詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
園子の交渉により、大赦が決定した丹羽明吾=人類の仇敵という事実が取り消される。
原作ではこのあと東郷さんのエクストリーム自殺とギスギス勇者部、風先輩の暴走と胃の痛い展開ラッシだったけどフラグはバッキバキに折ったから大丈夫だよね?
丹羽が投稿していた百合小説の影響で実はけっこう追い詰められてた大赦。これには人型さんも苦笑い。
園子「にわみんが誤眠ワニ先生だとは知らなかったんよー。そう言えばもらった小説と文体が似てたなー」
丹羽「俺としてはそのっち先輩が読者だったことに驚きです。ちなみに参考までに好きな作品は?」
園子「うーん。1番はマリみてかなぁ。他にもやがて君になるとか、うらら迷路帖とか色々。というか全部好き!」
丹羽「そうですか、ありがたいです。…ただ、大赦の大人たちもまさか読者だったとは」
園子「百合好きに悪い人はいないんよー。今度から優しくしてあげよー。ちなみに安芸先生や防人の子たちにもわたしオススメしてるんだー。ファンの子も多いはずだよー」
図らずも園子と大赦要職にいる大赦仮面たちとの距離を縮めることに成功。
四国の守護神である神樹は憤っていた。
神託を告げてもまだ自分に仇なす存在を放置している人類に。
自分が力を貸している少女たちの中に真の姿を隠し巧妙に紛れ込んでいた天の神の尖兵。
それを見抜けなかった人類に。そして自分がそんな存在を勇者として選んだと思っていた人類に神樹は失望していた。
愚か、実に愚かなり。
300年。神樹は人類を見守り、生命をはぐくむ姿を見守って来た。
あるいは神としてはもっと長い間。神樹の中にいる複数の地の神の記憶は生活は変わっても根本的な部分は何も変わっていないことに嘆息する。
人間は愚かだ。
何度も同じ失敗を繰り返し、取り返しのつかないことをしては嘆き、時に自分たちを恨み責任転嫁をする。
そのせいで天の神の怒りを買い、四国以外の土地は滅ぼされてしまったというのに。
だが、愚か故愛おしい。
手がかかる子ほどかわいいという言葉にあるように、神樹は人間のことが好きだった。というか溺愛していた。
だからこそ天の神と敵対してまで地の神一丸となり人類を守って来たのだ。
そんな愚かしくも愛おしい存在は我々が守ってやらなければならない。
そう思い多少のことは大目に見て見守って来たが、今回に限っては見過ごせなかった。
天の神の尖兵であり、自分の所有物である清き魂である勇者の魂を奪おうとした存在を許していたなど。
ましてや自分が力を与えていた勇者として、清き乙女たちの中に紛れ混んでいたなど言語道断だった。
許せない。絶対に滅ぼさなくては。
存在しているだけでも大罪なのに、こともあろうにそいつは自分に牙をむいてきた。
人間のふりをして、勇者という肩書を使い何食わぬ顔で自分が守る祝福の地にやってきたのだ。
それだけで神樹としては業腹だったのだが、勇者たちの記憶を盗み見て知ってしまう。そいつが勇者たちにとって悪影響を及ぼしていることを。
清き乙女の間にあんな邪悪な存在がいるだけでも許しがたいのに、さらに心まで浸食していたとは。
現に巫女の資質を持つ勇者の清き乙女は自分たちにとってどれだけ丹羽明吾という存在が有用か訴えていた。どれだけ自分たちを支え、四国を守ってきたかを必死に。
許しがたい愚行だ。自分に意見するだけでも万死に値するほどの無礼なのに、さらに騙されているのにも気づかず愚かにもそれをかばうなど。
神樹はせめてもの慈悲として命は奪わないでおいた。ただ罰を与えないわけにはいかず、その身を高熱に冒させ反省を促すことにしたのだ。
清き乙女でなければ容赦なく命を奪っていた。だが、勇者と巫女は自分たちのお気に入りだ。
なるべく傷つけずにいたい。それにつけあがったのか、愚かにも人類は丹羽明吾が自分に要求したように三ノ輪銀の魂を肉体に返すよう懇願してきたのだ。
これには神樹の中でもっと強い罰を与えるべきだという派閥と人類は愚かなのだから見守るべきだという派閥に別れ、双方激しい意見を対立させることになる。
激しい討論の末、人類もあの天の神の尖兵、丹羽明吾に騙されているのだという結論にいたり命までは奪わないでおいた。
本来ならば神託を受けるだけの巫女が自分たちに意見を述べるだけでも不遜なのに、この対応はむしろ相手をつけあがらせるのだけでは? という懸念があったが神樹は人類を信じることにしたのだ。
だが、その懸念は的中することになる。
なんと巫女の中でも自分たちのお気に入りだった信心深い少女、国土亜耶がよりにもよって自分たちに意見をしてきたのだ。
丹羽明吾の両親の記憶を返すようにと。神樹としては戸惑いしかない。
丹羽明吾は人類のふりをした天の神の尖兵である。両親などいるはずもない。
この少女も丹羽明吾に騙されている。神樹は自分のお気に入りの少女たちを次々と手玉に取る丹羽明吾という存在に、憎悪に近い感情を抱いた。
そしてその丹羽明吾を四国に送り込んだと思われる存在が今、ここに来ている。
バーテックスが襲来し、樹海化したのに迎撃もしない勇者たちに戸惑ったが襲来した相手を感知した神樹は納得した。
あれは丹羽明吾と同じ魂の色をしていた。普通の星屑や巨大バーテックスとは毛色が違う存在。
人型のバーテックス。見たこともない星屑とは違う変異体のバーテックスに乗り、こちらを目指している。
見間違えるはずがなかった。きっと丹羽明吾を使い心清き乙女たちを惑わせられたのを確認し、自分を滅ぼすために直接樹海に乗り込んで来たのだろう。
そうはさせるものか!
神樹は残る力を振り絞り、己の体躯を動かし天の神の尖兵を迎え撃つ。
もはや己の身を守るには己の力に頼るしかない。なによりこいつは心清き乙女たちを惑わした張本人だ。
私怨だが己の手で誅罰を下したいという思いが神樹を突き動かしていた。
だが敵もさるもので神樹の攻撃をかわし、矢のような速度でこちらに向かってくる。
仕方ない。こうなっては背に腹は代えられぬ。
神樹は自分たちにとって重要である存在を解放し、全力で敵を迎え撃つことにした。
それが自分たちの敵――人型のバーテックスの逆鱗に触れるとは、夢にも思わず。
次から次へとこちらに向かって振るわれる神樹の樹の根を避け、あるいは時には切り裂き人型のバーテックスは神樹の元へ向かっていた。
神樹の根は先端がとがっていて竹槍のようだ。殺意が高い。しかも根を切り裂くとバーテックスには猛毒の神樹の体液が流れ落ちてくる。これは突き刺したら体液を送り込むつもりなのだろう。
本気で自分を殺しに来ている神樹に、人型のバーテックスはかくはずのない冷や汗が身体を伝うのを感じる。
と同時にこんなことができるなら、もっと早くやれよと内心でため息をついた。勇者なんかよりこっちのほうがよっぽどバーテックスにとって脅威だ。
得意技である水のワイヤーで道を切り開き、神樹の元へ急ぐ。
やがてそこは見えてきた。神樹の根元。地に根を下ろし太い幹が四国全体に根を張っている中心地。
神樹の元にバーテックスがたどり着けば人類は滅びる。
その原作設定がある以上人型のバーテックス本体が神樹に触れるわけにはいかない。
ここは手のひらから星屑を射出させ、交信用のバーテックスを触れるか触れないほどのギリギリの距離で神樹の幹に巻き付ける。
あとは念話で説得すれば終わり。そう思い手から星屑を1体分離させようとした人型のバーテックスの目にそれは飛び込んできた。
神樹の根が4つ、塊になるように絡み合い何かの形になろうとしている。
最期のあがきか。人型のバーテックスは大して気にしなかった。
ここまでくればもう王手。あと一手でこちらの勝ちだ。
早々逆転の手なんてあるはずが――っ⁉
『おいおい、嘘だろ?』
思わず、声帯のない口から声が漏れそうになる。
神樹の根が固まってできたのは人型の
問題なのは、その人型が見たことのある、いや知っている4人だったこと。
それはゆゆゆいプレイヤーならだれもが知っている4人。
乃木若葉、土居球子、伊予島杏、高嶋■■。
西暦の時代、命がけでバーテックスと戦い、四国を守って来た勇者たちそっくりの木偶人形が生まれていた。
『神樹様よぉ…俺も散々心の中でクソウッドだとかロリコンの樹って言ってたけどそれはあくまで愛ある罵倒というか、アンタは勇者や巫女の女を愛でる対象だと思っていると信じていた。人類や勇者の皆を大切に想ってるんだって』
武器を構え、こちらに明確な敵意を向けてくる勇者もどきの木偶に我知らず人型のバーテックスは強く強くこぶしを握る。
『だからこんなやり方、死者を冒涜するこの方法は許せない。自分たちに尽くしてくれた彼女たちをこんなふうに使うなんて許せない。何より許せないのは、俺の前にあの娘がいない西暦勇者組を出したことだ!』
一斉に襲い掛かる西暦勇者に、複雑な思いを抱きながら人型のバーテックスは神樹をにらみつけた。
天駆の太刀・刹那!
焔纏の巨刃・瞬旋!
ゴーンウィズザウィンド!
千回連続! 勇者パーンチ!
一撃一撃が必殺の攻撃。木偶杏の矢の攻撃はアクエリアスの水球防御とリブラの風のカーテンをものともしない。木偶球子の旋刃盤も同様だ。
近接攻撃型の木偶若葉と木偶■■の攻撃が迫る。躱すのは達人クラスの体捌きが必要だろう。
だから、あえて躱さない。
次の瞬間、人型のバーテックスの左半身から斜め上は袈裟懸けに斬り捨てられ、左胸は矢に射抜かれる。仮面ごと頭部は旋刃盤に縦に切り裂かれ、腹部は木偶■■の拳により貫かれていた。
これは派手にやられたなーと木偶■■に貫かれている右半身を見ながら、人型のバーテックスは思う。しかも傷口がグズグズに溶ける感覚がすることから、武器にはバーテックスにとって猛毒である神樹の体液がコーティングされているのだろう。
よっ、と空中で体をねじり、アリエスの増殖力で肉体を再生させる。
両足を作る必要はない。動ければいいので右腕と蛇のような体躯を作り木偶球子と木偶杏に向かって水のワイヤーを振るう。
『ごめんね、せっかく眠っていたのに起こしちゃって。今度こそ、ゆっくりお休み』
いつくしむような優しい声と共に木偶球子と木偶杏の身体が拘束される。水のワイヤーで何重にも腕と足を縛り、武器を使えないようにしたのだ。
武器を放つことができずじたばたともがく2体の木偶勇者。神樹の創造物で本人ではないとはいえ、あんたま推しの人型のバーテックスは2人を傷つけるのはためらわれた。
それに今回来たのはあくまで話し合いだ。なるべくなら戦いたくないが、こちらに向けて何とか攻撃しようともがく2体は殺る気満々。
『あー、そんな怖い顔しないで。かわいい顔が台無し…て木偶だからあんま関係ないのか。とりあえずしばらくの間は2人仲良くそこにいて』
言葉と共に木偶球子と木偶杏が互いに向き合うような形で水のワイヤーで拘束する。
さて、次は残りの木偶若葉と木偶■■だ。
目をやると残された右半身は■■に貫かれた腹部を硬化させ、腕を抜かせないようにしていた。そのまま粘菌を参考にした体躯を木偶■■の腕から侵入させ、超速度で木偶■■の表面を覆っていく。
木偶■■は何とか抜け出そうともがいているが身体の半分がすでにバーテックスの細胞で覆われていた。身体全体を包むのは時間の問題だろう。
木偶若葉が割って入り助けようとするのをカプリコンの地震攻撃で地面を揺らしてさらにサジタリウスの無数の矢を放つ能力でけん制した。
居合を放つには刀を1度鞘に納めていなければ使えないことと地面に両足を踏ん張っていなければならないという弱点がある。その後者をさせないため人型のバーテックスは能力を使ったのだ。
転がるようにして無数に放たれた矢を避ける木偶若葉。その間にバイバイしていた右半身から広がった粘菌状態のバーテックスの細胞は木偶■■を覆い行動不能にした。
後に残ったのは木偶若葉1体。揺れる樹海の地面に居合を諦めたのか、油断なく浮遊する左半身をにらみつけながら■■を捕らえる右半身からも意識を外さない。
さすが園子のご先祖様だ。バーテックスの天敵という部分に関して見れば主人公補正もあるし友奈並みに厄介かもしれない。
木偶若葉が走る。狙うのは蛇のような体躯を下半身にした元左半身。
斬撃ではなく刺突の構え。恐らく頭をつぶせば勝ちだと思っているのだろう。
だが甘い。甘々だ。
人型のバーテックスは両手を使い木偶若葉が狙ってきた頭部の眉間の部分に切っ先が届く前に、木偶球子の旋刃盤に切り裂かれてズタズタになっている頭頂部を両手で力任せに裂いた。
二股に物理的に別れて切っ先を躱した予想外の行動に木偶若葉が戸惑う一瞬の隙逃さず、蛇のような下半身が木偶若葉の腕に巻き付き居合刀を樹海の地面に落とさせる。
『今回は話し合いに来たから、できるだけ荒事はしたくないんだ。というわけで諦めてくれ』
言葉と共に木偶若葉の腕に巻き付いた体躯に力を籠めてへし折る。これで居合はもう使えないだろう。
さて、ここで問題が発生する。彼女たちを動かしているのは何かという点だ。
彼女たち自身の魂? 否、それはあり得ない。
なぜなら乃木若葉は西暦勇者の中で唯一生き残り大往生し天寿を全うした。その後も若バードこと青い鳥としてゆゆゆ本編に登場したりしていることから、それはあり得ない。
球子と杏もそうだ。彼女たちは転生し、〇と□に転生したと(明確には表記されていないが匂わせ程度には)描写されている。よって彼女たちも違う。
■■に限っては友奈の精霊の牛鬼の正体とまで言われているからもちろんなし。つまりこの木偶勇者たちは姿かたちだけで、中身は別物だと考えた方がいい。
それにしては動きが鋭かった。まるで歴戦の勇士のように。
もし億匹食っていないわすゆ時代の自分だったら簡単にやられていただろう。それほど脅威的な存在だった。
ともあれ、これでようやく話し合いの場につける。人型のバーテックスは改めて分裂した半身と融合しようと身体をくっつけていると、燃え盛るような4体の木偶から放たれたオーラに驚いた。
おいおい、嘘だろう?
『まさか、切り札まで使う気か? 偽物とはいえ、そこまで本物に似せる必要はないだろう』
木偶■■の表面を覆っていたバーテックスの細胞が剥がれ落ち、木偶若葉は折れた腕を無理やり元の形に戻し地面に落ちた刀をとった。
木偶球子は巨大化した旋刃盤で無理やり水のワイヤーを断ち切り、木偶杏と一緒にこちらへ向かい殺意をぶつけてくる。
相手は本気のようだ。いや、今まで本気だったがさらに本気にさせてしまったらしい。
あれだけ圧倒的な力の差を見せつけてもなお絶望せずに向かってくる姿は、まさに勇者だ。その姿に人型のバーテックスは敬意を表し、自分も全力で当たることにする。
アリエスの超振動、タウラスの怪音波攻撃、リブラの風を操る能力を合成し、4体の勇者へ向かって放つ。
『滅びの歌を聞けぇえええ!』
ほろびのうた。ポ〇モンで3ターン後に互いのポ〇モンが自滅する効果のある技だ。
これをヒントに人型のバーテックスは木偶勇者たちの動きを封じ、身体が崩壊するような効果を持つ音波攻撃を放つ。
精霊バリアのあるゆゆゆ勇者たちですら釘付けにしたタウラスの音波攻撃。それをアリエスとリブラの能力で強力にしたものだ。
この攻撃を受けると相手は身動きがとれずに自分の身体が超振動により崩れていく姿を見ていることしかできない。
これは効果範囲が限定されるうえ巨大バーテックス相手には他の攻撃手段の方が有効なので封印した技だ。というか、星屑の大群の動きを止めるぐらいしか使い道がない。
だが木偶勇者くらいの大きさの敵ならばこれで充分だ。あとは切り札が切れた瞬間また水のワイヤーでぐるぐる巻きにして動きを止めればいい。
そう思っていた人型のバーテックスと木偶勇者たちの間に、巨大な旋刃盤が盾のように立ちふさがった。
なるほど。そうきたか。
旋刃盤は盾にもなる武器だ。球子はこれでスコーピオン・バーテックスの攻撃を防ごうとして杏と一緒に――。
余計なことを思い出した。
どちらにしてもアレを破壊するのは難しそうだ。今回は巨大フェルマータ・アルタしか連れてきていない。アタッカ・アルタがいれば話は違ったかもしれないがあの盾にもなる武器を壊すことは難しいだろう。
どうしたものかと考えていた人型のバーテックスに向けて木偶杏が矢を放って来た。それを人型のバーテックスは巨大な水球を3連作り出し盾とする。
と同時に木偶若葉と木偶■■が盾となった巨大旋刃盤からそれぞれ左右に分かれてこちらに向かってきた。どうやら挟み撃ちにする気らしい。
刀と拳。リーチの差では木偶若葉の方が上だが脅威度では木偶■■の方が上だ。なのでまずは木偶■■から行動不能にする。
『よっと』
腕を樹海に突っ込み、ピスケスの能力で木偶若葉の進路上に腕を伸ばして足をつかんで樹海の地面に沈みこませる。ついでにアクエリアスの能力で樹海の地面をゲル状にするのも忘れない。
これで足止めはできた。あとはこちらに向かって一直線に向かってくる木偶■■と距離をとり強化したワイヤーで縛れば…。
『そううまくいかないか』
音波攻撃をやめたことで巨大旋刃盤がこちらに向かってきた。武器を操る木偶球子の後ろから木偶杏がボウガンの矢を文字通り矢継ぎ早にこちらに向かって撃ってくる。
どうやら遠距離から木偶■■を無力化しようとしていた人型のバーテックスの目論見は木偶杏にはお見通しらしい。流石西暦勇者の軍師ポジションにいただけはある。
この娘たちをあまり傷つけずに無力化するには一体どうしたら……。
(相手は神樹の根で作られた木偶。それを精霊か何かが核になって動かしている。木偶の身体を破壊して核を取り出すか? いや、それよりも)
相手がただの操り人形ならば、こちらでコントロールを奪うことができないだろうか。
人形、操る、ハッキング。自分の中にいる精霊をあの木偶の中に入れて支配権を奪わせるか? いや、それよりももっと古典的でいい方法がある。
『行けっ!』
木偶勇者に向けてカプリコンの毒ガスとヴァルゴの爆弾を作る能力を融合させて作った目くらましのためのスモークグレネードを放り投げる。視界が煙に覆われ木偶勇者たちは混乱する。
その木偶勇者たちに向け水のワイヤーを次々と射出する。頭、方、腕、足、の関節に潜り込ませ、身体の自由を奪う。
まさしく操り人形。木偶勇者たちはこちらに向かって攻撃しようとするが意思に反して動けない。身体の命令を全体に伝えるはずの部位を人型のバーテックスがワイヤーで制圧したからだ。
これは樹の根でできた木偶人形だからできた手だ。電気信号で動く人間相手だったらここまでうまくはいかなかっただろう。
神樹の体液の流れを水で遮ることで、木偶勇者たちは指一つ動かせなかった。と同時に人型のバーテックスは水のワイヤーを通して木偶勇者たちの中にいる存在の正体を知る。
『義経、輪入道、雪女郎、一目連か。なるほど、西暦勇者と一緒に戦ってきたお前たちなら、あそこまで戦えたのも納得だ』
西暦勇者の中にあり、共にバーテックスと戦ってきた相棒たち。
彼らの協力なしには乃木若葉の章は語れないだろう。そんな存在に敬意を表し、人型のバーテックスは頭を下げる。
『すまないが、先に進ませてもらうよ。そして、ありがとう。勇者亡き後も神樹の中で四国を守ってくれて』
それだけ告げると腕から星屑を生み出し、神樹の元へ放った。
※人型のバーテックスによる神樹様の説得の様子はノーマルルートの「勇者のケンカに創造主が出る」とほぼ同じなのでカットカットカットォッ!
人型のバーテックスの元には神樹の元から多数の神霊が新天地のテラフォーミングした大地へ行くために集まっていた。
神樹も勇者たちを罰しないように神託を下すように人型のバーテックスと約束する。そして祝福も授けるという。
これは四国にいる限り彼女たちに絶対の安全が約束された瞬間でもあった。
『じゃあな、神樹様。よい眠りを。農作物が取れたら四国に運びに来るわ』
【そなたの進む道に幸あらんことを、毛色の違う天の神の使いよ。人の子の未来に幸あれ】
ノーマルルートではここで2人は別れるが、この世界線では違った。
人型のバーテックスはそういえば、というように神樹に尋ねる。
『バーテックスが神樹に触れると世界が滅ぶって言われてるけど、そこらへんどうなんだ? 俺がアンタに触れると、本当に世界が終わるの?』
【いや、あれはものの例えだ。毛色の違う天の神の使いよ。実際は我を切り倒したり破壊する行動をしなければ触れても何の問題もない】
『ふーん、そうなんだぁ』
その言葉を聞いた瞬間、星屑丸出しの人型のバーテックスの顔がニヤリと笑った。
手のひらからもう1体星屑を射出し、神樹の幹に巻き付ける。今度はより太く。まるで神樹を締め付けるかのように。
【これは、何の真似だ毛色の違う天の神の使いよ!】
『ああ、これは念のための保険だよ。決して俺の前に西暦勇者たちの木偶人形を出して守らせたことに怒ってるわけじゃないぞ』
その言葉に嘘だと神樹の主神格は直感した。声が、声が絶対怒ってる感じがする。
『神様ってのはあれなのかね? 自分を命がけで守った勇者に対する感謝の念とかないのか? 自分を守る駒の1つとしか見てらっしゃらない?』
【ま、待て毛色の違う天の神の使いよ! それは我も悪かった。反省する。今にして思えば彼女たちへの扱いも
『どうかなー。口では何とも言えるからなー』
あ、駄目だ。これ絶対信用していない。口ぶりから分かるもん。
神樹はどうやってこの新たな盟友に信用してもらうかを考える。そして出した結論は…。
【わかった。今まで我に尽くしてくれていた勇者や巫女たちがどんな世界でも迷わず幸福であるよう力を尽くそう。本来転生した後の魂に関しては管轄外なのだが、何とか働きかけよう】
『そこまでしてもらおうとは思ってなかったんだけど、まあ、してくれるんならこっちは助かる。もし約束を破るようなら今巻き付いた星屑がお前を西遊記に出てくる孫悟空の頭の輪っかみたいに締め上げるからそのつもりでな』
【肝に銘じよう。新たな主神格にもそう伝える】
そう告げると今度こそ神樹は新しい神格に自我を譲り、自らは四国の寿命を延ばすために消えていった。
淡い緑色の光が樹海に降り注ぐのを見ながら、崩れていく4体の木偶勇者を見て人型のバーテックスは思う。
もし西暦の時代に自分がいたら、彼女たちを救えただろうかと。
考えて、意味のないことだと首を振る。神樹にも言ったではないか。たらればの話をしてもキリがないと。
だがもし、もしも何らかの方法で西暦勇者の元へ行けたとしたのなら彼女たちも救いたい。
それが人型のバーテックスの偽らざる気持ちだった。
ちなみに人型のバーテックスが神樹に巻き付けた星屑には仕掛けがあった。
それは人型の指示があれば神樹を締め付けるだけではなく、人型のバーテックスの記憶から百合作品の珠玉のエピソードを新しく生まれる神樹の主神格に送るというもの。
もちろん神樹に気づかれぬように。神樹の主神格を無意識に珠玉の百合エピソードを視聴し、百合好きに洗脳してしまうのだ。
恐るべき性癖の押し付け。しかも神樹の新神格は生まれたばかりの無垢な子供のようなものなので、知らぬ間に百合好きに染まってしまう。
『やっぱり百合好きの英才教育は早いうちからしないとなー』
そう言って星屑丸出しの顔で笑う人型のバーテックスの姿は、まさしく人類の敵そのものだった。
現勇者。並びに今まで神樹を守る勇者として戦ってきた少女たちと巫女全員の救済完了。
さらに神樹様を百合好きに洗脳する方向で進行中。もう2度と女の子にひどいことできないねぇ!
これで残すは最終決戦。なのに、ちゅるっととゆゆゆ再放送開始までまだ時間が…。
ドウスッペ、ドウスッペ…。
「木偶西暦勇者」
神樹様の樹の根で作られた勇者を模した人形。だが攻撃力は本物と変わらない。
身体全身にバーテックスにとって猛毒である神樹の体液が流れているので、バーテックスにとっては本物より厄介な存在。
中にいた勇者の核となっていた精霊たちはゆゆゆいではおなじみの西暦勇者の精霊。勇者たちが命を散らしてからも神樹の中で四国を見守っていた。
最悪神樹は人型のバーテックスに彼女たちを取り込ませ自爆させて神樹の体液で大ダメージを与えようと画策していたが、しなくてよかったね。
もしそんなことしてたら勇者大好きっ子の人型は逆上して交渉なんか忘れて神樹様伐り倒してました。