「ウララララ! 我々はワイリー様の手によって復活した! 以前の我々と同じと思うなよ!」
フラッシュマンがノリノリで叫ぶ。というか、ウララララってお前。ウラの住人でもそんな語尾してないぞ。いや別にウラインターネットと掛けてるわけじゃないと思うけどさ。
「食らえ、ネオンライト!」
フラッシュマンが腕を翳すと、地を這う電球のような攻撃が迫ってくる。飛んで避けようとすると、その先にはプラントマンの放った針が待ち構えていた。
仕方なく、ヘルズローリングで攻撃を相殺する。
だが、向こうはそれすらも読んでいたようだ。攻撃後の隙を突き、デザートマンの砂の腕が俺を殴り付ける。咄嗟にオーラを張ったお陰でダメージは免れたが、大きく吹き飛ばされた。
ブルースやロックマンと引き離されてしまったな。
「フォルス!」
「問題ない、それより目の前の敵に集中しよう!」
「そいつの言う通りだ、ロックマン。WWWメンバーが相手だ、気を引き締めて掛かるぞ」
取り敢えず、今攻撃してきたフラッシュマンを狙う。ヘルズローリングを放つが、片方の輪はフレイムマンに止められ、もう片方は避けられる。
動きが止まった瞬間を狙って、ブルースがフレイムマンに斬りかかるが、そこにバブルマンの槍が飛んでくる。リフレクトを張って防ぐも、攻撃は不発に終わった。反撃に転じようとしても、瞬時に接近したビーストマンによる攻撃が、更にブルースを追い詰める。
ならばとロックマンがバスターを打ちまくるが、デザートマンの巨体がそれを防いだ。そうこうしている間に、ロックマンへプラントマンの花粉攻撃が迫る。慌ててバーニングボディを発動し、ことなきを得たようだ。
フラッシュマンの笑い声はウザいが、確かに手強いな。妨害性能の高いフラッシュマン、プラントマンが後ろに控えて俺たちを牽制しながら、防御力の高いデザートマン、フレイムマンが攻撃を防ぐ。バブルマンが泡と槍で遠距離攻撃を行いながら、スピードのあるビーストマンが切り込む。
特に厄介なのが、フラッシュマン、プラントマンだ。電撃と蔦による足止め。このお陰で、思った通りに攻撃ができない。ゲームでもこいつらのバトルチップは凶悪な性能だったな。
溜めの長い大技は、奥の2人に咎められる。なら、小技を連発するしかないか。ロックマン、ブルースと連携できれば良いが……
ロックマンはフレイムマンの炎の壁で、
ブルースはデザートマンの砂の足場で。
それぞれ行動を阻害されている。敵連中の連携は、思っているよりも巧い。無法者たちだから、自己中に暴れ回るばかりかと思ったがそうでもないらしい。こうなってくると、数の不利が辛くなってくる。早いところ敵の数を減らさないと。
「余所見は禁物でプクよ〜!」
バブルマンが泡の攻撃を放つ。素の状態で当たると厄介極まりないが、俺は再度オーラを発動することでそれを無効化した。
シューティングバスターを連射して反撃する。バブルマンは慌てて後退し、俺に攻撃が効かないと見るやロックマンたちに攻撃し始めた。そちらに向かおうとすると、今度はビーストマンが立ち塞がる。
くそっ、面倒だな。合流を阻止し、必ず複数体で俺たち一人一人に当たるよう、作戦が組まれているみたいだ。こんなところで足止めを食っている場合じゃないというのに。
ドリルマンの不在は、即ち彼だけがプロト奪取に向かったことを示している。こいつらは単なる囮だ。このままじゃプロトはあっさり奪われてしまうだろう。
それを阻止するためには、こいつらを速攻でぶちのめす必要がある。
……よし。アレをやるか。
ポイズンアヌビスを操るフォルテに負けてから、俺は考えていた。地力で劣る俺が、バトルチップをも使いこなすアイツに立ち向かうためには、どうすればいいのかを。
いや、正確にはもっと前からか。俺は以前、その力を手に入れようとして諦めた。だが、今回俺が編み出したのは、その力を真似ようとした結果だ。
結局、行き着いたのはここだ。
やはりこの力に頼らざるを得ないのだ。
まあ、構わない。それで、生き延びるだけのチカラが得られるのなら。
俺はフラッシュボムを床に叩きつけ、ビーストマンたちの視界を奪う。すぐに回復するだろうが、構わない。僅かでもいいから集中する時間が欲しかったのだ。
俺は、体内のバグの力を高める。以前、ゴスペルの頭を腕に造り出し、バニシングワールドを放った時と似たような感覚だ。バグが増幅されていくのを感じる。
しかし、今回は以前とは違う。頭を形成するのではなく、
俺のボディが、ゴスペルのように黒く染まる。バグの影響で斑が刻まれ、腕と脚に獣の爪が生えてくる。
——
エグゼ6で、ロックマンが電脳獣をその体に取り込んだことで得た力だ。狼のような姿のグレイガ、鳥の形をしたファルザーと融合したような姿となり、獣のような強さになる変身。
ちなみに、アーケードゲームではフォルテも獣化できたりする。ファルザーの力をその身に取り込むのだ。
ロックマンの場合、電脳獣グレイガ、ファルザーのどちらかの力を得ることができる。ゲームではバスターの連射や羽根の射出、バトルチップ使用時の攻撃力上昇、自動追尾、スーパーアーマーや飛行状態によるパネルの無視、強力な爪による攻撃など、様々な恩恵が得られる。
俺の場合は、体の中に在るバグを増幅させてゴスペルの力を引き出し、通常のサイズに獣の力を留めた姿だ。グレイガビースト、ファルザービーストのように速度、力ともに正しく獣の如く上昇している。その実力はこれまでの比ではないはずだ。なにしろ体が軽い軽い。
名付けるなら、ゴスペルビーストというところか。
「な、なんだその姿はッ!」
俺の変身にたじろいだビーストマンが、焦りのままに爪を振るう。奇しくも、獣同士の戦いだ。
だが、不思議と負ける気はしない。
ビーストマンの一撃を避けた俺は、お返しにゴスペルの爪をプレゼントしてやる。
本来ならゴスペルの爪を飛ばし攻撃する技、シューティングクローを腕に留め、そのままビーストマンの土手っ腹にぶちかます。元々高い素早さの代わりに耐久力の低いナビだ。一撃の下デリートされた。
まあ、パワーもスピードも、今の俺の方が遥かに上だ。当たり前といえば当たり前の結果だな。
「バカな……!」
「ぷ、プクプク〜! なんかまずいでプクよ、あのナビ! ビーストマンがあっさりデリートされちゃったでプク!」
足下に蔦が伸びる。プラントマンか。俺の動きを封じるつもりだろう。だが、それは酷く緩やかな動きに見えた。身体性能が上がっているからだ。
脚部の爪で蹴飛ばしてやると、蔦はすぐにバラバラになった。そのまま地面を踏み込み、一足で今度はバブルマンの懐に飛び込む。
「ひっ!」
「させん!」
フラッシュマンとプラントマンの攻撃。電撃と針が飛来するのを、後退して避ける。バブルマンは心底ホッとした表情だ。しかし、これも想定の内だ。
「ぐおおおおっ!」
ビーストマンに続いて、デザートマン、フレイムマンがデリートされる。ロックマンとブルースがやってくれた。後衛2人の意識が俺に向いている内に、タイマンに持ち込んだのだ。
これで3対3。加えて、俺たち全員、確実にコイツらの実力を上回っている。ここでの勝ちは決まったようなものだろう。
……しかし、こいつらはあくまで陽動。真の目的は、ドリルマンによるプロト強奪にある。
「ロックマン、ブルース、先に進め。プロト奪取に動いている別働隊がいるはずだ」
「しかし……いや、分かった。先に進むぞ、ロックマン」
「うん。フォルス、気を付けて!」
「あっ、もしフォルテが来ても、ギガフリーズは使うな。アイツも君と同じ『選ばれし者』だ。アレは効かないぞ」
「えっと……分かった、ありがとう!」
恐らく、なんでそんなこと知ってるんだと聞きたい様子だったみたいだが、今はそんな場合ではない。
2人を先行させる。残りは俺1人で十分だ。
「シューティングクロー!」
ゴスペルの爪が降り注ぐ。威力を抑える代わりに、数を増やした連射バージョンだ。
敵3体はそれぞれ攻撃を避けるが、雨のような攻撃に分断されてしまう。狙い通りだ。浮いた敵から倒すとしよう。
プラントマンの目の前に一息で移動する。彼が体から針を飛ばそうとするが、もう遅い。爪を縦、横と2連撃で放ち、ボディを4つに引き裂いてしまう。
そのまま、強化された連射性能でシューティングバスターを放つ。バブルマンは召喚したストーンキューブの陰に隠れるが、それも容易く粉々にして、本人を蜂の巣にする。
電脳獣グレイガとゴスペルは、姿がよく似ている。その成り立ちも、インターネットにあるバグが集まってできたという点でよく似ている。ゴスペルビーストは、グレイガビーストに近いチカラを持っているのだ。
瞬く間に2体をデリートした俺を、わなわなと震えたフラッシュマンが睨め付ける。
「お、おのれ……! これだけのチカラを隠し持っていたとは……!」
「別に、隠していたわけじゃない。フォルテに負けてから編み出した技だ。本邦初公開だっただけの話さ」
「同じことだッ!」
フラッシュマンはその場から弾けるように飛び出した。先ほどまでよりも速いのは、エリアスチールか。元々稲妻のような素早さをしていた彼だが、バトルチップの影響で更に速度を上げた。
だが、この姿になった俺のスピードは、それを凌駕する。
逃げる彼の目の前に、一瞬で先回りする。
「なにっ!?」
「終わりだ、フラッシュマン!」
爪による一閃。フラッシュマンはほぼ致命傷と言っていいダメージを追う。が、ギリギリで回避が間に合ったらしい。悪運の強い奴だ。
「く、くそ……ここまで強いとはな。正直予想外だったぞ」
「そりゃ良かった。オリジナル様は俺のことをなんて? ボロクソに言ってたかい?」
「さあな……フレイムマンをデリートした新入りの癖に、生意気なヤツだったよ。キサマと同じでな」
「そりゃ元となったナビだからな。似てもいるさ」
「ふっ……こうなっては、オレが消滅するのも時間の問題か。だが、ただでは消えん!」
フラッシュマンは両手を掲げ、全身から淡い光を放ち始める。あの構えは……!
「ふっふっふ……戒律98、戦いに負けてもただではデリートされるな。キサマに一矢報いてくれる! シャイニング——」
「シャイニング・ブラウザ・クラッシャーなら俺には通用しないぞ」
「……なんだと?」
フラッシュマンが、またも驚愕した様子で固まる。ブラクラを中断して腕を上げたままのその姿は、まるで降伏しているようだ。
「以前ロックマンに使った、PETに直接ダメージを与えるワザだろう。しかし、俺はフォルテと同じ完全自立型ネットナビ。繋がっているPETなどない」
「……ば、バカな」
「終わりだ」
「わ、ワイリー様——」
今度こそ、フラッシュマンにとどめを刺す。
……よし、完全勝利だ。獣化を解いて一息吐く。
よかった、上手く実戦でも扱えたな。バグのチカラをぶっ放すバニシングワールドと違い、そのチカラを体に纏いパワーアップする獣化は使いやすい。体も縮まないし……縮まないし!
前々から、電脳獣のチカラを手に入れられたらとは思っていたが、グレイガとゴスペルは成り立ちがほぼ同じということを思い出し、獣化を擬似的に再現するアイデアに至ったわけだ。その結果は、見ての通り上々。まあ、モノホンの電脳獣による獣化には敵わないだろうが……
しかし、これならフォルテとも渡り合えるかもしれないぞ。フォルテが電脳獣のチカラを手に入れるのは遠く先。それまでは、地力で劣る分はこのゴスペルの力で埋めることができるかもしれない。
希望を胸に、俺は取り敢えずロックマンとブルースを追いかける。強力な変身をマスターしたとはいえ、プロト復活を事前に阻止できるならばそれに越したことはない。
……と、思ったんだが。
「あちゃ〜、破られてら……」
2人を送り出すのが遅すぎたか、はたまた2人がヘマをしたか。多分前者だろうが、プロトが保管されていたらしい場所は既にもぬけの殻だった。
電脳世界に穴が空き、奥にウラインターネットらしき景色が広がってるのを見るに明らかだ。ドリルマンが突破した跡だな。
俺も穴をくぐり抜け、ウラインターネットへ向かった。……しかし。
ロックマンとブルースが立ち尽くしているところに遭遇する。
「2人とも」
「フォルス……」
「済まん、逃げられた……プロトは、WWWの手に落ちた」
「……仕方ないさ。あれだけのナビに足止めされたんだ、間に合わないのは当然だよ」
なんだかんだ、6体ものナビの相手は大変だった。今回は向こうが1枚上手だったというだけだ。
そんな励ましも、2人にはあまり届いていないようだった。
……これで、プロトはワイリーの手に渡った。
やはり、行かねばならないだろう。WWWの本拠地へ。