よければ高評価、感想をよろしくお願いします!
それではどうぞ
「何故……あんな事をしたんだ……?」
一瀬グレンは部屋で一人首を捻った。彼の頭脳を持ってしても、その謎は解けない。
あの、怪しげな吸血鬼でも無くかと言って人間でもない者。恐らく俺か、俺以上の強さを持つ彼を仲間に引き入れるのも吝かではなかったはずだ。
だが、彼が何を言おうと、何をしようとどうしても『彼を仲間にしてはならない』という考えが無意識に浮かんできてしまう。
「ヤン・オールト……ふざけた名前だ」
オールトの雲ーー太陽系のはるか外部をすっぽりと球体状に覆う、理論上の天体群。隕石などもそこから来ると言われる場所の提唱者と全く同じ名前。
「自分が宇宙人だとでも?」
グレンは自分でも馬鹿馬鹿しいと思える呟きをした。あまりにも荒唐無稽でクスリと笑ってしまうほどだ。だが、その馬鹿馬鹿しい呟きこそが最も真実に近いことを知ることはこれから先、永遠に訪れることは無かった。
__________________________________________
「うーん、どっち……いや、どっちでも無いのか?」
「……」
目の前のボロ切れーー吸血鬼だ。渋谷から離れてウロウロしていると突然襲いかかってきたので返り討ちにした。ちょっぴり焦りすぎて瀕死の状態にしてしまったが為に、これ幸いと気になっていた検証をする事にした。
検証は簡単。吸血鬼は霊長か、そうでは無いか。
崩壊前の世界は、地球にやって来た時と同じで人間がその時の霊長だった。だが、崩壊した世界では人間はその数を大きく減らし、吸血鬼なんて生物が台頭してきて人間を飼っている吸血鬼がいるほどなんだとか。
こんな世界の現状を鑑みて、「もしかしたら、吸血鬼に霊長の権利が移行しているのでは?」と考えた俺は、早速行うことにした。
「やっぱり……分からんなぁ……」
ぼんやりとしていてる。霊長だと認識できる時もあれば、そうで無い時もある。はっきりとするのにはまだまだ時間がかかるだろうが、元々のスペックから見ると、運が良ければ吸血鬼がいずれ人間にとって変わるのでは無いかと思った。
どんぶり勘定では、人間:吸血鬼は4:6ほどだと思われる。
「型月の吸血鬼って……こんなんだったか?」
改めて、この吸血鬼を見てそう思った。型月ファンを前世で名乗っていたが、まあライトユーザーだった上にパソコンも無いような田舎住みだったので、月姫もアルクェイドルートくらいしかしてない。おまけに気の遠くなるような時間が経過しているのでかなりうろ覚えだ。
「ん? でもこいつ日光の下にいるぞ?」
そういえば、今日は雲一つない青空という珍しい天気だった。人間や俺からすれば窓からはさんさんと日光が注いで暖かいが、吸血鬼にとっては死の光線に他ならない筈なのだ。
「どういう事だ?」
ますますORT君の中で謎は深まっていくが、考えてもどうしようもないので、床にごろんと寝転がって、目を閉じた。
懐から覗く、形を留めた機械には少しも気づかない。彼が居眠りをしてしばらくすると、パチッと火花が散って何か壊れる音がした。
__________________________________________
「あ"…… ああ"…………」
「うぅん?」
耳障りなうめき声がしたもので、ゆっくりと身体を起こして音の方を向いた。先程まで声が出ていたが、ぴくりとも動かない。
「あれ?」
恐らく昨日は日光の下でも死ななかった吸血鬼が死にかけである、というより今死んだ。よく見ると足元に変な機械の部品が粉々になっていた。
「あの機械が日光から守ってたのか?」
そのような考察を打ち立てたのはいいが、肝心の吸血鬼が死んで仕舞えば元も子もない話。起きるのが遅すぎた。
「あー、どうしようなぁ……」
現在の霊長を確認しておくのは、いずれ出される任務の為にも必要事項だろう。
「いやだけど……ちょっと齧るよ」
がじりと噛み付いて、吸血鬼の大まかな味と匂いを覚える。
「ヨイショっと」
廃墟の外に出た後、本来の30メートルほどの肉体を引っ張りだした。余波でバラバラと前いたビルを倒壊させてしまう。
「ま、いいか」
気にせずに日本列島の本州が全て見える高度まで上昇する。
「えっとー、どこかな……?」
うろうろと頭を右往左往していると、似た気配が特に集まっている箇所がいくつかあった。
「京都か……悪くないな」
前世では修学旅行で行った覚えしかない。この機会に行くのもいいな。
努めてゆっくりしながら、具体的には飛行機程度のスピードで京都、吸血鬼からはサンギィネムと呼ばれる街にステルスしながら飛んだ。
いきなり巨体が現れたら嫌だろうなぁという配慮で飛んだORT君だが、その行動が裏目に出てしまうのは当然といえば当然で、仕方のないことでもあった。
ーー京都上空
「着いたけど……そりゃあボロボロよね……」
ある程度予想できて、覚悟もしていたが美しい古都がこんな有様なのは少しだけ悲しくなった。
「さあ、気を取り直して行きますか!」
周囲を壊せば揉めそうなので綿のように音もなく完璧に降下した。
「地下だけど……まずいよなぁ」
無理やり穴を掘ってお邪魔するのも出来るのだが、初対面はなるべく温厚に行きたいので渋々ながら諦めて、正規の入り口から堂々と入ることにした。
ところでだが、ORTの能力には擬態がある。前世の姿を取れるのもまさにこの力のお陰であり、大変に便利だ。ここに来る前に齧った吸血鬼の姿も一応擬態は可能だった。捕食した生物の記憶も見ることができるらしいと昔聞いたことがあったが、記憶ばかりはどうにもならず、姿だけのコピーのみを使用できた。
「こんな、具合かな」
グニャリと顔が歪むと、齧った吸血鬼の姿になる。顔に手は加えていない。前回それで手痛い目にあったし、そもそもコピーのモデルとなった彼は顔立ちが整っていた。
「よし、問題なし!!」
実際は問題大有りなのだが、能天気に地下都市へと歩き始めた。
@@
「なぁ、俺は最近来た新参だろ、一番ここで偉いお方は誰なんだ?」
「お前……そんなことも知らずに来てるのか……」
知り合った吸血鬼、ゴルドは俺に呆れ返っていた。呆れてはいつつも教えてくれるあたり、いいやつなのだろうと思った。
「仕方ないな、教えてやる。まず、ここの、というよりは日本のトップはクルル・ツェペシ様だ。第三位始祖にして、サンギィネムの女王であられる。次に位が高いのは……フェリド・バートリー様、第七位でとても変わり者と言われている。決まった場所には殆ど居られないだろうからな。まぁ、コンタクトは無理だろう」
「ありがとう、助かる」
「いいってことよ」
クルル・ツェペシがだいたいいる場所も教えてもらった。別れたあと、誰も見ていないところでステルスを使い、透明人間ーーもとい透明吸血鬼として歩きだした。
「誰だ、貴様……」
玉座で憂鬱な顔をして座る、美しき女王。女王と言っても少女の姿であった。まあ、こういうのはかなり歳を食っているのが相場である。
「どーも。聞きたいことがあるんだけど」
物陰でステルスを解除し、女帝の眼前に出た。
「ずいぶんと不遜な物言いだな」
不愉快そうに顔が歪んだ。
「お前らってさ……今は霊長にあたるのか?」
「?」
「いや、言い方が悪いよな。でも、なぁ……お前たちは人類とは決して相容れない筈だし……」
「急に何をブツブツと……」
「ブツブツブツブツ」
「!? ふざけ」
ふざけるな。彼女がそう言おうとすると、目の前の男から吸血鬼の身体のバランスとは圧倒的に異なる青い脚が現れた。ガサゴソと異形の恐るべき怪物が這い出てくる。
「どうも、吸血鬼。」
「アリストテレスだと……?」
冷静だった姿は一変、彼女はたらり、と冷や汗を垂らした。
「聞きたいことがある」
「……南米にずっと篭っていると聞いていたが、どういう件だ?」
「ま、まぁ俺だって仕事がある。そうやってここまで来たんだが……この世界で危ないものとかないの?」
ORT君はどうやら自分のことを知っている人を見つけてちょっぴり嬉しくなったらしい。ただ、篭っているが少しだけこたえたようだ。
「……お前は、滅ぼすのか」
「どうだろう。助けてくれーって聞こえたから、ここまで来た。場合によるとしか言えない」
「過去に第一始祖ーーつまり私の親から聞いた事だ。『いずれ、気の遠くなるような先に恐るべき怪物がやってくる』お前が、そうなのか?」
疑わしい目でジロリと見られる。背筋が凍りそうだ。
「多分そうかもしれないけど……俺じゃない場合もあるよ。気をつけたら?」
「ああ、忠告ありがとう。出来るだけ早く遠くへと消えてほしいな」
「うーん、辛辣」
女帝の不興を買うのは趣味じゃないし、直に始祖と呼ばれる者の中で位も高く強い者を見て分かったが、彼らは霊長では無かった。
あくまで、現在は吸血鬼が優位なだけ。代理みたいなモノだ。
「渋谷に帰ろうかなぁ……」
彼女の部屋から離れ、入り口まで戻ってきた。元の借りた吸血鬼の姿のまま、何食わぬ顔でここを去ろうとしたが……
「ねぇ、君?」
吸血鬼の中でも一段と綺麗な身なりをした男が俺に話しかけてきた。
「な、なんでしょうか」
「あ、そういうのいいから。さっきの見てたし」
「あー、そっかぁ……」
どうやらバレてたらしい。
「先ずは自己紹介といこうか?アリストテレス。私はフェリド・バートリー」
優雅な所作で降りてきた吸血鬼は、恭しく、わざとらしい態度でそう名乗った。
「俺か……俺はORT。遠くから来た、君みたいな王子様ってガラじゃあないけどね」
快楽主義者と大蜘蛛はついに邂逅を果たすーー
まあ、ロクなことは起きないよね……
今後の参考に
-
暴れよう
-
大人しくする
-
引っ掻き回す
-
全滅させる