噴上裕也の果てしなくカッコよく美しいアカデミアライフ   作:己道丸

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体育祭がやってくる その②

「イタリア出身!」

 

 ヤツの紹介に息をのんだのは緑谷だった。

 

「知っているのか緑谷君!」

「うん、アメリカとは別の意味で個性による犯罪抑止の本場だよ。ヒーローの本場であるアメリカとは違って法的に認可されないまま敵と戦うスタイル、いわゆるヴィジランテが盛んな国で、おおやけの検挙率と当地の人たちが認知している“敵犯罪”の数が一致しないことで有名なんだ。それは個性出現以前からの文化、マフィアという違法活動も辞さない自治組織に端を発するとも言われていて」

「成る程、海外の流儀を持つ実力者ということだな!」

「さすが緑谷くん! ヒーローの話になるとメチャクチャ早口だね!」

「み、みんな冷静すぎひん? テーブル一つダメになっとるんやけど?」

 

 麗日の言う通りだぜぇ!

 緑谷はモチロンだが、飯田はもうちょい委員長らしく場を仕切れや! あ、トオルはそのままでいいぜ、カワイイからな!

 

 しかしメンドクセー話だ。

 ワケの分からねーこと言い出すプッツンヤローが出てきたと思えば、ソイツはヤクザで有名な国出身の外国人だっただとぉ~~?

 コイツぁこの噴上裕也クンをもってしても想像出来ねーことだぜ。

 ちょっぴりヤベーかもしれねーなぁ。

 

「……フーッ……フーッ……」

 

 なんたって肩で息する姿はケダモノ同然!

 食堂のテーブルをボコボコに打ち壊しやがったイタリアのプッツンヤローは、メガネをかけた顔にダラダラと汗を浮かばせてやがる。

 どんだけマジギレしてんだコイツはよおぉぉ~~~~っ!

 

 だがおれには、コイツ相手に及び腰になるワケにはいかねー理由がある!

 

「おいテメー、どういうつもりだよ」

「……あ?」

「テメーに聞いてるんだぜ、プッツンヤロー。そこの物間とかいうヤツのタワゴトに乗っかるつもりなのかって聞いてるんだぜ、おれはよオォ~~~~!」

 

 ギロリと目玉を向けてきたツラはとんでもねーぐらいキマッてやがる。おれも昔は暴走族だ、ツラを見りゃソイツがどんだけヤバいかのアタリぐらいはつけられる。

 

 そのおれが断言するぜ。

 

 コイツはヤベー!!!

 そこらのチンピラなんざ屁でもねーほどに据わった『覚悟』を感じるぜ!! やると決めたことは一切の迷いをもたずにやりとげるという『意志』を常に持っていることが、おれには分かる!!

 

 正直ビビるぜ。ちょっぴりチビっちまうかもなぁ。

 

 だがしかし!

 今のおれには女どもがついている!!

 後ろにしたトオルと麗日にカッコわるいところを見せるワケにはいかねーぜ!!!

 何よりこのプッツンヤローがあのヨタ話に乗っかろうってンなら、おれはおれの女を守るためにカラダをはるしかねぇよなアァ~~~~ッ!!

 

「ギアッチョとかいったか! そこンとこどーなんだよ、このプッツンヤロー!」

 

 ギアッチョ。

 それがこのプッツンヤローの名前だ。

 名前を呼ばれたソイツは、いかにもって感じでガンつけてきやがった。

 

「……そうか、テメーらがA組か……」

「そうさギアッチョ! 乗り込んできた敵から逃げ延びたってことで調子づいてる奴らさ!」

 

 そこで割り込んでいたのは物間だった。

 金髪のニヤケ面がムカつくいけすかねー野郎だ。そもそもコイツが因縁ふっかけてきたせいでこんなことになっちまったんだぜ。

 

「僕たちB組にとって非常に迷惑な存在だと思うんだよねぇ? どうだい、僕らの評価のために今の内に実力差をハッキリさせておくべき相手だと思わないかい!?」

「煽んな物間! ちょっとギアッチョ、ここどこか分かってる? 食堂だよ!? 昼休みだからね!?」

 

 物間はギアッチョをあおるだけ。ヤツらを止めようとするのは拳藤一人だけだ。 

 二人と同じB組らしいが、ムカつくヤローどもにも物怖じしねーガッツのあるイイ女だ。まったく、こんなヤツらとつるませとくのはもったいねーぜ。

 

「それがどうしたっていうんだい、拳藤! この衆目があるからこそ良いんじゃないか! 多くの人にB組とA組の差を知らしめる絶好の機会」

「黙ってろ」

「ヘブフゥッ!!?」

 

 物間の顔面にギアッチョの裏拳がキマる!

 白目を剥いて倒れるヤツを拳藤が受け止めた。クソッ、ウラヤマシーヤツだぜ、あのイケてる美少女の腕の中におさまるとはよぉー!

 

 だがいつまでもワキを見てるワケにはいかねーぜ。

 

 プッツンヤローが!

 オニみてーな形相のギアッチョが!

 おれに向かってズンズン近寄ってきやがったんだからなあぁぁぁ~~~~~~っ!!

 

「ンだテメー。文句あんのか? あ?」

 

 迎え撃つおれの胸板がヤツのそれとぶつかり、お互いの目線がぶつかった。

 気合いの入ったガンつけはさすがだぜ。メガネのレンズよりもギラギラした眼光は、おれの喉笛を噛みちぎってやるって意志を隠そうともしねー。

 

「……物間のざれ言に興味はねぇがよォー……。てめーみてーなガキがいい気になってンのを見るとよおぉぉぉ~~~~……」

 

 唸るような声をあげるギアッチョ。

 

 直後、カッと来る眼光!

 それを合図にしておれたちの腕は交差する!

 

 

 

「ムカつくぜっ!! テメーみてーなワルぶってるだけのクソガキを見てると特になあァァァァ――――――――――ッ!!!」

「歳はタメだろうが!! ノーミソ沸いてンのかッ、プッツンヤローがあぁぁぁ――――――!!!」

 

 

 

 ヤツがおれの!!

 おれがヤツの胸倉をつかみ上げる!!!

 噴上裕也とギアッチョという二人の男にとって、視線は言葉よりも早く伝わる意思表示なのだ!

 

 ナメてやがるぜこのヤロー!

 おれもコイツも同じ一年! ガキ呼ばわりされるいわれはねーっつのによぉ――っ!!

 

「物言いには気をつけろよチンピラが。吐いた唾は飲めねぇぞ……?」

「ンだとぉ?」

「『覚悟』はあんのかって聞いてんだよォォォ~~~~ッ」

 

 その時だ。まわりの空気が変わったのは。

 

 気配だとか威圧感だとか、そういう話じゃねー。そういう、相手から伝わるフンイキの話じゃねぇんだ。

 もっと具体的に、肌で感じることだ。

 

 まわりの空気が! 急に冷えこみ始めたのだッ!!

 

「これは……」

「ちょっと! さすがにここで個性はやり過ぎだって!!」

「ふ、ふふ……いいぞギアッチョ……そのままやってしまえ……」

「マジで物間は黙って!」

「グゲフゥ!!」

 

 また喋りだした物間のアゴを拳藤の拳が撃ち抜き、今度こそ完全に黙らせた。

 ノビたヤツを放り捨て、怒りまくったギアッチョの肩を掴んだ拳藤は、その耳に向かっていかにも言い聞かせるようなお堅いセリフを口にする。

 

「これ以上暴れたら問題になるよ!? ちゃんと評価されるポジションにつくんじゃなかったの!?」

 

 オイオイ頭に血がのぼったプッツンヤローが人の話を聞くタマかぁ~~?

 第一コイツが、そんな小物クセーお題目に耳を貸すとは思えねーんだがよぉ。

 

 って思ってたんだが、

 

「………………チッ」

 

 おぉ? 思ってたより聞いたな。

 冷え込む一方だったあたりの空気が元に戻り、胸ぐらをつかみ上げたヤツの手がほどけた。

 

「ほら、あんたもさ」

「……カワイ子ちゃんが言うならしょーがねーな」

 

 相手が先に手を引くってんなら、まぁこっちも応じてやるのはヤブサカではねーな。

 このプッツンヤローといつまでもやりあってウマくねーのは確かだし、仲裁に入った拳藤のメンツもある。

 女の顔をツブすのはカッコいい行いじゃねぇ。

 いいだろう引いてやんよ。

 

「……テメー、名前は」

 

 しかしヤツの眼光は収まっていなかった。

 メガネ越しに光るギアッチョのガンつけは今も冷え切ったまま、いや、それどころかより一層冷たくなっていやがる。

 

「あ?」

「テメーの名前だよ、チンピラ。聞こえねーのか」

「……噴上裕也だ」

 

 答えると、ギアッチョはフンと鼻を鳴らした。

 

「……そうか、噴上裕也。覚えたぜ、そのツラと名前。テメーは今度の体育祭で、このギアッチョがぶっ潰す」

 

 歯を食いしばるみてーなツラでおれを睨みつけるプッツンヤロー。ヤツの言いたいことは、間違いなくおれに伝わってきた。

 

 いわゆる宣戦布告ってヤツだぜ!!

 

「いいか、『ぶっ潰す』だ。今テメーに言うのはそれなのだ。本当に言うべき言葉は、テメーをそうした後に言ってやるぜ」

「上等だコラ、オメーごときがおれをどうにかするつもりなのかよ」

「……ハッ、おれに勝てるつもりかよ?」

「質問しているのはおれだぜッ! このダボがああァァァァァ――――――!!」

 

 ナマたれやがって!!

 テメーはうまく矛先を収めたつもりみてーだが! だったら今度はおれがキレてやるよ!!

 

 その挑発、乗っかってやるぜ!!!

 

「体育祭でブチのめすのおれの方だぜっ、ギアッチョ!! ンでもっておれが! この噴上裕也が、体育祭のテッペンとってやるぜえェェェ――――――――――ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……って言ったのによぉぉぉ~~~~~~。

 

「宣誓。おれが一番になる」

「ンだと爆豪!! この手汗野郎オォォ――――!!」

 

 やりやがったな、ドブ臭ぇークソの煮込み野郎が!

 あの日誓ったおれのセリフにおっ被さっただけじゃ飽き足らず! 観客も選手も注目するこの場面で言いやがった!!!

 

 

 

 この! 雄英体育祭の選手宣誓って場面でよォ――――!!

 

 

 

 B組の連中とやりあってから数週間。

 おれたちはついに雄英体育祭の当日を迎えていた。

 

 数百人におよぶ1年生と、数千人以上の観客を抱き込んであまりある広さを誇るこのスタジアム。

 その中央にある壇上へ登り、一身に視線を集めた爆豪の野郎は、たった一言でそれ全部を敵意に変えやがった。

 

「なんだとコノヤロー!」

「調子乗んな!」

「このヘドロ野郎!!」

 

 おうおうブーイングもすげーな、当然だよぉー。

 ヤツのオレサマ発言にアタマくんのは何もおれだけじゃねーってことだ。このタイミングでやりやがるとは、爆豪のクソをドブで煮込んだような性格をアマく見てたようだぜぇ~~。

 

 やっぱりコイツに開幕仕切らせんのがマチガイだったんだよ!

 

「オイ良いのかよミッドナイト先生よぉ~~! あんなのが選手宣誓で~~~~!」

「ンン、そうねぇ」

 

 壇上にいるのは爆豪だけじゃねー。おれたち1年の部で主審を務めるセンコーも立っていた。

 

 ボンテージみてーにキレッキレなコスチュームでバツグンのボディラインをムキダシにするとびきりセクシーなオネーサマだ。

 イカしたロングヘアとバタフライマスクでも隠し切れねーマブい顔がサイコーに輝いて見えるぜ。

 何より、こんだけ離れても匂い立つフェロモンの香り! まるで天国にいるような気分になるぜ!!

 

 その名も18禁ヒーロー、ミッドナイト!!

 おれたち学生にはちょっとばかりシゲキの強い、大人の女ってヤツだぜ!

 

 ミッドナイトはちょっぴり小首をかしげて考え込むようにしていたが、すぐに顔をあげて断言した。

 

「――良いわ!!!」

「良いのかよ!?」

「雄英のヒーロー科入試1位なら、それぐらいの跳ねっ返りじゃないとね! アナタたちも、文句があるなら跳ね除けられるぐらいの若さを見せなさい!」

「だ、そうだ。せいぜい跳ねのいい踏み台になれ」

「跳ねっ返りってそういう意味じゃねーぞテメー!」

 

 あっけらかんと言い放ったミッドナイトだ。壇上から降りてくる爆豪を止めようともしねー。

 ってオイ聞けよ爆豪!

 クソが、言うだけ言って引っ込みやがって!

 

 だが面白くなってきたぜ。要するにセンコーからお墨付きが出たってことだろ?

 おれたちは競ってナンボのヒーロー科!

 言われっぱなしにハイそーですかで済ませんなっつーことだよなぁ~~!

 

「さぁさぁブーイングはここまで! 雄英体育祭はもう始まっているのよ!」

 

 まだ収まらねー他のクラス連中を蹴散らし、ミッドナイトは馬のシッポみてーな鞭を振り上げた。

 それに合わせて、スタジアムに幾つも備えつけられたバカデカいモニターが映像を映しだす。

 勢いよく回るスロットの映像だ。

 

「毎年多くの者が涙を飲む第一種目! 今年の競技はコレ!!」

 

 ドハデな演出でハジけるようにスロットが止まる。

 そこには、おれたちに課せられる競技の名前が書き出されていた。

 

「障害物競走よォ――――――!!!」

「……!」

「計11クラス全員参加のレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km、上位42名が第二種目に進出できるわ!!」

 

 一気にふるいにかけてきたな!

 1クラスがざっくり20人だとして、まとめりゃ200人以上。それを最初から五分の一以下まで削りにきやがった!

 

 クラスもへったくれもねー。マジでここにいる全員が追い抜かなきゃならねー競争相手ってことか!

 

「我が校の売り文句は『自由』! コースさえ守ってれば何をしてもいいわ!」

「マジかよ!」

「さすが雄英、何でもアリだな」

 

 ビビッてんじゃねーよ別クラス連中よぉ。

 個性を使って進むもジャマするもよしってことだろ? 楽しくなってこねーかぁ?

 

「フフ、ヤりたいようにやってごらんなさい! さぁ、位置につくのよぉ――――――!!」

 

 ミッドナイトに急かされ、おれたちはスタジアム内のグラウンドに一つだけ用意されたスタートゲートの前に移動する。

 ここから出て、一周してまたここから入って来いってことだろぉ?

 良いぜ、やったろーじゃねーか!

 

「3カウントでスタートよ!」

 

 あたりはダンゴみてーな人だかりになっていた。

 クラスメイト連中もどこかにいるハズだが、ここからじゃちょっと姿は見えねーな。

 

 だがいるハズなのはアイツらだけじゃねー。

 あのプッツンヤロー、ギアッチョだっているのだ。

 

「3!!」

 

 なんでもアリの競技だ、どっかで仕掛けてくるかもしれねー。物間が自慢げに紹介し、拳藤が慌てて止めにはいるヤツだ、きっととんでもねー個性を持ってるんだろーぜ。

 

 ……だがよー、だから警戒しながら走るってか?

 

 違ぇーだろ! そうじゃあねー!!

 おれがやるべきことは! そういうことじゃねーんだ!

 

「2!!」

 

 ここにいる全員が! おれの敵!!

 だれか一人に気をつけてりゃ後はどうってことねーぜって、そういう話じゃあねーんだ!!

 

 だったらどーする!?

 おれはどうすればいい!!?

 

「1!!」

 

 決まってる!!

 このおれがやるべきことは! たった一つ!!

 

「――スタート!!!」

「初っ端から!! まとめて置き去りにすることだぜえええェェェ――――――ッ!!!」

 

 走ることが真骨頂!

 さぁその速度でおれを走らせやがれ!!

 

「ハイウェイ・スター!!!」

 

 名を呼んだ瞬間、おれの足と重なるように足形の群れが出現する!

 それらはおれの精神が形になったもの!

 前世じゃスタンドと呼ばれていたおれの個性、ハイウェイ・スターだ!!

 

 その能力は、時速60kmで記憶した匂いの主を追いかけること!

 本来スタンド単体でやらせることだが、おれ本体をスタンドのヴィジョンと連動させればこんなことも出来るんだぜぇ――――!!

 

「え?」

「なぁ!?」

「はっ、速ェ――――――!?」

 

 そう!

 60kmで走るヴィジョンに引っ張られて、おれ自身もその速度で走れるってことだぜ!!

 

 しかもここはスタートダッシュ前の人だかり!

 標的にする匂いは事欠かねぇし、どいつもこいつも動き出す前だから避けるのもムズかしくねー!

 

 先に立ってるヤツの匂いを標的にし、到着する直前で傍にいる別のヤツの匂いに切り替えて走る!

 

 するとどうなるぅ~~!?

 イナズマみてーにジグザグに走り抜けることができるってことじゃねーかよぉ――――!!

 

 名付けてハイウェイ走法!!!

 入学してから編み出した、能力の新しい使い方よぉ――!

 

 

「うわっ!?」

「あぶねっ!?」

「きゃあっ!」

 

 ボサッとしてんなよヤローども!

 カワイ子ちゃんも今はサヨナラだ!!

 そうやってドンドン追い抜く! 抜いて抜いて抜いて抜きまくる!!

 

 その先にあるのは、誰の匂いもねーまっさらな空白地帯!

 すなわち!! 先頭ってことだぜ!!!

 

 

 

「おっしゃイチ抜けええぇぇぇ――――――!!!」

 

 

 

『さーて張り切って実況していくぜ……ってオイオイ展開早ェなオイィ――――――!!!』

 

 誰よりも早く突入したスタートゲート!

 背後から聞こえる拡声器越しの声は、プレゼント・マイクのものだ。あの喋りたがりのオッサン、この体育祭も司会を買って出たようだな。

 

 だが、盛り上げるつもりならちょっぴり動き出すのが遅ぇーんじゃねーのかぁー?

 おれはもうとっくに走り出しているんだぜ!

 

『スタートと同時に先頭に躍り出た生徒が一人! あいつってアレだろ、お前ンとこのクラスの奴だろ、ミイラマン!』

『ああ。出だしから加減するようには教えてはいない。最初の問題を理解しているようだな』

『最初の問題!? そりゃ一体なんだ!』

『見ればわかる』

 

 プレゼント・マイクと喋ってるのは相澤のヤローか。

 モゴモゴした喋り方なのは、いまだに顔面が包帯でグルグル巻きだからだな。

 ケッ、ボロクソなんだから寝てりゃいいのによぉ、でしゃばるから放送席まで引っ張り出されるハメになるんだぜ!

 

 しかしそれも、おれがスゲーんだっつーことを解説するンなら認めてやるぜ!

 

 初っ端から一番に出る!

 おれがそうした理由をパンピーどもに説明してくれんならよおぉ~~~~!!

 

『おぉっとこれはぁー!』

「痛ェー! オイ、押すなって!」

「キツいキツいキツい!」

「うぎぎぎぎっ! 狭すぎだろこれェー!」

『大渋滞ィー!! 先頭に続いてスタートゲートをくぐろうとした生徒ですし詰めになっちまってるぞォ――――!?』

 

 背後で響くのはぎゅうぎゅう詰めになった後続連中の苦しそうな声だ。

 ヘッ、ボケーッとして目の前の障害物をちゃんと見てなかったテメーらのしくじりだぜ!

 

 おれたちが必ず通るスタートゲートは一つだけ。

 そいつは走り出した生徒200人以上が一度に通るにはあまりにも狭い道だ! フツーに走ってたんじゃあ渋滞になっちまうのは目に見えていた!

 

 だからこそおれは一番に走り抜けた!

 渋滞に巻き込まれずゲートを通過するためにな!

 

「さぁ、このまま突っ走るぜ!」

 

 ハイウェイ走法は追走の技だ。

 標的にできるヤツがいない先頭に出た今の俺は、自分の足で走るしかねー。

 だからおれはハイウェイ・スターを引っ込め、そのままスタジアム外周を回るコースに出た。

 

 しかし、

 

「行かせねぇよ」

 

 突然地面が凍りつく!

 直前で跳んでいなかったら足ごと氷漬けになっていたぜ!

 しかし着地した地面はツルツルになっちまって上手く走れない。すっ転ばねーようにするので精一杯だ!

 

「こ、これは!」

「個性把握テストで見せた走り方だな」

「テメー! 轟ィ!!」

 

 轟焦凍!

 すずしい顔して氷の上を走ってきたきやがったのは、同じクラスの優等生、轟焦凍だ!

 

 コ、コイツ、慣れてやがる! 氷の上を走ることに!

 当然か、氷を出せるヤツが自分の氷に足を引っ張られるなんてあるハズがねー! どんだけ練習したか知らねーが、ちっとも速度を落とさずにおれを追い抜きやがった!

 

「お前も止めさせてもらう」

 

 轟の右手が向けられる!

 このヤロー、今度こそおれを氷漬けにする気だな!

 

 ムカつくことだがコイツの個性にはスキがねー。

 強ぇ個性だってのはモチロンだが、それを使うことにも慣れてやがる。対人戦闘訓練で見せつけた実力はホンモノってワケだ。

 

 ナルホドさすがだ悔しいぜ。

 おれ一人だったらこのままやられちまったかもな。

 おれ一人だったらなぁ――――――!!

 

「あんま他人をナメてんじゃねーぞ、轟」

「何……?」

「待てコラ半分野郎おぉぉぉ――――――!!!」

「!」

 

 テメーの個性にスキはねー!

 だがしかし! テメー自身がそうだってワケじゃねーんだぜ!!

 

「この俺を無視してんじゃねぇぞぉ――――!!!」

 

 両手から出す爆発で凍結を飛び越えた爆豪!

 それだけじゃあない!

 

「甘いですわ、轟さん!」

「その技は一度受けている、二度はくらわないぞ!」

「こんな序盤から超必は使われへんわぁ――――!!」

 

 モモ、尾白、麗日! 他のクラスメイト連中!

 それ以外のヤツらだって何人も氷漬けにならずにすませている!

 初撃ぶっぱなしでキメた気になってたんだろーがよぉー! そうそう何でも思い通りにはならねーぜ!

 

「A組の奴らはともかく、思ったより避けられたな」

「そういうことだぜ! いいのかぁ、おれ一人に手ぇだしてると他のヤツらが追い越しちまうぜぇ!?」

「……ちっ」

 

 続く後続連中を難ありと見たのか、轟はおれに向けた手をおろして走り出した。

 どうやら氷漬けの危機は免れたみてーだな。

 

「足さえ動けばいくらでも追いかけられる! 轟、テメーが先に立つことはむしろおれの個性にとっては都合のいいことなんだぜぇ~~!」

 

 しかしハイウェイ・スターを出そうとしたその時、轟が振り向きもしねーで声を飛ばしてきた。

 

「お前こそ油断してんじゃねぇのか」

「ンだとぉ!?」

「障害物競走って言ってただろ。走るのを邪魔するのは、何も競争相手だけじゃねぇ」

「それは……」

 

 どういうことだ。

 聞こうとした瞬間、それはいきなり降ってきた。

 

 

 

『ターゲット、大量オオオオォォォォ――――――――――!!!』

 

 

 

「な! 何イィ――――――! こ、これはっ!!」

 

 デカい何かだ!

 とんでもなくバカデケーカタマリが降ってきやがった!! まるでおれと轟のあいだをさえぎるシャッターか何かのように!!

 

 急停止したおれの目の前で地面が砕かれ、土や石が飛び散っていく。あたり一面はとっくに土煙だ。

 

 何だ!

 一体何が起きた!?

 おれたちを攻撃したのは一体なんだ!!

 

『ターゲット、潰ス』

「コ、コイツ! 入試ン時の仮想敵!」

 

 はるか頭上から響く電子音みてーな声は、そこらのビルよりもデカい鉄製の図体が出していた!

 

 ソイツらの姿におれは見覚えがある!

 

 忘れもしねー、トオルと出会ったあの場所だ!!

 雄英高校ヒーロー科の実技試験で、おれたちに襲いかかってきやがった巨大ロボットだ!

 

 ま、まさかこれが!?

 

「さぁ早速障害物だ! まずは手始め、第一関門ロボ・インフェルノォ――――!!」

「マジかよ!」

 

 雄英のセンコーども、ロクでもねーもん引っ張り出してきやがった!

 一番デケーヤツ以外にも、一段小さいのや人間並みの大きさのヤツまで湧いてきやがる!

 

 生命力を持たないロボット軍団!

 ハイウェイ・スターが持つ一つの能力、養分吸収が効かない機械の相手は、おれの鬼門だっつーのによぉぉぉ~~~~!

 

「オイッ、なんだよアレ!?」

 

 チクショー、後続も追いついてきやがった!

 人だかりをつくる他の連中も、大小無数の仮想敵を見上げている。

 クソッタレ、むかっ腹のたつやり方だが、ここは他の誰かがロボを突破したスキをついてハイウェイ・スターで通り抜けるしかねー!

 

 幸いにして先には轟がいる!

 アイツの個性なら、どんなにデカいヤツでも余裕で止められるだろうよ!

 そうとなればヤツの匂いを標的にして、

 

「……ウッ! コ、コイツは!」

 

 キた! キやがった!

 さっきと同じだ。肌を刺すような冷気があたり一面に広がってきやがった!

 轟のヤツ、さっそくやる気だな!

 

「だったらおれもやってやる……、…………!?」

 

 いや待ておかしい! コイツは違うぜ!

 

 冷気は後ろから来ている!

 とんでもねー寒さがおれの横を通り抜ける!!

 

「……どうやら俺以外にも冷気を操るヤツがいたようだなぁ……」

 

 振り向くヒマもねー!

 突風みてーな冷気が駆け抜け、あっという間に目の前の仮想敵どもを氷漬けにしやがった!!

 

 この寒さ! ひょっとして轟にも負けてねーんじゃねーのか!?

 

 

 

「だが好都合だ。この俺の個性、冷気を操るホワイト・アルバムが駆け抜けるのにはなァ――――――――――!!!」

 

 

 

 そして凍りついた地面を進む白い影!

 滑るように! スピードスケートみてーな動きで突っ走る人影が一つある!!

 

 ソイツは全身を鎧かスーツみてーなモノで覆いつくしていたが、しかしその叫び声は忘れもしねーあの野郎の声だ!

 

「テメー! ギアッチョか!!」

「あばよ噴上裕也ァ――――――! この凍りついた静止の世界で! ずっと立ち尽くしているがいいぜぇ~~~~!!」

 

 弾丸みてーな速度で走り抜けるギアッチョ!

 あれがヤツの個性か!

 全身を武装し、周囲を氷漬けにするほどの冷気を放つ力! あの動きから見て足はスケート靴みたいになっているに違いねー。

 おれとは別のやり方で高速移動できる能力!

 

 この障害物競走に向きすぎな能力なんじゃあねーのかぁ~~~~~~!?

 

『おぉーっと二人目の氷系個性が登場ォー! しかもスケールは一人目に負けてねぇー! 第一関門からスゲーヤツが続々登場だァ――――――!』

「こんチクショーがぁ!」

 

 気に食わねー!

 このドハデな能力の使い方! 即行で一番になったおれをあっという間に追い越しやがった!

 しかもヤツの通った後は氷の通り道になって残っている! まるで『俺の通った後を来るがいいぜ』と言わんばかりじゃあねぇーか!

 

 クソッタレがー! さっきまで競争相手を利用して通り抜けようとしていた算段を見抜かれてたみてーで、メチャクチャムカつくぜぇ――――!!

 

 いいぜ、やったろうじゃねーか!

 余裕ぶってられんのも今の内だけだぜ! おれのハイウェイ・スターがテメーらに追いつくちょっとばかりの間だけいい気になっているがいいぜ!

 

「轟! ギアッチョ! テメーらの横っ面を追い越して!! 吠え面かかせてやらぁ――――――――――!!!」

 




雄英体育祭編、本始動の回。
ギアッチョもですが、体育祭編当時と違ってB組キャラの人となりや個性も今は分かっているので、物間や徹鐵以外の面々も活躍させたいですね。





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