学戦都市アスタリスク~星の担い手達~   作:伊達 翼

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第十一話『七星の輝き(後編)』

~研究院地下ブロック・特別アリーナ~

 

 現在、この場では忍のカスタム煌式武装である『七星狼牙』の性能テストを、エルネスタが用意した自律式擬形体群を相手取る形で行っていた。

 

 白銀の発動体こと『真狼』の性能テストは十分かと判断した忍は真狼の専用武装外殻を解除すべく発動体に挿入していた端末を抜くと共に専用武装外殻も元の場所(煌式武装内に備えた格納用ストレージ)へと戻り、端末もベルト表面へと隠すように入れ直す。

 

 そうして忍が次に左手で取り出したのは…瑠璃色の発動体だった。

 

「こいつの名は『雪花』。天月の参考にもなるかもしれない煌式武装だぜ?」

 

「え?」

 

 忍の上着を丁寧に畳んで持ちながら離れていた明香音がいきなり話を振られてポカンとする。

 

「ま、見てなって」

 

 さらに雪花の収めていたベルト表面から雪結晶の描かれた端末を右手で取り出し、それを発動体に挿入するとトリガーを引く。

 

キィンッ

 

 専用武装外殻である大型の弓が出現し、発動体がそのまま握り部分となるように接続して一体化する。

 

「弓!? 紅神くんも弓使うの!?」

 

「ま、そういうこった」

 

 驚く明香音をよそに忍は万応素で構築された弦を引っ張って矢を形成すると…

 

「ただ、ちょっと矢に工夫してるんだな、これが」

 

 そう呟きながら弓を上に向け…

 

「矢種選択。拡散」

 

 音声入力するかのように言葉を紡ぐと、そのまま矢を射る。

 

ヒュッ!

バッ!

ズドドドドド!!

 

 頭上に放たれた矢が拡散し、豪雨のように自律式擬形体へと降り注ぐ。

 

『ふむ、音声入力による矢の変質か?』

 

『というよりも決まったパターンを音声入力って形で出力してるだけじゃない?』

 

 計測組がそのように話し合っていると…

 

「ん~、エルが近いかな。ある程度、パターンを用意しておくことで万応素の矢を射った後にそのパターンに対応させてるだけってのが実情だな」

 

 忍から答えが返ってくる。

 

「ま、その分、対応力が高いと思ってくれればいい。ウルム使ってないんだから、こういう工夫が大事なのよ」

 

 そう言って忍は移動しながら次々と矢を射る。その度に砲弾、貫通、螺旋、散弾などいくつかのパターンを披露していた。ただ、その中でも貫通と螺旋くらいが自律式擬形体を粉砕したが、残りは足止めか、装甲の表面を傷つけたくらいだった。

 

「やっぱ、エクシードドライブ使わないとこんなもんか…」

 

『そうだな。なかなか工夫しているじゃないか』

 

『ま、気を取り直して次に行ってみよう~』

 

 ある程度の予測はしていたのか、計測した数値も平均的なものが多かったらしく、発動体を専用武装外殻を外し、端末を回収するとホルスターへと戻す。

 

 次に取り出したのは真紅の発動体。

 

「『夜王』。こいつは体術メインの時に使うやつでな」

 

 そう言って取り出した端末には円のようにも見えるが、イメージは満月が描かれているらしい。それを発動体に挿入し、トリガーを引くと現れたのは…。

 

『篭手と具足?』

 

『でも、なんで鎖で巻かれてんの?』

 

 そう、展開した専用武装外殻は篭手と具足だったのだが、何故か三本の鎖でそれぞれの手足が個別に拘束されていた。

 

「こいつは一種のリミッターでな。この鎖を外していく毎に万応素が高まってく性質を持ってんだよ」

 

 そう言いながらも背後に迫ってきた自律式擬形体を振り向き様に右拳を振り抜いて胴体を貫く。

 

「ま、それでも格闘戦には向いてるからよ。星辰力をコントロールすれば、こんなことだって出来る」

 

 手早く右腕を引き抜くと、次はその場で体勢を低くして後ろ向きに回転しながら足払いをして近寄ってきた自律式擬形体を転倒させ、さらに回転する力を利用し、飛び回し蹴りを繰り出して別の自律式擬形体の頭部を砕く。

 

「あと、リミッターは三段階で全部解放すると、表面の装甲が開く仕組みもあるんだが…まぁ、今回はいいだろ」

 

 そんな補足を言いつつ、バク宙とバク転を駆使して一旦距離を稼ぐと、夜王の装備を解除してホルスターに戻す。

 

「お次は…ちょっとド派手に行こうかね?」

 

 そう言って取り出したのは黄金の発動体。

 

「『龍騎』」

 

 取り出した端末の表面には東洋龍が描かれており、それを発動体に挿入してトリガーを引く。

 

『わっ、なになに?』

 

『浮遊ユニット?』

 

 計測組が困惑の声を上げる。忍の両肩付近に浮遊する一対二本の細長い円柱をベースに上部に楕円形の小型盾、その中心に宝石が備わった槍状ユニットが現れていたからだ。

 

「こいつは腕の動きに反応するようにしてるんだ」

 

 そう言って軽く右腕を薙ぐと、右側のユニットも同じような軌道で振るわれる。

 

「そして、雪花と同じく音声入力式だ。ブレード!」

 

 忍の言葉に反応し、右側のユニット先端から万応素で構築されたブレード状の刀身が形成される。

 

「薙ぎ払う!」

 

 そう言うと、右腕を薙いで自律式擬形体を一気に数体程、文字通り薙ぎ払った。どうも、これは広範囲での攻撃に適した装備とも言える。

 

「まだまだ、これだけじゃないぜ? 伸びろ、ウィップ!」

 

ヒュッ!

ガシッ!

 

 右側のユニット上部に当たる小型盾から万応素で構成された触手が伸び、複数の自律式擬形体を拘束する。

 

「射抜け、シューター!」

 

キィンッ!

 

 今度は左側のユニット上部に当たる小型盾から万応素のスフィアが複数展開され、拘束した自律式擬形体に向けて飛び掛かる。

 

「最後の一押し! ブラスト!」

 

ドゴォッ!!

 

 左腕で狙いをつけて左側のユニット先端から砲撃が放たれ、ライフルを構えていた遠方の自律式擬形体を撃ち抜く。

 

『随分と制圧力が高いようだな』

 

『確かに派手だねぇ~』

 

 計測組がもはや呆れるレベルで話し合っていると…

 

「ちなみに共通で防御機能もある」

 

 言うが早いか、左腕を盾にするように動かすとユニットも動き、小型盾からシールドが展開される。

 

ズガガガガガ!!

 

 放たれていたライフルの弾丸を見事防いでみせた。

 

「さて、お次はっと」

 

 龍騎の専用武装外殻を解除してホルスターに戻すと、そのまま今度は漆黒の発動体を取り出す。

 

「『黒鎖』」

 

 漆黒の発動体に対応する端末表面には虎が描かれており、それを挿入してからトリガーを引く。

 

『突撃槍?』

 

『でも、なんか先っちょが曲がってない?』

 

 計測組の言う通り、出現した専用武装外殻は刀身全体が鳥の嘴のような形状のため、例えるなら切っ先が下に向かって少し曲がった突撃槍のような形状であり、持ち手となる柄にも半円柱型の護拳が備わっている一対二刀の巨大な曲刀だった。

 

「こいつは小回りが利かないが、かなり頑丈な造りにしてるんだよ。その分、破壊力は…!」

 

 近寄ってきた自律式擬形体へと右の曲刀で突きを放ち、その胴体に風穴を開けてみせる。

 

「これ、この通り。ま、硬度に特化させたから他に使い方というと…」

 

バキンッ!

 

 曲刀の刀身部と柄の部分が外れると、そこに万応素で構築された鎖が形成されていき…

 

「こんな風に振り回したりも出来るから中距離にも対応可能だ」

 

 一対の曲刀を巧みに振り回して自律式擬形体群を薙ぎ払っていく。

 

「ま、これくらいしか使い道がないようにも見えるが…防御や一点突破には使えるからな」

 

 そう言いながら忍は黒鎖の装備を解除し、ホルスターに戻す。

 

「次はちょいと特殊な装備でな。連続稼働時間がどのくらいか調べたいんだよ」

 

 そう言って忍が次に取り出したのは、紅蓮の発動体だ。

 

『連続稼働時間だと?』

 

「燃費が悪いとは予想してるんだが…それがどのくらいかを確かめたいんですわ」

 

 カミラの疑問に忍はそう答えながら、表面に不死鳥の絵が描かれた端末を挿入し、トリガーを引いて専用武装外殻を呼び出す。

 

『なに、それ?』

 

 エルネスタが首を傾げ尋ねる。紅蓮の発動体から呼び出された専用武装外殻は、両肩後部から背面上部を覆う外殻ユニットと、額に備わったサークレット装備だったのだ。

 

「こいつの名は『焔翼』。名前の通り…」

 

 忍は呟くと…

 

バサァ!!

 

 背部ユニットから3対6枚の紅蓮の翼が出現していた。

 

『おぉ~!』

 

『まさか、飛翔ユニットか!』

 

 エルネスタの感嘆の声と、カミラの衝撃を受けたような声に…

 

「ご名答~。試行錯誤の末、なんとか形にしてやったぜ」

 

 忍はそう答える。

 

「じゃあ、連続稼働時間の計測を頼むわ」

 

 計測組に一言告げてから、忍がその場で跳躍すると…

 

「おっとっと…」

 

 姿勢制御が難しいのか、多少身体がブレるが、それでも飛んでいる(・・・・・)

 

『じゃあ、しぃちゃん。避けてみよっか?』

 

 ちょっと悪い顔をしながらエルネスタが自律式擬形体を操り、ライフルを頭上の忍目掛けて乱射し始める。

 

「?!」

 

 忍は避ける前に6枚もの翼の内、上部と下部の翼を前方に閉じるような形の防御態勢に移り、中部の翼で空中に留まって姿勢制御を行っていた。

 

「この野郎…! なら…反撃だ!」

 

 その場から一旦後ろに離れると、防御態勢を解除して翼を大きく広げ…

 

「撃ち放て!」

 

 紅蓮の翼から万応素の羽が抜け落ち、それがさながら雨のように自律式擬形体へと降り注ぐ。

 

シュタタタタタタ!!

 

「からの~…爆破!」

 

ボムッ!!

 

 自律式擬形体へと突き刺さった万応素の羽が次々に爆破していく。

 

『攻防一体にも出来るのか!?』

 

「まぁ、その分…維持費の万応素が枯渇しやすいと推測されますが…」

 

 カミラが驚く中、忍が冷静に伝えている。事実、紅蓮の翼が半透明になってきたような気がしないでもない…。

 

「墜ちる前に着地っと…」

 

 着地すると同時に紅蓮の翼が羽状となって周囲に散る。無駄に演出が凝っている…。

 

「ん~…やっぱ、マナダイトの万応素保有量に依存しちまうな…短期決戦が望ましいな」

 

 1人でうんうんと頷きながら、装備を解除して紅蓮の発動体をホルスターに戻す。

 

「さてと…次が最後だ」

 

 そう言って最後に取り出したのが、純白の発動体。

 

「こいつは『武鬼』」

 

 『鬼』という文字が表面に刻まれた端末を挿入し、トリガーを引いて出現する専用武装外殻は…

 

ガッキン…!

 

 真円形の盾の左右に両刃の大剣型の刀身が備わった特殊な盾剣だった。

 

「よっこいせっと」

 

 その盾剣の盾の裏に発動体を接続させると、頭上でクルクルと回す。

 

「こいつには実体剣も付いてるが、切れ味なんて二の次にしてある。理由は単純…こいつは防御兵装だから…」

 

ガキンッ!!

 

 大型の斧型煌式武装を上段から振り下ろしてきた自律式擬形体の攻撃を易々と受け止め切った。

 

「(ニィッ)」

 

ドゴンッ!!

 

 重たい音を立て、その自律式擬形体が吹き飛ぶ。忍は単に盾を回して刀身の部分で吹き飛ばしただけ、その防御力も極まれば攻撃へと転じれる。そう言わんがばかりの対応だった。

 

「どうよ? 防御だけだと侮ってると、痛い目見るかもよ?」

 

 そう言って残りの自律式擬形体を片付けにかかる忍だった。

 

『真狼、雪花、夜王、龍騎、黒鎖、焔翼、武鬼、か…』

 

『ん~、それぞれ全距離対応型、遠距離型、近距離型、制圧型、一点突破型、移動補助型、防御型、ってところかにゃ~? しぃちゃんも隙が無い兵装を揃えてきたねぇ~。ダミー機能使えば、基本は変則七刀流使いだって思われてもおかしくないしねぇ~』

 

『あぁ…そうだな…』

 

 エルネスタの簡単な区別の仕方に、カミラは困ったような声を漏らす。

 

『どったの? カミラ』

 

『いや…紅神は、本当に実践クラスなのか…今更ながら確認したくなっただけだ。ここまでの煌式武装をカスタマイズしたとは言え、組み上げるとは…研究クラスでもカスタマイズを行う者はいるが…ここまでのモノと、たった1人の、しかも実践クラスが組むなど…わたしとしては、悪い夢でも見ているような感じだよ』

 

 カミラがそのように呟いていると…

 

『にしし。そりゃあ、あたしの幼馴染みでもあるしぃちゃんが普通(・・)な訳ないじゃん?』

 

 エルネスタが嬉しそうにそう言ってのけた。

 

『やれやれ…』

 

 その一言にさらに肩を竦めるカミラ。

 

 

 

 そして、しばらくして自律式擬形体群との戦闘を終えた忍は明香音の元へと歩いてくる。

 

「いやぁ~、疲れた疲れた。今日はもう帰ってシャワー浴びて寝てぇ~」

 

 などと言っていたが…

 

「……………………」

 

 明香音は見るからに呆れたような疲れたような…とにかく複雑な表情だった。

 

「どした? 天月」

 

「いや、これだけの実力があるなら…ペアは私じゃなくてもよかったんじゃ、って思って…」

 

「ん~、そうか?」

 

 明香音の疑問に自律式擬形体の残骸の山を築き上げた男は首を捻る。

 

「俺は天月と組みたかった。それだけでよくね?」

 

「でも…絶対に私が足を引っ張ると思う…」

 

「誰でも最初は失敗するもんだ。それを恐れてちゃ成長は出来んよ。第一、ペア組んで日も浅いんだ。お互いのことはもっとこれから知ればいいんだよ」

 

「うん…」

 

「上着、持っててくれてサンキューな?」

 

 そう言って明香音の腕から上着を取ると、それをサッと羽織る。

 

「さて、これでお互いの手札は見せた訳だからな。あとはひたすらコンビネーションの特訓だな」

 

「うぅ…合わせられるかな?」

 

「そのための訓練だろ?」

 

「そうでした…」

 

 元気のない明香音の肩をポンッと叩きながら忍がニカッと笑う。

 

「安心しろ。最悪、俺が合わせてやるからさ」

 

「なに、その上から目線…!?」

 

 こうして、互いの性能テストは終わり、次の段階…コンビネーションの訓練となる。しかし、この特別アリーナがいつでも使える訳でもなく、しばらくは外で変則七刀流と純星煌式武装2機とのコンビネーション訓練になりそうだったのだ。

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