噴上裕也の果てしなくカッコよく美しいアカデミアライフ   作:己道丸

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噴上裕也は負けられない その③

「いくぜッ、筋肉ダルマあああぁぁぁぁ――――ッ! その薄汚ねーマスクごと! てめーのツラをブチ抜いてやるッ!!」

 

 活瓶に向かって走り出す。

 とても同じ人間とは思えねーバカデカい図体だぜ。おれの前世じゃありえない、個性っつー何でもアリのこの世だからこその大きさだ。

 ヤツの影は広く、簡単におれを飲み込んじまう。

 

 フツーならビビるところさ。今だって全くビビってねーワケじゃねー。だが、ここは立ち向かうしかない場面だぜ!

 何故って?

 そりゃおれの後ろに、八百万と耳郎っつー女どもがいて、そのために体を張った上鳴という男がいるからさ!

 こいつらを見捨てることはできねー! そいつはとんでもなくカッコわるいことだからだ! おれがやるべきことじゃねーってことは、誰よりもおれ自身が分かっていることさ!

 

 カッコよくて美しいこの噴上裕也がやるべきことはただ一つ!

 こいつらを守るために、目の前の(ヴィラン)ヤローをブッ飛ばすこと! ただそれだけだッ!

 それだけがこのおれにもっとも相応しい行いなのだッ!

 ()()()()()()()()()()()()()!! そのためにおれは立ち向かうんだぜ!!!

 

「ハハッ、やってみろクソガキイイィィィ~~~~~~~~~~ッ!!」

 

 来たぜ! 振り下ろすハンマーのようにッ、隕石じみたヤツの拳が! おれの脳天をスイカみたいにハジケさせようと落ちてくる!

 だがビビるな! 立ち向かえ!!

 おれはそのための力を持っている!!

 

「――ハイウェイ・スター!!!」

 

 おれの隣に寄り添う、力ある『ビジョン』!

 今は個性と呼ばれるものになったスタンド能力、ハイウェイ・スターが現れ、おれの眼前でおれが望む構えをとる。

 それは両手の指を組んで腰を落としたポーズ! 落ちてくるバレーボールをトスして再度打ち上げるかのようなフォーム!

 活瓶の拳が来る前にッ、ハイウェイ・スターの組まれた手の平におれは足をかける!

 直後、一気に押し上げられた!!

 

「ああぁ~~~~!? 跳んだぁ~~~~~~!?」

 

 ハイウェイ・スターが全力で両腕を振り上げ、おれを宙に打ち上げる!

 代わりに拳の下敷きになるが、あれは殴ろうと切ろうと意に介さない無敵のスタンド! 気にすることじゃねー!

 それよりおれさ! 伸びきったヤツの腕に着地したおれこそが、行動すべきなのだ!

 

「!!」

 

 一瞬、活瓶と目が合う。

 マスクでブサイクなツラを隠してやがる。どうしてわかるって? 女の扱いがなってねーヤローは、心の底がブサイクだからさ!

 そんなゲスヤローにはッ、ブチかましてやるしかねーぜッ!!

 

「ドラァッ!!」

「ぐぉ!?」

 

 頬っ面に一発!

 だがよー、一撃では終わらねーぜッ! てめーはもっとボコボコにしなきゃ納得いかねー!

 

「来い! ハイウェイ・スター!!」

 

 呼べば現れる! それがスタンドだぜ!

 おれの周りに現れたのは無数の足形。活瓶に叩き潰されたハイウェイ・スターが分解した姿だ!

 それを放つ!

 スタンドだけじゃねー! ()()()()()()()()!!

 

「ゲブッ!!」

 

 足形に()()()一撃がマスクを打ち抜く!

 スタンドとは本体と影響しあうもの。おれに限ってはダメージを共有することはねーんだが、しかしヴィジョンに重ねることでおれ本体の動きをスタンドに合わせることができる!

 こないだの個性把握テストで『走り』を足形の『移動速度に合わせた』ようにッ、今度は拳を合わせる! それはおれの拳は加速するってことだぜ!

 一発一発が時速60kmのラッシュだぜ! てめーのマヌケ面を矯正してやる!!

 

「ドララララララララララララララララララ!!!」

 

 打つ! 戻す! さらに打つ!!

 足形の数だけ放たれる拳が確実に頭蓋骨を打つ! そのたびに更に活瓶の頭に足形は移り、顔面を覆っていく! ドタマからの養分吸収だ、こいつはキくぜぇ~~~~ッ!!

 そのチンケな脳ミソッ、干物になれやぁ~~~~!

 

「ナ、ナメるなぁ~~~~~~~!!」

「!」

 

 だが活瓶はもう片方の腕をおれへと振り抜く。

 目ン玉は真っ先に塞いでやったんだが、さすがに触れていたら、おれがどこいるかぐらい分かるわな。

 腕から飛び降りたおれの鼻先を太い指が薙ぐ。

 当たればミンチ! って威力!! とんでもねーパワーだが、当たらなきゃ意味がねーぜ!

 こうしてヤツから離れれば、どこにいるか分からねーだろ!

 

「……これで俺を仕留めるつもりかぁ~~~~っ?」

「何!?」

「ガキがぁ~~っ。お前を狙えなくても、お前から来るようにしてやればいいんだよおぉ~~~~!!」

 

 身をかがめて足をふくらませる活瓶。

 直後ッ! 巨体が走る!!

 

「なッ、何イィィ―――――! こッ、こいつッ! まさか!!」

 

 地鳴りがするほどのパワフルな突進! だが目を塞がれたヤツはおれを狙えない!!

 だからこいつはッ! 最後に見た記憶を頼りに突っ走りやがった!! おれに当てられなくても、山肌に囲まれた一本道を進むぐらいはできる!!

 マズイ! マズイぜ!!

 何故って、道の先には八百万たちがいるからだ!!

 

 ヤ、ヤローッ、おれとタイマンしながらほかのヤツを狙いやがった!!

 クソッタレがぁ~~~~ッ、今から三人を道の端に運ぶヒマはねー! 活瓶の方をどうにかするしかねーぜ!!

 だが全力疾走する機関車みてーなヤツから守るとなると……これはまた体を張るしかなさそうだなぁ――――――!

 だがやるッ!

 女どもを踏みつぶさせるワケにはいかねー!!

 

「戻れハイウェイ・スター! そして来い!」

 

 どんどん近づく活瓶へ向かうおれの横に、ヤツの顔から剥がれた足形の群れが集まり、人型となったハイウェイ・スターが並走する。

 手分けするぜ! おれは右足ッ、お前は左足だ!

 走るヤツをどうにかするには足を狙うしかない! 狙うは左右の足が交差する一瞬だ!

 

「そこだ!!」

 

 後ろへ送られようとした右足のスネに体当たり! 同時に、地面を踏もうとした左足の下にハイウェイ・スターを滑り込ませる!

 両足のバランスを崩し、活瓶を転ばせるんだ!

 

「ぬおおおぉ!?」

 

 つんのめった巨体が宙に浮かび、八百万たちの上を通りすぎる。そして頭から着地! 女どもの向こうで活瓶は地響きをたてた。

 よし、あいつらが踏みつぶされるのは回避できた!

 ……だが状況は悪くなっちまったようだな。

 

「……へ、へへっ。振り出しだなぁ~~~~ガキィ~~~~~~っ」

 

 土煙から這い出した活瓶のツラに、ハイウェイ・スターは一片も残っていない。

 しかもヤツはおれたちから活力を吸い上げた分、多少養分を吸い上げられても余裕があるって感じだ。

 

 何より、距離を詰められちまった。

 さっきまでは八百万たちが離れていたから立ち回れたが、いまはその余裕もない。活瓶と倒れる三人のあいだに割って入り、けん制するのが精一杯だ。

 もう小手先はきかない。

 正面からどうにかするしかねー。筋肉ダルマの巨人を相手に!!

 

「なんだぁ~~~~? まだやれると思ってるのかぁ~~~~~~?」

「うっせードサンピン! ビビる相手が欲しいならヨソいきな!」

 

 覚悟を決めるしかねー!

 おれが勝っているのは初速と小回り。ヤツの拳がくる前に、ふところに入りラッシュをキメる!

 ……だがハイウェイ・スターでやれるだろうか? おれの拳を上乗せしてもダメだったのに?

 後ろのこいつらごと叩き潰される前に押し切るには、どうすればいい?

 どうすれば女どもを守れる?

 チクショウ、どうすれば……!!

 

 

 

 その時だ。()()()()()()()()

 

 

 

「……!」

 

 足から頭へ伝わる、シビれるようなビート。

 それは天啓ってヤツだった。

 カミサマがおれに『いけ』ってプッシュしているのを感じるぜ……とびっきりキュートな女神様がな!

 

「――来い、デカブツ」

「あぁ~~~~?」

「てめーの手が届く前に、ブッ飛ばすっつってんだよ」

「……言ったなクソガキ。吐いたツバは飲めねーぞ」

 

 殺意で空気が張り詰める。

 活瓶の『確実に間違いなくおめーらを殺してやるぜ』って覚悟が伝わってくる。ドス黒く冷え切った暗黒の意思だ。

 筋金入りの悪だけが放つ気迫。ヤクザを名乗るだけのことはあるってワケだ。

 

 だが、ビビっちまうことはできない。何故っておれの後ろには女どもがいるからだ。

 おれが止めなきゃ女どもが傷つく。死ぬかもしれねー。

 だったらよぉ~~~~ッ、ここでおれがカッコよくそれを助けるしかねーだろーがよォ――――――――――!!

 

 

 

「くたばれっ!! ガキイイイィィィィ――――――――――!!!」

「ハイウェイ・スタアアアアアアアァァァァ――――――――――!!!」

 

 

 

 振り上げられた敵の拳!

 だが撃ち出されるより早くッ、ハイウェイ・スターがふところに飛び込む!

 

『ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ――――――――――!!!』

 

 雄叫び。

 それはハイウェイ・スターのものかもしれないし、おれ自身のものかもしれない。同時に、それを考えるのは無意味なのかもしれない。

 何故ならおれたちは一つのものだからだ。

 

 ハイウェイ・スターが叫ぶ時とはッ!

 おれ自身が心の底から叫びをあげる時なのだ!!

 

『ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ―――――――――!!!』

 

 打つ! 打つ! 打つ!

 鋼鉄の綱を束ねたような胴体を打つ!

 しかし!!

 

「バカがあああぁぁぁぁ~~~~!! その程度のラッシュが俺に通用すると思ってるんですかぁ~~~~~~~~~!?」

 

 肘を引き絞りきった活瓶が嘲笑う。

 その間にどれだけのラッシュを叩き込んだだろう。ほんのわずかな間が、とてつもなく長く感じる。

 

 ヤツの言うことは、ずっと前から分かってることだ。

 おれのハイウェイ・スターはパワーが弱い。自力ではシュレッダーを一発で壊すこともできない非力なスタンドだ。

 だがな! んなことはもう知ってるんだよぉ~~~~~~っ!

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!』

 

 もっと、もっとだ!ヤツのふところにえぐりこめ! 拳を打つのではなくッ、突き上げるようにするのだ! ヤツの体を打ち上げるように!!

 百発で足りねーなら千発、いや一万発でも殴り続けろ!!!

 

「ムダムダムダァ~~~~~ッ!! そんな拳が効く訳ないだろぉがあぁ~~~~っ!!」

「……誰がおれのラッシュで倒すっつったよ」

 

 ハイウェイ・スターに押され、活瓶の体はまるでアーチを描くかのように猫背になっている。ふところの一番奥まで入りこんだ証拠だ。

 いいぜ、これだ! これがいいんだぜ! この位置取りがいい!!

 だが一歩! わずかに足りない! ちょっとでいい、助けが欲しい!!

 おめーのことだぜ!!!

 

 

 

「耳郎オオオォォォォ――――――――――!!!」

「……やったろうじゃん!!」

 

 

 

 応えは隣にある!

 いいねぇ、イイ女が傍にいるっつーのは、いつだっておれをいい気分にしてくれるぜ!

 

「げぁ!?」

 

 耳郎の耳から伸びたプラグが活瓶の足に挿さり、巨体が激しく震えた。爆音となった彼女の心音が叩き込まれたからだ!

 どんなにデカくても、体内への攻撃はキくハズだ! 筋肉ダルマがひるむ、その瞬間を待っていたぜ!

 

「サンキュー耳郎。あとは任せて下がってな」

「噴上……」

「何だ、心配してんのか? 嬉しいね、力がみなぎるぜ」

「――バカなっ!!」

 

 ……何だよ、せっかくイイところだったのによぉ~~~~~~。

 そんなに耳郎の活躍が意外かよ。

 

「立てる訳がねぇ! 活力は吸い尽くしたんだっ! ジュルジュル音が立てるようにっ! 牛乳パックだったらベコベコにつぶされるほどに!!」

「そりゃつまり、てめーがナメてたってことだぜ。この耳郎響香の根性をな」

 

 こいつはガッツのある女だぜ。

 てめーにバレないようにコッソリとおれの足にプラグを挿し、()()()()()()()()()()()()()。『まだ動けるぜ』って合図をよ!

 

「耳郎はヒーローになるために雄英へ来た最高にイカす女だぜ。てめーごときの個性で腰砕けになるような、ヤワな女じゃねーのさ」

 

 あぁ、モチロン、

 

「こっちもな」

「何イイイイイイイィィィィ~~~~~~~!!?」

 

 耳郎がやってくれたんだぜ。当然、もう一人だって立ち上がるさ。

 我らが1年A組の副委員長、八百万百はな!!

 

「……創るのに、いつも以上に時間がかかってしまいましたわ……申し訳ありません」

「問題ねーよ。極太じゃねーか、イカすぜ」

 

 耳郎に劣らず真っ青な顔で、八百万は『それ』にもたれかかっていた。

 真っ黒でビンビンに輝くぶっとい『それ』。ついさっきまでここにはなかったその武器にな!

 

「――迫撃砲! 今私が創れる、最大の武器ですわ!」

 

 砲弾を装填したそれは、すでに活瓶に狙いをつけている。八百万渾身の一品だ、こいつでてめーを吹き飛ばす!

 

「……さぁ、後はおれの仕事だぜ」

 

 八百万はトドメを用意した。

 耳郎はゆるがない敵のスキを作った。

 あとはこのおれ! 上鳴の養分で立ち上がったおれが果たすべき役回り!

 放たれた砲弾をこらえられないようにッ! おれのラッシュで活瓶の体を宙に押し上げる!

 やるぜハイウェイ・スター! ここが正念場だ!!

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――ッ!!!」

「て! てめー!! このガキがああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~ッ!!!」

 

 ふところに入りきった今がチャンスなんだ!

 筋肉でブクブクに膨れた体じゃ間合いが近すぎてハイウェイ・スターを狙うには一歩遅れる! その間にやりきるしかねぇ!

 八百万がッ、耳郎が見てるんだ! カッコわるいところは見せられねーぜ!!

 

「あああああああああぁぁぁぁぁ―――――――――――!!!」

 

 打て!! 打て!! 打て!!!

 打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打て打てッ!!!

 

 体がグラついた今ならいける! ほんのちょっとでいい、活瓶を打ち上げろ! 靴裏が地面から離れるまでッ、浮き上がるまで殴り続けろ!

 力が足りねーなら数で補え!!

 速さが足りねーなら気合で加速しろ!!

 おれはできる!! おれだからできる!!

 女に励まされたこの噴上裕也とハイウェイ・スターにできないことなどない!!

 たとえもしあったとしても! 今この瞬間にできるようになって見せる!!

 そうさ、おれたちにはこの言葉がついている!!!

 

 

 

PLUS ULTRA(プルス・ウルトラ)AAAAAAAAAA(アアアアアアアアアア)AAAAAAAAAA(アアアアアアアアアア)AAAAAAAAAA(アアアアアアアアア)AAAAAAAAAA(アアアアアアアアア)AAAAAAAAAA(――――――――――――――)!!!!」

 

 

 

「があああああああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」

 

 活瓶の雄叫び! ハイウェイ・スターの拳がヤツの腹筋を貫いた!

 おれの力が!! 巨体を地上から突き放した!!

 

「今だ八百万! 撃てぇ――――――!!!」

「はいっ!!」

 

 返答の瞬間! 轟音が空気を破る!!

 

「ごげあばァ―――――――――ッ!!?」

 

 一瞬のことだった。

 おれの横を通りすぎたバカデカイ砲弾が活瓶の胸に刺さり、山の向こうへ吹き飛ばしたのは。

 途中途中でかすった山肌を砕き、風を切る甲高い音をたてて巨体はあっという間に点になった。

 

 そして、遠くで何かが砕ける音。

 

「……ありゃあ正面入り口の方じゃねーか?」

「……知らないよ、そんなの」

 

 気の抜けた返事をして、耳郎は地面にへたり込んだ。見れば八百万も似たようなもんだ。砲台に背中を預け、汗まみれになって荒く息をついている。

 当然だ。

 ただでさえ活力を吸いつくされた上に、殺しにかかってきた敵との戦いを生き延びたんだからな。肩で息をするのも当然か。

 まぁ、活瓶のヤツはあの手だらけ野郎や『ヤク漬け野郎』に送り返してやった、と思えば気も晴れるか。

 

 ――ってところで、おれも限界だ。

 

 

 

「……噴上? ちょっと噴上!?」

「噴上さん!?」

 

 

 

 悪い、もうムリだ。ハイウェイ・スターも保てねぇ。

 上鳴にもらった養分も品切れだな。地面に倒れたっつーのに、痛みがやけにニブい。

 まったく、どうせなら、女の胸に抱かれて……オチたかった、ぜ……————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして目が覚めた時にはすべてが終わっていた。USJに警察が到着していたのだ。

 

 揺れる担架で運ばれていく、おれと上鳴。

 そして緑谷、相澤、13号センセー。

 どうやら最初に敵が現れた正面入り口の方でも大きな戦闘があったらしい。緑谷が突貫したりセンコーたちが来たり……そういうことがあったと、道すがらに塚内っつー刑事(デカのおっさん)が教えてくれた。

 駆けつけたオールマイトが敵を撃退した、っつーこともな。

 さすがはナンバー1ヒーローだ。負傷したらしいが、それも保健室でリカバリーガールの婆さんが治してすむっつーんだから、ハンパねーよな。

 

 だが主犯格の奴らには逃げられちまったらしい。

 大半の敵は捕まったが、そいつらを引き連れてきた全身手だらけのヤツも『ヤク漬け野郎』も、活瓶も逃げおおせたらしい。

 

 だがおれ的に一番重要だったのは、ほかのクラスメイト連中が無事だったことだ。

 特に女。一緒にいた八百万と耳郎があの後も無事だったことや、トオルたちに何事もなかったと分かって、まぁホッとしたもんだぜ。

 こっちは限界超えてブッ倒れちまったからな。それから何かあったんじゃ、とてもじゃねーがやってられねーぜ。

 

 と、イロイロ教えてもらったが、そこで時間切れ。

 養分吸われた上にボコボコにされたおれと上鳴は、リカバリーガールの個性による治療と相性が悪いっつーことで、やってきた救急車に乗せられた。

 色気のねー白衣どもと細々した医療器具が待ち構える車の中に乗せられ、扉が閉まる。すぐに排気音をたてて車体が揺れ、ちょっぴり見える外の風景が後方に流れていく。

 ガチャガチャと計器だか聴診器だか取りつけられるのを感じつつ、おれはぼんやりと車の天井を眺めるしかなった。

 本当なら、感謝感激しておれにキッスの一つもしてくれる八百万や耳郎、再会したトオルあたりの笑顔が見たいところだったんだがな。

 

 だがそれを拝むのは、何日も後のことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っつーことがあったからよぉ~~~~ッ、おめーも来てくれてウレシイぜ、麗日ぁ~~~~~~ッ!」

「……はぁ」

「え、えぇと、噴上君」

「今日来たのは彼女だけではないぞ!」

「ん? あぁ、お見舞いゴクローサン、緑谷に飯田。付き合いいいなー、お前ら」

 

 病院で数日入院することになったおれ。

 そんなある日、病室の戸を開けたのは毎度おなじみ仲良しトリオ、麗日・緑谷・飯田だった。まったく義理堅いことに、フルーツをおさめたカゴを手に神妙な顔でやってきた。

 全員私服。聞いた話じゃ、事件のせいでクラスは連日休みになっているらしいから、おれを見舞うためだけに足を運んでくれたっつーワケだ。

 いいねぇ、いつだってベッドの上に寝そべるおれを見舞ってくれる女はイイ! それは前世のあれこれで証明済みだぜぇ~~~~ッ。

 

「……元気そうやね、噴上君」

「モチロンよぉ! おれはおれ自身なら回復させられるからな、ちょっと養分吸わせてもらえればあっという間に復活よぉ!」

 

 意識さえハッキリすればこっちのもんだ。

 へんに機械や薬を使うよりよっぽど確かだってことが分かり、体力有り余ってる異形系や自分で体力を回復できる個性を持ってるヤツに来てもらって、ハイウェイ・スターを使わせてもらった。

 今も入院しているのは経過観察と、あとは今後のために個性の検査をしたいからっつーことだそうだ。戦闘力もある回復系個性は珍しいんだそうだ。それにこいつは最近発現したばかりだからな、情報を集めときたいんだろう。

 だがそれも明日まで。そしたらこの退屈でメンドーな病院生活ともオサラバだぜ!

 

「おう、おめーらもいつまでもそんなトコに立ってねーで、その辺座れよ」

「う、うん」

「でもさ……」

 

 ぼーっと立ちつくす麗日たちに声をかけたが、しかし目を丸くするばっかりでこっちにこない。

 何してんだ、と思い、しかしすぐに理由は分かった。

 そうだったな、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「わりぃ、おれってば千客万来でよ」

 

 

 

「ハイ、裕ちゃん! あ~~~~~~んっ」

「ちょっと芦戸ちゃんっ、裕ちゃんに『あ~んっ』してあげるのは交代でって約束したじゃない! ズルいよぉ!」

「……ていうかアンタら、それ八百万の差し入れなんだけど」

「い、いいのです、耳郎さん。噴上さんも喜んでくれているみたいですし、何よりですわ」

「そうね。裕ちゃん、とっても嬉しそう。すごくデレデレしてるわ」

 

 

 

「当たり前だろツユちゃ~~~~~~んッ! おめーらが来てくれてよォ、ハッピーにならねぇワケねぇだろうがよオオォォォ~~~~~~~~~~ッ!!」

 

 芦戸がフォークで差し出した桃を頬張り、おれは楽園を再確認する。

 いいねぇ、したたる果汁にやわらかな果肉! さすがはお嬢様の見舞い品だ、高級な品物だってことがおれの舌でも分かる! サイコーの味わいだぜ!

 しかもおれを取り囲む女どもに食わせてもらえるっつーんだから、一入だよなぁ!

 

「はい、裕ちゃん! 今度は私だからねっ」

「おいおいトオルゥ、もうちょっとゆっくり食わせてちょうだいよォ~~~~ッ」

「やだやだっ、私だって裕ちゃんに『あ~んっ』ってしたいもんっ」

「しょうがねーヤツだなぁ~~ッ。ホレ、あ~~~~~~~~んッ」

「あ~~~~~~~~~~んっ」

「……ンまあぁ―――――いっ! やっぱりトオルに食わせてもらうと一味違うなぁ!」

「でしょでしょ? えへへ、もっと食べる?」

「あ、葉隠ずるーいっ、今度は私だよぉっ」

 

 カワイイヤツらめ、もう何度目だよ。

 まったく、モテすぎるのも罪だな、カッコよくて美しいおれのツラいところだぜぇ。

 

「え、えーと、みんなも噴上君のお見舞い?」

 

 頬を膨らませるトオルとミナを仲裁するように、麗日が手を挙げて声を上げた。

 それに女どもは振り向いて、

 

「うんそうだよっ! だってまだ入院してるって聞いたし、心配じゃない」

「私は耳郎さんと一緒に来たのですけど、まさか皆さんもいらっしゃるとは思いませんでしたわ」

「八百万ちゃんと耳郎ちゃんはね、透ちゃんの次に来てたのよ」

「健気だよねぇ、ひょっとして裕ちゃんのこと意識しちゃった?」

「ち、違う! そんなんじゃないし! ……ウチらをかばってケガした訳だし、さすがに見舞い無しは違うかなって……そう思っただけ!」

 

 オイオイ耳の先まで真っ赤だぜぇ? そっぽ向くそぶりがいじらしくてキュートじゃねーかよぉ。

 八百万と耳郎には、初対面からちょっぴり壁を感じてたんだが、どうやら気を許してくれたみてーだな。これまで匂っていた警戒心による緊張の匂いがなくなった。

 それだけでも体を張った甲斐があるってもんだぜ! 女と仲良しになるッ、これに勝るキズ薬はねーからなぁ~~~~~~ッ!

 

「ありがとよぉ、――モモ、キョウカ。おめーらが来てくれたおかげで、元気イッパイだぜぇ」

「お、大袈裟ですわ、噴上さん」

「……ていうかキョウカって言うな! もうっ」

 

 へへっ、カワイイヤツらよのう。リカバリーガールの婆さんは呆れていたが、こればっかりはおれの性分だよなぁ。やめらんねーぜッ!

 カッコよくて美しいおれのために女どもが集まる! これこそおれの本懐よぉ!!

 

 

 

「……あ、あれ? そういえば上鳴君は?」

「む、そういえば。病室は同じはずだが」

「あいつならそこにいるぜ」

「え? ……うわっ、上鳴君!?」

 

 隣のベッドにいるってのに、全然気づかなかったみたいだな。

 まぁムリもねーか。陽の光を浴びることができなかったモヤシより真っ白にしおれた今の様子じゃあな。

 

「……よぉ、緑谷、飯田……」

「ど、どうしたというのだ上鳴君! まさかケガの後遺症か!?」

「……見て分かんねーのかよ、この状況をよぉ……!」

 

 駆け寄ったヤローどもに、上鳴はウメボシみてーなツラですがりついた。

 

「来る奴来る奴みんな噴上目当ての女子! その様子を隣で眺めるしかねー俺の気持ちが! 分かんねーのかよオォ――――――!!」

「え? だって私、裕ちゃんのお見舞いに来たんだし」

「私もー」

「アンタにもちゃんと見舞い品持って来てやったじゃん。剥いて食べれば?」

「俺も! 女子に『あーんっ』ってしてもらいてーんだよ! 耳郎、お前でもいい! 頼む、俺にも構ってくれ!」

「は、ダサ。自分で言うからあんたダメなんだよ」

「チクショオオオオォォォォ――――――ッ!!! 俺だって体張ったのに!!」

 

 残念だったな、上鳴。ここがおれとおめーの決定的な差よ。

 まぁ、おれがカッコよすぎるのが悪いと思って、甘んじて受け入れてくれや。

 

 

 

「緑谷! 飯田! 俺をここから連れ出してくれ! せめて別の病室にするように頼んでくれぇ――――――!!」

 

 

 

 ――この叫びは病室どころか廊下の果てまで響き渡り、上鳴は看護師のねーちゃんにこっぴどく叱られたっつーのは、また別の話だ。

 

 




USJ編、後編。
活瓶との戦いに決着がつく回。

前回からずいぶんと間をあけてしまい、すみませんでした。
最近SS以外の創作にも手を伸ばすようになり、作業のリソースが回らなくなっていました。要領の悪い性分で申し訳ないです。
それに加えて、次回から第2期になるので、構成をまとめるのに少し時間がかかりそうです。
ここまでで1クール(番外編のぞく)にまとめられたのは偶然なのか必然なのか。次の体育祭編~職業体験編までも同様にまとめたいと思っています。おおむね大筋はできているので、あとは子細を詰めて1話ずつに分割していくつもりです。
2期からは別のスタンド使いも出したいなぁ、とも思っていますが、さてはて。

そんな訳で、次回までまたお時間をいただくかと思いますが、興味を持っていただける方は、どうか気長に構えていただけるとありがたいです。

※追伸。前回はアンケートにご協力いただきありがとうございました。これを参考にして今後も制作していきたいと思います。




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