偽フォルテになりまして   作:レイトントン

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第11話

 あらゆる防御を貫通する、という以外に、ポイズンアヌビスの恐ろしい点は、もう一つある。

 置物であるが故に、アヌビスのダメージに加えて本人の攻撃も、並行して飛んでくるのだ。

 それがフォルテのものともなれば、もう阿鼻叫喚だ。

 

 フォルテの放つシューティングバスターが降り注ぐ。バトルチップ『ルーク』を設置して、その陰に俺と博士のナビが飛び込む。フォルテの攻撃も、この堅固な守りならばどうにか防げるようだ。

 しかし、隠れているからなんとかなっているものの、とてもじゃないがアヌビスを壊すどころじゃない。この調子じゃあ、そちらに目を向けた瞬間にデリートされかねない。

 くそ、『ポルターガイスト』を探しておくんだった。あれなら、置物を宙に浮かせてフォルテにぶつけ攻撃できたのに。

 

 無い物ねだりしても仕方ない。今は、PAのポイズンファラオじゃなくて良かったと思っておこう。アレ耐久力もめっちゃあるから、壊すのにも一苦労だ。

 

 なんて考えている間にも、HPが刻一刻と減っていく。

 試しにホウガンを放ってみるが、シューティングバスターで容易く撃ち抜かれ、防がれてしまう。やっぱダメか。

 

「アレ、壊せるか?」

「ブレイク系のチップは一応博士も持っているが……フォルテの横を抜けて、となると難しいな」

「俺がなんとか奴のアタマ抑えるから、頑張ってくれ。このまま毒の及ぶ範囲が拡がれば、ロックマンまで巻き添えになる」

 

 体力ギリギリで気絶していたから、巻き込まないように多少離れたのは正解だった。俺のせいでロックマンがティウンティウンされたら堪らない。

 

 まあ、割とあの場から離れてるし、彼の心配は後で良いだろう。今は目の前の障害をなんとかしないとな。

 オーラを張り、凶悪な攻撃を携えたフォルテがアヌビス像を守る。なんともまあエゲツない戦略だ。

 とにかくフォルテを抑えなければ始まらない。一体何分持つかも分からないんだ。迷ってる時間はないな。最悪、バニシングワールドぶっぱするしかないだろうが……恐らく織り込み済みだろう。前回煮湯を飲まされた技を警戒しない、なんてことはないはずだ。あれは使ったが最後、体が縮んでしまっていよいよ後がない。本当に最後の手段としよう。

 

「1、2の3で行くぞ。……『フラッシュボム』」

「ウム。『エナジーボム』」

 

 目眩しのためのボムを用意。博士のナビが囮のエナジーボムを投げるのと同時に、フラッシュボムを地面に転がす。正確無比なバスターがエナジーボムを撃ち抜くが、本命は下だ。

 

「1、2、3!」

 

 フラッシュボムが光を発した直後、ルークの後ろから飛び出す。

 フォルテは——よし、光で一時的に視界を失っている。

 フミコミクロスでフォルテに斬りかかる。視界を失っているというのに、フォルテはダークアームブレードで一撃を防いだ。流石、というべきか。だが、片方の斬撃を防いでも、もう一撃ある。

 2つ目の斬撃がフォルテを捉える。オーラを切り裂き、フォルテにダメージを与えた。

 

「ほう……俺に一太刀入れるか」

 

 しかし、タイムオーバーだ。フォルテの視界がもう戻ってきてしまう。ギロ、と鋭い視線は完全に俺を捉えている。

 これで良い。俺に意識を向けていれば、博士のナビがアヌビス像を破壊しやすくなる。博士のナビが走る。フォルテはそちらに一瞬視線を向けるが、邪魔はさせない。

 こちらを見ろ、とばかりに腕に力を集中させる。放つ技は、ダークネスオーバーロード。大技を放ち、フォルテに相殺させることで時間を稼ぐ。博士のナビが、アヌビス像を破壊する時間を。

 

 ……?

 フォルテが放ったのは、俺と同じ技ではなかった。

 アースブレイカー。確かに高威力の技だが、ダークネスオーバーロード程ではない。彼は破壊の腕を、闇色の光線に叩き付ける。光線の波を掻き分けて、進んでくる。自らの体が傷付くのも構わず。

 遂に俺の技を突破したフォルテは、アースブレイカーをそのまま地面に向けて放った。

 

 外した?

 いや、違う!

 

 放たれたアースブレイカーは、そのまま地面を叩き割る。アヌビス像へと続く道を!

 

「くっ……! しまった!」

 

 エアシューズを……いや、博士からのチップ送信が間に合わないだろう。役割分担を間違えたか!?

 落ち着け、それは結果論でしかない。

 それよりも、博士のナビはもう限界に近い。

 

「プラグアウトしろ!」

「し、しかし……」

「良いから早く行けッ!」

 

 最早彼がいても、アヌビスの毒でデリートされるだけだ。彼だけでも逃さなければ。

 博士のナビが言いたいことは分かる。

 俺に逃げ道はない、ということだ。

 プラグアウトする先はないし、この体力で、フォルテから無事逃げ切れるとも思えない。

 

 ちくしょう、せっかく生き延びたって言うのに。結局死ぬのか。それならそれで、もっと電脳世界を楽しんでおけば良かった。

 オペレーター見つけて大会出たかった。いや、見た目フォルテだからどっちにしろ無理か。でも規模の小さい大会ならワンチャンあったかも知れない。

 セレナードたちに別れも言えてないし、アイリスのことも心配だし……

 あー、死にたくねー。

 もうこうなっては、一か八か、賭けるしかない。他に勝ち筋はないんだ。

 

「終わりだ」

 

 フォルテが勝ち誇る。

 最後の手段に、バニシングワールドをぶちかましてやろうと思った瞬間——その声は響いた。

 

「ロックバスター!」

 

 アヌビス像が崩壊する。

 フォルテが驚き、振り返った。その隙を逃さず、俺はガッツストレートでフォルテをぶっ飛ばす。

 距離ができた瞬間、リカバリーを発動して、体力を僅かばかり回復させた。

 

 あの声は……間違いない。

 声のした方を、改めて見遣る。

 青いナビ。この世界の主人公、ロックマンが、バスターを構えた状態でフォルテを睨んでいる。

 

「死に損ないが……!」

 

 怒りに満ちた表情のフォルテは、次の手を打とうとして……しかし、横槍が入る。

 ワイリーからの通信。撤退の提言だ。

 

「邪魔が入ったか……いずれ決着は付ける。首を洗って待っていろ」

 

 マントを翻し、フォルテは消えた。

 た、助かった。本当に、死を覚悟したよ。

 思わずその場に座り込んでしまう。

 

「大丈夫?」

 

 そこに、ロックマンが手を差し伸べてくる。

 ……なんか、泣きそうだ。安心と感動で。

 

「ありがとう、助かったよロックマン」

「それは僕のセリフだよ。僕がアイツにやられてしまった時、助けてくれたよね?」

「ああ、うん。それはそうだ。でも、俺も助けられたし、困った時はお互い様ってことかな」

 

 ロックマンも頷く。

 なんか不思議な気分だな。ロックマンと話すのは。知っていたけど、善いナビだ。俺に襲いかかってこないし……

 

「キミはフォルテに瓜二つだよね。どっちがどっちなのか、途中まで分からなかったよ。キミが仲間を心配して呼びかけたから、手助けしようと思ったんだ」

「そっか……博士のナビは?」

 

 博士? と首を傾げつつ、彼はプラグアウトしたよ、とロックマンに告げられる。よし、なんとか逃げられたみたいだな。これで一安心だ。

 

「あ、俺はフォルス。よろしくな、ロックマン」

「うん。フォルスは……その」

 

 ロックマンは、言葉を選んでいるようだった。

 

「察してると思うが、俺はフォルテのコピーだ。以前キミが倒した、ゴスペルによって作り出された最強のナビのコピー体。そのうちの一体が俺だ」

『やっぱりそうなのか! ゴスペルの時の……シュンが作ったナビってことだよな。でも、コピーなのにフォルテと戦ってるの?』

 

 俺が正体を明かすと、ロックマンのオペレーターである光熱斗くんが口を挟んできた。イメージ通り、明るい少年だ。シュンというのは、ゴスペル首領の帯広シュンのことだろう。俺の生みの親だ。それで今は、熱斗くんの友達であり、またゴスペル時代の償いとしてWWWの捜査協力を行なっているはず。

 

「まあ、オリジナル様は同じ顔の俺が気に喰わないようでね。それに俺の方も、オリジナル様が悪さばかりすると、コピーである俺の評判まで落ちてしまう。それを防ごうとしたのさ」

『悪いこと……そういえば、フォルテはさっき通信でワイリーと話してたよな? ってことは、アイツもWWWのメンバーなのか?』

「多分、一時的な協力関係だ。でも、WWWとフォルテが手を組んで、ボランティアでもしようってことはないだろう。今までの彼の動きからして、とんでもないことを企んでいるはずだ」

 

 プロト復活とかね。

 

『やっぱり、WWWか……』

「……そうだ! 熱斗くん、フレイムマンがデリートされたから、科学省の火事は止まったはずだよ!」

『! パパ! 悪いフォルス、詳しい話はまた!』

 

 熱斗くんはそのままロックマンをプラグアウトさせた。そのまま科学省へ向かったようだ……

 

 ……はぁーッ。良かった。生き延びた。

 フォルテは前戦った時よりよっぽど強かった。いや、セレナードがいなくてもなんとかなるとかいう俺の見通しが甘すぎただけか?

 まさかポイズンアヌビスとはなあ。他にも強力なバトルチップを持っているかもしれない。博士のナビがいてもアレだし、やっぱタイマンだと勝てそうもないな。正直、バトルチップ集めまくってる時は、これワンチャン行けるんじゃね? とか思ってたよ。

 

 さて……ワイリーの言葉を聞くに、テトラコードは全て揃ってしまったらしい。後は科学省エリアに安置されているプロトを、テトラコードによりセキュリティを突破することで強奪する。そして、ガーディアンをフォルテに破壊させる。これでプロトは復活することになる。

 このまま放っておいても、多分ロックマンがなんとかしてくれるだろうとは思う。でも、それじゃあ俺はいつまで経っても追われる立場だ。

 俺もなんとか、WWW壊滅に貢献しなければ……

 

 今回の収穫は、やっぱりなんと言っても、ロックマンに顔を売れたことだろう。ようやく主人公と会うことができた。

 これなら、プロト復活を阻止さえできれば、俺の活躍はオフィシャルと科学省の認めるところになるに違いない。オフィシャルには炎山くん経由で、科学省には光裕一郎博士経由で、上手いこと言ってもらいたいものだ。まあ、ブルースと炎山くんには以前のことがあるから心証は悪いだろうが、この後プロト奪還を阻止するためには、どの道彼の信頼を得ないといけないから関係ない。

 

 さて、今後やるべきことは分かっている。ドリルマンのプロト奪還を、その段階で阻止してやればいい。ただし、俺が現場に張るのは現段階じゃ無理だ。それをやろうとしてブルースとの鬼ごっこに発展したプラントマン事件でのことを、俺は忘れてないぞ。

 フォルテの見た目だとこういうところで損をするんだなあ。カッコいいのは嬉しいけどさ……

 

 だから、科学省エリアでの張り込みのために、まずは炎山くんの信頼を勝ち取る。そのためには、炎山くんから熱斗くんへの依頼……『ギガフリーズ』の入手、これをサポートしてやろう。

 

 『ギガフリーズ』とは、プロトをも凍結し得る究極のプログラムだ。扱えるのは、光熱斗くんの祖父であり、このインターネット社会の礎を築いた者、光正博士の作り出した特定のプログラムを持つナビに限られる。

 作中だとロックマンとフォルテ……あと、元々の持ち主であるセレナードもそうなのだろう。

 ……あれ、考えてて気付いたが、俺ももしかしてギガフリーズ使えたりする?

 一応、ゲットアビリティプログラムはあるみたいだし……

 

 ……いや、怖いからやめとこ。パチモンじゃダメだとか言われて氷漬けになったら悲しいぞ。

 ギガフリーズの扱いについてはロックマンに任せよう、うん。

 ギガフリーズはセレナードが持ってるから、入手については何も問題はない。

 

 今回こそは成功させたい。このままだと、俺もラスダンについて行かなきゃいけなくなったりするかもしれないし。

 プロトに吸収されたりしてみろ、戻ってこられる自信は全くない。

 そうなる前にケリを着けるのが一番ってことだな。

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