「ありがとうございました~」
「……桐乃」
「はい?」
「良い髪留めだね」
「ありがとうございます。槙ちゃん……友達がプレゼントしてくれたんですよ」
先日の『赤い靴』との【戦い】で破損してしまったバレッタの代わりに、桐乃の髪は新しいバレッタで飾られていた。
紫と透明の石が格子状に並んだシンプルなデザインは桐乃の黒髪によく映えるし、実質剛健な彼女のセンスにも調和する。贈った友達と言うのは、桐乃のことをよく分かっているのだろう……そして、あの石もガラスではなくそんなに高価でなくともきっと宝石だ。きっと押し付けがましく値段や価値を教えなかったのだ。じゃなければ普段使いするのに躊躇してしまう。
弟子は大学で良い友人に恵まれていると、紫乃は老眼鏡のレンズを拭きながらそう感じていた。
「書庫の整理、終わりましたー」
「お疲れさん。やっぱり、男手があると違うね」
「そうですね」
「何ですかそれ~」
「さて、読人。期末試験も終わったことだ……次の能力の創造、どうなっている?」
「少し形になって来たものはあります。でも、実際に使ってみるイメージが想像できなくて何とも言えません」
次の能力の創造……読人の【読み手】としての、新しい能力のことである。
現在の彼の【本】の能力で創造できるのは、火鼠の衣である火衣だけだ。たった一つの能力で一年間を勝ち抜けるほど、この【戦い】は生易しくない。
桐乃は既に三つの能力を創造している。創造能力の『モンストロ』と『歓喜のマリオネット』、武装能力の『嘘吐きの鼻』だ。紫乃曰く、あまりたくさんの能力を創造しても想像力とイメージが分散してしまうので、お勧めはできないとのこと。
読人も桐乃も、手にしている紋章の数は自身の物を含めて三つずつ。今回の【戦い】が開幕して1か月半の現在では、中々良いペースだ。
「取りあえず、五つだ。お前さんの【本】の能力、火衣はかぐや姫が求婚の貴公子たちに所望した宝の一つをベースに想像して創造された物。ならば、次の能力も同じベースにすれば創造しやすいだろう。残りの宝……仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、竜の首の珠、燕の子安貝。これらから想像できる四つの能力を創造してごらんなさい」
「あと四つ」
「無理にこれらにこだわる必要はない。重要なのは、お前さんの想像力だ」
「はい!」
火衣は幼い頃の想い出から突発的に創造されたようなもの、ならばこれから創造する能力は読人がじっくりと想像して【戦い】を勝ち抜けるための能力にすれば良い。創造能力だけではなく、桐乃のような武装能力でも、物語の世界を召喚する展開能力でも良い。
試験も終わったし、しばらくは【戦い】に集中できると気持ちを切り替えた読人は、取りあえず先にバイトの続きに戻ろうと緩くなったエプロンの腰紐を結び直した。
『おーい読人。例のナツキちゃんからメッセージが届いているぞ~』
「ちょ、火衣!」
「ナツキ、ちゃん?」
「何だい、彼女かい?」
「ちちち、違います! メッセージ……っ! 師匠!」
『若紫堂』の居住スペースに置いて来た火衣が、同じく鞄に突っ込んだままにしていたスマートフォンを背負ってちょこちょこと店にやって来た。炎の針の背中に乗せられても、スマートフォンは燃えもしないし熱くもならないから不思議だ。
火衣を抱き上げてから急いで確認すると、20分ほど前に夏月からメッセージを受信している。一枚の写真とメッセージ……『クリスマス・キャロル』と言うタイトルの白い【本】が、写っていたのである。
「これ、これも【本】ですよね?!」
「っ、間違いない。『クリスマス・キャロル』……読人、このメッセージを送って来たのは誰だい?」
「と、友達です。高校の」
「直ぐに連絡を取りな。できたら、うちに来るように言っておくれ」
「はい!」
「黒文字君の本と同じのを見付けたよ~」と言うメッセージに、スマイルをした兎のスタンプ。まさか、夏月の手に【本】が渡ったと……?
夏月も【読み手】となってしまうのかとか、そうしたら彼女も【戦い】に巻き込まれてしまうとか色々な思考が読人の中でぐちゃぐちゃと渦巻いたが、今は早く彼女に連絡を取らなければ。
夏月の番号へ電話を掛けると、三回のコールで出てくれた。
『もしもし、黒文字君? もしかしてバイトだった……』
「竹原さん! 今、どこにいる?」
『え……今? 今は、豆桜町だけど……っ、え、何?! ちょ……っ! きゃぁっ!?』
「竹原さん?!」
スピーカーの向こうから夏月の悲鳴が聞こえると、ガタンゴトンとスマートフォンを地面に落とす音が聞こえた。そして、ツーツーと通話終了の音が空虚に響く……夏月の身に、ナニかが起きたのだ。
「竹原さんの身に何かが……! 俺、行って来ます!」
「待ちな、読人。場所は?」
「豆桜町って」
「なら、走って行ける場所じゃあない。桐乃」
「勿論。乗って!」
「はい!」
エプロンを脱ぐのも忘れて、桐乃のバイクの後ろに乗り込むと夏月がいると言う豆桜町へと急いだ。夏月は既に【戦い】に巻き込まれてしまっていた、誰か別の【読み手】に襲われたのかもしれない。ならば、彼女はもう『クリスマス・キャロル』の【読み手】として覚醒したのか?
読人と桐乃が向かっている豆桜町は、某ショピングスーパーを中心に様々なショップや飲食店が密集する区域だ。今日の夏月は、その周辺をブラブラと散策して古本屋に紛れていた白い【本】を購入してしまったのである。
読人からの電話が来た時、もう買い物を終えて家に帰ろうと駅への近道である幼稚園の前の道路を歩いていた途中だった。鋭い爪を剥き出しにした猫に襲われたのだ。
猫だけではない、鎧を着込んだ巨大なデモンがこれまた巨大な毛むくじゃらの蜘蛛に変身すると、尻から吐き出した粘着性の高い糸で夏月を磔にしたのである。
舞台は、誰もいない休日の幼稚園のグラウンドに移っていた……可愛い動物を模した遊具の間には巨大な蜘蛛の巣が張られ、獲物の蝶のように磔にされた夏月。恐怖による悲鳴も出ないのは、蜘蛛の糸の猿轡が彼女の口を塞いでいたからだった。
「ん、んー!」
「魔法使いの鬼、変身して
『お嬢ちゃんが持っている【本】を素直に渡してくれりゃ、直ぐに解放してやるぜ』
『何、この人たち……外国人? 猫? 何を言っているか、分からない』
と言うか、夏月は自分の現状が全く呑み込めていない。
読人と電話をしていたら猫に襲われ、その次に現れたのは鬼としか形容できない鎧の化け物だった。悲鳴も上げることなく、ガクガクと震える脚に力を入れて逃げようとしたら、鬼――デモンは巨大な蜘蛛に変身したのである。
それからは、その蜘蛛の糸に絡め取られて幼稚園のグラウンドに引き摺り込まれ、声を出そうとしたら糸で口を塞がれた。それでも必死に抵抗して逃げ出したら、向こうも痺れを切らしたのか夏月の動きを封じて蜘蛛の巣にかかった蝶の状態にしたのである。
長靴を履いた猫に、蜘蛛に変身したデモン。それらに指示を出しているのは、プラチナブロンドの青年らしいが彼の喋っているのは日本語ではない。何を言っているのか、夏月には理解できないのだ。
それなのに、相手は夏月が言葉を理解できると言う前提で話を進めているかのようにフランス語でベラベラと捲し立てている。話の内容が分からないのに、返事なんてできるはずはない。
『何、これ? 夢でも、視ているんじゃないよね……喋る猫に、蜘蛛に変身する鬼に。猫がブーツを履いている。まるで……『長靴を履いた猫』?』
『お嬢ちゃん、小さく頷いてくれるだけでも良いんだぜ……ったく、駄目だ。可哀そうに、恐怖で震えているんじゃないのか? リオン、女の子はもうちっと丁寧に使え』
「すまないね、シュバリエ。でも、確かに可哀そうだ。しょうがない、こちらで勝手に【本】を閉じてしまおう。確か、あのバッグに【本】を入れていたはずだ」
夏月の背負っている2WAYリュックの中には、財布や眼鏡、その他の持ち物の他に今日買ったインナーと『クリスマス・キャロル』が入っている。シュバリエが爪を伸ばしてリュックの肩紐を切れてドザリと落ちた……まさか、お金目当てなのか。
感じた夏月の頭の中には、古本屋にて700円+税で購入した本が原因とはこれっぽっちもなかったのである。
「さて、記念すべき紋章だ」
『一体何なの……?! 誰か、誰か……!』
「……っ!! 竹原さん!!」
「っ!?」
夏月の助けに答えるかのように飛び込んで来たその声は、先ほどまで電話で話していた彼の声だった……それと同時に、辺り一面が明るく暖かくなって、一気に炎が燃え上がったのだ。
「っ、炎!?」
「竹原さん! 大丈夫? 怪我は?」
「~~! はぁ、はぁ、はぁ……く、黒文字、君?」
『おう、無事みたいだな』
突如上がった明るい色の炎は、夏月が囚われている蜘蛛の巣を燃やして彼女の身体を解放したが、全く熱くなかったし火傷の一つも負っていなかった。冷たいグラウンドの地面に落ちそうなった夏月の身体を支え、口を塞いでいた糸を取り払ってくれたのはエプロンの上にコートを羽織った読人だった。そして、気遣うように声をかけたのは、バスケットボールぐらいの大きさの炎の針を背負ったハリネズミだったのだ。
「っ、お前は……ヨミヒト・クロモジ!」
「確か、えーと……『長靴を履いた猫』の!」
「僕の名前は、リオン・D・ディーンだ! 何だ、君も彼女の紋章が欲しいのか?」
「何、さっきからあの人……言葉が通じなくて、何を言っているか分からない」
「え? っ、竹原さん、さっきの『クリスマス・キャロル』の【本】は?」
「本? あの、リュックの中に」
弱々しい夏月の言葉で確信した。そして、肩紐が切られた夏月のリュックの中にある『クリスマス・キャロル』の【本】を確認すると、安心したと同時にリオンへの怒りが込み上げたのである。
「リオン! 竹原さんは【読み手】じゃない! 言葉が通じていないし、何より……これ!」
「何を言っているん、だ……?!」
【読み手】を見付けた【本】の裏表紙には、物語の内容を模した紋章が宿る。読人の【本】には竹に囲まれた雲間の月、リオンには袋を担いだ長靴を履いた猫……しかし、夏月のリュックの中から出て来た『クリスマス・キャロル』の【本】の裏表紙は真っ白。紋章がない。
つまり、この【本】はまだ【読み手】と出会っていない。イコール、夏月は【読み手】ではないのだ。奪える紋章があるはずがない。
「……」
「……え? ええ?」
『リオン、お前』
この状況を一言で表せば、「リオンの勘違い」である。
『お前! 早とちりはいい加減にしろとあれほど……!』
「で、でも! こうして『竹取物語』の【読み手】を誘き出せたんだ! やっぱり僕は大物を狙う! デモン!」
「火衣!」
「黒文字君……?」
「竹原さん、巻き込んじゃってごめん……俺が、守るから!」
「……っ」
蜘蛛に変身したデモンが吐く糸を火衣の炎で燃やし、襲い掛かって来る八本の脚は小回りを利かせて回避する。そして、読人の中では一つのイメージが形作られていた。
【戦い】の中で想像力が活性化して、ぼんやりとしか想像できなかったその姿がはっきりと見えて来た……かつて、50年前の【戦い】で蔵人が創造した『天岩戸』のような防御系の能力が欲しいと思っていた。
今なら、はっきりとそれが想像できる。
守りたい人が――夏月が、隣にいるから。彼女を守るための能力を、創造できる。
「火衣!」
『読人!』
「『石作皇子様は、お釈迦様がお使いになった仏の御石の鉢をお持ちになって下さい』! 仏の御石の鉢!!」
読人が開いた『竹取物語』の【本】が眩い光を放ち始め、物語の中の一文を読み上げると、読人と彼の隣の夏月とデモンと距離を取った火衣が地面からせり上がって来たドーム状の石……否、岩にすっぽりと覆われてしまったのだ。
そのドームはまるで引っくり返した鉢だ。だけど、ゴツゴツとした岩肌が削られずに残っているところから見ると、石作皇子がかぐや姫に献上した偽物の石鉢かもしれない。
「何だ、そのドームは? 直ぐに砕いてやるよ! デモン!」
『待てリオン! 無暗に攻撃するな!』
この時、シュバリエの制止を素直に受け入れておけば良かった。蜘蛛の八本の太い脚で一回、また一回と攻撃するがドームはヒビが入る気配がない。ならばもう一発と、先の二回よりも強力な攻撃が突き刺さった時、ドームは砕けた。
引っくり返した鉢が砕けたその瞬間、その中から姿を現したのは読人たちだけではない。半透明の仏――奈良や鎌倉に鎮座する釈迦の姿が、彼らを守護するように立ちはだかったのである。
だが、その目には慈愛も威厳も宿っていない。あるのは、怒りだけだった。
「日本には、『仏の顔も三度まで』って諺があるんだよ。三度目の後は、容赦しない! 『白山にあへば光も失するかと
仏の御石の鉢が偽物だと看破された石作皇子の誤魔化しの一句を読んだその瞬間、釈迦の両目には鋭い光が宿りそのまま怒りのビームを放ったのである。
ビームの矛先は勿論、怒りに満ちた釈迦の姿に呆けているリオンとシュバリエとデモンだ。三度の攻撃の全てをしっぺ返しする怒りのビームが発射されて命中すると、幼稚園のグラウンドで爆発が発生しその爆風に乗ってリオンたち御一行が吹っ飛ばされたのだった。
それだけ、釈迦の怒り……と言うか、読人の怒りが頂点の達していたのだろう。あっと言う間に、流れ星のように空の彼方へ消えてしまったのだ。
どうでも良いが、再びリオンを逃がしてしまった。悪運は強いようである。
『おー、面白い能力だな読人』
「竹原さん、あいつらはもう……っ!」
リオンたちを吹っ飛ばして【本】を閉じると、【戦い】の被害は
そのリュックと『クリスマス・キャロル』の【本】を手に夏月に声をかけたのだが、彼女はボロボロと涙を零していたではないか。非現実的で非日常的な存在に襲われ、それを理解する間もなく恐怖に襲われて……それに解放されて安心した刹那、無意識に涙を零してしまったのだった。
「え、あ、あ……ごめん、そんなつもりじゃ、ないんだけど……っ、止まらない」
「あ、えーと、その……! は、はい、これ」
「っ」
「ぐちゃぐちゃで、ごめん。その、あの……泣かないで」
鼻を啜って必死に涙を止めようとする夏月へ、ポケットに突っ込んでいたハンドタオルを差し出した読人の表情は焦っているのか、先日のランチの時以上に真っ赤に染まっていた。火衣に見守られていたそのやり取りは、夏月が小さく「ありがとう」と言ってハンドタオルを受け取って涙を拭くと言う形で、受け入れられた。
そして、別の方面を探していた桐乃と合流し、夏月を連れて『若紫堂』へと向かったのだ。
「……と、言う訳なんだけど。そう簡単に、信じてもらえないよね」
「……」
「そりゃ、突拍子もない話だし。俺もにわかには信じられなかったし……」
「……黒文字君」
「はい!」
「助けてくれて、ありがとう」
「あ、いえ……」
「火衣ちゃんだっけ? どうもありがとう」
『ちゃん付けすんな。一応精神的には雄なんだぞ』
「ごめんね。じゃあ、火衣君って呼ぶ」
『良し』
夏月に全てを話した。50年に一度の【戦い】と【本】と【読み手】と、亡くなった祖父が前回の戦いの優勝者であることも。日常が非日常へと変化する1年が、今年であることを。
そう簡単に信じられることではない、夢物語のような真実だ。でも、現実に彼女は【読み手】を勘違いされて襲われた。否定されることも批判されるのも覚悟していた読人だったが、夏月の口から出て来たのは感謝の言葉であり、掌サイズの火衣と戯れる彼女の笑顔であったのだ。
「え、信じてくれる、の?」
「うん。そりゃ、普通は信じられないよ、そんな小説みたいなこと……でも、実際に体験しちゃったし。それに」
「それに?」
「黒文字君は、そんな嘘を吐かない人だと思っているし」
「っ! あ、ありがとう竹原さん!」
「で、そろそろ別の問題に入って良いかい?」
「あ、はいい! どうぞ、師匠」
「竹原、夏月さんと言ったね。悪いが、この【本】を買い取らせて欲しい」
この【本】とは勿論、夏月の前に置かれた『クリスマス・キャロル』の【本】のことである。
『若紫堂』の住居スペースにて、店には一旦「休憩中」の札をかけてから夏月への説明が行われていた。桐乃が淹れたお茶を飲んで一息吐いた紫乃は、読人と夏月の話が落ち着いたタイミングでこの話を持ち出した。
この『クリスマス・キャロル』の【本】の【読み手】はまだ現れない。それ以前に、この【本】が今回の【戦い】の中の百冊に選ばれているかも解らない。しかし、未知の能力を宿す【本】がそう簡単に一般人の手に渡ることは避けなければならない。夏月が手にした【本】を買い取り、『若紫堂』で保管しておくのが最善だろう。
夏月にしてみれば、折角手に入れた美しい本を手放すこととなってしまうが、どうするか?
「勿論、買った時以上の値段で買い取らせてもらうつもりさ」
「はい、お願いします。お金は結構です。私が持っていたらいけない物みたいだし」
「ありがとう。責任をもってお預かりします」
【読み手】を持たぬ『クリスマス・キャロル』の【本】は、『若紫堂』で厳重に管理されることとなる。
冬の太陽は沈むのが早い。夕方手前の時間帯のはずなのに、周囲は既に暗く染まりかけて街灯には光が灯り始めている。今日はもうバイトは良いから夏月を送って行ってやりなさいと言う紫乃の言葉に甘え、読人は夏月と共に駅に向かうこととなった。
「竹原さん、待たせてごめん。送るよ……何なら、駅までじゃなくて家にまで」
「じゃあ、お願いします……黒文字君」
「は、はい!」
「……【本】を手に戦っている時、カッコ良かったよ」
「っ!」
「安易に言っちゃ駄目かもしれないけど、頑張ってね」
「が、頑張ります! 竹原さんにカッコ良いところみせるから!!」
『……カッコ付けたがりだったのか』
この日から読人は、精力的にバイトも【戦い】における勉強にも取り組むことになった。全ては、夏月に良い恰好見せたいために……その様子を見た紫乃は、やっぱり彼は蔵人に似ていないと感じたのだった。
***
「……
読人も桐乃も帰宅し、『若紫堂』を閉めた紫乃は仏壇の前にいた。
仏壇に置かれた位牌と遺影は、20年ほど前に亡くなった彼女の夫の物だ。見合いで出会い、『若紫堂』を継ぎたいと言っても嫌な顔をせずにそれを受け入れてくれた優しい人だった。彼の位牌に手を合わせて線香を上げてから仏壇を動かすと、そこには隠し部屋のようなスペースがある。
そこに、かつて彼女と共に英国へ渡った『源氏物語』の【本】や、古書店の仕ことの中で手に入れた【読み手】のいない白い【本】が保管されている。そこに、『クリスマス・キャロル』の【本】を収めてしっかりと隠された。
創造能力・仏の御石の鉢
「石作皇子様は、お釈迦様がお使いになった仏の御石の鉢をお持ちになって下さい」
かぐや姫の無茶振りその①から想像して創造された防御兼カウンター能力。
石の鉢型ドームが三度の攻撃を受けるとドームが崩れ、今までの攻撃を蓄積した仏様のスタンド(違)が出現し、両目から仏の顔も三度までビームを発射する。慈悲はない。