転職先は正義の魔法少女の悪側面【完結】   作:畑渚

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気温の急変で鼻と喉がやられかけてます。皆様もお気をつけて
お気に入り100件到達しました。一つの目標として立ててたのでとても嬉しいです、ありがとうございます。


眠るときはね、こうなんというか救われてなきゃダメなんだ

 風呂でほっかほかにあったまったあと、俺はとある事情で少女とOHANASHIしていた。

 

「だから、いいですって」

 

「いいじゃないか。それに俺は慣れてるから大丈夫だって」

 

「無理しないでください。それに体だって昔とは違うんですよ?」

 

「若いから余計に大丈夫だな」

 

「そうじゃなくてですね」

 

 平行線の話し合い。その議題とは——

 

「だから私は気にしませんから一緒のベッドに寝てください」

 

「いいや、俺は毛布さえ貰えりゃ適当に寝るさ」

 

——俺の寝る場所についてである。

 

【君たち、仲が良いのはいいことだがほどほどにしてくれよ?僕も今日は大変な作業だったから疲れているんだ】

 

「すまん。だが本当にどうにかならんのか?こう魔法やら何やらで」

 

【僕はもうすっからかんさ。そして君は魔法を使えない。ジャスティーヌは……そんな無駄なことをしなくてもいいと思ってるようだし】

 

「無駄ってあのなぁ……」

 

 まったく。貞操観念というものもないのかこの魔法少女は。

 

「何度でもいうが、俺の中身は男なんだぞ?」

 

「では私を襲いますか?」

 

「あと10年は経ってから言うんだな」

 

「なら大丈夫じゃないですか」

 

 大丈夫じゃないと言おうとしていやでもそれだと襲うと公言していることになると思いとどまる。

 やたらと押してくるな。彼女にしては逆に珍しい。

 

「なぁ、もしかしてなんだが」

 

「はい」

 

「ただ単に俺と一緒に寝たいだけだったりする?」

 

「えっ違いま……コホン。ええ、実はそうなんですよ」

 

 あからさまに気を遣われた……。やべえこれじゃ俺が変なやつみたいじゃないか。

 

「そもそもなんで魔法を出し渋るんだ。作れないのか?」

 

「あなたのベッド事情にさけるほど魔力に余裕がないので」

 

「でも神の使いの言い方からしてまだ残ってんだろ?」

 

 ベッドに座る彼女が、ムスッとした顔で睨んでくる。

 

「私の魔法は悪を倒すためにあるんです。それ以外の理由でポンポン使えるほど世界は平和ではないんですよ」

 

「まあそりゃそうか」

 

 偶然帰り道だった俺が襲われて死ぬくらいだ。しかも死の詳細は隠蔽されるし。

 

「わかってくれたなら結構です。早く寝ましょう」

 

「ったく、わかったよ」

 

 質素なベッドに寝転がると、少女が電気を消してくれる。

 

「おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

 隣でゴソゴソと動いていた塊は、すぐに寝息を立て始めた。心臓の音が聞こえてきそうなほど近距離な彼女は、あまりにも無防備だ。

 

「なんかなぁ」

 

 心にひっかかりがあったのを気のせいだと思い込むことにして、俺も瞼を閉じた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 夜中、ギシリとベッドが軋んだ音で目が覚める。その後の扉の開閉音と、隣にいたはずの彼女の体温を感じないことから、彼女がトイレにでも行ったのかと考えた。しかし、いつまでたっても帰ってこない。

 さすがにおかしいと思った俺は、寝室から抜け出してみることにした。

 

「あれ、お兄さん。起こしちゃいましたか?」

 

 リビングで電気もつけずに、彼女はただボーッと椅子に座っていた。正直ちびるかと思ったのはここだけの内緒だ。

 

「寝れないのか?」

 

「目が冴えてしまったので」

 

「何をしていた?」

 

「とくに何も」

 

 そう淡々と答える様子は、まるで機械のようだった。

 

「まだ育ち盛りなんだから無理矢理にでも寝ろ?じゃないと色々と育たないぞ」

 

「ははっ、そうですね」

 

 そう言いながらも、彼女に寝室に戻る意思は見られない。

 

「しょうがねえなぁ」

 

 俺は台所へと向かい、鍋を火にかける。冷蔵庫より取り出しますは牛乳。そして棚から砂糖も取り出す。

 

「また料理ですか?」

 

「料理ってほどの代物でもないさ」

 

 寝れない夜はホットミルクと相場が決まってるんだ。彼女がカロリーがーだのなんだのうるさいやつじゃなくて助かる。

 

「ほれ、これ飲んで横になっとけ」

 

「牛乳と砂糖……?」

 

「ホットミルクも知らないのか」

 

「すみません」

 

「別に責める気はないんだがな」

 

 俺も残りをすすって、それから鍋とカップを水につける。洗い物はまた明日でいい。

 

「ほら、寝室に戻るぞ」

 

「……はい」

 

 渋々といった感じではあるものの、少女は俺の後に続いて寝室へと戻ってきてくれた。

 

「ほら、しっかり布団かぶって横になれ?」

 

「お兄さんは?」

 

「ああもう、わかってるよ」

 

 俺も一緒にベッドに寝転がる。ベッドはそこまで広くないため、体の一部が密着してしまうのは許してほしい。俺だって流石にベッドから落ちて目覚めたくはないからな。

 

「お兄さん……」

 

「ん、なんだ?」

 

「お兄さんは私のことどう思いますか?」

 

 どう思う、ときたか。そりゃ困る質問だ。容姿で言えば清純で可愛いとクラスで人気になりそうだなと思うし、魔法少女としてこの年齢から戦ってるのは尊敬する。ただし日常生活に関しては、まあその、言わんとすることは察してほしい。

 

「何を聞きたいんだ?」

 

「いえ……すみません、もう寝ますね」

 

「あ、あぁ。おやすみ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

 そう言って少女は、話すのをやめてしまった。

 その呼吸が寝息に変わるのを聞き届けてから、俺もちゃんと寝直すために寝返りをうった。

 




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