よければ評価と感想をよろしくお願いします。
それではどうぞ。
「我、日本に到達す!!」
上空から確認したので、間違いなくここは東京だ。
「うおおお!!ってならんわ……」
ボロボロ過ぎてメガテン混じってない?とつい疑いそうになる。でも、今のところ悪魔らしいのは
「よっ、こ、いせ」
身体をグニャグニャさせて記憶内にある前世の自分の顔を再現していく。
「うわぁ、福笑いよりひでぇや……」
顔なんて弄り放題なので、イケメンな顔立ちにしようとしたが、勢い余ってパーツがめちゃくちゃになってしまった。顔だけカオスの変人では、怪しまれるどころの話ではない。大人しく記憶通りの顔立ちにしておいた。
「さて、人間は……あっちか?」
生物、というよりは特に霊長類の探査に向いているマイセンサー。カバー範囲はまだまだで東日本程度だが、人間の反応はまだら。一点には大量にいるけど、いない場所には黒子のようにポツンとだけある。イメージは日本列島の地図に墨汁をポタポタ落とした感じだ。
「徒歩なんて、久々だな」
蜘蛛足の歩行に慣れていたので二足は安定感が欠ける。二足歩行ってこんなにも難しかった?いやまあ、ずっとしてないのが原因なんだろうけどさ、さっきからケンケンパばっかりで移動しているのはなあ……
二時間もすれば昔の感覚を取り戻してきた。これで心配無用。ついついウキウキして、調子に乗った俺はスキップで周りの瓦礫を吹き飛ばして移動を開始した。
「お、人だ」
軍服のような頑丈そうで、カッコいいデザインの服をきた集団は変なやつらをヨハネの四騎士、そう呼んでいたので彼らに倣って俺もそう呼ぶことにした。
(うわー、誰かとコミュニケーションするの久々過ぎて忘れちゃったー!!!)
基本的には小心者で内弁慶のきらいがある彼?はマトモな会話が欠如し過ぎた弊害で、軍服たちの前に出たがらない。そのくせ、脳内では山のようにシミュレーションを行って友人となるのに成功(この場合、一般的には大失敗)させているのだからなんともマヌケな話である。
だが、腐ってもアルティミット・ワン。星の最強生物のカケラほどはある誇りを胸に、「ピンチで助ければ、仲間だと思ってもらえる」という甘ちゃん戦法でなんとかしようとしていた。本気を出せばなんとかなると思っているのが彼の良いところでもあり、悪いところでもあった。
「グッ、吸血鬼とかツイてないぜ……このやろっ……」
「人間、中々悪くないが……私がいたのが運の尽きでしたね」
人間と吸血鬼には当たり前だが、身体能力に天と地ほどの差が存在する。人間が吸血鬼を殴ってもポフ、という可愛らしい擬音さえつかないだろうが、人間が吸血鬼に殴られるとどうあがいても致命傷並みのダメージを負ってしまう。
では、吸血鬼に対抗する人間は絶滅しているんじゃないか?そう思うのが当然である。しかし、人間もまぁしぶといもので鬼呪装備という摩訶不思議な武装で対抗している最中なのだ。人間を超えた力を授ける装備を身に付ければ吸血鬼に殴られても、死ににくくなる。それと1番の特徴は吸血鬼を殺害可能になる点か。宿っている特殊能力は千差万別でユニークなものも多い。近距離、中距離、遠距離の三タイプに分かれているのだからなんとも親切な設計。お決まりのようにデメリットもある。
鬼の呪いと書いて鬼呪装備。実物の鬼が封印されているために、封じられた鬼が強ければ強いほど乗っ取られる可能性もあるのだと。最高ランクの黒鬼は今まで何人、何十人と喰われたという曰く付きの装備だそうだ。そんな装備類を使ってようやく土俵に立てるのが、今の世界。
もちろん、ORT君(仮名)が近日中に知る事は決してありません。
「うっ……刀がッ!」
連戦で消耗していた中で、もう握力は持ちそうに無かった。持ち慣れた相棒は手からするりと抜けて、地面に深く、突き刺さる。
「これで、無手だ。……私はね、ボクシングというものがずっとずっとやってみたかったんだよ」
「なにが、言いたい……」
吸血鬼の口角はますます上がっていく。
「特別だぜ。クリスマスに盆とお正月が来たって言うんだろ?君のお仲間、俺とボクシングもどきをしてくれるだけで逃してやるってんだ。これほどいい条件もない、なくない?」
「吸血鬼が……信じられない……」
「……おい、あまり調子に乗るなよ? 貴様ら人間とは違って私は必ず約束は違えん」
一際、変わり者の吸血鬼は目の前のリーダー格の男に怒気を滲ませる。
「やるか、やらないか」
「……やる」
「り……リーダー……止めろ、俺たちか……お前をにがす……」
「はいはい、下っ端くんは黙って逃げてくんさい」
どうにもならない事を悟った部下はリーダーの行動を無駄にしないためにも持てる全力で走りだした。それでも、やはり傷は深い。
「さて……闘おう、命の限り……」
逃走者が見えなくなってから、そう宣言した。
「ちょっと待ったー!!!!」
割り込みの際に使うお決まりのセリフを決めて、俺は人間態のまま飛び出した。
「なんだァ? テメェ……」
闘いに水を刺され、貴族らしい口調はすっかり忘れている吸血鬼。一方の軍服の男は突然の闖入者に淡い期待を寄せつつも、長年の戦闘経験から多分ダメそうなのは理解していた。
「申し訳ないが、割り込ませてもらうぜ!」
(うわー、やっちまったー)
飛び出したはいいが、あんまり考えていない。吸血鬼は凄まじき怒りを向けている。
「俺と、やるってんのか?人間……」
「まぁ、いいよ。どうせ俺が勝つし」
「威勢の良いガキは嫌いじゃねぇ。死ね」
吸血鬼は完璧かつこれ以上なく理想的なタイミングで不意打ちを仕掛けた。
ガシッ……!
「な……!」
蹴りを喰らわせた吸血鬼は驚きで目を見開いている。それは助けられた軍服の男もそうだった。
「な、なんて馬鹿力なんだ……」
吸血鬼の片手を潰れそうなくらいに掴んだまま、涼しい顔で重量のある肉体を持ち上げた。
「そーれ! えいッ」
冗談のような腕力で廃墟のビルを七つほど貫通させ、ようやく止まった。遠心力を加えて投げたために衝撃と合わせて気絶してしまった。身体の形を保てているのは、ORT君が手心を加えたことと、吸血鬼の異様な頑丈さの為だった。
「あ……あんたは……帝鬼軍の一員、なのか? 隊服すら着ていないが……」
「おっと、すまないすまない。忘れてたよ」
今、ここで違うと言ってもどうにもならない。どうせなら誤魔化してこっそりと付いていくことで、今の日本の文化とかを知りたいという思惑があった。あわよくば、前世で見忘れたアニメが出ていたらなんて淡い希望も雀の涙ほどは考えていた。
「はぁ……助かりました。早く帰還しましょう。危険ですし。それに階級はどれほどでしょうか?申し遅れましたが、月鬼ノ組所属、佐々木班班長の佐々木倉介です。さぞ名のある方とお見受けしますが、どちらにご所属でしょうか?」
「……すまないな、答えられない」
大体こんな世紀末な世界で、秩序を作っている集団なのだ。後ろ暗い事だってきっとある!という勝手な予想だが、事実として日本帝鬼軍は真っ黒であり、佐々木班長もその事を良く知っていたので勝手に「柊家のなんかヤバイ部署のだな」と勘違いをして追及を逃れた。代わりに少々、佐々木の態度はよそよそしくなってしまったが。
「あ、そうだ。先に行っていてくれ。用事がある」
「そ、そうですか……」
拠点に近づき、人の感覚も増えて来たのでそろそろドロンしたかった。
「ん?佐々木、隣のは……?」
「一瀬中佐!! お疲れ様です!」
多少の強さはわかるマイレーダーは周囲の者よりも段違いの強さを彼?が持っていると察知した。だが、どういう訳かレーダーの点が一つになったり、二つになったりと行ったり来たりしている。しかも、やや吸血鬼臭い。
「貴様……何だ?」
「一瀬中佐……?」
刀を抜き、俺の目の前に切っ先を突きつけて来た。
「……例のだよ。内緒の」
「ああ、柊優一郎のか」
勝手に理解したらしい。俺はとてもラッキーだと思った。
「そうだ」
無意味な沈黙が流れた。一瀬という男が、刀から抜刀し、俺の首を斬ろうとした。
「ちゅ、中佐!?」
佐々木の(一応)恩人で、しかも柊家中枢の関係者に勝手に攻撃すれば、仲の悪い一瀬家や月鬼ノ組の存続すら不味くなるのでは?と佐々木の心臓は大暴れした。
「あ、あぶなぁ……」
「言動の割には平気そうだな」
益々目つきは鋭くなるばかり。どこで間違えたんだろうなぁ……?
「あの……敵対する気は無いし、霊長類がどうなってるかだけを知りたいんで……」
「霊長類だと?」
人間ではなく、霊長という奇妙な言い回しに疑問を覚えた。だが、中佐としての思考に切り替えて、交渉に臨んだ。
「そういえば、敵対しないと言ったな?」
「ああ」
「なら、ここから去ってくれ。佐々木を助けてくれたことには礼を言おう。だが、お前のような突然のイレギュラーを受け入れらない程、この世界は寛容を失った。」
「そしてどの勢力にも属さないで欲しい。恐らく、お前は相当の強さだ。人間か吸血鬼に加われば勢力均衡が変わるだろう。それだけは今は避けたい。了承できるか?」
「いいだろう。承った」
既に崩壊している世界だが、星からのメッセージがまだ来ない。それまでは取り敢えずある程度の知的生命体がいる地球に居たかったし、一瀬グレンと呼ばれていた目の前の男からは、実に面倒くさそうな香りがするので関わりたくなかった。
「ではな。暇なら遊びに来るといい、何処にいるか俺自身も知らないが」
「そうかい、二度と会うことの無いのを期待するよ」
俺はあてもなく徒歩でふらふらと歩き出した。
_______________________________________
ーー京都、サンギィネム
「な、何だと……」
「嘘ではない。アリストテレスが起動して、日本に接近して来たそうだ」
日本を治める第三位、クルル・ツェペシは最悪の気分だった。
アリストテレスーーどうしようも無い絶望
いつからいるのか分からない、一応生物らしいがそれ以外に吸血することくらいしか判明していないモノ。当時の第五位始祖が数秒で死んだという恐ろしい怪物。
触れてはいけない禁忌、と呼ばれている不思議な生き物は、南米大陸でここ何千年かは休眠状態に入っていると聞かされていた。そんな禁忌がわざわざ日本にやってくる理由が分からない。
「はぁ……最悪だ」
溜息をついた彼女は、ぐいっと濃厚な血液を呷った。
____________________________________
「さっきはああ言ったけど、入るのは容易いんだよねッと」
身体をセンサー類に引っかからないよう、電子的、魔術的、視覚的にもあらゆる面からステルスを行い、壁を乗り越えてこっそりと渋谷の町に入り込んだ。
「あんまり変わらないな」
大人が殆ど全滅したこの世界。とは言うものの、人間の手で守られている街は殆ど変わってない。
まあ、出歩く人間が少ないのは確かだった。
ふらり、と学校に立ち寄ってみた。こんなたちの悪い悪夢みたいな世界でも、人間の活動は続いているのを見せられるとなんだか不思議な気分にさせられた。
「おい、アンタ!! 見ない顔だけど、転入生?」
不躾な少年の声で呼び止められた。
「当たらずとも、遠からず。君は?」
見たところ、ここの制服を着ていた。知らない奴に話しかけるとは中々に度胸が座っている。
「百夜優一郎、よろしく! それで君は?」
「名前、なまえかぁ……」
そういえば、すっかり失念していた。前世の名前なんてほぼ忘れているし……
「そうだな……ヤン、ヤン・オールトでいいか?」
とある天文学者の名前を使う。ただ、今の俺はバリバリ日本人顔で、疑われそうだなと後で気づいた。幸い、彼は気づかなかったから良しとする。
「よろしく、ヤン!」
朗らかな人好きする笑顔を浮かべた。
「えっと、優一郎。優一郎か。よろしくな」
ジリリリリリリ!!!
「……いいのか?」
始業のベルの音じゃないか?あれ。
「あ……ヤベ」
そして、見事に俺の予想は当たり、優一郎は冷や汗を垂らし、みるみる顔が青く染まっていく。
「俺はいろいろあるからさ、先に行ったら?」
本当はないが、そう言うことにした方がなにかと都合が良かった。
「あ、ああ! それじゃあ、また今度ッ」
彼が校舎内に消えるのは、まさに一瞬だった。
「嘘だろ? あんな少年が?」
ORTになってから動じることはないだろうと思っていたこの頃。突然のメッセージがやってきて、「彼は……危険だ」と一際大きな警告を発しているのには驚かされた。
「運命的だねぇ」
一陣の風邪が吹くと、つぶやきと共に彼の姿は何処かへと消え去っていった。
今後の参考に
-
暴れよう
-
大人しくする
-
引っ掻き回す
-
全滅させる