NO NAME:ソードとワイドソード
ソードとワイドソードを探している
ウラインターネットで入手する方法は無いだろうか
NO NAME:ソードとワイドソード
なんでまたソードなんて探してやがるんだ
初期フォルダに入ってるだろ?
NO NAME:ソードとワイドソード
ドリームソードか?
NO NAME:ソードとワイドソード
ああ、よく分かったな
どうやらチップトレーダーに入れたかトレードしてしまったらしい
NO NAME:ソードとワイドソード
そりゃもったいないコトをしたな
チップを交換に出すトキは4枚ずつ残しておくのがキホンだ
NO NAME:ソードとワイドソード
ドリームソードならロングブレードやワイドブレードを使ってもデキるぜ
ソードやワイドソードを手に入れたいなら……ダレかにトレードを申し込むかヤミ商人でも探すんだな
どちらにせよフッカケられるだろうけどな……ケケケ
最後にお礼のコメントを残して、掲示板から立ち去る。悪いナビばかりのウラインターネットなんだが、ウラ掲示板での彼らはなぜか割と優しい。今後困ったことがあったら、また相談しよう……シナリオ関連のことはできないにしても、チップやウイルスの情報なんかはウラの住人ならかなり詳しいはずだ。
しかし、トレードかヤミ商人か……困ったな、ゼニーにはあまり余裕がないんだよな。俺の中に存在するゲット・アビリティ・プログラムの所為か、ウイルスを倒すと確実にチップデータが手に入る。それは逆に言えば、対ウイルス戦でゼニーを稼ぐ機会が得られないということだ。幸い、ミステリーデータ……インターネットに散らばる結晶のようなプログラムから、何度か拾えはしたので無一文ということはない。しかし、物価の高いウラインターネットで買い物が出来るかというと、少し微妙なところだな。
ソードやワイドソードなら、少しはオマケしてくれるとは思うが……それでも価格はオモテの比ではないだろう。これだからウラインターネットは!
もう一つの手段であるトレードに至っては論外だ。俺は件のアビリティによってチップデータを直接
……万策尽きた、か?
いや、諦めるな。今は手に入れられないかもしれないが、いずれオモテに出た時……その時こそ、ドリームソードを発動させるのだ。今はまだ時期じゃないだけ。悲しくなんてないぞ。さっきからテキトーにシューティングバスターでウイルスをデリートしまくっているが、決して八つ当たりなんかじゃない。
しばらく、そんな風に進んでいくと、突然周りの景色ががらっと変わった。ウラインターネットっぽくない、なんというか、神聖さすら感じるような雰囲気だ。
ウラインターネットから出てしまったか、と考えていると、またもウイルスの気配を感じ取る。最早手癖となったような勢いで、バスターをぶっ放す。
しかし、バシュン、と俺のバスターが掻き消された。攻撃が防がれる……生まれて初めての出来事だ。相手を凝視する。虫みたいなウイルスの周りに、黄色いオーラが纏わりついている。アイツは……!
『エネミー名表示:
ドリームメラル
ドリームラピア
ドリームボルト』
ドリームビット!
初代ラスボスである『ドリームウイルス』が造り出した凶悪なウイルスたちだ。何よりプレイヤーを苦しませるのが、その身に纏う『オーラ』。
今の敵はどうやら攻撃力100より下の攻撃を無効にする『オーラ』を出しているようだが、これが上位種のドリームビットになると、攻撃力200より下の攻撃すら無効にしてしまう『ドリームオーラ』を身につけている。攻撃力200を単独で超えるチップはかなりレアなので、生半可なチップフォルダでは出会った瞬間詰む。
まあ、この世界のバトルチップは攻撃力が数値化されていないようだから、もしかしたら威力の低い技でもひっぺがすことが出来るかもしれないが……念には念だ。ちょっとだけ本気を出してやる。オーラは確かに強力だが、このフォルテ(偽)には関係ない!
俺は左手にエネルギーを集中させる。エグゼ3に於いてオリジナルが放ったこの技は、シリーズ史上最強クラスのオーラである『ダークネスオーラ』を一撃で壊しかけた(完全に壊せてはいない)。ならば、たとえ劣化コピーである俺が放ったとしても、格下の『オーラ』を打ち破るくらいワケはない!
「喰らえ、アースブレイカー!」
膨大なエネルギーを帯びた腕を叩きつける!
オーラは霧散し、ドリームメラルが粉々に砕け散る。他愛なし!
「ヘルズローリング!」
続けて、車輪のようなエネルギー波を二つ、ウイルス共に向けて放つ。そのどちらもがオーラを貫通してウイルスを駆逐した。あっという間だったな。バスティングレベル9ってところか。大技を使えばSも狙えるだろうが……フォルテの姿で、雑魚戦に一々本気を出したくはない。スマートに行こう、スマートに。
『獲得バトルチップ:
オーラ』
オーラが手に入った。序盤に手に入れられれば鬼のように強いんだよな、このチップ。それに、エグゼ3のフォルテは常にオーラを纏っていた。思い入れのあるチップだ。
俺は早速、オーラを使ってみる。バリアも強力だが、やはりオーラの方がカッコ良いな。ドリームオーラと、ダメージを半分にする『ホーリーパネル』を生み出すサンクチュアリのコンボは誰もが試してみたくなると思う。攻撃力400以下の攻撃を完全に無効化できるという凄まじいコンボだ。完成すれば、フォルテの攻撃だって無効にできる。
良いチップが手に入った。上機嫌な俺は、鼻歌でも歌いそうな気分で進み続けていたのだが——途方もなく油断していた、と言わざるを得ない。
失念していたのだ。ドリームビットが出現するようなエリアが、一体どのような場所なのか。
「……ッ!」
突如、火柱が俺の身体を包み込む。高い威力を持ったそれは、一撃で黄金のオーラを引き剥がし、俺の身体を焼く。この世界に来て、初めてダメージを負ったが……痛いな。プログラムの身体でも痛みは感じるのか。どうやら、そういう風に造られているらしい。
「誰だ」
「9632人目……」
コシュー、という独特の呼気と共に現れたのは、漆黒のボディ。何やら穏やかでないカウントをするそのナビの目付きは、そして何より研ぎ澄まされた殺気は、ナイフのように鋭い。
「オレの名はダークマン」
……ダークマンだと。ウラインターネットの王、セレナードへの道に立ち塞がる門番にして暗殺者のナビだ。
なら、ここはセレナードが治めるシークレットエリアなのか。
まずいな、知らん内にウラインターネットの最奥にまで来てしまったらしい。……俺はこの先に進みたい訳ではないから、見逃してほしい、なんて言っても無駄だろうな。このダークマンは、暗殺を生業とするナビ。そんな手緩い相手ではないことは知っている。
暗殺を生業とする割に攻撃が派手だとか言ってはいけない。
「お前を倒せば、ナビ10000体デリートまで残り368人。恨みは無いが、デリートさせて貰う」
ダークマンが、その手を前方に翳す。その瞬間、俺の周囲の空間——見えてないが、多分後方含め全方位に、真っ黒の穴が空いた。そこからコウモリの形をしたエネルギーの塊が飛び出し、俺に襲い掛かる。
「バトルチップ『オーラ』」
この手の連続攻撃は、一発一発の威力が低いのはお約束だ。早速手に入れたチップを活用させてもらおう。俺の身体を覆うオーラが、コウモリを弾き飛ばす。
「エアバースト!」
腕に溜めたエネルギー弾を放ってやるが、流石はシークレットエリアの番人。単調な攻撃は容易く避けられてしまう。とはいえ、俺はサポート系のバトルチップを持っていないから、搦め手もない。……ならば。
腕にエネルギーを集中させる。エネルギー弾を乱射する『エクスプロージョン』なら、如何にダークマンといえど簡単には避けられない。物量作戦だ。
発射しようとした瞬間、一筋の光線が瞬く。咄嗟に身を躱して射線から逃れるものの、その威力にオーラが再度剥がされた。
キラーズビーム。対インビジブル性能を持つ上に麻痺効果もあるため、ダークマンが使う中でも特に厄介な技だ。
「邪魔なオーラが消えたな。喰らえ、ブラックウイング!」
再びのコウモリ攻撃。ならば。
「シューティングバスター」
飛び上がり、バスターを超高速で連続射出。オリジナルが4から使い始めたこの技は、威力こそ並だが連射速度と攻撃範囲に於いては他の技を凌駕する。といっても、威力も普通のナビの攻撃よりは遥かに高いのだが。黒い穴から現出するコウモリは、バスターで全て叩き落とされた。
「馬鹿な、全て撃ち落としただと!?」
あの攻撃によっぽど自信があったのか、全て撃ち落とされたダークマンは動揺している。俺はその隙を見逃さなかった。ダークアームブレードを展開し、奴の背後に回り込み、刃を押し当てた。
「動くなよ。アンタの負けだ」
「くっ……不覚を取ったか」
「安心してくれ、アンタをデリートするつもりはない。このまますんなり帰してくれるんなら、の話だけどな」
そうでないなら、仕方ない。このままブレードでぶった斬るしかなくなる。
「……見た目に反して、甘いナビだ。良いだろう、俺はヤツに忠誠を誓うナビではないからな。追撃はしない。奥に進むなり、引き返すなり好きにするがいい」
「サンキュー。話が分かるナビで助かった」
「しかし、それだけの力、一体どこで手に入れた? ウラランカーでもないし、かといってオモテのオフィシャルでもないようだが」
「話せば長くなるが、簡単に言うと超強力なナビの模造品なんだ、俺は。オリジナルは、戦闘力なら奥にいるやつにも劣らない」
実際、オリジナルとセレナードは三日三晩戦い続けたって話だしな。結局はセレナードが勝ったようだが、デリート寸前まで追い込まれたと言っていたはずだ。
「ほう……」
ダークマンは、興味深そうに息をついた。俺のオリジナルに興味があるのだろうか。だとしたら、ちょっかいかけるのはやめた方が良い。コイツの能力を奪ったフォルテとか、更に面倒くさいことになりそうだ。
「んじゃ、俺はトンズラこくよ。セレナードはめちゃめちゃ強いって噂だし……オリジナル様ならともかく、俺じゃ歯が立たないだろうしな」
「オレを倒したお前でも、セレナードはそれほどの高みにいると見えるのか?」
ダークマンはそう疑問を呈した。そういえば、こいつはセレナードに挑戦するために、ナビ10000体デリートのノルマをこなそうとしていたんだったな。
「やってみなけりゃ分からない、とは思うが、セレナードは間違いなく電脳世界最強クラスの実力者だ。アンタみたいな戦闘狂ならともかく、俺はとても挑む気にならない」
「それほどの力がありながら、慎重だな」
「気にせず臆病者って言ってくれても良いんだぜ」
「いや、セレナードの力は強大だ。恐らく、挑みたいという俺の方が少数派だろう。例えば、次のエリアの番人は、セレナードに心酔し、その下に付いた者。それほどの力とカリスマを持った存在なのだ」
ヤマトマンのことか。オフィシャルの特殊部隊リーダーでありながら、セレナードに心酔しシークレットエリア2の番人となったナビだ。
「そりゃ、恐ろしいね。アンタほどの使い手にそこまで言わせるセレナードには会ってみたい気もするが、君子危うきに近寄らず、ってやつだ。ウラの王ともなれば、俺如きに太刀打ちできる相手じゃなさそうだ」
「あまり自分を卑下するな。お前に負けた俺が惨めになるだろう」
「……それは、考慮してなかった。確かにそうだ、悪かったよ」
さて、そろそろお暇しようか、という段階になって、その声は響いた。
『どうか足を止めてください、強き者よ』
涼やかな声色だった。どこまでも透き通っていくような、透明な音が俺の耳に届いた。ダークマンにもそれは聞こえていたらしく、体を震わせている。果たしてそれは、武者震いなのか、それとも恐怖の表れなのか。
強き者、とは俺のことだろう。ダークマンを倒した、俺のことを指した言葉だ。
「なんだ、ウラの王よ。俺はアンタのテリトリーを侵すつもりはない。既にエリアに踏み込んでおいて何を、と思うかもしれないが、これは注意不足によるもので」
『いえ、結構。事情は把握しています。私としても、あなた程の力の持ち主と敵対したくはない。負けはせずとも、深いキズを負うことになりかねません』
「では何故、俺を呼び止めた。俺はこのエリアを出るし、アンタは事情を理解しているが故、手を出すことはない。全てが丸く収まっているじゃないか」
『それは確かです。しかし、私はアナタに興味を持ちました。アナタの持つ力は、それほど強大であるにもかかわらず、見たところオペレーターもいない。それでいながら、荒々しい戦い方と正反対の理性的な言動。ネットナビとして、どこか歪なのですよ、アナタは』
……それは、俺がフォルテのパチモンだからだろう。荒々しい彼の戦闘スタイルをそのまま流用しているが、性格はまるっと違う。
『アナタと話がしたい。応じる気があれば、シークレットエリアの最奥までお越しください』