噴上裕也の果てしなくカッコよく美しいアカデミアライフ   作:己道丸

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JコンビvsHトリオ その①

「対人戦闘訓練・第2戦ッ! ヒーローチームBコンビ、轟・障子組vs敵チームIコンビ、尾白・常闇組はぁ――――――! Bコンビの勝利だッ!!!」

 

 やたら広いクセに薄暗い部屋、そこで唯一光を放つのは、やっぱりやたらバカデカいモニターだった。壁一面をテレビ画面にしたソレを見上げてっとよー、ちょっとした映画館にいるような気分になるぜ。

 さすが雄英高校。いくつもある運動場の中の、そのまた端っこにあるビルの一室がこんだけ広いんだからよーッ。どれだけ敷地あんだよって話だぜ。

 

 そして、このグラウンドβのモニタールームにいるのは、何もおれ一人じゃあない。

 おれと同じ1年A組のクラスメイト達がひとかたまりになり、この授業を受け持つ教師、オールマイトの向こうにあるモニターを見上げているんだ。

 それぞれがめいめいのヒーローコスチュームを着てなぁ。

 

 ――被服控除っつーんだとよ。

 事前に個性届やら身体情報やら、あとは注文つけると、学校専属のサポート会社が最新技術でコスチュームを作り、使わせてくれるんだそーだ。まぁそれも学内での経験を元に改良するのを前提にした、試作品みてーなもんみてーだけどなぁ。

 

 ちなみに、この噴上裕也もそうだ。

 おれのコスチュームはまんま前世の格好、つまり黒の学ランがモチーフだ。ツヤ消しした厚手の生地に金の装飾を襟や袖口につけ、青いシンプルなベルトを腰に巻いている。

 んでなんつっても最大のオシャレは、やっぱり首に巻いたスカーフよ。柔らかく波打つ白地の布はリボンとネクタイを掛け合わせた、このおれだけのスペシャルフォルム。胸に伸ばした『SPEED★KING』の刺繍もバッチリ完備のイカしたファッションだぜ!!

 

 ま、そんないかにも『ヒーローの卵だぜ!』っつー感じのコスチュームも、今はヒーロー基礎学の担当教師であるオールマイトの許可がねーと着れねーんだけどよ。

 

「それじゃあ4人とも、講評をするからモニタールームに戻ってきてくれ!」

 

 オールマイトの言葉に、画面の向こうのヤローどもは手を上げたり頷いたり、めいめいに合図を返してきた。連中の声は拾えねーが、こっちからはオールマイトに限り、耳の穴に突っ込んだ極小のインカムを使ってグラウンド中のスピーカーから声を送れっからだ。

 しかし講評ねぇ。話すほどのことがあんのかっつーぐらいの速攻だったけどよぉ。

 

「あっという間だったよな。ほとんど一方的じゃね?」

「氷パネーッ! ドバーッてよ、ビルまるごと氷漬けにしちまうんだもんな」

「泥仕合だった1戦目とは大違い。理想的な制圧戦でしたわね」

 

 連中が戻るのを待つでもなく、クラスメイトどもは口々に意見を交わす。あーだこーだっつってよ、まったくマジメな連中だぜ。

 しかしその中の一つが聞こえちまったのか、おれの傍にいる麗日が肩をすぼめて俯いた。

 

「う……」

「大丈夫だよ、麗日ちゃんっ! だって勝ったんだもん、勝ちは勝ちだよっ」

「トオルの言う通りだぜぇ~~~~麗日ぁ。オールマイトのお墨付きなんだからよぉ、もっと胸張っていいんじゃねーか?」

 

 んでもってそのピッチリスーツに包まれた丸みのある胸を明らかにしてくれッ! 結構ふくよかな子だとは思ってたけどよぉ、中々どうしてイイ感じのスタイルしてんじゃねぇか、麗日チャンよぉ~~~~~~ッ。

 しかしおれと葉隠の言葉もむなしく、麗日はより一層顔を青ざめて背中を丸め、

 

「……いや、さっきの試合を思い出したら、限界まで個性使ったの思い出して……ッ」

「あ、そっち!? 待って麗日ちゃん、ここで吐いちゃマズいよ、ゲロだけにっ!」

「ウマくねーぞトオルッ! マジでッ、ゲロだけにッ!!」

 

 戦闘訓練・第1戦で見せた麗日の個性、『無重力』の副作用だ。

 指先の肉球で触れた物を無重力状態にできる個性。しかし本人から聞いたところによると、限界を超えて使いすぎるとこの通りゲロっちまうらしいぜ。

 

 緑谷と組んで訓練に参加した麗日は、サシで立ち向かうことになった飯田を出し抜くため、限界まで個性を使ったのがまだ響いてるみてーだ。やれやれ、こりゃしばらくオールマイトが保健室から持ってきたエチケット袋が手放せそうにねーぜ。

 

 だがまぁその奮闘もあって、麗日はチームメイトの緑谷とともに勝利。

 緑谷の方は毎度のお約束で個性暴発させて保健室送り、麗日にしたって訓練だっつーことを逆手にとった裏技みてーなやり方だったが、それでも勝ちは勝ちだとおれは思うね。ま、その後の講評じゃあさすがに庇うような事は言えなかったけどよーッ。

 ……っつーかよぉ~~~~ッ、

 

「散々イキがってよぉ~~ッ、初っ端から負けた気分はどうだ、手汗野郎~~~~ッ?」

「……っせぇ、黙ってろ、カス」

 

 モニターの前に集まるおれたちの最後尾、そこに奴はいた。

 あー、何だっけ~~~~ッ? 爆豪クンだっけ~~~~~~ッ!? 確かそんな名前のよぉ、おれに真ッ正面からメンチきってくれた奴がいたよなぁ~~~~確かよぉ~~~~~~~~ッ!!

 口の端からダラダラとヨダレまき散らすブルドックって感じのツラしてやがったクセによぉ、第1戦で緑谷とやりあって戻ってからどーよ、この様よッ!

 ツンツンにトンがった髪の毛までしなびたみてーになって、まるで秋口の夕日を浴びた枯れかけのヒマワリを見ているかのよーだぜッ!

 

 緑谷とどんな因縁があったのかは知らねーが、どうやらあいつをナメきってたのは間違いねーようだ。それが公衆の面前でひっくり返されたんだ、ンなツラにもなるだろーよ。

 ザマぁねーなーテメーよーッ!!

 

 だがいつまでもしおれた手汗野郎に構ってやってる時間はねー。

 そうこうしてるうちに部屋の端にある自動ドアが開き、さっきまでモニターの向こうにいた連中が入ってきたからだ。

 

「やぁッ、4人ともお疲れッ! 戻って早速だが、みんなと講評しようぜッ!!」

「……はい」

「承知」

「はい」

「分かりました」

 

 戻ってきた4人はおれたちに向かう形でオールマイトの前に整列し、それぞれ神妙な顔をして……いや、してんのは1人だけだな。他の3人は、イマイチ表情が読めねーツラしてやがる。

 顔半分氷漬けにした鉄面皮ならマシな方。残り2人は、真っ黒な鳥みてーな頭の奴と、目元から下をガッツリ包み隠す覆面野郎だからな。

 

 

 

「さて、第2戦で勝利をおさめたのは轟少年と障子少年なワケだが、何か意見はあるかな? 尾白少年! 常闇少年!」

 

 轟っつーのが鉄面皮の奴で、障子は覆面してる野郎だ。

 第2戦、ビル一つを丸ごと氷漬けにしたのは、轟のヤツだ。今、体の左半分を氷漬けにしてるのも、その個性なんだろーぜ。それにしてもとんでもねー範囲を狙える個性だ。いわゆる強個性ってのはこういうのを言うんだろーよ。

 

 んで障子はフォロー役って感じだったな。1年A組の中でも一番デケーナリした奴で、腕が全部で6本ずつ生えた、いわゆる異形型の個性ってやつだ。見てた感じ、どうも腕の先に耳や口が生えてきたから、それで対戦相手がどこにいるか見つけたんだろーよ。

 

 

 

 んで、その二人を横目にする尾白と常闇は、ややあってから首を横に振った。

 

 

 

「……なんも言えません。完敗です」

 

 最初に口を開いたのは尾白だった。枯れた草みてーな色の髪をした、ぶっちゃけフツーの顔した奴だ。まぁおれのように、歴史に残る彫刻のような美しい顔をした奴なんて、そうそういねーだろうけどよぉ――――。

 

 ただそいつも他にはない個性がある。尻尾だ。ライオンの尾を育ち切ったアナコンダみてーな太さにしたって感じの、ぶっとい獣の尾が腰のあたりから生えている。まぁ見たまんま、これがコイツの個性なんだろーぜ。障子と同じ異形型。そりゃビル全体を氷漬けにする個性とは相性が悪い、完敗って言いたくもなるぜ。

 

 

 

 だがもう一人の方は、ちょっとばかり言いたいことがある風だった。

 

「俺は――……」

 

 首から上が鳥みてーになってる奴。常闇だ。

 常闇はクチバシになってる口を開いて何事か言いかけたが、

 

「……いや、俺も敗けた。敗者が何を言っても無意味だ」

「ゴメンヨー、ゴメンヨー、フミカゲーッ」

 

 頭を左右に振った常闇、それを励ます奴がいた。

 常闇の影だ。

 奴の足元から伸びてきたそいつは、まるで影絵かなんかみてーに真っ黒な人型だったが、目元だけは車のヘッドライトを灯したみてーに光っていた。まるでおれのハイウェイ・スター、つまりスタンドみてーな個性だが、どーもそういうワケでもなさそーだ。

 おれの前世、スタンド使いのいる世界には、鳥みてーな頭をした人間はいねーからな。

 

 このおれが前世と全く同じ姿でこの世にいるように、もしも常闇の奴もスタンド使いだったとしたら、逆説的に前世もあの鳥みてーな頭をしてるハズなんだ。どうも覆面やスタンド能力による変容って訳じゃなさそーだし、たまたまスタンドっぽい個性を持っているだけって考えるのが妥当だとおれは思うぜ。

 

 そんなおれの考察をよそに、常闇の影はしきりに謝り続けた。

 

「オレガモットツヨカッタラーッ、アノヘヤガモットクライトコロダッタラーッ」

「おれたちは待ち受ける敵役だ。有利な環境を整えようと思えばいくらでもできた。それをせず、また整える前に踏み込まれたのは、おれの落ち度でしかない。お前が気に病むな」

「フミカゲーッ」

 

 常闇の言葉に、影の方はベソかいてやがる。

 どうも別々の意思を持っているようだが、なんだ随分ウマくやってるみてーじゃねーの。

 

 

 

「確かに、常闇さんの個性がなければ、二人とも部屋ごと足を凍らされて終わりでしたわね」

「ダークシャドウ、だっけ? すっげーパワーだったよな、常闇が動けなくても伸びて戦ってたしよー、すっげー便利じゃね?」

「でも結局、障子とやりあってる内に轟に抜かれて終わっちゃったじゃん。やっぱ初手で動き封じられたのが痛かったよね」

「んじゃ轟らが来る前に足元の氷砕いとくべきだったとか?」

「どうかなー。足首まで氷で埋まってるのに、動き回れるように氷だけ砕くのを短時間で済ますのってムズくねー?」

「スマートでエレガントな戦いだったヨネッ☆」

 

 同級生たちも口々に第2戦について意見を募らせていく。さっすがヒーロー志望、より良くなろうとする貪欲なハングリー精神のたまものっつーワケだ。

 ンな感じでワイワイ話し合う奴らとは別に、オールマイトは勝者である轟と障子の後ろに回り、その肩を力強くつかんだ。

 

「コングラチュレーションだぜ、二人とも!! はじめての共闘で、よくできた連携だった!」

「……ありがとうございます」

「恐縮です」

 

 轟も障子も、言葉の少ないクールな奴だ。オールマイトの言葉を受けても気がゆるんだところを全然見せやしねー。

 

「障子少年は、パワーと索敵能力を兼ね揃えたバランスタイプだな! 単独で良し、支援して良し、鍛えれば手に入るものは多いぜ!! ファイトだ!!!」

「ありがとうございます」

 

「そして轟少年! さすが推薦入学枠の1人だ、ハンパない個性だぜ!」

「……どうも」

「だがね、少年。――君なら、もっとスマートに制圧できたんじゃないかい?」

 

 そう言ってオールマイトは、轟の肩に触れていた手をちょっぴり強く握ったみてーだった。ヒーローコスチュームのつもりか、氷でビッチリと覆いつくした、奴の左肩に。

 その瞬間の、奴の目。

 

「――――――……」

 

 対戦で見せた氷やその寒さなんざ、チャチなもんだったっつーことを思い知らされたぜ。

 オールマイトを見返した目は、空気を介さねーで見る者の心にだけ届く、精神の絶対零度だった。南極の氷がその極低温とブ厚い氷で太古の獣を閉じ込めているような、一番奥に『ヤベーモン』を秘めた眼差しが、光を放ちやがった。

 なんつー目をしやがる、轟焦凍。マジでおれたちとタメのガキなのかよ……。

 

「……これ(・・)があればどんな敵も、ってワケじゃないと思うんですが」

「だが少なくとも常闇少年には有効だった。個性の相性を見極め、被害を最小限に抑え、敵をすみやかに鎮圧することでその意思を即座に挫くッ! スピーディであることもまた、ヒーローには必要な能力だぜッ」

「……ハイ、すみませんでした」

 

 オールマイトの言葉にしかし轟は振り向かず、肩の手から逃れるように離れていった。おれたちの合間を抜け、手汗野郎とおなじ最後尾にまで引っ込んじまう。

 ……ありゃぁ分かってねーな。『絶対こうだぜ!』って決めた意思がおれでも分かる。人間、何がありゃーあんな頑なになるんだ?

 

 その様子を見ていたオールマイトは、ちょっぴり肩を落としてため息をついたが、

 

 

 

「よしッ、じゃあ次行ってみよう! 第3戦だ!」

 

 

 

 仕切り直しだぜって感じで、脇にある2つの背の高い箱それぞれに手を突っ込んだ。この対人戦闘訓練でどのチームがやりあうのかを決める、くじ引き箱だ。

 白い箱にヒーローチーム、黒い箱に敵チームのくじが入っている。それを一個ずつ取り出して、出てきたくじに書いているチームが対戦するっつーわけだ。

 

「今度のマッチアップはぁ――――……ッ」

 

 ドラムロールが流れてきそーなタメをつけてながら、そしてオールマイトは、箱に突っ込んでた腕を勢いよく抜いて掲げた。左右の手は、アルファベット1文字が記された黒と白のボールを握りしめているぜッ!

 その1文字が示すチームが、第3戦の対戦チームだぜぇ――――ッ!!

 

 

 

「敵チームJコンビ、切島・瀬呂組!! ヒーローチームHトリオ(・・・)、噴上・葉隠・蛙吹組!!」

「Hトリオだとおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――ッ!!!!?」

 

 

 

 その瞬間、この世の終わりを見ましたっつー感じの叫びが上がった。

 聞いた声……っつーかついさっき聞いたばっかりの声だ。じゃああれかよ、この後はまたお決まりのパターンを決め込む気かよぉ~~~~~ッ。

 

「H!! Hトリオ!! 三人で、Hだとぉ~~ッ!!! 噴上ぃ――――ッ、てめー授業中にナニしようってんだこのドスケベヤローがあぁ―――――ッ!!!」

「そりゃテメーだぜ峰田ぁ。っつーかよぉ、チーム名もメンバーもおれが決めたワケじゃねぇーだろーがよぉ~~~~ッ」

「うるせえぇ――――ッ!! だいたい何でテメーだけ3人組なんだよ!! しかもテメー以外女子!!! この期に及んでもハーレムかよッ、クソがあぁ――――――ッ!!!」

「峰田ちゃん、落ち着いて。私たちが3人なのは、全員二人一組だと1人あぶれるからよ」

「ただの人数合わせだよ、裕ちゃん何も悪くないじゃん」

「噴上少年以外が女子なのも、全くの偶然さ! 第1戦の前に緑谷少年も言ったが、実際のヒーロー活動では急造のチームアップも珍しくない! 対戦がくじ引きなように、チームメイトもまたランダムチョイスなのさ!!」

「まッ、つまり女子に囲まれるのはおれの運命だっつーコトよ。諦めな」

「ンだとテメエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ~~~~~~~~~ッ!!!」

「コラコラ噴上少年、あんまり峰田少年を挑発するのは、ノーだぜッ!」

 

 オールマイトが仲裁に入ったこともあり、峰田はほかのクラスメイト連中の手で奥の方に引きずられていった。

 そうしてやっと静かになったモニタールームで、オールマイトは咳払いをして、

 

「……さて、第3戦に入る前に、ここだけのレギュレーションを説明するとしよう」

「レギュレーション?」

「それは、人数が違うからってことかしら」

「その通り! 『ビルのどこかに核兵器を隠した敵と、潜入したヒーローが戦う』ってシチュエーションは変わらないが、ちょっとだけハンディキャップをつけさせてもらおう!」

 

 ツユちゃんのつぶやきに、オールマイトは両手を前に突き出した。片手には指を二本、もう片方は三本立てている。どーやらヒーローチームと敵チームの数みてーだな。

 

「敵を上回る数で速攻をかけるのは戦術の基本だが、これは訓練ッ! そのへんを言い出しちゃ元も子もないって話さ!! ある程度イーブンになるように立ち会ってもらわないとな!」

 

 それからオールマイトは、三本立てていた指を組み替えた。人差し指、中指、薬指だったのが、薬指のかわりに親指を立てた手になる。

 

 

 

「人数が多いヒーローチームには、1人と2人に分かれて突入してもらう!」

 

 

 

 どうやらそれは、『一人だけ離れているぜ』ってハンドサインのつもりみてーだな。

 

「想定としては『事前の合流・打ち合わせもできないほどいきなり組むことになったヒーローたち』ってところだ! 分かれた後はそれぞれ正反対の方向から施設に侵入! 事前のミーティングは無し! 施設内でどう動くかは、入ってからのフィーリングってことさ!」

 

 ちなみに、とさらにオールマイトは続けて、

 

「一人の方は噴上少年、二人組は葉隠少女と蛙吹少女を指名させてもらおう! 噴上少年は分身を生み出す個性を持っているからな、一人で二人分って考えさせてもらうぜッ!」

「なるほどな。分かったぜぇ、オールマイト」

 

 言われてみりゃー当然だ。おれが二人組の方に回ったら実質三人組、二手に分ける意味がなくなるからな。突入前にミーティングさせねーってのも、ぶっちゃけ二人組が二つあるっつーことを踏まえたハンディキャップなんだろーぜ。

 

「えー、裕ちゃんと別行動なのー?」

「大丈夫よ、葉隠ちゃん。同じ建物の中だもの、落ちあえるわ」

「そーいうことだぜトオルゥ。別れんのはちょっぴりのあいだだけさ、気にすんな」

「……うん、そうだね」

 

 悲しさと落胆の匂いがおれの鼻に突き刺さるッ! 痛ましーじゃねーかよぉ~~~~トオルぅ~~~~~~ッ! んな落ち込まねーでくれよ、なぁ~~~~~~ッ?

 おれとツユちゃんが励ますと、トオルの悲し気な匂いが少し薄くなってくれた。ったく、可愛いやつよのう~~~~マジでよぉ~~~~~ッ!

 

 おれたちの話がまとまったのを見たのか、オールマイトは手を高く掲げた。

 

「よぉし、そうと決まれば行こうじゃないか! 君たちの舞台に案内するぜッ!!」

「おうッ」

「はーいっ」

 

 引率するみてーにモニタールームの出入り口へと向かうオールマイト。トオルとツユちゃんもその後について部屋から出ていこうとする。

 おれも置いてれるワケにゃいかねーな。さっさと二人に追いつかねーと。

 

「――よぉ、そういやちゃんと喋ったことなかったな」

「あ?」

 

 

 

 そんな時さ。歩き出したおれに合わせ、ヤロー二人が隣に並んできたのは。

 Jコンビ。おれと対戦することになった奴らだった。

 

 

 

「俺は切島鋭児郎、よろしくな」

「んで俺は瀬呂範太ね。ヨロシク~ッ!」

 

 切島は真っ赤な髪をビンビンに尖らせたヘアスタイルの男だった。

 ノコギリみてーに鋭い歯で笑うその顔は、いかにも野郎だぜッて感じの汗クセー雰囲気がにじみ出ている。ムキムキな上半身には歯車みてーな肩当だけっつー半裸のコスチュームもあって、ムサい男の象徴みてーなナリしてやがんな、こいつ。

 

 もう一人、瀬呂の方は猫みてーな目をしたヒョロ長いナリの奴だ。

 こっちは白と黒のシンプルな半袖のウェットスーツに、黄色い“6”字型の肩当をつけたコスチュームだ。今はシールドを上げて顔を晒してるが、テープカッターみてーな形のヘルメットをしている。剥き出しの肘は筒みてーに出っ張ってるから、異形系の個性持ちだな。

 

 

 

 ま、ぶっちゃけヤローに挨拶されてもちっとも嬉しくねーんだけどよー。さすがに名乗られて答えねーのもバツが悪いよなぁ。

 

「ん~、あ~、おれは……」

「知ってるよ、噴上裕也だろ。クラスじゃ有名人だぜ、お前」

「初日から……葉隠サンだっけ? 女の子とべったりで、おまけに今日はクラス女子全員と昼メシだろぉ? 峰田じゃなくてもウラヤマシーよ」

 

 二人はすでにおれのことを知ってるよーだった。

 さすがおれッ、このカッコよくて美しい顔は、女のみならず男の目も引いちまうっつーことだよなぁッ! まったく、とどまるところを知らねー美貌っつーのも困っちまうぜぇ――――ッ。

 

「お前スゲーよ、初対面の女子を何人も相手に喋ってさ。リア充かよ」

「まぁ~~なぁ~~~~ッ! これもおれのカッコよさと美しさのなせるワザっつーの? 女子を満足させるトークも、男の甲斐性っつーヤツだよなぁ――――ッ!」

「甲斐性! 成る程、そういうのも漢気ってことだよな!」

「あー、お前の求めてる男性像とは、ちょっと違う気もするけどな」

 

 やけに鼻息荒く食いついてきた切島に、瀬呂は半目になっていた。

 おれはこいつらと話すのは今日がはじめてだが、こいつら同士はもうすでに付き合いがあるのかも知れねーな。切島の、この汗クセー性格を瀬呂はすでに知っているようだ。

 やれやれ、こいつは付き合うのにちょっぴりコツがいりそうな奴だぜ。

 

「おーい裕ちゃーん、早くー!」

 

 何て喋ってると、トオルたちとは随分と離されちまっていた。

 人っ子一人いねー訓練場の市街地を抜け、トオルやツユちゃん、オールマイトが立っていたのは外壁一面を白いタイルで埋め尽くしたビルだった。見た感じは7階前後ぐれーの高さか? 幅も奥行も結構あるから、中もかなり広そうな感じだぜ。

 

「――ここが君たちの舞台、演習用ビルCだ!!」

 

 オールマイトは両手をいっぱいに広げ、おれたちに指し示した。

 それに対しておれたちは、

 

「裕ちゃん、おっそーいっ」

「瀬呂ちゃんたちと何か話してたの?」

「んんん、別に大したことは何も話してねーぜ。なぁ?」

「おう! 漢同士の語り合いってことだぜ!!」

「あー蛙吹さん、気にしねーでやって。こいつ、こういう奴だから」

「梅雨ちゃんって呼んで。これから対戦するけど、お友達にはそう呼んでほしいの」

「え、マジ? おい噴上、どーしよ。俺、女子を下の名前で呼ぶのはじめてだよ!」

「オイオイてめーどんだけ寂しい中坊生活だったんだよ。名前で呼び合える女子がいると世界が変わるぜぇ? なぁ、トオルゥ~~~~~~ッ?」

「ねぇ、裕ちゃ~~~~~~んっ」

「……お前に聞いた俺がバカだったわ。オイ切島、どうするよ」

「今日は一戦ヨロシクな、梅雨ちゃん!!!」

「ケロッ、よろしく、切島ちゃん」

「ためらいゼロかよ! おれの気持ちわかってくれるヤツいねーの!?」

「ん~~~~~~ッ! 学生ライフ満開かよ、少年少女ォッ!!!」

 

 オールマイトのサムズアップが勢いよくおれたちに突き出された。あれ、なんか目元濡れてね、このヒーロー。

 だが気を取り直したように懐からメモを数枚取り出し、オールマイトはおれたち全員にそれを手渡した。手に取って開くと、そこには建物の簡単な見取り図が描いてある。

 どうやらこのビルの中身みてーだな。

 

「仲良くするのもいいが、ここからはしばらく君たちは敵同士だッ!! ヒーロー側も分かれて突入してもらうから、みんな気ィ引き締めていけよ!!」

「…………!!」

 

 ……忘れてたワケじゃねー。

 だけど、オールマイトのその言葉に、おれはこの場にいる全員が息を呑むのが分かった。

 屋外だっつーのに緊張と興奮の匂いが辺りを満たす。五人分の汗とアドレナリンが一か所で一気に噴き出しっつー証拠だ。

 そんだけオールマイトの言葉はおれたちに強くのしかかってきたっつーことだぜ。

 

「良い顔つきだ。それでこそヒーロー科だぜッ!」

 

 オールマイトもニカッっと歯を剥いて笑い、

 

「では敵チームは先にビルへ入ってセッティング!! ヒーローチームも、少女たちは裏手に回ってくれ!! 少女たちが位置についてから五分後にスタートだ!!」

「――はいっ!!!」

 

 おれたちの答えにオールマイトは大きく頷き、一歩引いて道を開けた。ビルの正面入り口、エントランスへとつながる自動ドアへの一本道だ。

 切島と瀬呂はその先を目指し、オールマイトの前を横切ってビルへと入っていく。

 だが不意に、切島がおれたちへ振り向いた。

 

「葉隠! 梅雨ちゃん! 噴上ィッ!!」

「……ンだよ」

 

 切島はおれたち三人を指差し、今までにねーデケー声で宣言しやがった。

 

 

 

「――この勝負、おれたちが勝つッ!!!」

「おー、カッコいいこと言うじゃねーか、おめぇ~~ッ。っつーことはよー、それに勝てるおれたちはもっとカッコいいってコトだよなぁ――――――――――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて噴上少年、少女たちは準備OKみたいだぜッ!』

 

 ビルの正面を見上げるおれに、スピーカー越しのオールマイトの声が響いた。

切島たちがビルの中に消え、トオルとツユちゃんもビルも裏手へ向かうため裏路地に入っていった。オールマイトもモニタールームに戻ったんで、今ここにはおれ一人だけってわけだ。

 

 敵は二人。

 そいつら両方ブッ倒すか、そいつらが守ってる核兵器にタッチすりゃ勝ち。

 こっちは三人。ただしおれ以外の二人とは打ち合わせ無しの別行動でスタート。

 

 ……いいねぇ、いい具合に盛り上がってくるじゃねーかよぉ。これに勝てば、おれのカッコよさはまた一段と輝くってことなんじゃねぇかぁ~~~~~~ッ!?

 おれ自身の体からアドレナリンがガンガン匂ってくるのが分かるぜぇ――――ッ! 全身がよぉ、ギンッギンにアツくなってきやがったからなぁ――――――ッ!!

 

『じゃあ張り切っていってみよう! バトル、スタートだッ!!』

 

 オールマイトの号令に、おれは一歩を踏み出した。

 それに重なるように、おれの傍らにハイウェイ・スターが現れる。やってやるぜ、っつーおれの心がッ! 勝ちに行くぜっつー意思がッ!! 溢れて止めらんねーからよぉ~~~~~~ッ!! 

 

 

 

「行くぜハイウェイ・スター!! おれたちのカッコよく美しい勝利を手にするためによぉ――――――ッ!!!」

 

 




対人戦闘訓練編。梅雨ちゃんをメンバーに加えつつ、切島&瀬呂との対戦です。

この構図にするにあたり、原作で梅雨ちゃんとペアの常闇には尾白と入れ替わってもらいました。
でもアニメ版での順番を見る限り、緑谷&麗日vs爆豪&飯田から順繰りに1・2・3回戦と並んでて、時系列的にスッキリした感じがしていいですね。常闇と轟の相性も匂わせる(現時点で轟に使う気はないけど)ことも出来たし、ナイス偶然。

あと、これまた図らずも(これは図っとけ)女子登場回だった前話と対になる男子登場回になりましたね。残りのメンバーも出していきたい。

構想としては、次回・次々回は戦闘回です。頑張って書き切りたいですね。





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