偽フォルテになりまして   作:レイトントン

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第9話

 プラントマン事件でロックマンと共闘するため……かつ颯爽と現れてカッコつけるために、あらかじめ病院の電脳世界に忍び込んでおいた俺だったが、モロに失敗した。

 

 赤い風が目の前を奔る。目にも留まらぬフミコミ。そこから繰り出される一斬は、以前戦ったオフィシャルナビとは比べ物にならない速度だ。模擬戦したヤマトマンの突きだってここまで速くない。いや、模擬戦だったから本気かどうかは知らんけど。

 って言ってる場合じゃない!

 こちらもバンブーソードを発動し、目の前のナビと斬り結ぶ。が、ソード系チップにおいてこいつに敵うはずがない。受太刀をミスってぽきりと折られてしまう。慌てた俺は、トップウを発動させて無理やり距離を取った。あ、アブねー。

 今のうちに誤解を解かなければ……

 

「待って待って、タイム! ターイム! 話せば分かる!」

「何がタイムだ……斬る!」

『ブルース、バトルチップだ』

「ありがとうございます、炎山様。……フッ!」

 

 赤い剣士ナビ、ブルースが裂帛の勢いで放つメガブーメランによって、トップウが破壊される。風の戒めが解かれた彼は速度を取り戻し、またもこちらに攻め入る。

 

「うわわわわわわ」

 

 狼狽ながら、なんとか防ぐ、躱す、避ける、そして逃げる。

 なんでブルースが、と思ったが、思えばこの病院をプラントマンが狙ったのは、ここにテトラコードというプロト奪還に必要なプログラムがあるからだ。そんな重要な場所に不正アクセスしたら、そりゃオフィシャルが飛んでくるよ。しかも、今は度重なるWWWの犯行によって警戒が強まっている。オフィシャル最高戦力であるブルースがやってくるのも頷けるというものだ。

 

 ……そこにもっと早く気付いていれば!

 何やってんだオレのバカ!!

 

「くそっ、これでも食らえ!」

 

 俺は足止めにスチールゼリーを放つ。当たった相手の動きを遅くする可愛らしいスライムたち。ゲームではエリアスチールに高い攻撃力のついた激強チップだった。こちらでも、当たればめちゃめちゃ強い。

 

「……『イアイフォーム』」

 

 当たればね。

 ブルースの間合いにゼリーが侵入した瞬間、目にも留まらぬ速さで振り抜かれた刃が、ゼリーを細切れにする。

 うっそだろ、俺が使った時と全然違うんだが。俺はあんな速度で斬りまくったりできない。先のバンブーソードといい、剣捌きにおける経験の差が目に見えて分かる。

 

 くそ、まともにやり合ったらただじゃ済まないかもだ、これは。ここは逃げに徹する!

 

「待て、フォルテ!」

「俺はフォルテじゃない、パチモンだ! 『アイスシード』!」

「むっ……!」

 

 悪態を吐き逃げながら、アイスシードを背中側に軽く放る。地面に着弾した瞬間、種が割れて地面が凍りついた。

 見たか、氷パネルの上では滑って上手く走れまい。これで逃走時間を稼げる!

 

『ブルース!』

「ハッ! 『パネルリターン』!」

「マジかよ!?」

 

 パネルリターン!?

 そんなチップ入れてるやつ居んのかよ!!

 

 パネルリターンは、地面の損傷や状態異常を元に戻す効果のあるバトルチップだ。ゲームじゃあ正直使っている奴を見たことなかった。いや、6なら獣化のタメ撃ち用に使ってるの見たことあるけども。フォルダを全部無属性のアスタリスクにすればタメ撃ちし放題だぞ、やったね!

 

 しかしアレか、俺がめっちゃ名案だと考えた氷パネル作戦だが、思い付いた奴は結構いたらしい。だってあまりに対応が流暢なんだもの。

 そりゃそうだよな、オフィシャルって実質警察みたいなもんだし。逃亡するナビはこういう姑息な手をよく使ってくるだろう。対策は万全というわけだ。

 これじゃあパネル系の作戦は全部無意味か?

 ゴーイングロードとか、せっかく用意したんだがなあ。

 

「逃さん、ソニックブーム!」

「うおっ!」

 

 ブルースの斬撃が空を飛び、俺に襲いかかる。彼とのバトルにおいて、もちろん剣は最も警戒すべきだが、そればかりだとこの斬撃にやられる。遠距離攻撃だってこなせるのだ、彼は。

 オーラを張りつつリフレクメットで衝撃を跳ね返しながら、なお逃走する。どこまで逃げればいいんだ、コレ?

 

 何か手を打たないと一生逃げられる気がしない。

 ……待てよ、最近、エンドエリアで良いチップを手に入れたんだったな。アレなら逃げるだけの時間を稼げるはずだ。

 急に立ち止まり、くるりと反転する。俺の動きに合わせて、ブルースも止まった。フミコミザンの間合いは維持しつつ、攻撃を見てからリフレクトで跳ね返すのは容易い、そんな位置取りだ。流石、戦いなれてるな。

 だが、今から使う手は攻撃じゃあない。リフレクトで跳ね返すことはできないぞ。

 

「ふっ、鬼ごっこはここまでだブルース。今からお前を倒す!」

「何っ!」

 

 急に調子に乗り出した俺をブルースは警戒し、足を止めた。

 ふふふ、慄いているな?

 見るがいい、俺の奥の手を!

 

「食らえ……『ヘビーゲージ!』」

「なっ……」

『なんだと!?』

 

 それを発動した瞬間には、目に見える変化はない。だが、確実に効果は出ている。

 

『くっ……ブルース、今バトルチップを……!』

「無駄だ、ヘビーゲージの効力によって、バトルチップの送信は遅くなっている」

「だが、それはキサマも同じこと!」

 

 それが、同じじゃないのよさ。

 ブルースが、備え付けのワイドソードで攻撃してくる。しかし、バトルチップの失われた彼の攻撃は限られる。対策は容易い。

 俺はバトルチップの効力で、その刃をいとも簡単に受け止めた。

 

「っ、『シラハドリ』か!」

「ご明察だ」

 

 本来なら叩き込まれる3連撃を、すんでのところで止める。ブルースをやっつけたいわけじゃないからな。

 

「じゃ、悪いが俺の勝ちってことで。バイビー」

 

 シラハドリによる攻撃が行われないのを不審がり、固まるブルースに対してゴーイングロードを発動し、遥か遠くへ追いやる。パネルリターンも、先ほど既に使用している状況かつヘビーゲージ下では発動できまい。

 移動パネルで動けないまま運ばれていくブルースを眺めながら、俺は病院の電脳世界から退散した。

 

 ふう、上手くはまったな。流石の伊集院炎山も、ヘビーゲージには驚いたらしい。俺にとってのパネルリターンと同じように、コチラではあまりにも使い手の少ないチップだからだろう。

 

 理由は簡単だ。デメリットの方が大きい、コレに尽きる。

 ヘビーゲージは双方のオペレーターから送られてくるチップデータを激オモにすることで、バトルチップの使用速度に制限をかけるチップだ。必然的にナビの性能が高い方が有利になるわけだが、ブルースほどのカスタマイズがされているナビよりも性能が上のナビなんて、数えるくらいしかいないだろう。

 加えて、ナビの性能が上ならわざわざヘビーゲージなんて使わずとも、バトルチップで圧倒すれば良いのだ。例外はあるものの、強力なバトルチップを集めるよりも強いナビをカスタマイズする方がゼニーが掛かる。強いナビなら、扱うチップも強いのが普通だ。ヘビーゲージは寧ろ邪魔になることが多い。

 そういった理由から、ブルースレベルのナビがヘビーゲージによる真っ向勝負を挑まれる機会なんてほぼないに等しいはず。

 

 加えて、俺は直接ボディに取り込んだチップデータを起動させているだけだから、ヘビーゲージのデメリットを受けない。一方的な有利を得られるというわけだ。

 

 完全自立型ナビで、なおかつゲットアビリティプログラムによってチップデータを使用できる俺にしかできない最強の戦略(インチキ)といえる。

 ……オリジナルが使ったらマジやべーから、真似されないように大っぴらには使わないようにしたいが。それに、あいつも完全自立型だから効かないし、このチップ。

 

 あ、ちなみにクイックゲージ使われたら解けるゾ! というかクイックの恩恵を相手だけ受けてちょっと悔しい思いをするまである。

 クイックゲージは手に入り難くはあるがノーマルチップなので、知っていれば対策は容易……つまりは初見殺しというワケだ。

 

 なーっはっは、と1人高笑いする。ここまで上手くいくとは思ってなかったぜ。やっぱ色々なチップを使うのは楽しいな。これならWWWのナビも余裕で——

 

 ……やべえ、プラントマンに会う前に逃げざるを得なかった。この調子じゃ一生シナリオに関われないぞ。俺のWWWぶっ潰すという計画がパァだ。

 

 次のシナリオからは、フォルテが積極的に絡んでくる。バトルチップによる戦略の幅が広がったとはいえ、今の状況でオリジナルとぶつかるのは正直まだ早いと思う。俺がビビり過ぎてるだけか? いやいや、フォルテだぞ。原作最強キャラだぞ。慎重になりすぎるってことはないだろう。

 でも遅れ過ぎると本拠地に立て籠もって手が出せなくなるんだ。困ったなあ……

 

「……今からでも病院の電脳に戻る、ってのはナシだよなあ」

 

 ブルースともう一度鉢合えば、もうヘビーゲージは通用しないだろう。炎山くんレベルのオペレーターなら、クイックゲージ調達するなんて簡単な筈だし。

 

 まあ、過ぎたことは仕方ない。プラントマンを倒してロックマンに存在をアピールするのは諦めよう。

 次はフレイムマン編な訳だが……腹を括る時が来たのかもしれない。

 

 

 

 俺はウラインターネットに戻ってきていた。

 フレイムマンとロックマンがここで戦うことになるはずだ。そして、その後にオリジナル様がやってくる。

 怖いな、考えるだけで。俺も多少強くなったが、オリジナル様にどこまで通用するか。一対一じゃ正直まるで自信ないので、助けを求めるとしよう。

 

「おい、見てるんだろ? 出てきてくれよ」

 

 俺の声掛けに対し、気配を殺して俺を監視していたらしいナビが姿を現す。

 いつかのオフィシャルナビの姿が、そこにはあった。複雑そうな表情だ。いや、顔隠れてるから分からないけど、なんか雰囲気がね?

 

「今度あったら捕まえる、そう言ったはずだが」

「分かってるよ。でも、今回は待ってほしい。アンタも、今から話す内容を聞けば無視できないはずだ」

「何……?」

「もうじきこのエリアに、フォルテが現れる」

「!!!」

 

 オフィシャルナビが目に見えて動揺している。こいつの目的はフォルテをデリートすることだからな。俺のようなパチモンじゃなく、本物が現れるとなれば大事だろう。

 今までは尻尾も掴めていなかったわけだからな。

 

「バカな、フォルテが……何故!?」

 

 何故……そう言われると、確かに何故なんだ?

 いや、俺はシナリオでフォルテが現れるのは知ってるんだが、あいつのやったことってフレイムマンをぶっ倒し、ロックマンをぶっ倒し、目の前のオフィシャルナビをぶっ倒し……やりたい放題やって帰ったって感じだったんだよな。

 いや、割とマジであいつなんで現れたんだ?

 

「それはその、きょ、強者の気配を辿ってだな」

「なるほど、キミの気配を察知してやってくる……それをワタシに共に倒してほしいと、そういう訳だな?」

 

 アレー?

 そういう話だっけ?

 俺はただロックマンを助けてツワモノアピールを……

 

「任せておきなさい。ワタシはあれから、ウラの深部へ赴き『ダークネスオーラ』を習得した。今ならフォルテの攻撃を防ぐこともできるはずだ」

「お、おう」

 

 ウラの深部へ、か……結構好き勝手やってるんだな、科学省だかオフィシャルだかのナビなのに。

 

「そういえば、オフィシャルや科学省に俺のこと話してないんだな」

 

 ブルースが俺のこと知らなかったし。

 

「ん? あ、ああ。まあね」

 

 ……うん?

 おい、なんだ今の間は。

 俺のこと話してないのはありがたいけど、何かあるのか?

 そういえば、ゲームでもこいつの正体って結局明言されてなかったよな。『プロトの反乱』ってワード出してるから、科学省の差し金だと思ったんけだけど……違うのか?

 

「なあ、お前のオペレーターって科学省の人間なのか?」

「……何故そんなことを?」

「いや、フォルテを追っかけてるってことは、そういうことなのかと思って。フォルテは元々科学省のナビだしさ」

 

 フォルテはプロトの反乱の際に科学省を追われた。いまだに奴を追いかけている職員がいる、ってのは驚いたけど。

 

『……コピー体ながら、そこまで知っているとは』

 

 俺の問いに答えたのは、目の前のナビではなく、現実世界の映像からの声だった。

 そこから見える人物の姿に、思わず目を見開く。金の髪に髭、眼鏡の奥に見える穏やかな目付き。

 俺は彼を知っている。

 元科学省の職員にして、フォルテの生みの親。

 彼がオフィシャルナビのオペレーターだったのか。確かに、納得できる部分は多くある。

 

「あなたは、コサック博士……!」

 







※独自設定です。
調べるまで原作でもダークネスオーラくんはコサック博士のナビだと思ってました。ガイドブックとかは網羅してないので分かりませんが、少なくともゲーム内だと両者の関係性については明言はされてないっぽい。マジかよ!
でもプロトの反乱からかなり経ってもフォルテを追ってる、フォルテはデリートする方向性で動いてるってことからコサック博士がオペレーターなのではないかと予測しました。
確定情報あったらどなたか教えてくださいお願いします。
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