学戦都市アスタリスク~星の担い手達~   作:伊達 翼

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第十話『七星の輝き(前編)』

~研究院地下ブロック・特別アリーナ~

 

 明香音が手にしたゾディアックシリーズの性能テストも無事終わり、今度は忍の持つ煌式武装の性能を披露する番となった。

 

「さてと…じゃあ、まずは名前からお教えしましょうかね? っと、天月。ちょっと制服持っててくれ」

 

 そう言って制服の上着を脱ぎ捨て、明香音へと投げ渡す。

 

「わわっと…!?」

 

 いきなりだったので、明香音も慌てて忍の上着を受け取る。見れば、忍のワイシャツの上にはベスト型ホルスターが着用されており、そこには既に右手に持つ白銀の発動体の他に瑠璃(右一番上)、真紅(左上から二番目)、黄金(右真ん中)、漆黒(左上から三番目)、紅蓮(右一番下)、純白(左一番下)の計7つの発動体があった。

 

『ん~? どれも同じだよね?』

 

『あぁ、同じ発動体を色分けしてるようにしか見えんな』

 

「どれも刀型なの?」

 

 同じデザインで色違いの発動体に3人は素朴な疑問を抱いていた。

 即ち『"何故、色が違うだけの同じ煌式武装を複数持っているのか?"』ということだ。

 

「そう慌てなさんな。まず最初にこいつらの総称は『七星狼牙』。発動体にはそれぞれ個別呼称もある。ちなみにずっと使ってる刀の刀身を出す機能は、ダミー(・・・)だ」

 

 忍は簡潔ながら丁寧に説明した。

 

「ダミー?」

 

 明香音が疑問符を浮かべていると…

 

『つまり、その発動体にはそれぞれ刀以外の真の姿があるということか?』

 

 カミラが推測を口にする。

 

「流石は筆頭殿。刀はあくまでも本来の機能を隠すためのダミー機能なんだ。ま、使い勝手は通常の剣型煌式武装とそう大差ないから、変則七刀流なんて使い方も出来るし、ダミーだから本来の機能を隠すにはちょうどいいんだわ」

 

 カミラの推測を肯定しながら忍は言葉を紡ぐ。

 

『つまり、ただ相対しただけでは相手が錯覚するということか』

 

「そういうこと。付け足すなら、本来の機能を使うにもちょっとした手順がいるんでね。他人に使われる事態も想定してる。ま、そんな事態にはなりたくはないがな」

 

 用心深いのかなんなのか…忍の徹底した隠蔽工作にカミラと明香音はちょっと呆れていた。

 

『しぃちゃんってホ~ント、隠し事が好きだよね~』

 

 ただ1人、エルネスタだけは笑っていたが…。

 

「ほっとけ。で、話しの続きだが…」

 

 そう言いながら忍は白銀の発動体を左手に持ち直すと、ベスト型ホルスターの白銀の発動体を差し込んでいた左側一番上のベルト部分の表面に仕込まれてたらしいメモリーカード型端末を取り出してみせた。ちなみにその端末の表面には狼の絵が描かれていた。

 

「それは?」

 

「まぁ、鍵ってとこだな」

 

『鍵?』

 

 そうして首を傾げている3人が見守る中…

 

「こいつを、こうして差し込んでから…」

 

 その端末を白銀の発動体の柄頭、もしくはグリップの底部分にあった挿入口に差し込む。

 

「この実は飾りじゃないトリガーを引っ張ると…」

 

 再び左手から右手に持ち替えて人差し指で軽くトリガーを引く。

 

 すると…

 

「目覚めろ。『真狼』」

 

キュインッ!!

 

 一瞬にして忍の腰の左側に白銀、右側に漆黒の日本刀が二振り、さらに両腿にはガンホルスターに収まった双銃がそれぞれ出現する。

 

「これが七星狼牙の真の機能。『専用武装外殻』だ」

 

 どんと胸を張って言い切る忍に対し…

 

「『専用武装外殻』?」

 

『つまり、それぞれ個別にそのような装備があるのか?』

 

『なんとも、しぃちゃんらしいね~』

 

 明香音は首を傾げ、カミラは分析、エルネスタは何故か優しい笑みを浮かべていた。

 

「エルがなんでそんな顔をしてんのか知らんが…まだ実戦でお披露目したことはないからな。今の情報が出回ってない状態なら、ダミー機能でも十分戦えるし」

 

 エルネスタの表情を見て微妙にムスッとしながら忍はそう答える。

 

「ちなみに白銀の日本刀は『銀狼』、漆黒の日本刀は『黒狼』、右の銃は威力重視の『ライト・フューラー』、左の銃は速射性重視の『レフト・フューラー』だ。これらと発動体を一纏めにした呼称が、さっき言った『真狼』だな」

 

『さらに別称まであるのか。ややこしくないのか?』

 

 忍の説明にカミラがそう尋ねると…

 

「他人に貸すわけでもないし、自分で使う分にはそういうのは気にならないっすね」

 

 忍はそのように即答した。

 

『はぁ…なるほど。確かに個人で使うのならそういうのもありだが、どうにもわたしには非効率にしか思えない。最初からフル装備にした方が遥かに効率的だとは思わんか?』

 

「それだと重いんですよ。足になんかブースターでもくっつけないとやってられません。なので、俺はこのやり方にしました。筆頭殿には受け入れらないと思ったので、今まで黙ってましたが…」

 

『ふっ…そうだな。それを知ったのならわたしも廃棄予定の煌式武装を譲ったりはしなかっただろう。まぁ、今となっては後の祭りのようだが』

 

「ま、おかげで色々とノウハウも習得出来たんで、そこは感謝してますよ」

 

『相変わらず、実践クラスの人間とは思えない発言だな』

 

「褒め言葉として受け取っときますよ」

 

 などとカミラと忍が言葉の応酬を繰り広げていると…

 

『そんでしぃちゃん。それの性能テストはやるの?』

 

 エルネスタが妙にウキウキしながら尋ねてくる。

 

「ま、肩慣らしはしておきたいな。で、準備は?」

 

『もっちのろ~ん!』

 

「なら、始めてくれ」

 

 エルネスタと忍の会話に…

 

『「???」』

 

 カミラと明香音が揃って首を傾げていると…

 

『じゃあ、人形ちゃん達~、カモ~ン♪』

 

ガコンッ!!

 

 特別アリーナの一部地面が割れると、そこから自律式擬形体がわらわらと出てくる。

 

「なぁっ!?」

 

『いつの間に!?』

 

 その光景には明香音もカミラも驚いていた。

 

『いやぁ、流石に明香音っちにはいきなり厳しいかな~って思ってたから控えてたけど…しぃちゃんなら、まぁいっかな~、って』

 

 なんて朗らかに言うエルネスタだったりする。

 

「天月は下がってろ。今は俺のテストの時間だからな」

 

 そんなエルネスタの行動を予測でもしていたかのように、忍は特に気負うこともなく白銀の発動体をベスト型ホルスターに戻し、双銃を抜いて向かってくる自律式擬形体を面白そうに見る。

 

「エル。遠慮はいらないよな?」

 

『全然いいよ。それ、サイラス君に追加であげようと思ってた残り物だし、しぃちゃんがどれだけ対応出来るのかも見てみたいしね♪』

 

「ハッ! 上等だ!」

 

 言うが早いか、忍がその場から一気に駆ける。それを見てか自律式擬形体の一部が持っていたライフル型煌式武装を乱射する。

 

「すぅ…ふぅ…ッ!!」

 

 一呼吸してから忍は星辰力を足に集中し、さらに体勢を低くして加速しながら右から左、左から右へとまるで反復横跳びをするかのようにライフルの乱射を掻い潜っていく。

 

「(なにあれ、凄っ!?)」

 

『(実践クラスなのは知っていたが…まさか、あそこまで動けたとは…)』

 

『(にしし、流石はしぃちゃん)』

 

 忍の異様な動きに内心で三者三様の反応をする。

 

「ッ!!」

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

 そんな無駄な動きとも言える回避行動をしながらも忍は乱射故に避け切れなかったであろうライフルの弾丸をレフト・フューラーを短い間隔で撃ち、弾丸同士の跳弾によってさらに弾幕を掻い潜る。

 

「まずは小手調べ!」

 

 そして、手身近にいた自律式擬形体の頭部に向けてライト・フューラーの引き金を引く。

 

ドゴンッ!!

 

 宝瓶の砲銃のマグナムtype…の威力とまではいかないが、それなりの轟音を響かせて自律式擬形体の頭部に直撃する。

 

「っと、マジか…!」

 

 忍が一言漏らす。直撃したはいいが、流石はエルネスタ謹製の自律式擬形体。ライト・フューラーの一発じゃ仕留めきれなかったらしい。ただ、ダメージは蓄積しているのか、動きがぎこちなくなっているが…。

 

「(流石はエル。こりゃ闇討ちされた星導館の連中も不憫なもんだ)」

 

 一瞬で思考を終えると、双銃を即座に両腿のガンホルスターに収め、今度は素早く日本刀を抜いて二刀流の構えを取っていた。

 

「(が、この強度だと…黒狼の方がいいか)」

 

 忍は向かってきた内の自律式擬形体の持っているブレード型煌式武装の刃を右手で持った銀狼を用いて受け流しながらその自律式擬形体の背後に回ると、左手に持った黒狼で右肩から腰の左側に向けて振るい、力任せに叩き斬る。

 

「おい、エル。こいつら、思ったより硬ぇぞ!」

 

『にゃはは♪ そこは自分の煌式武装を信じて戦いなよ。それにやるって言ったのはしぃちゃんでしょ~?』

 

「ちっ…それもそうか」

 

 そんな掛け合いの合間も群がってくる自律式擬形体群。

 

「仕方ねぇな。筆頭殿はお気に召さないだろうが、使わせてもらうぜ?」

 

 そう言いながら忍は二振りの日本刀を逆手に持ち直して体勢をさらに低くしながら右手の親指で白銀の発動体のトリガーを2回押し込む。

 

「エクシードドライブ! 『瞬狼斬(しゅんろうざん)』!」

 

 そんな叫びと共に二振りの日本刀の刀身に万応素が収束し、さらに忍が消えたように姿を消す。

 

流星闘技(メテオアーツ)!?」

 

 明香音がその様子を流星闘技だと思ったようだが…

 

『いや、これは…確かに過励万応現象に近いが、何かが違うぞ?』

 

 計測していたカミラも、一瞬流星闘技かと思ったらしいが、妙な引っ掛かりを覚えていた。

 

『いわゆる一つの必殺技だね!』

 

 エルネスタは面白そうに笑っていたが…。

 

ガラガラガラ!!

 

 再び忍が現すのと同時に何体かの自律式擬形体が切断面を残して崩れ落ちていた。

 

「ふぅ…」

 

 一息つきながら忍は銀狼と黒狼を鞘に収める。

 

『紅神。今のは何だ? 過励万応現象に似ていたが…』

 

「エルも言ってましたが、一種の必殺技のようなものでして…確かに流星闘技を参考にしてますよ? ただ、俺のはそれぞれに使ってるマナダイト内に蓄積されてた万応素を解放し、それを用いた一撃を繰り出すってな感じなんで。厳密には流星闘技とは言えない、紛いモノですよ。ま、その分、星辰力を別の用途に回せるわけですが…これでも頑張ってプログラムを組んだんですよ? いや~、この機能が一番大変だったなぁ~」

 

 などと宣う忍であるが、これはこれで確かに脅威ではあるが、いくつか問題点も見受けられた。

 

 まず、マナダイトに蓄積された分の万応素を解放するということは、次にまたマナダイトに溜まるまで一定時間、エクシードドライブとやらが使えなくなるということ。

 次に本物の流星闘技とぶつかった場合、恐らくはエクシードドライブよりも流星闘技の方に軍配が上がるだろうということ。忍本人も言ったように紛いモノであるエクシードドライブと、使用者に合わせて調整が施された煌式武装による流星闘技。どちらの質が上であるかで言えば、恐らくは後者。そのため、流星闘技が繰り出された場合の対抗手段としてはあまり有効ではなさそうという点。

 最後にエクシードドライブは手間の割に効率があまりよろしくないことか。通常のマナダイトに蓄積される万応素の量を考えると、せいぜい一発が限度。再チャージにはマナダイトの質にもよるが、それなりの時間を要すること。

 さらに言うなら、相手が純星煌式武装の場合、高確率で力負けしそうであることか。

 

 それでも利点を挙げるとするなら…その手軽さだろうか?

 忍本人が言っていたように星辰力を介さないで、煌式武装内のマナダイトのみで発動するエクシードドライブは短時間で強力な一撃を放つことが出来る。見た限り、発動自体も早く、流星闘技のような熟練の必要もなさそうだ。そのため、星辰力を別用途に割ける利点は少なからず、戦いに影響を与えるだろう。

 

『まったく…お前のそういう発想には驚かされるが、わたし個人としてはあまり認めたくはないな』

 

 その言葉は獅子派筆頭としてのニュアンスも含まれていそうだった。

 

「だから、あんまり開示はしたくなかったんすよね。ま、個人で使う分にはいいっしょ?」

 

『そう言われると、致し方ない部分もあるがな…』

 

 忍の意見に空間ウィンドウ越しに肩を竦めるカミラだった。

 

『ねぇ~。そろそろ続きしない?』

 

 一応、空気を読んで自律式擬形体の動きを止めていたエルネスタから催促されてしまう。

 

『それにぃ、しぃちゃんの七星狼牙。まだ、使ってるの真狼だけでしょ? まだ6つもあるんだし、サクサク行こうよ~』

 

 そう。エルネスタの言う通り、忍にはまだ6つもの煌式武装の発動体を持っている。それら全ての慣らしを終えるまで、恐らくエルネスタが逃がさないだろう。

 せっかく忍が普段見せてくれない手札を見せてくれるのだ。それを見ずして終わるなど、"どうして出来ようか?"と言わんばかりにエルネスタの表情は嬉々としていた。

 

「はいはい。じゃあ、真狼のマナダイトのチャージもあるし、次に行きますかね」

 

 そんなエルネスタの思惑を見通しつつも、忍もまた次の発動体に手を伸ばすのだった。

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