ジャンプラで10巻まで無料のときに閲覧して、見事にハマって者です……
「うーん、地球まだかなぁ……」
現在地球目掛けて宇宙空間を漂流している俺。まあこんな状況で平然としているから気付いて貰えるだろうが、俺は人間を辞めたらしい。
まさか、朝目覚めたらこんな蒼い蜘蛛みたいな身体で宇宙にいるなんて誰が思う?
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「ヤベェ、学校に……ん?」
真っ白な大地に俺は一匹だけ立つ。学校に行くことよりも黒々と広がる宇宙には星々が浮かぶ美しく、無感情な光景に目を離すことは出来なかった。
「何処だよ……ここ」
まあ、地球ではないことくらいわかる。惑星や衛星、隕石なんかが無数に存在する小惑星帯で、もしかしたら俺は転生したのかあ……とぼんやり考えていました。
なんでここにいるのか、生きているのか、死んでいるのか。俺は眠気を感じてあくびをしたくなった。でも、ここには吸い込む空気が塵ほども存在していなかった。
空気がないことに気づいた俺は、ようやく自分がどうなっているのだろうと下を向き、目玉が飛び出るかと思った。俺にはこの身体に非常に見覚えがあるのだ。
「これ……ORTだよな……」
TYPEーMOONというとある同人サークルによって生み出された世界観に登場する、最強の生物。この世の物質の中で最も柔らかく、かつ硬い上に生息地であるだろう水星の過酷な温度差に耐えられてしかも鋭い外皮を持ち、侵食固有結界という自分が存在するだけで世界そのものを変化させてしまう能力、死という概念が存在しないので物理的に破壊して止めるしかないなどのこれでもかと詰め込まれたチートっぷり。
『早くしてくれ……痛い、痛いよ……』
遠く、遙か彼方からメッセージが届いてくる。
「ああ、これが」
星が送ってきた言葉。使命感、使命感だ。猛烈な使命感が湧いてきた。
「これが、俺の使命なのだ」「やらねばならぬ」
暴君に怒るメロスのように、送られてきたメッセージの方向を向く。
俺は感覚で、体からジェット噴射を勢い良く放出した。星の重力を振り切って宇宙の彼方へすっ飛んだ。
「おおおおおおおおおおーーー」
ジェットコースターのような楽しい感覚。実際は音速を超えているだろうが、無駄に頑丈な身体に心配などカケラも無い。たまにデブリに衝突しようとしても、小刻みな噴射で小惑星を縫うように加速していく。
コンコルドを鼻で笑えるくらい速い。さっき通過したのは巨大で、真っ赤な恒星。太陽が豆粒に思えるほどの大きさだが、俺はプロミネンスすら軽々と余裕の表情でくぐり抜けた。
「ヒャッホー!!! サイコーっても誰も聞いていないけどね」
スピードがキマッた、最高にハイなコンディションでは、ついついこのORTも忘れてしまうことの一つや二つはあるものだ。恐らく、これを前世の記憶というのなら、俺はうっかり者と呼ばれていた記憶が魂レベルで刻まれていた。
「あ、やべ、通り過ぎちゃった……」
何故かルートはきっちりと決めてあり、間違うと頭の中でブーブーとブザーが鳴るのだ。これがかなりやかましく、ずっと無視していると堪えられないくらいに爆音へと変化する、悪質きまわりない代物だ。この事実を知らなかった時、死ぬほど喧しかった。まあ、俺は死なないんだけどね、だってORTだから。
小粋な大蜘蛛ジョーク。もちろん披露する相手なんていないけどね。
「よっと」
既定のルートに戻って、再び超加速。
「ヒャッハー!!! 速いいいいいぃぃぃィィィ!!!!」
声が後方へと置いていかれる。クールで、最高の気分だ。
ーー百年ほど経過した。
「ここまま飛んでいけばいいのか?」
ORTの役割はイマイチはっきりしていない。地球にいる生命を全消滅させる事が使命らしいと見た事があるが、俺にはそんな気は無い。もう百年ほど飛び続けていて、そろそろ目新しい光景が欲しかった。
そんなわがままが叶ったのか分からない。それから30年ほど経過したときにようやく変化が見られた。
「お、もうだけど……アレ地球だ」
複眼で広い範囲が遠くまで見える。メッセージは多分ここ出だな。
青々とした惑星だけど、いつか滅ぼさないといけないのかなあ……そんな不安を抱えつつ、地球に降下していった。大気と俺が摩擦で何百度も発生させている。
「ぬるいな、四十度のお湯みたい」
どうでもいいことを考えていて、俺は行きたかった日本へのルートを確実に間違えてしまった。
「あ、やべ」
吸い込まれる様に南米大陸に吸い込まれていく俺。宇宙で行っていたジェット噴射をしようとすると『頼む、マジ、マジでやめて、いやフリじゃなくてガチなんよ止めろおおおお!!!!』魂からの叫びが聞こえてきた。
「あー、うん。やめます」
大人しく、渋々従うことにした。
「よし、着いた」
慎重に慎重を重ねたのだ。多少の木々をなぎ倒して我、地上に立つ。
「アマゾン? いや、違うかなぁ?」
気温はまあまああった。水も多く、酸素が美味しい環境だ。キョロキョロしていると、思わぬものに襲われる。
「くそ……眠い……」
宇宙空間ではずっと起きていたからなんだか眠たくなってきた。俺は睡魔に襲われた。加速度的に増すばかりでとても我慢出来そうに無い。
「zzz……」
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「なんだ……これは」
南米に住む吸血鬼たちはずっと前に
「これ、生命反応を示しているぞ……生命なのか!!」
「何だと!?」
「うん。ただ、休眠状態のようだ」
事実、彼?はぐっすりと眠っていて意識は深い闇の中である。最も彼らがそれを知ることは永遠に無い。
「是非とも研究対象にしたい。早速運ぼうではないか!!」
眷属たちの力も借りて、高さ約30メートルの蒼い生きものを輸送しようとした。
ピシリ--
「ん?」
替わっていく音がする。恐ろしい力が迫っていく。恐怖がやって来る。
「ま、不味いぞ! 退避、退避だ!!!」
あの生きものから同心円状に結晶が広がっていく、いやーー世界を蝕んでいく。
「い、嫌だ! 水晶が……」
足が水晶に替り、心臓が代わり、脳髄が変わった。
「こんな時じゃなけりゃ、あの彫像を持って帰りてえんだがな!」
あちこちに人のカタチをしていた結晶の柱が乱立していく。芸術家が手がけたような美術的価値さえありそうな結晶。脳幹が見る悪夢からよじ登ってきた生きものはあいも変わらず居眠りをしている。
「ふう……もうゴメンだね」
とある吸血鬼は帰還後の報告でそう言った。あれから何度か隊を編成して遠征を行ったが、全て壊滅的な結果として記録された。
だが、全く無駄な訳では無かった。
その生きものは我々と同じく吸血を行うこと。ある一定の距離に近づけばあらゆる物体は結晶化する可能性があること。異常な硬度を誇るが、同時に異常な柔らかさを持つこと。
「名前が無きゃ不便」
ある吸血鬼の提唱により、ギリシャのとある哲学者の名前から「アリストテレス」と名付けられた生きもの。この地球で最も孤独な生きものは、その孤独を厭うから眠るといつしか言われるようになり、いつしか「眠りの獣」と呼ばれるようにもなったそうだ。
犠牲によって大切な教訓を知る事が出来た。
「あの蒼い生きものに手を出すな」
悲しい事に、それを忘れてしまった者も時折いたようで、人型の結晶は時たま増えていくみたいだった。
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(誰ぇ……? なんか取り囲んでるんだが……)
落下してから動く気もせずにずっとぼんやりしていた。能力を使うとそこそこ疲れる。ホンモノならそんな事もないのだろうが、中身が違う上、どうやら諸々の仕組みが違うらしかった。
ここは型月世界であるだろうから、俺がORTもどきである以上第5位との遭遇イベントに当たるのかも。ホンモノは数秒で瞬殺したらしいけど……何かを殺すのって、ねえ? 嫌じゃない。
一応、前世は日本生まれ日本育ちの一般男子だったんだぞ。見るからに人形の生物を「じゃ、殺すか」みたいに殺せる訳ないでしょ。ORTボデーなら出来るかも知れないけど、一線越えは不味い。
そう思っていたが、彼らは俺の身体を固定して何処かに持っていこうとしている。
(ちょ、待てよ!!)
つい、力んでしまった。
みるみる内に水晶の渓谷が俺を中心に生み出されていく。
(あーあ、やっちまったなー)
何人か水晶塊になった。人殺しとは違うと認識しているが、こう、あっさりとした気分に自分でも驚いている。
「寝よ」
どうでもいい。人間を辞めて幾星霜、感覚だってかなり薄れてきたのだ。むしろ、
「よっこいしょ……zzz……」
もう少し、居眠りをする事にした。
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「んあ!?」
何かの大きな意思から『助けろ』『働け』と突然のお呼び出しが掛かった。星のメッセージとは違うソレは正直、肌がピリピリとする。以前の地球とは全く異なるのは確かで、大気に変なのがプカプカ浮いている。
「ウイルス……なのか」
情報もおまけして送られてくる。どうやら"人間"の大人達がバタバタ死んで、吸血鬼が台頭してきているそうだ。大きな意思は『人間を守れ』と『働け』を延々耳からスピーカーのように流してくる。
「日本で何か起きるのかあ……」
意思は色々と(一方的に)語りかけてくるが、『日本へ行け』がわりと多い。どうせ魔術師とかがヤベー儀式をやらかしたんだろう。
型月ならありえる。
「型月ならありえる」というおふざけみたいな言葉だが、これは現実であるし自分がORTの身体なのだから認めざるを得ない。選択肢をミスって死ぬことがお馴染みの主人公ズ。どの世界線か知らないが、大体ロクな事が起きてない。
そもそも話の根幹を成す魔術師が人でなしだしなぁ……
ま、大丈夫……だろう、だって俺ORTだし(クウガ感)
久々に前世の故郷に行ってみたい。そう思っていると、身体が変形してUFO、つまり未確認飛行物体と似た形をとった。
「よし、ゆっくり前進だ!」
ORTボデーを慎重に操作して、地球の反対側まで、レッツゴーだ。
「うわ、海汚くない?」
情報が送られてくる。なにやら先ほどのピリピリで汚染されたんだと。漁業は壊滅、寿司や焼き魚はもう無理そうです。
ひとりでおふざけしながら飛んでいると、気持ち悪い生物なのか怪しい奴がいる。それも山ほど。
「それ」
飛んできて取りつこうとする奴は、一部だけ腕をぬるりと4本くらい出し、パチン、パチンと撃ち落としていく。
ムチが叩きつけられると、大概は潰れて原型を留めなくなるか、とんでもないスピードで彼方に飛ばされて行った。
「あ、血を吸い忘れた」
俺にとって、血は美味しい嗜好品。モチベーションにも関わってくるのでかなり大切なのだ。俺はストローのような小さな針を出して、慎重に慎重に吸う。ミスれば相手の身体は無残でとても血を吸う気を失わせる姿に変貌する。こういうのは雰囲気が大事。ぶち壊しにして飲むほど精神は削られていない。
捕まえて血を吸おうとしたのは"ヨハネの四騎士"と呼ばれるもの。後で知ったが、あまり血の通わないバケモノなのだと。こいつに構う必要は無かったが、知らない俺は必死に
終わりのセラフなのに、吸血鬼とヨハネの四騎士くらいしか出てない……
きっと、次回こそ!
今後の参考に
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暴れよう
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大人しくする
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引っ掻き回す
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全滅させる