転職先は正義の魔法少女の悪側面【完結】   作:畑渚

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 さてと……

 

 魔法少女を学校へと見送った俺は、一息つくまもなく家事に取り掛かる。掃除洗濯その他洗い物全部だ。

 

 昔から掃除は好きだ。なんというか、綺麗になった時の達成感が好きなのだ。俺が俺だった時の部屋?聞かないでくれよ。まあ……控えめに言ってゴミ屋敷だった。

 

 じゃあなんで今はこんなにやる気があるかと言えば、年頃の同居人がいるからだろう。誰かのためと思えば、まあやってやらんでもないという気にもなるというものだ。

 

「しっかし……随分と殺風景な部屋だな」

 

 リビングを見回しながら、俺はあごに手を当てて頭を悩ませる。

 主張のない白色の家具。もちろんあるのは最低限。カーテンも無地、壁紙も無地の白から張り替えた形跡はない。

 

「ここらは手を加えてファンシーにしてやってもいいが……ここまで来てるともういっそのことシンプルな部屋でまとめておいた方が良いな」

 

 俺は買い物袋を漁り、ラグマットを取り出す。クリーム色のシンプルなものだ。この神様転生系の謎空間ばりの白い部屋にでも合う。やはりこの色にして正解だったか。ついでに既存のソファも、カバーをかけてマットな色に染め上げる。真っ白だった空間にアクセントが加わり、多少なりともオシャレを気にしている空間へと早変わりである。これが匠の技だよ。

 

「極めつけは、これだ」

 

 テレビ台に小さな観葉植物風模型を置く。緑が入ることで、白が更に際立つ。

 眩しいなとは思ったけど、さすがに今のこの身長で壁紙を張り替えたくはないし、わざわざ業者を呼ぶのも手間だったのでこれで妥協することにした。突然変えすぎても彼女も嫌だろうしな。

 

【おっと、随分と見栄えのある部屋に変わっているね】

 

「随分と遅いお目覚めだな」

 

【昨日の後処理はいつにも増して大変だったからね。今日が休みで助かったよ】

 

「神の使いには休みがあるのか……」

 

【言っておくけど大体の人には休日は存在するよ?】

 

「なん……だと……」

 

【君はなかったみたいだけれどね】

 

「だよなぁ。よくよく考えなくても超絶ブラックじゃん。なんで辞めなかったんだ俺」

 

【さぁ?神と本人のみぞ知る、だね】

 

「神さんはなんでも知ってるんだなぁ」

 

 個人個人の感情まで知識として持ってるなんて、脳の容量パンクしたりしないのだろうか。

 

 そう不思議に思っていると神の使い野郎が台所へと向かっていくので待ったをかける。

 

【なんだい?僕はおなかが空いたんだけれど】

 

「おまえって……何食うんだ?」

 

 奴の見た目は、犬のような猫のようなその他小動物のような、そんな曖昧な姿のぬいぐるみである。

 食べ物……ドッグフードかキャットフード?はたまたその他小動物用?まさか綿なんてことはないよな?

 

「なんだか失礼なことを考えてないかい?」

 

 自称神の使いは、ホームセンターの時と同じ姿に変身してそう言った。

 

「食べ物を食べるならこの形態が一番なのさ」

 

「そういうもんなのか、便利にできてんなぁ」

 

「なにせ僕も神のシステムの一部だからね」

 

「いやぁご都合主義万歳だな」

 

「適応してくれたようで何よりだよ」

 

 何が適応だ。納得がいくかこんなもん。ただし考え込んで無駄な時間を使うのも面倒なのでここまでにする。

 

「それで、僕を引き止めてなんだい?」

 

「ああ、座ってちょっと待ってろ」

 

「ま、まさか……僕の分もあるのかい?」

 

 何言ってるんだこいつ。

 

「当たり前だろ」

 

「君……」

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「いやぁおいしかったよ。ごちそうさま」

 

「おそまつさま。ほら片付けるから皿よこせ」

 

 奪うように皿を流しに持っていき、スポンジを手に取る。

 

「いやぁ。巻き込んでしまった僕が言うのもなんだが、こうなってしまったのが君で良かったよ」

 

「なんだ、嫌味か?」

 

「違うさ。こんなに美味しい料理が食べられるとは思わなかったからね。嬉しい誤算だよ」

 

「そりゃどーも」

 

「……君は将来、良いお嫁さんになるね」

 

「やめろや」

 

「なんなら僕の妻に欲しいくらいだ」

 

「……ロリコン?」

 

「ち、違うさ!僕の守備範囲は僕と同世代くらいだよ!」

 

「えっ、お前何歳なんだ」

 

「えっと……」

 

 神の使い野郎は指を折りながら数え始める。それが片手5本全て折れ曲がった。

 

「ざっと5百年くらいかな」

 

「年増好きか」

 

「失礼な!これでも僕は若い方だよ!人間で言うなら……20歳前半さ!」

 

「まーそっか、種族が違うもんな。うんうん。そういう趣味も俺は否定しないぜ」

 

「だから……はぁまったく。君を巻き込んだことを今までとは違う意味で後悔したよ」

 

「最高の褒め言葉をありがとよ」

 

 そうニシシと笑ってやると、神の使い野郎は大きくため息をついた。失礼な奴だ。

 

「それより、今日は一日家にいるのか?」

 

「いや、少し野暮用を片付けてこなきゃいけなくてね。準備をしたらすぐに出るよ」

 

「そうか。晩飯は?」

 

「うーんそうだね……」

 

 神の使い野郎は悩んだあげくに、いい笑みを浮かべながら言い放つ。

 

「君の料理が食べたいから間に合うように帰ってくるよ」

 

 ああ、もし俺がこの外見通りの乙女なら、見てくれだけはいいこいつのセリフにときめいたりできてたのかなぁなんて思う。

 

「ったく、仕方ねえな。今日は唐揚げだ」

 

「本当かい?ならなおさらはやく用を済ませてくるよ」

 

「はいはい、んじゃさっさか行け」

 

 俺は忙しいんだ。邪魔せずにさっさか出かけてこいや。

 




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