詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 あらすじ
 神樹様、最後の抵抗に人型のバーテックス完全勝利の後説得完了。
(+皿+)「最終決戦前に一荒れあるかと思ったけど別にそんなことはなかったぜ」
旧神樹「おかしくない? こういうのお約束としてギリギリまで追い詰められたりするもんじゃないの?」
(+皿+)「ぶっちゃけ2年間で星屑億匹食って能力ほぼカンストしてるし神霊、精霊もいっぱいいてサポートも充実。むしろ負ける要素が見当たらない」
旧神樹「おかしい…こんなことは許されない。ここはお前が死んで主人公交代の流れだっただろう」
(+皿+)「ダイスの出目によってはそれもあり得たんだが…ごめんなー。引き強くって」
旧神樹「ぬぎぎぎ…。ちなみに我が汝に勝っていた出目は?」
(+皿+)「ダイス2個振って2以下で俺は負けてたな」
旧神樹「ファンブルではないか!」
丹羽「よーし、ひだまりスケッチ4作を見終わったら三者三葉、まどか☆マギカ、きんいろモザイク、ご注文はうさぎですか、まちカドまぞく、キルミーベイベー、ゆゆ式、うらら迷路帖、アニマエール、スロウスタート、はるかなレシーブのきらら系全部見よう」
新神樹「わーい」
旧神樹「お前もうちの子に変な英才教育してるんじゃあない!」
 どうせみんな、百合厨になる。


【グッドエンドルート】2つの信念

 神樹と人型のバーテックスが邂逅(かいこう)した翌日。大赦はにわかに慌ただしくなった。

 巫女の口から告げられた、神樹様による神託。その内容は信じがたいものだったのだ。

 まず敵であったはずの人型のバーテックスを朋友とし、共に人類を守るために神樹は四国を、人型のバーテックスは四国以外の土地を再生するために行動しているという話だった。

 しかもかつての中国地方とよばれた土地はすでに再生済みであり、そこには神霊や精霊により地の恵みがあふれていること。

 そこから四国へ向けて食糧支援をする用意があることが告げられた。

 そのことに大赦は上へ下への大騒ぎとなる。壁の外はウイルスが蔓延(まんえん)し、人間が住めない世界だと伝えられていたのだ。

 実はバーテックスが蔓延(はびこ)っていて人類が住めない環境だということをこの時初めて知った人間も多かった。その上で不可能と思われていた土地の再生という偉業をなしたのは自分たちの敵だったバーテックス。

 それを自分たちが信仰している神樹様が朋友としたことに大赦にいる職員の誰もがこう思った。

 神樹様はご乱心なさったのかと。

 だがそれ以上に大赦を混乱させたのは神樹様による実質的な勇者や巫女たちへの謝罪の言葉である。

 歴代の勇者や巫女によく自分に尽くしてくれたという神樹の信者である四国の人々にとっては望外である感謝の言葉を告げ、自分は代替わりし新たな神格がこれから人類を守ると告げた。

 自分は四国の地と一体化して眠り、四国の寿命を100年延ばすと。

 あり得ない。何かの間違いではないか?

 巫女全員を高熱に追いやったかと思えば手のひらを返したように自分たちのためにその身を犠牲にする。

 君子は豹変(ひょうへん)するという言葉もあるが限度があった。これは別の何者かが神樹様に成り代わったのだと説明された方が納得できる。

 巫女の虚言を疑った者もいたが、大赦が把握していない巫女の資質を持つ四国に生きる少女たちも同様の神託を夢として見たという報告からそれが真実だと認めざるを得ない。

 この神託を受けた大赦の最高責任者の行動は早かった。

 今まで大赦の都合で功績を葬って来た巫女や勇者たちに感謝の意を示し、大橋にある英霊碑に新しく名前を刻むことにしたのだ。

 その中には郡千景(こおりちかげ)や弥勒蓮華の名もあった。

 郡千景は西暦時代の勇者であったが彼女の犯した勇者らしからぬ行動や隠匿していた長い歴史から勇者として祀ることに反対する者もいたが、大赦の最高責任者の鶴の一声と四国でも有数の権力者である乃木、上里、土居、伊予島、高嶋の家からの強い要請もあり彼女の名が英霊碑に刻まれることとなる。

 弥勒蓮華も同様だ。彼女の場合は赤嶺と桐生の家が動いた。

 その事実を知った時、防人の弥勒夕海子は人目はばからず大泣きしたそうだ。先祖の功績が認められたことが彼女にとってどれほどの喜びだったのか、想像するしかないがとてもすごい事だったのだろう。

 没落した原因である先祖の勇者ではあったが弥勒夕海子は彼女を尊敬していた。それこそリスペクトして常に弥勒の名に恥じぬ行動を心がけて生きることを選ぶほどに。

「あとはこれからのお役目で弥勒家を再興するだけですわ!」と涙ながらに防人の仲間たちに語っていたと芽吹から聞いた時、丹羽はよかったと思った。その事実だけで自分は後悔なく最後の戦いに向かえる。

 そして人類の仇敵と神託を受けた丹羽明吾だが、正式に大赦が勇者であると発表し四国を守る存在であると大赦の最高責任者の太鼓判が押された。

 それは丹羽明吾を人型のバーテックスの巫女として丁重に扱うようにという神託が下る前に園子と丹羽との話し合いの末、大赦の重役たちと最高責任者が決めていたことだ。もしこの神託がなければ神託に逆らった前代未聞の行動だと非難を受けていただろう。

 だがそうはならなかった。結果的にだが、神託によって四国の敵にされた丹羽は神託により救われたのだ。

 こうして丹羽明吾は大手を振って讃州中学勇者部に戻ることができた。ちなみに神樹によって消された丹羽の記憶や記録は神樹が代替わりをする際元に戻され、事情を知らない大赦の一般職員たちはなぜ丹羽を人類の仇敵という神託を素直に受け入れたのか不思議がっている。

 そこら辺の情報操作は大赦上層部がうまく処理…できるかなぁ?

 本編よりもマシだが相変わらず事後処理とか報告・連絡・相談ができない大赦に任せることに丹羽は一抹の不安を覚える。

 一方で来るべき最終決戦、対レオ・スタークラスター戦に向けて人型のバーテックスと丹羽は動いていた。

 まず園子の提案により防人たち32人にそれぞれ人型のバーテックスが製作した精霊が与えられることになる。これは人型のバーテックスが無数に神霊と精霊を出した時に思いついたらしい。

 これだけいれば、勇者適性のある少女たちを集めた防人隊の皆にも精霊を与えてあげられるのではないか? と。

 防人の変身システムに精霊を入れる作業は亜耶と大赦による全面バックアップで行われた。人型のバーテックスの元からそれぞれ防人1人1人適性に合った精霊が選ばれ与えられることになる。

 これにより防人たちも精霊バリアが使えるようになり、バーテックスとの戦闘での生存確率がぐーんと上がった。

 今までは多数で星屑に当たっていたが、精霊を防人システムに組み込んだことにより全能力が向上。人型のバーテックスが用意した星屑を使った模擬戦で1対1の戦いでも後れを取ることはなくなったようだ。

 これにより勇者対星屑による1対多の戦闘ではなく、多対多による防人たちを加えた戦闘にシフトすることができた。これは勇者の負担を減らす画期的な方針転換だ。

 ただ、いきなり何年も訓練した精鋭である防人のようなチームワークを勇者の8人に期待するのは酷だと判断し、勇者たちは遊撃隊として敵に当たることになった。

 それにいくらパワーアップしたとはいえ巨大バーテックスは防人隊一丸とならねば倒せないだろうという防人隊隊長、楠芽吹の冷静な分析により、防人たちは対星屑戦の露払い。場合によっては一丸となって巨大バーテックスに当たる。勇者たちは万全の状態で巨大バーテックスとの戦闘に突入するという意見で決着した。

 勇者たちも戦闘力の底上げとして人型のバーテックスと丹羽によるコンビとの模擬戦を何度も行った。

 特に樹は人型のバーテックスと同じワイヤー使いということもあり戦闘スタイルに多大な影響を受けたらしい。こっそり自主練でワイヤーを使って拳を作ったり蜘蛛の巣のように張り巡らせてみたり試行錯誤しているのをいつもの波打ち際で訓練しようとしていた夏凛は目撃したらしい。

 図らずもゆゆゆいと同じような訓練をしている樹に丹羽と人型のバーテックスは微笑ましく思った。ああ、やっぱりこの世界の彼女もあの世界の彼女に繋がっているのだと。

 2年間昏睡状態だった銀も訓練により大分以前の勘を取り戻してきた。今までは園子が彼女のカバーに入り見守っていたが、最終決戦までには肩を並べて戦えるように成長しているだろう。

 そんなこんなで今日は防人隊との交流会としてゴールドタワーに勇者部8名は来ていた。

 

 

 

「ようこそ、ゴールドタワーへ。勇者様方。私は防人隊隊長の楠芽吹と申します」

「ご丁寧にどうも。勇者部部長の犬吠埼風です。今回はお招きいただきありがとうございます」

 ぺこりと双方の代表が頭を下げ、風に続いて他の7名も頭を下げる。

「今回は対バーテックスの戦いにむけて交流会として勇者様方を我らの本拠地にお招きいたしました。これからは共にバーテックスと戦っていきましょう」

「ありがとう。アタシたちも一緒に戦ってくれる仲間が増えたことは本当に心強いわ」

 ぎゅっと固く握手をする風と芽吹。

「ビュォオオオ?」

「風メブキテナイデスワー」

「おいこら、そこの百合厨ども。今は真面目な場面なんだから少しは欲望を隠す努力をしなさい」

 いつものごとく百合フィルターを通して自分たちを見つめる丹羽と園子に、風は呆れたように言う。

 それに緊張していた空気が弛緩した。防人と勇者たちから苦笑が漏れる。

「やっぱりメブにぼ、にぼメブですねー。風メブにはまだ親愛度が足りません」

「そうだねー。メブーは真面目だから最初のとっつきにくい印象のせいでちょっと損してるんよー。まあ、そこに惹かれる女の子もいるからなんともいえないねー」

「自分としては大正義メブあやですかね。メブしず、メブすず共依存もいいけど、母性的な年下に甘やかされる不器用なお姉ちゃんっていいと思うんですよー」

「わかるー。メブーって、頼りがいがあるけど逆に無茶苦茶甘やかしたくなる性格してるよねー。母性強い女の子と組み合わせると最高なんだぜー」

「そう考えると犬吠埼先輩には素質があると思うんですが。女子力オカン級ですし」

「今後に期待だねー。もっとメブーがふーみん先輩に心を開いて甘えるような展開を希望なんよー」

「あの、園子様。メブーとは私のことでしょうか?」

 カップリングまでいたらない風メブという組み合わせにどうすればもっと百合イチャな空間になるか相談する丹羽と園子に、芽吹が口元をひくつかせながら言う。

 黙って聞いてれば人が母性に弱いだのなんだのと事実無根のことを好き勝手言って。しかし2人ともに恩があるため芽吹は強く出れない。

「様付け禁止! これからは一緒に戦う仲間なんだから。防人の皆もだよ!」

 園子の言葉に防人たちは困惑する。それに夏凜はため息をついて言った。

「諦めなさい、楠芽吹。この子はこういう子なんだから、下手に敬って様付けしてると機嫌を損ねるわよ」

「三好夏凛…」

「そうそう、一緒に戦う仲間なんだから仲良くしたほうがいいって。それに芽吹は同い年だろ? あたしは銀でいいぜ」

 さっそく自己紹介してグイグイ来るのは2年前勇者でつい先日まで意識不明だった三ノ輪銀だ。

「園子に聞いたけど、あたしを壁の外から四国まで運んでくれたのは防人のみんななんだってな。ありがとう!」

「い、いえそんな! 勇者様方にお礼を言われるなど、もったいないお言葉です」

「いや、そんなにかしこまれるとこっちが困るって。あたしにとって防人のみんな1人1人が命の恩人なんだから。それに、同学年の人に敬語でしゃべられると何となく距離があるみたいで寂しいし」

 しゅんとする銀に思わずうっ、と芽吹は言葉を詰まらせる。なんだか捨てられた子犬のような表情で、自分が悪い事をしているみたいだ。

「楠さん。あなたにもあなたの考えがあるんでしょうけど今日は勇者部と防人隊のみんなとの交流会。これから一緒に戦う仲間として信頼関係を築こうとする集まりよ。乃木と銀の言っていることは間違ってないと思うけど」

 部長の風にこういわれては、芽吹も折れるしかなかった。改めてしょんぼりとしている銀に声をかける。

「わかりました。これからは敬語禁止ということで三ノ輪さ…さん。園子さん」

「銀でいいって。こちらこそよろしくな、芽吹!」

 笑顔でしっかりと握手した2人に続き、勇者部の他の面々も防人たちに挨拶をしていく。

「私、結城友奈。よろしくね!」

「加賀城雀です。ところで結城さんって強い? もしよかったら私のこと守ってくれな…なんでもないです、はい」

 自分を守ってくれと友奈に告げようとした瞬間雀の危機感知センサーが反応したのですぐさまごまかした。急いで周囲を見ると黒髪が長い勇者の女の子が自分を般若のような顔でにらんでいる。コワイ!

「犬吠埼樹です。あの、よろしくお願いします」

「山伏しずく…。よろしく」

 名前を名乗ったのはいいが握手もせず2人の間に沈黙が降りる。

 2人とも積極的な性格ではなく、どちらかと言えば内気な性格だ。しずくの中にいるシズクは正反対の性格だが、今は眠っている。

「えっと、ご趣味は…」

「ラーメンの店巡り…とか? 樹ちゃんは?」

「あ、わたしはその。占いとお料理とかですかね」

「「「「「え?」」」」」

 樹の言葉に銀と園子以外の勇者部メンバーが固まった。何か変なことを言ったかな? と樹は首をかしげている。

「精霊、かわいいね…。木霊だっけ? いい匂いする」

「はい。かわいいんですよー。しずくさんの精霊もかわいいですね。チワワみたいで」

 しずくの肩に乗る雲に包まれた体躯の耳が長いフェネック狐のような精霊、つぶらな瞳の雷獣を見て樹が言う。樹の精霊の木霊も同じように肩の上あたりを浮いていた。

「人型からもらった精霊。こう見えて、結構役に立つ」

「へー。どんな風にですか?」

「どこでもスマホのバッテリーを充電できる」

 エッヘンと胸を張るしずくに、それはすごいですねと樹はキャキャと笑っている。

「うう、うちの妹が、うちの妹が初対面の相手とあんなに楽しそうに話して…」

「あんた、どんだけ妹が好きなのよ」

 一方陰ながらその様子を見ていた風がガン泣きしているのを、夏凜が白い目で見ていた。

「しずくさん。しずくさんがわたくしたち以外と普通にお話を! シズクさんに頼らずきちんと話してますわよ芽吹さん!」

「わかりましたから、落ち着いてください弥勒さん。私も他の勇者の方々とお話ししなければならないので」

 ちなみに同じように夕海子もしずくが樹と仲良く話している姿に感激していた。どうやらこの世界の3年生組は保護者ポジションで涙もろいらしい。

『シズクさーん!』

 そんな時だった。1体の精霊がしずくの胸元に飛び込んできたのは。

 その姿を見て、しずくは息をのむ。そしてその精霊を追って来た銀を見て思わず顔をそむけた。

「おいこらスミ! お前また勝手に出てきて防人の女の子の山脈にビバークするなんてうらやまけしからんことを! 後で須美に怒られるのはあたしなんだぞ!」

 息をつかせしずくの胸元にいたスミをひっつかんだ銀は、スミが抱き着いた娘の胸が慎ましいことに違和感を覚えたが迷惑をかけたことに変わりはないと頭を下げる。

「すいません、うちの精霊が。ごめんな、樹ちゃん。楽しく話してたのに」

「いえ、むしろ良かったです。……平野とか盆地とか名前を付けられる前で」

 スミに植え付けられたトラウマを思い出し我知らず胸を押さえる樹。その様子に首をひねりながら、銀は目の前の少女に改めて自己紹介する。

「ごめんな、あたしは三ノ輪銀。よろしくな」

「……知ってる」

 ぽつりとつぶやかれた言葉に「え?」と思わず銀は訊き返す。

「わたし、神樹館小学校に通ってたから、あなたたちのこと、知ってる」

「マジかー。だったらあたしや園子、須美とも会ってたのか?」

「うん。多分3人は憶えてないかもしれないけど、同じ訓練所にいた。すぐ脱落したけど」

 その言葉に銀はしずくの顔を見ようとするがなぜか避けられた。顔を背けるほうへ向かうがそのたびに顔を背けられる。

「なんで顔を見せてくれないんだ?」

「その…はずかしいから。それに、どんな顔であなたに会えばいいのか、わからない」

「なんだそりゃ。あたし、2年前になんかしたっけ? それとも訓練所時代になにか?」

「違う! 三ノ輪は全然悪くない。ただ、わたしが一方的に憧れてただけ。だから、どういう顔をしていいかわからない」

 そう言うしずくの耳は真っ赤に染まっていた。肌が白いのでわかりやすい。

「えい!」

「わっ、何をするんだ犬吠埼⁉」

「銀さん、今です!」

 いつまでも目の前でうろうろしている銀に業を煮やしたのか、樹がしずくを取り押さえる。

「っ⁉ やめて、わたし、三ノ輪に顔を見られたくない」

「大丈夫ですよ。付き合いは短いですけど、銀さんはいい人だってわかってますから。しずくさんにひどいことはしないはずです」

 樹がそう言った時にはしずくの至近距離に銀の顔があった。

 白い外跳ね気味の髪が犬の耳のようだ。右目が隠れているが綺麗な顔だと思う。一体どこが恥ずかしいのだろうと銀は思った。

「なんだ、すっげー美人じゃん。こりゃあたしが男だったらほっとかねーな。すげーかわいい」

 にっこりと太陽のような笑顔で憧れの人に言われ、しずくの顔は真っ赤になる。

「って、あれ? たしかあたしと会って話したことあったよな? 山伏しずくさんだろ」

「憶えてて…くれたの?」

「もっちろん、ダチの名前忘れるわけないじゃん!」

 2人の世界を作っている銀としずくを見て、樹は席を外すことにした。

 どうやら自分はお邪魔のようだ。積もる話もあるようだし、ここは2人きりにしてあげよう。

「てぇてぇ、てぇてぇ、銀しずてぇてぇ」

「これはいい風吹いてるんよ。ビュォオオオ!」

「はいはい、2人とも邪魔しない」

 こういう手合いから守ってあげるのも後輩の務めだと樹は気配を消して成り行きを見守っていた丹羽と園子を変身してワイヤーで縛り上げ連れて行った。

「樹、人を気遣えるあんなに立派な女の子になって…お姉ちゃん感激!」

「風、次はあの人よ。あんたは勇者部の顔なんだからもうちょっとしまりのある顔しなさい。そんな涙流して妹の成長に感動するのは後にして」

「しずくさんが、しずくさんがぁ…よかった、よかったですわー」

「弥勒さん、泣いている場合じゃないですよ。もうすぐ勇者部部長の犬吠埼さんとお話するんですから、その泣き顔はやめてください」

 こうして夏凜と芽吹によって引き合わされた3年生組は、まず互いの妹と後輩の成長を喜び合うことから会話が始まったのだった。

 

 

 

 あいさつ回りも一段落し、交流会はつつがなく進行していた。

「なんで楠芽吹の精霊があたしの義輝と似てるのよ、このパチモン!」

「心外だわ、三好夏凛。私の尊氏の方がよっぽど造形美がとれてるわよ」

 自分の精霊義輝を出し、芽吹の精霊の兜をかぶった人型の精霊に夏凛がいちゃもんをつけている。

「弥勒さんの精霊って座敷童って言うんですかー。かわいいですね」

「おほほほ、ありがとうございますわ。友奈さんの牛鬼も大変かわいらしいですわ」

 花の髪飾りをしたメカクレおかっぱの着物を着た女の子の精霊、座敷童を見て友奈が言う。それに夕海子はまんざらでもない様子だ。

「雀さんの精霊は…燃えてますね」

「そうね。なんかローストチキン食べたくなって来たわ」

「ひどい!」

 翼とトサカが炎のように燃えているでっぷりとしたニワトリのような精霊、波山を見た犬吠埼姉妹の評価に、雀が涙目になっていた。

「他の子たちも精霊をそれぞれ持ってるのね…。これ、全部人型さんが?」

「そうなんよー。すごいでしょー」

 東郷の言葉にエッヘンと胸を張る園子。それに「いや、園子をほめてるんじゃないぞー」と銀が優しくツッコむ。

「そう言えば銀、さっき防人の女の子と話し込んでたけど、どうしたの?」

「ん? 連絡先交換してた。で、今度一緒にラーメン食いに行く約束した」

 その言葉に「おおっ」と丹羽と園子は身を乗り出した。

 さすがわすゆ組のコミュ力おばけ。もう連絡先交換とデートのお約束までしているとは。

「これはこれからにも期待ですね、そのっち先輩」

「だねー。わたしたちは2人を優しく見守っていくんよー」

 キラキラした目で自分を見る丹羽と園子に戸惑いながら、銀は東郷にしずくのことを話していた。

「まさか神樹館小学校の同級生が防人の中にいるとはなー。って、ごめん、須美は記憶がないんだっけか」

「いえ、それが最近徐々に思い出しているの。多分、人型さんと神樹様の話し合いがうまくいったおかげね。今は自分の記憶としてちゃんと実感を持っているわ」

「おお! そりゃよかったな! あたしも嬉しーぜ!」

 東郷の言葉に、銀はまるで自分のことのように喜ぶ。それを見て、彼女は小学生のころからこんなふうだったなぁと東郷は初めて実感を持って懐かしく思ったのだった。

「で、丹羽? 人型さんは最後の戦いはどうなるって言ってるの?」

 風の言葉にその場にいた全員が丹羽を見た。丹羽はこほんと咳払いをして、最終決戦の概要を話す。

「敵はレオ・スタークラスター。獅子座に複数の12星座の巨大バーテックスが融合した超弩級バーテックスです。これまで戦ってきたどのバーテックスよりも強い存在と言ってもいいでしょう」

 その言葉に全員がゴクリ、と生唾を飲む。

「星屑もかなりの数が出現します。でもこれは防人隊の皆さんの協力があれば問題なく対処できるでしょう。問題なのは…三好先輩、結城先輩。お2人は絶対満開を使わないでくださいね」

「ちょっと、なんであたしが名指しなのよ!」

「丹羽君、私そんなに信用ないかなぁ」

 丹羽に名指しされた夏凜と友奈が抗議の声を上げる。しかし本編視聴済みの丹羽からしたら、注意せずにはいられなかった。

「特に結城先輩。自分が犠牲になってみんなを助けようとかいう考えはこの際捨ててください。そんなこと考えるくらいなら助けて! って叫んでくれたほうがいいです。そうすればここにいる39人の誰かが先輩を助けに行きます。だから決して自分1人で抱え込まないで、自己犠牲をしてまで敵を倒そうとは思わないで下さい」

 現に本編では変身不能な状態から無理やり満開して身体のほとんどを神樹に作り替えられてしまったのでこの忠告でも優しいくらいだ。

 丹羽の言葉に友奈はしゅんと肩を落としている。思い当たることがあるのか、少しは反省してくれているようだ。

「そうよ、友奈ちゃん。困ったときは私を呼んで、すぐに駆け付けるわ」

 東郷はぎゅっと友奈の手を握る。あら^~ゆうみもの夜明け~!

「勇者部5箇条、悩んだら相談。ですよ、友奈さん」

 ひょっこりと東郷の横から顔を出し、樹が言う。

「そうよ友奈。アタシとアンタと東郷の3人で作った勇者部5箇条でしょ。だったら守らなきゃ」

 笑顔で風が言う。本編なら今頃「大赦をつぶす!」と血気盛んに乗り込んでいる時期だが、そんな気配はみじんも感じさせない。

「ったく、トーシローが。なんてもう言えないわね。完成型勇者のあたしと一緒に戦ってくれるあんたたちに、任せるところは任せるわよ。だから、あんたもあたしを頼りなさい」

 本編で暴走する風を止めるために必死になっていた夏凜はここにはいない。いるのは穏やかな笑みで自分と戦ってきた仲間の実力を認め、信じて頼るように告げる少女だ。

「ゆーゆ。わたしたちのことも頼っていいんよー。勇者はにわみんを含めて8人もいるんだし、心配いらないんだぜー」

 と園子。本編では戦闘に参加しなかった最強の勇者がいてくれるというだけで心強い。

「そうだな。あたしたちの時は3人だったからギリギリだったけど、こんだけ数がいるんだ。どれだけ強い敵でも余裕だろ」

 楽観的な口ぶりだが、瞳の奥にある炎を隠しきれていない銀が言う。

 本編では2年前に死んでしまった彼女もこの戦いに力を貸してくれる。その事実だけで丹羽の胸は尊いでいっぱいになりそうだ。

「結城さん。少しいい?」

 勇者たちにどう返事をしようか困惑していた友奈に声をかけたのは、防人隊隊長の芽吹だった。

「私たち防人は、いわば使い捨ての道具。園子様が引き上げてくれてもこの事実は変わらないの。勇者と違い消耗品。死んでも代わりがいる」

 その言葉に「ちょっと!」と芽吹にかみつこうとしていた夏凛を、園子が止める。話は最後まで聞けと。

「だから、私は防人隊の隊長として皆を絶対に誰1人欠けることなく生きて帰ってこれるように努力した。なにもかも足りない私だったけど、幸い支えてくれる仲間がいた。足りない部分を補ってくれる仲間がいた。だから、私は隊長でいられた」

 その言葉を、防人たちは静かに聞いていた。茶化す者は誰もいない。

「結城さん、こんなこと防人の私が勇者のあなたに言うのは恐れ多いことだとわかっているけど、言うわ。あなたを死なせない。ううん、あなただけじゃなくて、私たちと一緒に戦うみんなを絶対に死なせない。それが私の信念だから」

 芽吹はそう告げると友奈に手を伸ばす。

「私が防人たちの隊長である限り、園子さ…んや他の勇者様たちから聞いていたあなたの自己犠牲の精神を私は許さない。だって、あなたももう私たちと一緒に絶対に生きて帰るみんなのうちの1人に入っているんだから」

「でも、それでももし私が犠牲になることで、満開して戦うことでみんなが助かるなら」

「そんなことさせない。そのための作戦は私が考えるわ。だから、信じて…とは言えないわよね。でも、あなたたちが帰る四国はきっと私たちが守ってみせる。だから、あなたたちも誰1人欠けずに帰って来て」

 告げる芽吹の視線は真剣だ。その視線を受け、友奈はうなずき差し出された手を取った。

「わかった。私、みんなを信じる。だから、芽吹ちゃんも私を信じて。必ず、バーテックスは私たちが倒すよ」

「その意気よ、友奈! ……あ、失礼。つい」

「友奈でいいよー。私も芽吹ちゃんって呼ぶし」

 呼び捨てしたことにオロオロする芽吹とニコニコと握手する友奈。

 さっきまでの勇ましさはどこに言ったのか。苦笑する防人隊と勇者たち。

「友奈ちゃん、あんなに嬉しそうな顔で…まさか恋のライバルが⁉」

「どう思います、そのっち先輩?」

「ビュォオオオですなぁ。絶対皆を守るウーマンゆーゆと絶対皆と生きて帰るウーマンメブー。まさに互いが互いを補い合うベストマッチ。これはナイスカップリングです」

「互いに主人公気質であり正反対の考えの2人。凸と凹がぴったりはまるようなカップリングなのですね。ありがとうごさいます」

 一方友奈ちゃん大好きっ子東郷は新たなライバルの出現に戦々恐々とし、百合厨2人がカップリングに対して評価をしていた。

 その様子に若干引く防人たち。こいつら、懲りないなぁと勇者部の面々はため息をつく。

 こうして防人隊と勇者部の交流会は大成功。互いに相互理解を深め、共に戦おうと誓い合った。

 そして数日が過ぎ運命の日。

 樹海化警報と共に勇者と防人たちは樹海へと飛ばされた。

 来たるはレオ・スタークラスター。ゆゆゆ最強の敵にして最後の敵。

 迎え撃つは防人32人と勇者8人の計40人。

 本編とは大幅に筋書きが異なった最終決戦が、今始まる。




 精霊バリアー所持済み強化版防人隊32名。
 本編にいなかったそのっちと銀ちゃんが加わった勇者部8名。
 まさにドリームチーム。
レオ・スタークラスター「なにこの無理ゲー。俺、最終的に友奈ちゃん1人にやられたんだぜ?」
 ハンデとして勇者たちは満開を使えないが勝てるのか、レオ・スタークラスター?
 そこ、消化試合とか言わない!
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