蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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46話

side『目が冴える蛇』

 

 

「アイツ、珍しく他人と協力してんなァ」

 

「あの子も人に頼ることを覚えた、と言うことだよ」

 

 

睨美の仮免許試験中、目が冴える蛇こと俺は中からその様子を見学していた。戦闘行為には口出ししないと言う昔からの約束があるからだ。

 

そして俺の隣にいるのは、個性に宿った人格である『オールフォーワン』。さっき俺の空間をぶち破って入ってきやがった。なんだコイツ、バケモンにも程があるだろ。

そう言ったわけでコイツと会話しながら相棒の試験を見学してるっつーわけだ。

 

 

「睨美は本当に綺麗に育ったね。君の影響が大きいと考えているんだが、どうだい?」

 

「お前が碌に施さなかった情操教育を俺が代わりにやってたんだよ」

 

「なるほど!!だからここまで純粋に育ったのか。あの日、睨美を拾った日……何かが彼女の中にいるとは気づいていたけれど、それが何かは分からなかったんだ。ドクターに検査してもらっても完全に不明でね」

 

「おい、御託はいい。テメェ……何しに来やがったァ?」

 

「……全く、あの子がせっかちなのは君に似たのかな?そこもあの子の可愛いところではあるけれどね」

 

 

回りくどい、ただ相棒の事を褒めちぎりたいだけなら自分だけでしこたま言ってりゃいい。そんな奴がわざわざ俺のとこまできた。それなりの理由があんだろ。

 

 

「そんな目で見ないでくれよ。僕は君に用があってここまで来たんだぜ?愛娘の相棒君?」

 

「早く用件を言え」

 

「連れないなぁ……これから仲良く睨美を助けていこう、それだけさ」

 

「……はァ?」

 

 

誰だコイツは。コイツがあのオールフォーワン?全くもって意味がわからん。

 

 

「何が目的で相棒に『オールフォーワン』なんかぶち込みやがったァ?テメェの計画じゃァ死柄木弔が素材だったはずだァ。まさか今更相棒を依代にしようと……」

 

「僕がそんなことするわけがないだろう?個性に人格が宿る、という話は君も知っているだろうから割愛するよ。僕は思いついたんだよ、同じ人間由来の個性を2つ用意すれば、感情や人格を分割できる、という事をね。

そして成功した。本来の僕の目標のためには僕から睨美への『愛情』は最優先で取り除かなければいけない邪魔な物。愛情だけを凝縮させた『オールフォーワンの人格』、それが僕さ」

 

「なにを……言ってやがる?」

 

 

理屈はわかる。納得できねぇ、愛情が邪魔?ハッ、それも分かるぜ。()()()()のとこにいた時からそれは常々思ってたことだ。

だからと言って、切り離せるものじゃない。それを可能にしたってのか?

 

 

「つまりテメェは、陽炎睨美のことがひたすら大好きで仕方ないだけの父親、だと?」

 

「面と向かって言われると恥ずかしいな。あの子には伝えないでくれよ?バレたら流石の僕も恥ずかしさで消滅してしまうかもしれない。恥じることでもないのだけどね」

 

 

誰だコイツ……まじで誰だコイツ!?嘘だろ?おい相棒、嘘だと言ってくれよ。

コイツ、人格移す前はあの感じでこんな激重感情抱えてたのか……イメージ崩れるんだが……

 

あ?てことは本体のアイツは今……

 

 

「おい、本体は今どうなってやがる?」

 

「うん?ああ、本体の僕のことかい?睨美の事はいつか()()()()()()()()()()()()

 

「…………は?」

 

「そりゃそうさ、邪魔な感情を消し去った。だとすれば本来の目標に向けて邪魔なものは排除するとも」

 

「10年だぞ?オールフォーワンにとってたった10年とはいえ、人の親だったんだぞ?」

 

「関係ないのさ。だってその感情は全て、ここにあるんだから」

 

 

親バカが嗤う。何故嗤う?親バカからすればそれはよろしくないはずだ。だと言うのに、なぜ相棒の危険に対して笑っていられる?

 

 

「なぜ笑っているのか。そう思っているね?」

 

「ッ!!」

 

「君が1番よく知っているじゃないか」

 

「あァ?俺が……?」

 

「睨美はもう不老不死。たとえ本体の僕はどんな策を講じようとも全て無意味。力でも及ばす、たとえこの世界が、星が、宇宙が、全てが滅びようとも睨美と君達蛇だけは生き続ける。『目を醒ます』能力によってあらゆる環境に適応し、『目を覚ます』能力によってどのような条件下でも精神は壊れない。なにをやっても無駄さ」

 

「そりゃァ……そうだけどよォ。テメェに知ったふうに言われると腹立つなァ」

 

「だから僕は笑っていられる。娘の無事こそが本懐……本音を言えば孫くらいは見てみたいけれど、生半可な男じゃ認めないね」

 

「急に話がクソ雑になりやがったァ……!!」

 

 

はァ……そうだ、コイツ親バカなんだったわ。一瞬シリアスになったから忘れかけてたぜ。

非常に癪だが、コイツの言うとおりだ。睨美についてはなんの支障もない。それでいいじゃねえか。

 

……本当にか?相棒だけが生き残って、それで今のアイツは満足出来るのか?

 

『そうなったらそうなったで、また何か楽しいこと探しをしよう。2人……いや、蛇達みんなでね。人間がいる限り娯楽は生まれてくる。だから、大丈夫』

 

…………いや、ダメだろ。あー、クソッ。こんなの俺じゃねぇ、って言いたいけどもうなんの説得力もねぇな。アイツはアザミじゃねぇ、歴代最高の女王……俺の相棒だ。

 

 

「分かったよ」

 

「なにがだい?」

 

「協力してやるってんだァ。テメェくらいの親バカ、他にいないだろォ……まっ、あれだ。今回ばっかりはお前に合わせてやるよ」

 

「そうかい……じゃあ僕も折角だから宣言させてもらおうかな」

 

 

 

 

 

「「全ては愛娘(相棒)のために」」

 

 

 

 

 

「ああ、そうだ。睨美に悪い虫がつきそうだったら君がアドバイスしてくれよ?僕はしっかり見守るだけだからね」

 

「知るかよ。あー……でも、そういやすでに相棒の毒牙にかかってる奴いたなァ」

 

「なんだって!?一大事じゃないか!!そう言う事は始めに言ってくれ!!」

 

「知るかァ!!!!!!ぶち殺すぞテメェ!!!!!!極端すぎんだろうがァ!!」

 

 

こりゃ、前途多難だな。

まァ……そこが相棒の面白いとこなんだけどなァ……

 

にしてもコイツ……ずっと1人で娘自慢してやがる。ウゼェ。

 

 

 

 

 

 

 

 

side 睨美

 

 

 

なんか、私の中で誰かが喧嘩してる気がする。蛇の皆、喧嘩しちゃダメだからね?

え、違う?うーん……じゃ、いっか。

 

いやー、今回は最高に面白い結果になりましたね。帰りのバスは一部が地獄のような空気だったよ。まあ爆豪のことなんだけど。ほんっっっっとに煽りに行きたかったけど、流石に密室だしこの地獄がバス全体に広がるの嫌だったから抑えたよ。

偉くない?

あっはは。あれ、相棒?…………寝てるのかな?珍しい、こういう時私のこと諌めに来るのに。

 

まあいいや、起きたら自慢しよっと。

 

今はもう寮に戻ったよ。帰ったらオールマイトが出迎えてくれて1人ずつお祝いだったり慰めの言葉をかけてた。私の時だけ一瞬顔を顰めてたけどなんとか取り繕っておめでとうって言ってきたね。ふふふ、オールマイトが嫌がること、一個達成!!なんてね。

 

 

「オールマイト」

 

「な、なんだい陽炎少女?」

 

「今日の夜、爆豪が私と緑谷を連れ出すみたい……多分バレた」

 

「なんだって……いや、勘のいい彼なら確かに……」

 

「これ、私の力の詳細が載ってる本。今夜までに読んでね。貴方達にはちゃんと……話すから」

 

「……分かった。受け取るよ、『アザミの日記』?アザミは確か陽炎少女のヒーローネームじゃ」

 

「そういうのも、全部この本が真実だという前提で読んだらわかる」

 

「HAHAHA……実は最近老眼が進んでてね?この分厚さの日記を今夜までに読むのはちょっと厳しいというか……」

 

「聞こえないなぁ……?」

 

「oh……頑張るとも」

 

「ん、じゃあよろしく」

 

 

黙殺した。オールマイトはガチシリアスな時以外押しに弱いからね。黙らせれば大体なんでも通るよ多分。

 

夕飯を終え、自由時間。

 

私は爆豪が来るまでの時間でいつも通りゲーム……はせず、庭で型の稽古をしていた。

 

 

「今日の今日で、真面目だなお前は」

 

「相澤先生?」

 

 

ポリポリと頭を書きながら、渋い顔をした相澤先生が私のところにやってきた。

 

 

「寝ないのは分かっているが、今日くらい休んだらどうだ」

 

「……今日は、ビッグイベントがあるから無理」

 

「ビッグイベント?」

 

「私と緑谷が爆轟に呼ばれてる」

 

「なっ……はぁ、あの問題児め……行かんでいい。爆豪は俺が締めとく」

 

「いや、せっかくだし先生にも来てもらう」

 

「なんだと?」

 

 

良いこと、思いついた。

 

アハっ、私はやっぱり天才の素質がある。そうだね、相澤先生。貴方も教師の1人であるならば……生徒のことはちゃんと知っていてもらおうかな。

 

 

「私の能力で、先生の影を薄くするから……こっそり付いてきて。私の優秀さ、緑谷の個性、興味があるでしょう?」

 

「……何言ってやがる陽炎。冗談は程々にしろ」

 

「オールマイトは全部知っているけど?」

 

「ッッッ……疑わしい奴の1人だとは思っていたが、まさか……ッ!!」

 

「残念……抹消は効かない。私のこれは『個性』じゃないから」

 

 

私が先生と目を合わせた瞬間に、先生もまた個性を発動し私の石化を発動させないようにした。

だが無意味だ。私の能力に抹消は作用しない。だって個性因子じゃないのだから、『オールフォーワン』は使えないけれど、別に先生から個性を取る気はないし。

 

体が動けなくなった先生は、冷や汗を流している。

 

 

「貴方が……私の『先生』を名乗るなら、私もまた貴方の『生徒』である。『生徒』のことを知っておくのは大切だよ?せーんせい♪」

 

 

耳元で囁く。

 

 

「グラウンドβのロボットは私の能力で予め機能不全にしてある。私と緑谷と爆豪とオールマイトの密会……先生はこのことを誰にも報告せず、1人でこっそり来ること。そして私と緑谷の真実を知りどう判断するのか。とても……とっても、楽しみにしているから。

……石化は30秒できれるから。それじゃあ……また今夜」

 

 

そう告げて私は部屋に戻る。あはははははははは!!!!!さいっこうだよ!!

そうだ、全部引っ掻き回そう!!私の手のひらの上で、ヒーローも、ヴィランも、バケモノも!!

 

…………ふぅ、落ち着いた。

 

楽しいことは、自分で作ればいい。私は何か悪いことをしましたか?いーえ、していません。

え?ウォルフラム?誰それ、完全犯罪は証拠がないので犯罪じゃありません。

だって私は、史上最悪のヴィランに育てられただけの、ちょっと経歴が怪しい一般少女なのだから。

 

 

「やあ、裏切り者……良い夜だね。

オールフォーワンの娘であるこの私が貴方に命令する。

 

『ヒーローになりなさい』

 

はい、これでお前がヒーローを志望する理由は……憧れではなく、命令になりました。

純粋な気持ちでヒーローを目指せなくなったね。

解放されたと思った?

オールフォーワンに関わった者は、だーれも逃げられないよ。

ん?クラスメイトを殺すわけないじゃん。ペナルティは……無個性に戻ってもらおうかな。

死ぬよりマシだと思うけど。

え、なに?泣いてんの?

ほら、いつもどおり笑えよ。

君は『can't stop twinkling 』なんでしょう?

キラキラが止められないんでしょう?

 

ねぇ……()()()()

 

私たちは同じ穴の狢なんだからさ……仲良くしようね?」

 

 

それじゃ、良い夜を。

 

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