学戦都市アスタリスク~星の担い手達~   作:伊達 翼

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第九話『星座を司る純星煌式武装の性能テスト』

~研究院地下ブロック・特別アリーナ~

 

 現在、この特別アリーナでは起動した純星煌式武装の性能テストが行われようとしていた。

 

人馬の破弓(ブラインド・サジタリウス)宝瓶の砲銃(ブラストル・アクエリアス)、展開」

 

 人馬の破弓であるT字状の発動体が起動し、T字の上部が握りとなり、その前後に刀の刀身を思わせるような形状の外竹と内竹が展開して長弓を形成する。さらに弦は万応素で構築されていて、この弦を引っ張ることで矢を生成して射る機構になっているらしい。

 一方で宝瓶の砲銃もホルスター内で展開したのか、長銃身大型ライフル二挺へと展開していた。

 

「(へぇ、弓の方は俺のと似たような構造(・・・・・・・・・・)か)」

 

 忍がそのようなことを考えていると、明香音が試しに一射しようと構えている。

 

「……………………」

 

 まるで弓道でもやるかのような体勢に…

 

「天月。性能テストだから、今回はいいが…戦闘だとそんな悠長なことは出来ないんだぞ?」

 

 忍からの忠告が入る。

 

「うっ…そ、それもそっか…」

 

 言われて明香音も一旦、構えていた人馬の破弓を下ろす。

 

「とは言え、いきなりは難しいからな。まずは適当に射ってみてくれ」

 

「う、うん…」

 

 改めて人馬の破弓を構えると、弦を引っ張って矢を生成する。

 

「(俺のとは違って、矢は一射分だけか…)」

 

 忍がそのように分析していると、引っ張っていた弦を手放して矢を射る明香音。その矢は真っすぐ飛び、防御障壁に衝突して霧散する。

 

「(純星煌式武装のわりには、威力の方も大人しそうだが…まだ、一射しただけだから何とも言えんか…)エル、筆頭殿。どうだった?」

 

 とりあえず、外からの意見も聞きたくて、計測していたであろう2人に尋ねていた。

 

『ん~、そうだな。わりと普通だったね。威力はライフル型煌式武装の弾丸よりもちょい高めくらいだったし…速度も普通だったよ』

 

『そうだな。威力は高いが、特筆する点があまりない。代償もまだ申告されてないから何とも言えんが、どちらかと言えば、移動しながら射続けるような戦法が正しいのかもしれない』

 

「(そっちか。確か、星導館の長弓型は物量だったか…なら、こっちは移動砲台的な動きが基本なのかもしれんな…)」

 

 エルネスタとカミラの分析を聞きながら、忍も内心でカミラの意見に頷いていると…

 

『それと天月。能力は使ったのか?』

 

 カミラから指摘が入る。

 

「いえ、能力は使ってません。ただの一射です」

 

『ふむ。では、次は能力を使ってみてくれ』

 

「わかりました」

 

 カミラの指示に頷くと、明香音は再び弦を引っ張り、再び矢が形成される。

 

「(ふむ、矢の生成速度も早い方だろうな)」

 

 そんな風に明香音の次射を見守っていると…

 

ヒュッ!

 

 次射が放たれ、再び防御障壁へと当たる寸前…

 

ヒュッ!

 

 矢の軌道がいきなり180度反転し、忍へと向かうコースを飛ぶ。

 

「むっ!?」

 

 気を抜いてた忍も思わずブリッジするような体勢で回避すると、矢はそのまま射った方とは逆方向の防御障壁へと当たって霧散する。

 

「あっぶね!? なんだ、今の軌道!?」

 

 ブリッジ状態から何とか身体を起こしながら忍が今の不可解な軌道について抗議する。

 

「あ、ごめん…この子の能力って簡単に言えば、射った矢の軌道(・・・・・・・)を変えることだから…ちょっとわかりやすく紅神くんを狙ってみたんだけど…」

 

 一応、謝りながらも人馬の破弓の能力について軽く説明する。

 

『なるほど。射った矢の軌道が変わるのなら一回避けてもあまり意味はないか。しかもあの威力が突然死角から襲い掛かってくると考えると、なかなか面倒そうな能力だな』

 

「どうも、この子の能力って私のイメージとかが結構関わってるらしくて…射る前にどういうタイミングで、どう矢の軌道を変えるかを考えないとダメみたいでして…」

 

『つまり、想像力で矢の軌道を変幻自在に操ってる感じ?』

 

「はい。多分、そんな感じです」

 

 それを聞き…

 

「となると、やっぱ移動しながら射る必要があるな…」

 

 いきなりブリッジしたせいで腰でも痛めたのか、腰をトントンと叩きながら忍も会話に加わる。

 

「いちいち止まって射ってたんじゃ効率悪いし、そういう能力ならやっぱヒット&アウェイが基本になるだろ?」

 

「そう、だよね…」

 

 忍の言い分に明香音も思うところがあるのか頷く。

 

「まぁ、それは後でもいいか。それで代償ってのは?」

 

「えっと…開示されたデータによると、起動してから一定時間経つ毎に視力が下がるみたいなの。詳しい時間まではわからなかったけど…」

 

「後衛としては最悪の代償だな……こりゃ長期戦は出来ねぇな…」

 

 代償を聞き、忍はしかめっ面になる。

 

「それに時間も無駄に出来なくなった。次は、そっちのライフルを試すぞ」

 

「う、うん。わかった」

 

 忍の言葉に明香音も腰裏のホルスターに人馬の破弓を収めると、今度は太腿のホルスターから二挺の長銃身大型ライフルを抜く。

 

『スペックの把握は出来ているか?』

 

「ちょっと複雑ですけど、そこはなんとか」

 

 カミラの問いに明香音はそう答える。

 

「複雑?」

 

「うん。可変機構って言うの? それと前後での連結機構。そういうのがあるから、多分戦況に応じて使い分けろってことなんだろうけど…」

 

「なるほどな。とりあえず、時間制限もあることだし、一つずつ試してくか…」

 

 そうして次の宝瓶の砲銃の性能テストに移る。

 

「まずは左側の…『ラピッドtype』」

 

 そう言って明香音は左手に持ったライフルを持ち上げ、虚空へと撃つ。

 

ズドドドドド!!

 

『これは速射性に優れているようだな』

 

『その代わり威力は随分と低めだね』

 

 計測組からの声を聞きながら、明香音は次に右手に持ったライフルを持ち上げて撃つ。

 

「これが『マグナムtype』」

 

ドンッ!!

 

『右は威力重視のようだな』

 

『ふむふむ。左のとは性能が逆の感じだね』

 

 計測組が右の評価もしていると…

 

「紅神くん。ちょっと手伝って」

 

「ん? なんだ?」

 

「ちょっと弾丸を避けるか、弾いてね」

 

 明香音が忍にそんな頼み事をしていた。

 

「なに?」

 

 なんだか嫌な予感がしたのか、すぐに懐から白銀の発動体を取り出して刀身を展開する。

 

「次が…『ホーミングtype』」

 

ガシャンッ!

ドドドン!!

 

 左側のライフルが変形すると同時に忍を狙って数発撃ち込む。

 

「ちっ…」

 

 舌打ちしながら忍が横に走って弾を回避しようとするが…

 

グイン…!

 

 弾は緩くカーブしながら忍を追跡する。

 

『名前の通り、誘導弾になったのか…』

 

『ほっほぉ、面白いね。これでまだ能力は使ってないんだよね?』

 

『おそらくは…あのライフルの機能の一つなんじゃないか?』

 

 計測組はデータを取りながら推測を語っている。

 

「俺の心配は誰もしてくれねぇのな!」

 

 そう言いながらも忍は振り返ると、刀で弾丸を弾き飛ばしていた。

 

「それで、これが『ショットtype』」

 

ガシャンッ!

ズドンッ!!

 

 右側のライフルもまた変形すると、その銃口から散弾が飛び散る。

 

『右側は威力をそのままに分散させる仕組みのようだな』

 

『近くで食らったら、いったそ~』

 

 ここまでがそれぞれのライフル単体での性能と機能である。次は連結機構とやらを試すことになるのだが…

 

「うっ…」

 

 急に明香音の手が止まる。

 

「どうした?」

 

「なんか、ちょっとだけ眼が悪くなってきたような…?」

 

 忍が尋ねると、明香音がそのように自己申告してきた。

 

「…筆頭殿。天月が純星煌式武装を起動してからの時間は?」

 

 それを確認すると…

 

『約20分程度だな』

 

「20分、か…」

 

 先に人馬の破弓を試していたとは言え、話したりもしていたためか、時間が思ったよりも経過していたようだ。何より、2機同時に起動させなければならない制約がこのような形で出るとは…。

 

「ま、まだ大丈夫です。そんないきなり眼が悪くなるわけでもありませんから…」

 

 明香音は気丈に振る舞うが、少々戸惑っている様子にも見える。

 

「あんま無理すんなよ?」

 

「うん、ありがと」

 

 そう言ってから明香音は次の機能を試すことにする。

 

「次、連結機構を試します。左はラピッドtype、右は『リアクターtype』」

 

ガシャンッ!

ガッコンッ!

 

 左のライフルが最初の形態に変形し、右側のライフルもまた別の形態へと変形すると左のライフルを前にしてその後ろに右のライフルを連結させた状態になる。

 

「『ガトリングtype』」

 

ズドドドドドッ!!!

 

 放たれた弾丸の嵐は防御障壁に激突し、激しい火花を散らしていく。

 

『連結機構とはこういうことか。前部の機能を拡張しているのだな』

 

『後部のやつで出力補助をしてる感じだね?』

 

『あぁ。だが、この状態だと移動に難ありだろう』

 

 カミラの指摘通り、この状態では明香音は思うように移動出来ないようだった。

 

「前部変形、ホーミングtypeに切り替えて『レーザーtype』」

 

ガシャンッ!

 

 すると、前部のライフルだけが変形して別の銃口を備えたものとなる。

 

『あの状態でも可変は可能なのか』

 

『でも、前部だけっぽいね? あとは一旦、切り離さないと右側のライフル特性は使えないかな?』

 

 計測組の的確な指摘を聞きつつ、再びその銃口を忍に向ける明香音。

 

「紅神くん。またゴメン!」

 

「だろうな…」

 

ビュンッ!

 

「って、さっきよりも数多くね!?」

 

 発射された弾種はレーザー状となっており、しかも数も多かった。

 

「どわぁぁ!?!」

 

 流石にこれは捌き切れないと判断して防御障壁前まで逃げてからギリギリの所を回避してレーザー弾幕を防御障壁に激突させるという回避を見せていた。

 

「次、行きます」

 

 時間もあるので、忍が回避したのを見届けてからライフルの前後連結を解除し…

 

「左はリアクターtype、右はマグナムtype…『スナイパーtype』」

 

ガシャンッ!

ガッコンッ!

 

 今度は逆の右を前に連結させて構えていた。

 

『先程のマグナムtypeを考えれば、一撃の威力が絶大になっていそうだな』

 

『うんうん。ただ、スナイパーってことは…』

 

『狙撃か…』

 

 そんな計測組の言葉を裏付けるように…

 

ドゴンッ!!

 

 物凄い音を立てながら銃口から鋭くも重い一撃の万応素の弾丸が発射される。

 

バチバチッ!!

 

『防御障壁が!?』

 

『わぉ、物凄い威力だね~』

 

 防御障壁を破るとまではいかないが、それでも物凄いエネルギー消費を見せた数値を見てカミラが声を荒げ、エルネスタも面白そうに呟く。

 

「前部変形、ショットtypeにした『バスターtype』」

 

ガシャンッ!

 

 再び変形した銃口が虚空を向き…

 

「いっけぇ!」

 

ズゴゴゴゴゴ!!

 

 面制圧を目的とした散弾方式の砲撃が一面を覆う。ちなみに射程範囲内にいた忍は…

 

「どわぁぁぁ!?」

 

 必死に逃げていた。

 

「天月! 俺になんか恨みでもあんのか!?」

 

「え、あ…ご、ごめんなさい」

 

 明香音もどうも射線上に忍がいたのを忘れてたらしく、素直に謝っていた。

 

「しっかし、どっちも癖が強ぇな…しかもこっちはまだ能力使ってねぇんだろ?」

 

『そうだな。宝瓶の砲銃の能力はなんなんだ?』

 

『う~ん…弓の方と違ってちょっと想像つかないね。どんなの?』

 

 忍の言葉にカミラとエルネスタも宝瓶の砲銃の能力について聞いてくる。

 

「えっと、一言で言うなら…加速と減速、ですかね?」

 

 明香音がおずおずと答えると…

 

「加速と減速?」

 

『ふむ?』

 

『それってさ。結構ヤバくない?』

 

 忍とカミラが疑問符を浮かべる中、エルネスタはピンと来たのか、そう呟いていた。

 

「代償もなかなかに重くて、使いづらいと言いますか……下手すると死んじゃうかも…」

 

 ポツリと呟いた明香音の言葉に…

 

『なに?』

 

 カミラが反応する。

 

「その…代償は、能力を使ったら、私の体内の水分が徐々に蒸発する(・・・・・・・・・・・・・)って書いてあって…」

 

「なに!?」

 

『それは、確かに重いな…』

 

『能力を使う度に水分持ってかれるのか~。まぁ、能力に対して代償も相応ってことかにゃ~?』

 

 宝瓶の砲銃の代償を聞き、他の3人も程度は違うが慄いている。

 

「だから、使いどころが難しいというか…あんまり使いたくないというのが本音です…」

 

 スッペクを読んで一番最初に思ったであろう明香音からも能力は基本使いたくないと本音が出る。

 

「そうだな…流石にそんな危ない橋を毎回渡らせるのも忍びないしな…」

 

『人体のほとんどは水で構成されている。それが失われるというのは、流石に死に繋がりかねんか…』

 

『どんくらい出来るか知りたかったけど…とりあえず、能力は使わないに越したことはないんじゃない? それを補って余りある火力もあることだしさ』

 

 他の3人も概ね了解し、明香音の意向には賛成だった。

 

「そういうわけで、そろそろ解除してもいいですか? 視力がちゃんと戻るかも気になりますし…」

 

「そうだな。データは大体取れてるよな?」

 

『そっちは問題な~し』

 

『あぁ、一旦解除してもらっても構わない』

 

 明香音の申し出に忍も計測組に尋ねると、解除してもいいとのお達しがされる。

 

「では……もういいよ」

 

 明香音が一言、声を掛けると2機とも待機状態となる発動体へと元に戻る。

 

「あ、ちょっと視界が開けた気が…」

 

 それと同時に明香音の視力も戻った…ような感じがする。

 

「流石は純星煌式武装…やっぱ、一筋縄じゃいかんか…」

 

「うん。そうだね…」

 

 現場が少し重たい雰囲気になりつつもあったが…

 

『よ~し、次はしぃちゃんの番だね!』

 

『お手並み拝見といこうか』

 

 計測組が忍に声を掛ける。

 

「そうだったな。ここの3人には手札を見せなきゃならんのだった…」

 

 すっかりゾディアックシリーズの性能に釘付けになっていたが、この場では忍の手札も見せることになっている。

 

「先に言っておくぞ? そっちの純星煌式武装みたいな期待はしてくれるなよ? こっちはカスタム煌式武装なんだからな?」

 

 と、一言前置きを言っておいてから今度は忍の番となった。

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