詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
勇者と防人たちがパワーアップ! 交流会により勇者と防人たちの新カップリングに丹羽君と園子様もニッコリ。
風「うちの妹がかわいくってねー」
夕海子「わかりますわー。わたくしも亜耶さんやしずくさんがかわいくて仕方ないんですの。雀さんは小憎たらしいですけど」
風「わかるー。うちにも小憎たらしいのが1人いるのよー。まあ、口が悪いだけで本当はかわいいんだけど」
夕海子「うちも同じですわー。なんだかわたくしたち、似た者同士ですわね」
風「そうねー。あ、アドレス交換しない? 嫌なことあったらお互い愚痴りあいましょ。下級生にはそんな所見せられないし」
夕海子「そうですわね。わたくしたちがしっかりしないと」
雀「納得いかない。弥勒さんが常識人ポジにいることが」(通りすがり)
しずく「むしろわたしたちが世話を焼いている」(上に同じ)
芽吹「おかしい。防人隊隊長の私がアドレスを交換するのはあんなに苦労したのに、弥勒さんとはあんなにあっさりと」
夏凜「誰が口悪くて小憎たらしいですってぇ! 風のやつぅ~。それに、だ、誰がかわいいよ」
樹「あ、自覚はあったんですね」
園子「風ゆみ? ゆみ風?」
丹羽(お嬢様ムーブしない方が落ち着いて大人っぽい感じなんだよな弥勒さん。まあ、アレも個性なんだけど)
自分たちに向かってくる無数の星屑たちを前に、芽吹は冷静に防人隊たちに号令を飛ばす。
「銃剣隊射撃準備! 目標は目の前の星屑、今までとは違い1体に集中射撃する必要はないわ。1人1体、確実に倒していきましょう!」
芽吹の指示に銃剣隊はそれぞれ別の星屑たちを正確に目標を捉える。あとは号令の下引き金を引くだけだ。
「撃て―っ!」
芽吹の号令と共に銃剣から銃弾が放たれる。芽吹の宣言通り正確に星屑の眉間を銃弾が撃ち抜き、星屑たちは消滅していく。
「撃ち方止め! 第2陣、撃ち方構え! その間に第1陣は弾込め! 護盾隊もそろそろ準備をしておいて」
「あのさメブ、もう銃剣隊だけでいいんじゃないかな? こんな撃てばどこかの星屑に当たる状況なんだし、無理に私たちが出なくても」
「何をおっしゃってますの雀さん。ここからが踏ん張りどころですわよ!」
「つべこべ言わず行ってこい! こっちは息つく暇もねえんだ!」
恐る恐る提案した雀に弥勒とシズクが論外とばかりに即座に否定した。それに雀は涙目だ。
「頼りにしてるわよ、雀。護盾隊は防人隊の戦略の要だから、防人隊の生存はあなたたちにかかっていると言っていい」
「メブも必要以上にプレッシャーかけてくるし―! もうやけっぱちだー! みんなー! 精霊でパワーアップした私たちの頑丈さを見せてやろうぜー!」
半泣き状態で護盾隊を率いて進行してくる星屑たちの前に立ちふさがる雀。精霊の効果により敵の動きを封じる巨大な盾が神樹の結界の中に入って来ようとする星屑たちの侵入を阻む。
それは銃剣隊にとって格好の的だった。
「撃て撃て撃てーっ! 雀も言ったけど適当に撃ってもどこかの星屑に当たる状況よ! 弾倉が空になるまで撃ったら後退、第1陣と交代して相手を休ませるな! ここにいる星屑たちは全部私たちが倒すのよ!」
芽吹の言葉に「おおっ!」と奮起して銃を撃ちまくる防人たち。
その光景を見て勇者たちは呆気に取られていた。
無駄のない戦略。合理的な判断。さらに部隊の防人たちを鼓舞する芽吹の号令。
すべてが自分たちにないものだった。まさしく圧巻。次々と消えていく星屑たちに、思わず感嘆の声を漏らす。
「すごいのね、防人って…。アタシたちと違ってプロフェッショナルって感じだわ」
風の言葉に東郷もうなずく。
「ええ。西暦時代の自衛隊もかくやという息の合った練度です。国防の志士の精神が彼女たちに受け継がれていて、私は感動を禁じえません」
「いやいやわっしー。あれはメブーが近代戦術を勉強して色々防人の戦法として取り入れただけ…あ、駄目だこれ、聞いてない」
目がグルグルしている東郷に園子がやれやれといった様子で首を振る。これから最終決戦なのに護国思想モードで大丈夫だろうか?
「しかし本当にスゲーなあれ。遠距離武器と言えば須美の弓矢しかなかったから、あれだけの数の銃で一斉射撃すれば楽勝じゃないか?」
「でもないわよ。芽吹も言ってたでしょ。巨大バーテックス相手には防人隊一丸となって当たらないと倒せないって。あたしたちはその巨大バーテックスが出てきてからが本番。気を引き締めましょう」
銀の言葉に冷静に夏凜が指摘する。その表情は防人たちの戦いを誇らしく思うと同時に、なぜあの場に自分がいないのか悔しがっているようにも見えた。
「星屑の数、すごい勢いで減っています! この調子なら…」
「あっ、文字見えた! 獅子座…これが丹羽君と人型さんが言ってた最後の敵かな?」
一方でスマホの地図アプリを開き戦局を見守っていた樹と友奈はついに出てきた巨大バーテックスに声を上げる。その言葉に勇者たちは一斉にスマホの地図アプリを起動させた。
「確かに、獅子座って表示されてる。…ん? 他にもいくつか射手座とか巨大バーテックスの表記があるんだけど?」
「あ、言い忘れてましたけど、レオ・スタークラスターの他にも今まで戦ってきた12星座全員出てきますから」
丹羽の言葉に勇者たちの間に沈黙が降りる。え、なにそれ聞いてないんだけど?
「でもどうせ御霊なしのもどきだから楽勝ですよ。気を付けるべきはレオ・スタークラスター1体なので皆さん心配いりません」
「そういう問題じゃないでしょ!」
風の言葉を皮切りに、丹羽が勇者部全員にフルボッコにされる。
「にわみーん、この情報漏れはさすがに笑えないかなー」
「あんた、言ったわよね。レオ・スタークラスター1体だって! なのになんで他の11体まで来てるのよ!」
「普段あれだけ大赦の悪口で報告、連絡、相談ができてないって言ってるのにこの有様はさすがに笑えないよ丹羽くん」
「これは許されない、許されない失態よ丹羽君!」
「ま、まあまあ須美。それに園子。丹羽もうっかり言い忘れてただけだって。な?」
「そうだよみんな。そんなに丹羽君のこと怒らないであげて。それよりほら、防人隊の人すごいよ! もうほとんど星屑を倒してる!」
上から園子、夏凜、樹、東郷、銀、友奈の発言である。
こんな状況で自分をかばってくれるなんて天使か! と丹羽は銀と友奈に感謝した。そしてこの失態を何とか挽回しなければと心に決める。
「わかりました。レオ・スタークラスターの足止めは俺に任せてください。皆さんはその間に他の星座級もどきを」
「「「「「「「そういうことを言ってるんじゃない!」」」」」」」
なぜか負担が多い部分を引き受けようとしたら全員から怒られてしまった。丹羽は目を白黒させる。
「まったく、丹羽くんは丹羽くんなんだから! そういうところだよ!」
「そうね、樹。この馬鹿はある意味友奈以上の自己犠牲馬鹿だから、あたしたちの目の届く場所に置いておかないと」
「最初に決めたでしょ、2人1組で動き、全員でそのレオ・スタークラスターを倒すって。アンタは今回友奈と組むのよ」
やれやれと呆れたように言う樹と夏凜。
「友奈ちゃんと組むなんて本当は私がやりたかったのに…今回だけは譲ってげるわ。だから勝手に責任を感じて危ないことしないで」
「そうだぜにわみーん。まずは邪魔な星座級もどきを倒して、全員でそのレオ・スタークラスターを倒そー!」
黒いオーラを若干放つ東郷と明るく言う園子。
「それに、お前精霊1体なんだろ? あたしたちに自分の精霊分けてる余裕あるのか?」
「そうだよ丹羽君。せめて私たちの中にいる精霊さんを自分の中に戻したら?」
「それはダメですって。それだとみなさんの生存確率が下がります。俺はアカミネさん1体で大丈夫ですから」
銀と友奈の言う通り丹羽は本来自分の精霊である人型の精霊を他の勇者たちに分け与えていた。
これは互いの相性を見て判断した。遠距離攻撃の東郷にはクリティカルアップの効果を与えるセッカ、大剣使いの風には攻撃スピードアップのナツメ、ワイヤー使いの樹には同じく範囲攻撃型のウタノ、二刀流の夏凜には同じく刀剣使いのミロク、銀には相性抜群のスミ。
巫女のミトとシズカはどうしようかと思ったが効果が全体の能力アップということで四国の中で勇者適性最大値を叩き出した友奈と現在最強の存在である勇者の園子の中に入れることにした。これで満開しなくても充分戦うことができるだろう。
そのことは前もって作戦会議の時に話したはずだが、納得いっていないらしい。丹羽は改めて7人に告げる。
「今回の戦いは、誰1人失わずにみんなが生きて帰ってくるための戦いです。だから、俺も無茶はしません。みなさんも無茶しないでください。絶対勝って生きて帰りましょう」
「「どの口が言うのよ!」」
丹羽の言葉に風と夏凜はお冠のようだ。何か怒らせることを言っただろうか? と丹羽は首をひねる。
「園子さ…ん。勇者部のみんな、そろそろ星屑のせん滅が終わるわ! 準備はいい?」
芽吹の言葉に戦況を確認すると確かに星屑はもう数えるほどしかいない。風たちは改めて防人たちの練度の高さに驚く。
「すごいわね…さすがスペシャリスト集団」
「そうだねー。さすがだよメブー」
「勇者の皆さんに褒めてもらえるとは望外のお言葉です。我々も装備を整え次第皆様の援護に回りたいと思いますが」
「ううん。芽吹ちゃんはここで四国を守ってて。バーテックス達は、私たちが倒してくるよ」
芽吹の提案に、友奈が首を振った。以前の芽吹なら食い下がっていただろうが、その言葉にうなずき笑顔を浮かべる。
「わかったわ。友奈さん。勇者の皆さんもお気をつけて。四国は我々防人が守って見せます。三好夏凛。あなたもみなさんの足を引っ張るんじゃないわよ」
「なんであたしだけ呼び捨てなのよ楠芽吹!」
敬礼したあと雑にメブにぼしている2人に「メブにぼキテマスワー!」「ビュォオオオ!」と目を輝かせている丹羽と園子を風が引っ張っていく。こいつら、こんな状況でも平常運転だ。
「じゃあ、作戦通りに。2人1組でまずはもどきを倒して丹羽と友奈が戦っているレオ・スタークラスターに援護に行きましょう。御霊なしのもどきだから楽勝だと思うけど、みんな油断しないで」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」
風の言葉に7人が返事をする。その様子を見て、大きくうなずいた風はこれが最後かもしれないと丹羽と友奈の肩を組む。
「最後だから、例のアレ。やっときましょう。みんなが帰ってこれるように」
「犬吠埼先輩、それってモロに死亡フラグなんですけど…まあ、いいか」
友奈の隣に東郷が、東郷の隣に夏凛がと続き、銀の隣の園子が丹羽と肩を組んで円陣になる。
「讃州中学勇者部、ファイトー!」
「「「「「「「おーっ!」」」」」」」
こうして勇者部最後の戦いが始まった。
犬吠埼風、樹姉妹の前に現れたのは乙女座もどき、双子座もどき、蠍座もどきの3体だ。
「行くわよ樹! まずアタシが道を切り開く!」
「わかった。後ろは任せて!」
声を上げるや否や3体に突っ込んでいく風。その後ろについて行きながら樹は早くもワイヤーを展開していた。
高速で自分たちに向かってきた双子座もどきの足を樹のワイヤーが絡め捕る。動けずもがいているところを風が大剣で一刀両断し残り2体の元へ向かう。
「その攻撃は、もう見たのよ!」
扇状に展開させた乙女座もどきの爆弾を巨大化させた大剣で切り裂く。一拍置いて爆発音が樹海に響いた。
「樹!」
「うん、お姉ちゃん!」
名前を呼ばれただけで樹には姉の意図することを正確に理解する。さらに爆弾をこちらに向かって放り投げようとする乙女座もどきから爆弾をワイヤーでかっさらい、一塊にして逆に乙女座もどきに向かって放り投げる。
自分自身が放った爆弾をその身に受けて乙女座もどきは泡を食っていた。もうもうとした爆煙で視界がふさがれる中、一筋の光がその煙を切り裂く。
と同時に乙女座もどきの視界が縦に2分割される。訳が分からず混乱する乙女座もどきが自分自身が巨大化した風の大剣で切断されたのだと知ったのは絶命する寸前だった。
残り1体は蠍座もどき。丹羽が倒した蟹座と射手座を引き連れてやってきた巨大バーテックスだ。
「あんたの弱点は、わかってるのよ!」
下半身にある毒液が溜った数珠のような尻尾。それを破壊すれば勝負は決まる。
だがそうはさせないと蠍座は必殺の毒針が付いた尻尾を振るう。風は懸命に避けるが乙女座もどきの死骸に足をとられ足元を滑らせる。
しまった、と思った時にはもう遅い。必殺の一撃が風の元に迫っていた。
「させない!」
それを救ったのは樹のワイヤーだった。風の身体に巻き付き自分の元に引き寄せる。
間一髪毒針は乙女座もどきの死骸に刺さり、その体躯をグズグズに溶かしていった。
「助かったわ、樹。さすができたアタシ自慢の妹!」
「お姉ちゃん、今そういうのいいから」
ぎゅーっと抱きしめようとする姉に樹は冷静に返し、3度振るわれた蠍座もどきの尾に対し高速で指を動かしワイヤーを自分の思い描くように動かす。
蠍座もどきの毒針がついた尾が犬吠埼姉妹に迫る…と思った瞬間、宙で静止した。訳が分からず戸惑っている蠍座もどきに、樹は姉に向かって言い放つ。
「やっちゃって、おねえちゃん」
「おうさ! 勇者部部長の女子力、見せてあげるわ!」
空中に蜘蛛の巣のように張り巡らされたワイヤーに捕まり制止している球体が連なった尻尾に、風の大剣が振るわれる。
勇者の武器の一撃に耐え切れず、球体が割れて毒液が樹海の地面を汚してく。それに断末魔のような叫び声を上げて蠍座もどきはのたうち回った。
「アンタの敗因。それはアタシたち姉妹の女子力を侮ったことよ」
「おねえちゃん、そういうのいいから早く倒してみんなと合流しよ?」
笑顔で風は大剣を上段に構え、樹はワイヤーを今度は拳のような形にしている。
嫌だ、こんなところで終わりたくない!
しかしそんな蠍座もどきの願いはかなうことなく、風の大剣の一撃とワイヤーで再現された勇者パンチにより絶命したのだった。
夏凜と銀の前に現れたのは山羊座もどき、射手座もどき、蟹座もどきの3体だった。
「山羊座…どうやらあんたとあたしはほとほと縁があるみたいね。他の2体はあたしは初対面だけど」
「あたしは3体とも戦ったことあるぞ。というか、最後に戦った3体のうちの2体だ」
それぞれに因縁がある3体のバーテックスに、どう攻撃したものかと2人は話し合う。
「山羊座は地面を揺らしてくる。あの蟹座は射手座の攻撃を反射するコンビネーションが厄介だぞ」
「なるほどね。じゃあ、最初にどっちかを倒しましょう。いける? ミロク」
夏凛の声と共に胸元から丹羽の精霊であるミロクが現れる。
『フッ、このミロクにかかればその程度のこと造作もないわ。早く倒してしまいましょう』
「あんた、本当に弥勒さんのご先祖様みたいね…。あの弥勒さんのキャラが薄く感じるほど濃いわ」
「スミ、あたしらも行くぞ! 目指すは射手座だ!」
『よっしゃー!』
言葉と共に精霊が2人の中に入り、2人の持つ武器が光った。
切り札状態ではないが丹羽の精霊は勇者と一体化することでその能力を引き上げる。それはアクエリアス・スタークラスター戦で東郷が証明済みだ。
「いくぞ夏凜! 遅れるなよ!」
「誰に言ってるのよ! この完成型勇者がバーテックス退治のお手本を見せてあげるわよ、先輩!」
2人の赤い勇者服が射手座に向かって走る。それを見た蟹座もどきは射手座もどきの前に立ちふさがり、山羊座もどきは地面を揺らし進行を阻止しようとした。
「来るっ! よし、飛べ、夏凜!」
「ぶっつけで無茶なこと言ってくれるわ…ねっ!」
樹海の地面が揺れる前に銀は自分の背中を発射台代わりにして夏凜に飛ぶように言う。それに応えた夏凜は銀の背中を足場にして跳躍した。
空中を飛ぶ夏凜目掛け射手座もどきが無数の矢を放つ。それを次々と切り払い夏凜は着地地点にいた射手座もどき目掛け二振りの刀を振り下ろした。
「思い知れ! これが完成型勇者の実力だぁあああ!」
紫電一閃。
射手座もどきの弓のような体躯は何度も切り裂かれ、ぼろぼろと崩れ始める。
「うぉおおおお!」
山羊座もどきの地震、アースシェイクを斧を樹海に刺して耐えた銀は射手座もどきがやられて困惑している蟹座もどきに突撃する。
「ぶった切る!」
銀の両手に構えた重い斧の攻撃に蟹座もどきの周囲を浮遊していたシールドがひび割れる。もう一発とばかりに振るわれたもう一方の斧によりシールドは耐えきれず、今度は完全に破壊された。
「よそ見してんじゃ…ないわよ!」
銀に意識をとられていた蟹座もどきの背後から夏凛の刀が迫る。ミロクの能力で攻撃力が上がった一撃はバーテックスでも屈指の固さをもつ蟹座の装甲をあっさりと切り裂いた。
「うぉおりゃあああ!」
「てやぁあああ!」
正面から銀の斧が、背後から夏凜の刀で切断され、蟹座もどきは三分割されて絶命する。
残るは山羊座もどきだ。と銀と夏凜は宙に浮かぶクレーンゲームのアームのような形をした巨大バーテックスを見上げる。
「よっしゃ夏凜。因縁あるんだろ。お前が行け!」
目の前でバレーボールのアンダーハンドパスみたいに構えている銀の意図を汲み取った夏凛はうなずき、銀に向かって走るとその手に足を乗せる。
「行ってこーい!」
銀の声と共に両腕によって打ち上げられる夏凜。
「いつぞやは失敗したけど、今度こそ倒してやるわ。完成型勇者としての汚名返上よ!」
ツルっとした上半身に刀を突き立て、滅多刺しにする。その後毒ガスが吹き出す前に山羊座もどきの体躯を刀で刻んでいき、落ちてきた体躯の塊は銀が切断していく。
「これで…終わりよ!」
最後の一撃を山羊座もどきに見舞い、宙に浮く体躯が樹海の地面に落ちる。クレーンゲームのアームのような尖った脚部にひびが入り、砕けていく。
3体の巨大バーテックスを倒した夏凛と銀は交差する瞬間無言で手を上げてハイタッチする。
「次は、レオ・スタークラスターってやつね。急ぎましょう」
「おう、しかしすげーな夏凜。さすが完成型勇者って自称するだけはあるぜ」
「銀、あんたも充分すごいわよ。2年ブランクあることを感じさせないあの戦いっぷり。さすが東郷と園子と一緒に戦ってきただけはあるわ」
互いに褒めあう2人の赤い勇者服の少女2人。同じスマホの勇者システムがつないだ奇妙な縁で結ばれた2人は、戦闘の相性がばっちりだった。
東郷、園子ペアの前に現れたのは水瓶座もどき、天秤座もどき、牡牛座もどきの3体の巨大バーテックスだ。
水瓶座と天秤座は2年前に戦った個体であり、2人は攻略法を知り尽くしていた。
「そのっち、お願い!」
「おっけー、わっしー!」
園子の陰に隠れる形で東郷は水瓶座と天秤座の2体に迫る。
天秤座の風を操る能力と水瓶座の水球バリアは遠距離攻撃の東郷にとって天敵だ。
だがそれは武器が弓矢だった時代の話。今の東郷の武器は銃なので問題はないが、念には念を入れた。
水瓶座もどきが放つ水球からの水鉄砲、アクアショットを巧みに躱し、あるいは攻撃を槍で反らしながら園子は東郷を引き連れ進んでいく。
これ以上近づかれるのはまずいと思ったのか、牡牛座もどきがその体躯についた鐘を鳴らし怪音波を発生させようとする。
「知ってるわ、その攻撃!」
攻撃前の一瞬の隙を許さず東郷の射撃が正確に牡牛座もどきの怪音波の発生源である鐘を撃つ。精霊のセッカの能力も発揮され狙い違わず鐘を撃ち抜き牡牛座もどきは攻撃手段を失った。
こうなっては牡牛座もどきはただ防御力が高いだけのデカブツに過ぎない。最後の悪あがきとして体当たりをして勇者たちを押しつぶそうとするが、精霊のミトの能力により全能力が底上げされている最強の勇者である園子の敵ではなかった。
「ちぇいさー!」
槍を振るいスパスパと牡牛座もどきの固い装甲をものともせず突き刺し、薙ぎ、切り裂いていく。
その姿にこれ以上出し惜しみするのは無意味とばかりに水瓶座もどきは2つの水球を園子に向かって放ち、天秤座もどきは体躯を回転させて疾風を起こした。
「わっしー! 今っ!」
「了解よ、そのっち!」
園子に注意が向いたことで水瓶座もどきと天秤座もどきの防御はおろそかになっている。特に水瓶座もどきは自分を守るべき水球を2つも園子に向かって放ってしまった。
「神罰招来!」
言葉と共に東郷の銃が火を噴き、水瓶座もどきを撃ち抜き絶命させる。続いて竜巻を起こしている天秤座もどきだったがこれも弓矢の時と違い武器が銃へと変わっている東郷にとっては無意味な防御だった。
「風圧による距離と誤差の修正…よし、今っ!」
放たれた銃弾は正確に天秤座もどきの中心部を撃ち抜く。回転をやめてよろよろと黄色い金属質な体躯を揺らす天秤座に園子の槍が迫った。
悪・即・斬!
天秤座もどきは、バラバラになった。
あっという間に巨大バーテックス3体を倒してしまった東郷と園子はハイタッチをして次の自分たちの戦場へ向かう。
目指すはレオ・スタークラスター。現在友奈と丹羽の2人が戦っているはずの超弩級バーテックスだった。
「勇者、キーック!」
「チェーンジ・コンフォーコレッグ! ファイアスパーク!」
友奈の蹴りが魚座もどきに、丹羽の蹴りが牡羊座もどきに激突する。
その一撃で魚座もどきはヘルメットのような体躯が砕け、牡羊座もどきは体躯が燃えて焼け落ちた部分がボロボロと樹海に落ちて増殖することなく燃え尽きていく。
「ダメ押しの、勇者パーンチ!」
「チェーンジ・アタッカハンド! 勇者パーンチ!」
既に行動不能の巨大バーテックスにとどめの一撃が見舞われる。攻撃を受け魚座もどきと牡羊座もどきは肉片1つ残さず爆発四散した。
「すごいね丹羽君! シズカちゃんが私の中にいるだけでこんなに強くなれるなんて」
もどきとはいえ巨大バーテックスを1人で葬れたことに興奮する友奈の周囲は薄く銀色に発光している。友奈の中にいる丹羽の精霊、シズカの能力により友奈の全能力が底上げされているせいだ。
「ええ、あとはラスボス。レオ・スタークラスターだけです。準備はいいですか?」
問いかける丹羽に、真剣な顔で友奈はうなずく。それから何がおかしいのか笑顔を浮かべた。
「? どうしたんですか?」
「ううん。やっぱり丹羽君とは一緒に戦った方が嬉しいなって。ごめんね、一度は君を本気で倒そうと思ってたのに」
「仕方ないですよそれは。それに、終わったことはもう言いっこなしです」
その言葉にそうだね、とうなずきながら友奈はこのおかしな後輩と共に戦えることを嬉しく思う。
「見えてきましたよ、結城先輩。あれが俺たちの戦う最後の敵です」
「あれが…なんて大きさ」
丹羽が指差した巨大バーテックスに、思わずゴクリと固い唾をのむ。
獅子座の体躯に他の巨大バーテックスのパーツがくっついている姿はまさに圧巻だ。
以前見た7つの御霊を持つ水瓶座の時と同じようにあれもまた変身するんだろうか? 油断なく友奈は構え、丹羽に指示を仰ぐ。
「戦闘前に皆さんにもいいましたが、敵は遠距離攻撃もできる物理アタッカー。防御も堅いです。東郷先輩の銃でも外殻を削り切れるかは怪しい。なので」
「私たちが外殻を壊して直接ダメージを与える」
「ええ。でも正直言って自殺行為です。危ないと思ったらすぐ逃げてください。あいつのレーザーは文字通りすべてを焼き尽くしますから、決して正面から殴り合おうとはしないでください」
丹羽のアドバイスにうなずき、友奈は銀色の光をまといながらレオ・スタークラスターの背後に回り拳を固く握る。
「勇者パーンチ!」
「同じく、勇者パーンチ!」
友奈と丹羽の拳がレオ・スタークラスターの外殻に放たれる。それに反応したレオスタークラスターは巨大な火球を放ち自分を攻撃する勇者たちを撃ち落とさんとした。
「結城先輩、俺の後ろに! チェーンジ・タチェットハンド! タチェットシールド!」
言葉と共に丹羽の腕から太鼓型のバーテックスが出現し、レオ・スタークラスターが放った火球から丹羽と友奈を守る。
「ありがとう、丹羽君」
「お礼を言うにはまだ早いですよ! あいつ、完全に俺たちに狙いをつけたみたいです」
丹羽の言葉通りレオ・スタークラスターはその巨体を回転させ丹羽と友奈を正面に見据えようとしていた。
その間も巨大な火球は容赦なくタチェットのシールドに降り注ぎ、2人は身動きできない。
絶体絶命と思われたその時、レオ・スタークラスターの外殻に小太刀が突き刺さった。それはレオ・スタークラスターにとっては蚊に刺された程度のダメージだったが、気を散らすには充分だった。
「どうやらあたしたちが助っ人1番乗りみたいね。行くわよ、銀!」
「おうよ! 夏凜!」
声と共に現れた赤い勇者服の2人に、友奈の顔が喜色に染まる。
「夏凜ちゃん、銀ちゃん!」
現れた新手にレオ・スタークラスターが意識を向けたその一瞬を突き、ワイヤーが友奈と丹羽に巻き付きレオ・スタークラスターの前から避難させた。
「お姉ちゃん、やっちゃって!」
「いくわよー! 奥義、女子力斬り! 乱れ咲!」
巨大化した大剣を何度もレオ・スタークラスターに向けて振るう風。
「この場合、乱れ裂きの方が正しいのでは?」
「ピンチかと思ったけど結構余裕あるね、丹羽くん」
「風先輩、樹ちゃんまで…ありがとう!」
自分たちを助けてくれた頼れる先輩と後輩に、友奈は感激してお礼を言う。
「ったく、風のやつやること派手なのよ。でもそのおかげであたしたちはこいつに取り付けたけどね」
「おう、こっからはあたしたちの腕の見せ所だな!」
一方風の攻撃に意識が剥き、体躯の向きを変えるレオ・スタークラスターの外殻に取りついた夏凜と銀は両手の獲物を構える。
「目を見開きしっかりその目に刻み付けろ! これが完成型勇者の攻撃よ!」
「お、夏凜。はりきってんなー! じゃああたしも!」
友奈と丹羽が砕いたレオ・スタークラスターの外殻部分からさらに二振りの刀と2丁の斧による息もつかせぬ連続攻撃。
これにはたまらずレオ・スタークラスターもその体躯を揺らし体躯に取りつく勇者を振り落とそうとする。だがびくともしないことがわかると、牡牛座の怪音波能力を使い2人を動けなくしようとした。
「がっ⁉ なんだこれ…動けない」
「くそ、あの牡牛座の音波攻撃ね! あたしの鼓膜を破ってくれた恨み、忘れてないわよ!」
初めての攻撃に戸惑う銀とアクエリアス・スタークラスター戦で自分を戦闘不能に陥らせた攻撃を思い出し苦々しい顔をする夏凜。
その2人を救ったのは、遠距離からの狙撃だった。
「友奈ちゃーん! 助けに来たわよー!」
「東郷さん! そのちゃん!」
「おんぶ状態でも正確に狙い撃てるわっしー、流石なんだぜー。にぼっしー、ミノさん、やっちゃって!」
スマホ越しに聞こえた園子の声に、2人は東郷が狙撃し怪音波の音源を消してくれたのだと知る。
「よっしゃ、いくぜ夏凜!」
「もちろんよ! この恨み、晴らさせてもらうわよ!」
近接の攻撃スピード特化の組み合わせとしてゆゆゆいサービス開始当初から相性のいいコンビとされる2人の猛攻。レオ・スタークラスターの体力はどんどん減っていった。
最後のあがきとばかりにレオ・スタークラスターは勇者たちに向けて最大出力の熱光線を放とうとする。
それを察知した丹羽と友奈は行動に移した。
「樹ちゃん、私をあそこまで飛ばして!」
「チェーンジ・フェルマータレッグ! そしてアタッカ・ハンド!」
「わかりました! 行きますよぉ!」
ワイヤーを友奈に巻き付け、以前丹羽と風を蠍座に向けて打ち出したようにぐるぐると回して遠心力をつける。
「先に行ってます、結城先輩!」
フェルマータのスピードで勢いをつけ丹羽はレオ・スタークラスターに拳をぶつけんと向かっていく。
狙うは一点、今まさに熱光線を放とうとするレオ・スタークラスターの核。
「犬吠埼人間砲台! いっけぇえええ!」
次いで樹がワイヤーから友奈を撃ち出し、一直線に丹羽と並び拳を構えた友奈がレオ・スタークラスターへ向かって飛んでいく。
今さらっと言ったが、ひょっとして元ネタは南斗・人間〇台だろうか? 神歴にも北斗〇拳が継承されていることに驚きを禁じ得ない。
今まさにすべてを焼き尽くさんとする熱光線を放とうとするレオ・スタークラスターの核に向かって2人の勇者の拳が放たれた。
「「ダブル・勇者パーンチ!」」
攻撃力×スピード=威力という簡単な方程式に従い、絶大な威力のその拳撃は熱光線を放とうとしたレオ・スタークラスターの核を打ち砕き破壊する。
それと同時に夏凜と銀の攻撃と風の大剣、東郷の援護射撃によりレオ・スタークラスターの体力は限界を迎え、ゆゆゆ1期最強の敵は倒れ伏して絶命したのだった。
どうやら勇者チームの方は順調にレオ・スタークラスターを倒したようだ。
人型のバーテックスは20体目のレオ・スタークラスターを丸呑みしながら丹羽の視界から入って来た情報からそのことに安堵する。
本編通りレオ・スタークラスターが勇者たちの前に現れたのと時を同じくして、サーバー星屑により別の場所に敵が現れたとの知らせがあった。
敵はレオ・スタークラスター25体。勇者たちの援護に向かおうとしていた人型のバーテックスは急いでその迎撃に向かう。
勇者たちと丹羽の実力を信じ、先行していた1体は任せることにした。残りの25体は自分が倒し、物語に関わらせまいと。
そうしてゆゆゆいバーテックス総出で迎撃に向かい、勇者たちが1体のレオ・スタークラスターを倒す間に20体倒してしまったのだ。
それもそのはず。人型のバーテックスのそばにはムカデのような体躯を持つ巨大なゆゆゆいボスバーテックスのグラーヴェ・ティランノが8体。フローチェやレントといったバフデバフも使える攻撃力が高くて体力も化け物な奴らを引き連れていたのだ。
卑怯とは言うまいね? そっちも多勢に無勢なのだから。
レオ・スタークラスターのすべてを焼き尽くす熱光線も遠距離攻撃をほぼ無効化するゆゆゆいバーテックス、グランディオーソのおかげでほぼ無力化できた。
残り5体。あとは自分が手を下さずとも倒せるだろう。
だが念には念を入れて確実にとどめを刺すべきだ。人型のバーテックは残った5体を攻撃しようとして……全バーテックスに制止するように命令した。
『おいおい、出てくるのが早すぎだろ』
輪のように広がった5体のレオ・スタークラスターの中心に突如現れたのは、赤く燃える円を中心に12個の小さな円状の物が2週している円盤のような存在。
常に燃える火山の火口のように揺らめいていて、まるで宇宙船のようだ。
天の神。結城友奈は勇者である勇者の章に出てきたラスボス。そしてバーテックスの親玉。
本編では友奈の全勇者の力全部乗せ勇者パンチで葬られたが、この世界でそれを再現するには無理だろう。
そのためには友奈が天の神のタタリを受けなければならないし、神樹と神婚するイベントを起こさなければならない。
そんなこと、今の勝利を喜んでいる彼女たちに告げられるわけがない。
それに、そんなことは自分は絶対にさせないともう1人の自分、丹羽明吾と約束したのだ。
『ここは、苦しくても頑張りどころか』
三ノ輪銀のセリフを口にしながら、人型のバーテックスは流れるはずのない冷や汗が身体を伝うのを感じる。
バーテックスにとって天の神は絶対だ。それはもちろん人型のバーテックスも例外ではないはず。
以前言った指先一つでつぶせるというのは誇大表現でもなんでもない。逆らおうとすること自体がおかしいのだ。
だが、ここで自分が引くわけにはいかない。この物語はハッピーエンドで終わらせて見せる。
戦闘態勢をとる人型のバーテックスの前で、天の神は自分の周囲にいた5体のレオ・スタークラスターを取り込み体躯を変化させていた。
身体を膨張させるのではなく、圧縮して人型のバーテックスと同じくらいの大きさになろうとしている。
同じ土俵で戦ってやるということだろうか? 心遣いに嬉しくて涙が出そうだ。
離れていてもわかる圧倒的なプレッシャー。生態系の絶対上位にいる存在と出会った特有の恐怖感。
久しく忘れていたその感覚に、我知らず一歩足を引こうとする身体を奮い立たせる。
(しっかりしろ。ここで俺が頑張らなければ、誰が勇者の皆を守るんだ!)
人型のバーテックスは勇気を奮い立たせ、じっと姿を変えていく天の神を見つめた。
やがて、天の神は完全に変態し、人型のバーテックスのもとにゆっくりと歩み寄って来る。
一歩一歩、近づいてくるほどに押しつぶされそうなプレッシャーで身体が押しつぶされそうだ。
それをこらえながら、人型のバーテックスは天の神の姿をはっきりととらえた。
真っ黒い体に灼熱の色に染まる上半身とふくらはぎと二の腕。ショウリョウバッタをモチーフにした頭部は黒い頭部に赤い大きな目が特徴的で、長い触角のような角が2つついている。
そして腰に巻かれた2つの赤い丸がついたベルト…それを見て人型のバーテックスは思わず叫んだ。
『なんで天の神が色違いの仮面ラ〇ダーブラックRXにナッチャッテルノォ⁉』
まさかの四国の守護神が敵に。まあ、太陽の子って名乗ってるからしょうがないよね。
名前もブラック・サンだし、どっちかといえば天の神側なわけで。
レオ・スタークラスター「俺を倒して終わりかと思ったか」×25
(+皿+)「モグモグ。うめぇうめぇ」
レオ・スタークラスター「こいつ…マジか。助けて親分!」
天の神「来ちゃった♡」
丹羽「来ないで!」
天の神「よーし、ちゅるっととゆゆゆ再放送も近いし我がんばっちゃうぞー!」
(+皿+)「頑張らないで!」