偽フォルテになりまして   作:レイトントン

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第8話

 才葉学園とは、6のシナリオで主人公・光熱斗が通うことになる学校だ。なんと熱斗くん、最終作にして秋原小学校を転校してしまうのである。これには衝撃を受けたプレイヤーも多かったのではないだろうか。

 熱斗が5まで住んでいたデンサンシティよりも更にネットワーク技術の発達している都市、才葉シティ。その中心街であるセントラルシティにある学校で、高校までエスカレーター式。PET内に生徒手帳を登録し登下校の管理を行なったり、学園内には警備ロボットが常駐していたりとハイテクな設備も多い。中でも特筆すべきはコピーロイドがあるということだろう。

 

 コピーロイド。

 見た目はパーマンのコピーロボットだが、鼻を触って起動するわけではない。ネットナビを送り込んで使用するものだ。コピーロイドに入ったナビと同じ姿を取ることができるというもので、ナビを現実世界に呼び出すための人形、と言っていい。

 ただし、バトルチップや、ロックマンでいえばロックバスターのような戦闘用の装備は現実世界では使用できない。仮に暴走したとしても人間を傷付けることのないように、という対策だ。とはいえ、ナビによっては素で人間の大人以上のチカラを発揮することができるという。

 多分ナイトマンとかメタルマンが実体化したら、とんでもないパワーを持ってるんだろうな。

 

 俺もちょっと現実世界に行ってみたい気はするが、俺に会いたい人間なんていないだろうし、微妙だな。

 ……自分で言ってて悲しくなってきた。この話はやめよう。うん。

 

 さて、才葉学園の電脳世界にやってきた。小学生から高校生まで、実に多くの生徒たちが校舎を行き交う。授業、昼休み、部活動、委員会……生徒たちは概ね生き生きと活動しており、見ている方もなんだか楽しい気持ちになってくる。

 アイリスも、表情の変化に乏しいながらも、目を輝かせているように見えた。

 

「ニンゲンって、あんなに楽しそうな表情をするのね」

 

 心底驚いた、というように、アイリスは言う。それを聞いて、なんだか胸が痛くなった。彼女が今まで見てきた人間の表情がどんなものだったのか、物語っているようで。

 

「ああ、そうさ。ああして楽しそうにしているのが、人間の本来あるべき姿だと思うよ。そして、俺たちネットナビは人間と共に生き、彼らをサポートするために造られた。笑顔を作り、笑顔を守るのが仕事さ」

「私たちの仕事……」

 

 ……まあ、ネットマフィア『ゴスペル』によって世界征服のために造られた俺が言うのも変な話だが、ネットナビとは元来そういう存在だ。人間の役に立ちたい、という性格のやつが多い。

 悪のナビだって、オペレーターや製作者の役に立ちたいという思いから悪事を働く。人間を憎悪するオリジナル様だって、かつては製作者であるコサック博士によく懐いていた。

 

 アイリスは俺の言葉を聞いて考え込む。

 偉そうに講釈を垂れたが、俺もまだ誰かの役に立ちたい、なんて立派な心意気は持ったことがない。オペレーターでもいれば、また違うのかも知れないが……

 知識だけで話したことについてそう真剣に考えてもらうと、なんか申し訳ないな。

 

「まあ、難しく考えることはないさ。ここなら追手もそう簡単には見つけられないだろうし、しばらく隠れて学校の様子でも眺めていたらどうだ」

「ええ、そうしてみる。学校の子供達の様子には、なんだか興味が湧いてくるの」

「そりゃ良いことだ。平和が一番だよ、平和が」

 

 アイリスは軍事兵器を操作して、ずっと荒れた世界を見てきたみたいだからな。こうした平穏な世界に興味を持つのは素晴らしいことだ。

 

「じゃあ、俺はもう行くよ。人数が多いと追手に見つかりやすいだろう」

「そう……。またね、フォルス」

「おう。また来るよ、アイリス」

 

 ちょっとは仲良くなれたようで良かった。

 彼女はゲームのシナリオでは、ちょくちょくコピーロイドを使って街へ繰り出したりもしているようだ。活動的なのは良いことだな。懸念としては、ワイリーに見つからないかということだが……ゲームでも見つかってなかったし、電子機器を自在に操作できる彼女なら、監視カメラに引っ掛かったりもしないだろう。

 

 さて、彼女は大丈夫だろうが、俺の方はどうだろう。

 前回の戦闘で完全にオリジナル様に目を付けられてしまった。もう逃げる云々言っている場合ではない。

 

 

 寧ろ、奴を仕留めることを考えるべきだろう。

 

 

 原作最強のフォルテを倒せるか不安ではあるが、少なくともセレナードクラスの仲間が居れば、良い勝負ができることが分かった。

 確実に仕留めるために、戦力の増強は必須だ。しかし、ゴスペルスタイルは現状、膨大なバグのかけらが必要だし、電脳獣を手に入れるのはリスクがデカ過ぎる。

 ダークチップも同じだ。使うと最大HPが減少するのもそうだが、何より怖いのは自我が失われることだ。いや、普通に怖えよ……ネビュラ連中はよく平気でダークチップ使えるな。ノーリスクってわけじゃないだろうに。

 

 アニメ版だと、オペレーターとの絆の力でダークチップの闇に打ち克つみたいな展開もあったはずだが、生憎俺にオペレーターはいない。ぼっちの俺はダークチップ依存症まっしぐらだから手が出せないのだ。

 5だとカオスユニゾンはノーリスクで使えるが……あれはあくまでゲームの仕様だろうな。

 

 はぁー、ノーリスクで簡単に強くなる方法ねえかなあ。

 自分で言っててめちゃくちゃだと自覚するようなことを考える。そんなことできたら誰も苦労しないんだよなあ。

 簡単に、とか考えるから良くないんだ。地道かつ確実に力を蓄える。それが大事だ。幸い、フォルテにはそれなりのダメージを与えた。ひとまずバグのかけら集めを継続しながら、バトルチップを集めるしかないか。

 

 ゲームで強力なバトルチップといえばなんだろう。メガクラスとかのレアチップはそう簡単には手に入らないだろうし、ウイルスが落とすチップで言うなら……ホッケーとかか?

 ドリルアームやスチールゼリーなんかもそうだな。

 

 しかし、それだけではフォルテには火力負けが過ぎる。

 一般的に手に入る方法で、フォルテに肉薄する方法……やはり、プログラムアドバンスか。ドリームソードの話に戻る訳だな。

 バトルチップを集める。それはそのまま、プログラムアドバンスを集めることに繋がる。

 プログラムアドバンスの欠点としては、およそ3枚以上のチップを纏めて使わなければならない点だ。まあ、威力からしたら欠点とも言い難いところではあるが、敢えて言えば、だ。

 

 しかし、それはオペレーターからチップデータを送信するから起こる問題。戦闘と指示のラグによる過負荷をなくすための制限にすぎない。

 

 俺はその場の判断で、継続的に自らのボディからバトルチップを発動できる。オペレーターの俯瞰的な視点からの判断は流石に真似できないが、その点では俺は既存のナビよりも遥かに勝る。

 

 フォルテもそれは同じなんだが……

 あまりバトルチップを使うタイプではない。6ではセンシャホウやヘルズバーナーを使うが、それもBXになってからは使わなくなる。やはり、威力が弱くて要らないと判断しているのだろう。もしくは、電脳獣の容量が大きすぎてチップデータを削減しているのか。

 

 どちらにせよ、俺に有利な部分だ。ここを伸ばしていこう。

 

 さて、3のメインシナリオが始まるまでにどれだけのチップ、バグのかけらを集められるか……そこが勝負だ。

 

 

 

 

 

 そこから、俺はバトルチップを集めまくった。

 科学省管轄のエリアには流石に近付けなかったが、色んなエリアを回った。

 なるべくカウンターを狙ってみて、バグのかけらを集めようとしたがあまり関係ないらしい。フルシンクロする気配もない。まあ、当たり前か。フルシンクロってのはオペレーターとナビの意識の完全な同調だ。バトルチップの性能を120%引き出し、ナビとオペレーターは一心同体となる。オペレーターのいない俺には、縁のない話だ。

 

 ともかく、俺は自らを鍛えまくり、そして同時に情報を集めた。ロックマンエグゼ3のシナリオの情報を。

 そして掴んだ。よかよかスクエア、雑談掲示板。

 バブルウォッシュ暴走事件……つまり、バブルマンが引き起こしたサイバーテロについての書き込みがあったのだ。

 これで原作の時間軸は把握した。チップ拾いに夢中になりすぎて、動物園事件の時期をスルーしてしまったのは焦ったが、まあ問題あるまい。

 

 ……いよいよ、修業の成果を見せる時だ。

 俺単体じゃあオリジナルには勝てない。しかし、セレナードと一緒に撃退したお陰で、自信はついた。ロックマンやブルースたちと一緒なら、俺だってオリジナルと戦えるはずだ。

 

 WWWを潰すことで俺の有用性を示し、科学省に取り入る。そして、オリジナルを抹殺し死の恐怖から逃れる時が来たのだ。

 ……言ってることが悪役そのものだな!

 

 とにかく、まずはN1グランプリ編だ。ここは俺の出る幕はない。主に現実世界で熱斗くんや炎山くんがわちゃわちゃするシナリオだからな。主に電脳世界からの観戦になるだろう。

 熱斗くんに顔を売るとしたら、この次……プラントマン編がベストか。

 フレイムマン編まで突入してしまうと、いきなりフォルテに遭遇する可能性が高まる。タイマンじゃ勝ち目はない。それに、現時点のロックマンはオリジナルにまるで歯が立たないレベルだから、もう少し成長してもらってから挑む必要がある。

 

 そして、フォルテをぶちのめすとしたらドリルマン編、ここが最もベストなタイミングだろう。なにせ、そこから先はラスダンだからな。プロトとフォルテ、最強の敵二体を同時に相手取るのは無謀に過ぎる。

 ……ロックマンって良くあいつらに勝てたな。

 

 N1期間中は、セレナードたちと一緒にシークレットエリアから観戦していた。セレナードが誰が優勝するか賭けようとか言い出したのが意外だった。結構フランクだよな、こいつ。

 

 俺は途中で大会が中止になるのは知っていたが、流れに乗らないのも悪いので、無難にロックマンに賭けた。セレナードも同じだ。やはり主人公は強い。

 ヤマトマンは、元オフィシャルということからか、ブルースを推していた。まあ、ブルースも相当強いからな。事件が起きなければ、優勝していてもおかしくない。実際、デザートマンは正々堂々の勝負なら問題にしていなかったし。

 ダークマンはキングマンに賭けていたが、ロックマンに敗北したことで非常に悔しがっていた。キングマンも惜しかったが、熱斗くんとロックマンの成長性には一歩、いや一手及ばなかったといったところか。

 

 シークレットエリアの俗っぽさがやばい。やはり何もないから娯楽に飢えているのだろう。

 だからだろうか、大会を中断したデザートマンにはブーイングの嵐だった。哀れデザートマン。

 

 そんな彼は、ロックマンのアクアカスタムスタイルによってボコボコにされていた。やっぱ水属性に弱いんだな。

 

 属性といえば、この世界のチップの属性は6の世界観に準じているらしく、3までの火、水、雷、木属性に加えてソードや置き物、ブレイクといった属性系統が追加されている。

 

 まあ、俺もオリジナルも無属性だからあんま関係ないけど……ドリルマンなんかはブレイク属性が付くはずだから、そのあたりはチェックしておかないといけないな。

 ブレイク属性はカーソル属性に弱い。マグナムなんかが有効だ。

 ちなみに、マグナムは作品ごとに系統が変わる面白いチップだ。エグゼ3では炎、4では地形破壊、5、6ではカーソル。

 さらに面白いことに、ゲームでマグナムのように属性が複数あるチップは、1枚で複数の属性を併せ持つようだ。マグナムは先程の3つ全てを兼ね備えた属性になるということだな。

 

 話が逸れたが、そんなこんなでN1編も終了した。

 次はプラントマン編か……

 プラントマンのチップって強かったし、油断せずに戦わないとな。

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