座さん。毎度毎度世話を掛けさせて」

「本当よまったく。調子が悪いなら無理しないで私に言いなさいよ」

 千歳を座布団の上に寝かせ、あかりが水を絞ったタオルを額に乗せる。それを綾乃が心配そうな顔をしてみていた。

 おそらく園子と丹羽がこの場にいたら、目を輝かせて「キテマスワー!」「ビュォオオオ!」と言っていたことだろう。

 結局その後京子の押しの強さに負けて2人はごらく部で千歳が回復するまで遊ぶことにした。

 最初に引いたお題の「コスプレ対決」では向日葵と櫻子と一緒になぜか東郷と銀が魔女っ娘に変身させられ、どちらが似合っているかという勝負になる。恥ずかしがる銀を見て東郷が目を輝かせていた。

 次に引いた「ビバーク」というお題に全員首をかしげる中、銀がお手本として東郷、向日葵、綾乃、京子、結衣の胸に顔をうずめて大満足する。

 悪乗りした京子も参加して室内は大混乱となったが、その後銀には東郷が。京子には結衣のお説教が待っていた。

 最後に引いたお題は「記念撮影」。ごらく部と生徒会の4人、それと東郷と銀が集まり写真を撮った。

 東郷も持っていたデジカメで同じように撮影し、旅の思い出として持ち帰ることにする。お題を書いたのはあかりだそうで、座布団やお茶をくれたり千歳を介抱したりと本当にいい子だ。

「さて、じゃあ池田先輩も復活したので、ここからは生徒会の先輩たちとあたしたちが2人を案内しますよー」

「またねー銀ちゃん、美森ちゃーん」

「いつでも遊びに来てくれー」

「ええ、今度は部活の仲間たちと一緒に来るわ」

「またなー、京子、結衣、ちなつ、あかりー」

 すっかり友達と認識された京子と結衣に東郷と銀は笑顔を返す。

「結衣先輩のおっぱいの感触を…ユルセナイユルセナイ」

「あはは。ちなつちゃん落ち着いて。今度はお菓子用意して待ってますねー」

 闇落ちしかけているちなつを必死に押さえ、あかりが笑顔で見送ってくれた。やっぱりいい子だなぁと2人は思う。

 そこから案内された場所は驚きの連続だった。

 広大な小麦や大豆畑に様々な野菜の畑。稲もたくさん実をつけ穂先を垂らしている。

 もうすぐ収穫期ということで畑にはトラクターのような形のバーテックスがいた。それを使って収穫するらしい。

 品種改良にも手を出しているらしく、さっき遊んだ京子が画期的な方法を思いつき生産数が1,5倍になったそうだ。それが悔しいと言う綾乃に、千歳が彼女をライバル視しているのだと教えてくれた。

「でも歳納さんと話しているときの綾乃ちゃんが一番かわええんよー」

 という彼女になぜか2人は園子の幻影を見た。ひょっとして彼女も百合イチャが好きな人なんだろうか。

「向日葵ー。見て見て、でっかいカエル見つけた!」

「ぎゃー! もどしてらっしゃい!」

 綾乃と千歳に案内役を奪われる形になった櫻子は田んぼや畑にいるバーテックスである虫やカエルを捕まえてきては向日葵に見せて反応を楽しんでいる。そういえば勇者部の活動でよく訪問する保育園や幼稚園にああいう子っているわねと東郷は微笑ましい気分になった。

「とまあ、こんなところかしら? 参考になった」

「ええ。おかげでここでどういうことをしているのかがよくわかりました」

 綾乃の質問に答えているのは東郷だけだ。銀はというと櫻子と一緒に虫探しやカエルを捕まえるのに夢中になっている。

 性格的に近いものがあるのだろう。まるで何年も付き合っている友達のように2人は意気投合していた。

「三ノ輪さんは大室さんと仲良しやね。ウマが合うんやろか」

「そうですね。私も彼女がああいう性格だっていうのはわかっていたんですけど、直接話すのは昨日が初めてだったので戸惑っています」

 その言葉に、え? どういうこと? と綾乃と千歳は首をひねる。

「実は…」

 東郷は2年前の自分の記憶がないこと。その記憶がない間、銀とは親友と呼べる間柄だったことを話した。

 とある事情でその時の記憶を思い出すことができたが他人の記憶を覗き見たようで実感はなく、あくまで情報として彼女と親友だったという事実を知っているということに戸惑っている内心を吐露する。

「お2人の仲がいいところを見込んで質問します。私は、銀とどう付き合っていくべきでしょうか?」

 と口にして、自分は何を言っているんだろうと東郷はハッとした。

 相手は人間にそっくりとはいえバーテックス。そんなことを聞かれても答えられるはずがないのに。

「そうね……ある日千歳が事故に遭って私のことを忘れたとしても、私はまた千歳の友達になりたいと思うわ。それこそ今まで千歳が私にしてくれたことを全部、彼女にして」

 ゆるゆり原作で杉浦綾乃という少女は最初人見知りだった。だが、池田千歳と友人になることで徐々に社交的になり、今では副生徒会長であり気になる同性である歳納京子に積極的にアタックできるようになっている。

 いわば綾乃にとって千歳は恩人であり何でも相談できる最高の親友なのだ。

「綾乃ちゃん。そんな嬉しいこと言われたら、うち恥ずかしいわぁ」

「ちょ、なによ! 私は真剣に言ってるのに」

「でもうちな、綾乃ちゃんのこと忘れてもまたすぐ友達になれると思うんよ。だって綾乃ちゃんみたいにかわいい子、うち他に知らんから」

「なっ! なに言ってるのよぉ!」

 千歳のある意味告白のような言葉に、綾乃は耳まで顔を真っ赤にする。

「だばー」

「ひゃっ、誰⁉」

 その時小麦畑から不審者が出現した。

 丹羽か園子かと思いきや東郷の声に出てきたのは千歳そっくりの少女だった。

「あ、千鶴。こんなとこにおったんか」

「うん、姉さん。今日はうちの班が担当していた小麦の様子を見に来てたから」

 どうやら2人は姉妹らしい。雰囲気は正反対だが、顔は確かにそっくりだ。

「えっと、千鶴さん? 口元からよだれ出てるわよ」

「あ、綾乃さん⁉ いいんですすぐ拭きますから。じゃあ、私はこれで」

「あっ、千鶴ぅー。行ってもうた。東郷さんと三ノ輪さん紹介したかったのに」

 残念そうに小麦畑に消えていく千鶴の後姿を見送りながら千歳が言う。

 一方で東郷は呆然としていた。

 彼女たちはきちんと自分の考えを持っていた。丹羽のように。

 まるで本当の人間のようだ。現に先ほどまで自分はバーテックスということを忘れて思わず彼女たちに悩みを吐き出してしまったのだ。

 彼女と自分たち人間。一体どれほどの違いがあるのかわからなくなる。

「ごめんなぁ、あんまり参考にならんで。でも、きっと東郷さんは三ノ輪さんとその時の記憶なんかなくてもまた友達になれる思うで」

「そうね。あなたの話を聞くまで私、そんなこと気付かなかったわ。それくらい、2人は自然体で仲良しだったわよ」

「そう、そうね。ありがとう。杉浦さん、池田さん。私、難しく考えすぎていたのかもしれない」

 無理に2年前と同じようにふるまうのではなく、これからは友達として1から彼女と付き合っていこう。

 鷲尾須美ではなく東郷美森は東郷美森として。それが多分彼女と接する1番いい方法だ。

「おーい須美! このカエル見てくれ! 白いのにすっげぇデカい! ウシガエルかな?」

「なにー⁉ 銀さんに負けたー! あたしがさっき捕まえたゴライアスくんが1番大きかったのにー!」

「なにしてますの櫻子に三ノ輪先輩。帰る前にちゃんと手を洗ってください」

 呆れたように言う向日葵に仲がいいなぁと東郷は羨ましく思う。

 自分も向日葵と櫻子のような関係になれるだろうか?

 いや、なれるかどうかは東郷と銀次第だ。今の東郷を銀が受け入れてくれるか、昔の須美のままの方がいいかで多分それは決まるだろう。

 だけど、直観だが銀とはまた親友になれる。そんな気が東郷はしていた。

「さて、一通り村の中は案内したけど他に何か見たい場所はあったかしら?」

「いえ。そろそろ丹羽君の検査も終わるころだと思うので、1度人型さんのところに行ってみます」

「ああ、大村長のところやねー。それなら大室さん、古谷さん。うちたちはこのまま生徒会に戻るから、2人はちゃんと東郷さんと三ノ輪さんを案内してなー」

 手を振る綾乃と千歳に別れを告げ、4人は元の場所に戻っていった。

 

 

 

 一方そのころのそのっち。

「ハァハァ、あかりかわいい。先輩に自然に優しくできるうちの妹マジ天使! 突然やって来たお客さんと記念撮影を提案するなんて、成長したわねあかり。お姉ちゃんの後ろでもじもじしていたころが懐かしいわ。いえ、あかりは小さい頃のほうが積極的だったわね。ああ、なでなでしていい子いい子してあげたい! 今すぐ抱きしめたいよあかりぃいいい!」

「あかねさんあかねさん今日もお美しい。妹を陰ながら見守るあかねさんマジ女神! 壁の外からお客さんが来るって聞いて急いで駆けつけるその行動力、流石です! 妹のためなら大村長にも逆らうことをためらわない姿勢は尊敬に値するわ。ああ、あかねさんあかねさん。どうしてあなたはそんなに完璧なの⁉」

「やっべー奴ら見つけちまったんよー」

【例の姉】と呼ばれる存在筆頭のヤベー奴とそのストーカーという新たなカップリングを発見し、逃げるべきか見守るべきか悩んでいた。




 あかりちゃんマジ天使。
 その真実だけは伝えたかった。
 それはそれとして、もしゆゆゆ1期で散華のことを教えるために友奈と東郷の前に現れたのがそのっちでなく銀ちゃんだったら、記憶を失った東郷さんを見てショックを受けてもまた最初から友達になって親友になれると信じてる。
 まあ、そのっちも親友になれたんだし。銀ちゃんメンタルつよつよだしね。憶えてなくて戸惑う東郷さんにも「気にすんな」って笑いそう。
 どうしてそんな未来にならなかったのか…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。