MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
MITから一年間の休学が認められた為*1ステラはほぼ新入生扱いでMITで授業を受け始めた。
最終目標はステラが乗り回しているブラックトライクの後継機を作る事である。構造工学や材料工学など様々な授業に参加して猛勉強に励んでいた。中でもエネルギー工学は何故か逆スカウトで講義を受けてほしいと熱烈アピールされた。なので参加したら講義の資料でソーとステラが出てきていた。カーネル教授と呼ばれているその教授の講義は大盛り上がりだった。
「わーははは! 私がこの大学に真の教育を齎らしくぼっぱぁ!?」
大学を襲ってきたヴィランを撃退したりケンブリッジでもヒーロー活動をしつつ、ケンブリッジからニューヨークに里帰りした時はネッドが作ったスパイダーマン追跡アプリを頼りにスパイダーマンを追いかけ回してガン逃げされたりしていた。
ウォンがバビロンの腕輪から作ってくれた指輪を頼りに帰ってきた以上、この世界はステラの居た宇宙で間違いない筈なのだが何故かみんなピーター・パーカーの事を知らないのだ。
直接スパイダーマンに事情を聞きたいのだがこちらも何故か逃げるのである。*2
ピーターがリーダーをしていたヤング・アベンジャーズも無くなっているし、だけれどミステリオや新生ホークアイに話を聞くとスパイダーマンと一緒にヒーロー活動はしたよねって話にはなるしだけれどピーターのことは知らないって言うし何が何だかわからないので、トニーに今のスパイダーマンの正体を教えてもらおうとしてみたら正体不明の覆面ヒーローのプライベートを詮索するのはダメと怒られてしまった。
「正体は不明だけどスパイダーマンは信頼できる人物だよ根拠のない勘で済まないが……僕の勘は結構当たるんだ」
と言われると引き下がるしかなかった。
そうして色々ありながらも知識を溜め込む一年が過ぎて実践的なブラックトライクⅡ設計の段階に入るとMITで運用され学生の間で恐怖されているAIのティムが設計上の不備や問題を全力で指摘してくるので問題解決の為にさらに新しい知識を求めて講義に参加する事となる。
「テリアどうしたの?」
「ううー……んぬぬん〜上手くいかない」
「あぁ……ティムに齧られたのね。あれは苦労するよわかる」
「はいこれ、ニューヨークに帰ってたんだけどメイさんから頑張ってるテリアちゃんに差し入れだって。ハッピーからもメイさん経由であるよ。……諦めの悪さ見習ってこう」
「ありがとう」
一年先輩となっているネッドとMJがステラの様子を見に来てくれたりもしているし、みんなで遊びに行ったりもする。正体が判明してからはステラ呼びになっていた二人が何故か大学に入ってからテリアと呼び続けているのは二人なりの気遣いなのだろうか。
『これだと構造の負荷が掛かって折れちゃうよ!』『これシリンダーの太さ足りないよ!』『これだと曲がれないよ!』
ティムは容赦なくダメ出ししてくる。流石はMITのマスコット容赦がない。
ボストンの下宿先の机でパソコンを前に頭を抱えているステラに家主夫婦の妻が頬をつついてちょっかいをかけてくるが、ステラは頭から湯気が出そうなくらい考え込んでおり反応を示さない。
「こらミー、学業に全力で励んでるんだ。邪魔するのは良くない」
「えぇ〜じゃあリリオが相手してよ〜」
「子供の前でそういう事はダメだ!」
「子供って失礼よねステラちゃん大学生なのに〜……いや確かにこの子何歳?」
「十年くらい前から見た目変わってない気がするな」
下宿で初めて会った時はとてもびっくりしたしちょっかいにいちいち反応していたのだが、慣れてしまった。恐ろしいものである。
改善したと思えば別の問題が発生してを繰り返して設計を洗練させていきようやく、ティムのダムの肥やし*3から脱出した設計図が完成した。
天にも昇る気持ちとはこの事だろうか。達成感のあまりMITキャンパス内どころかケンブリッジを飛び越えマサチューセッツを走って一周しそうな勢いでステラは跳ね回りながら喜んだ。単位取得も成功だ。
設計図が完成すればあとは意外と話が早い。材料を用意して申請すれば理屈上はMITで運用されている工作機械を借りてパーツが全て製造できる。
ただし材料は自前なのでお金が……と言いたいところだがステラは昔から広告収入とかを結構もらってるので問題なく購入。
さらにナノテクで作られた最新鋭の工作機械は制作物に合わせてナノテクで工作機械そのものが姿を変え最適化することであらゆる部品製造に対応しているので材料さえ揃えば作れ、るわけではない。
工作機械は申請で通った量のエネルギー分しか動かせない制約がある。普通の工作機械なら学生が研究で物作りするなら十二分な量なのだが、ナノテクをフル稼働させた工作機械だと小さいチップみたいな物しか作れないので色々作れるけど学生身分じゃエネルギーが足りないので大学のプロジェクトで使う時以外は半ば埃をかぶっている代物だった。
そこでステラはナノテク工作機械の使用申請だけ出してエネルギーはウィングから自前供給する事で解決。このウィング、あの変形したロックキャノンとブースターウィングが一年間マルチバースを放浪してる間に合体してできた代物で小型化から大型化にロックキャノン生成までできる代物で、工作機械のコンセントの差し込み口も作って差したら動いたのでなんのエネルギーが出てるかステラはよくわかってないが良しとした。
トニーが聞いたら「分からないまま使うのはやめよう」と自分を省みながらしみじみとステラの肩に手を置くだろう。
ブラックトライクサイズの大型部品となると普通はリフトのような運搬機械が必要になるが自前の腕力でキャンパス内を何往復もしながら作業場に運ぶ事で解決。スペース・ストーンの力のような特殊な物は体から全部抜け出ているがその特殊な力を受け入れられる地力の高さがある。
作業場は個人個人に割り当てられ基本的道具は一式、専門的なものは自前で購入し、半ばガレージの様な雰囲気になっていた。毎日講義終わりに油まみれになりながら作業をして徐々にパーツが組み上がっていく。
ネッド達や同学年の生徒達、先輩や教授達も時折その様子を見にきていた。
ミッドタウン高校時代と同じ様な変装はしているがステラがブラックロックシューターなのは周知の事実であり、そのブラックロックシューターが自分のブラックトライクⅡを作っているのだ。見物したい人が多いのは当然だった。
そうしてMIT学生生活三年目にしてブラックトライクⅡは一区切りがついた。
ブラックトライクの元となったアーマートライク計画は当時の技術力の都合上大型の大出力ガソリンエンジンでないと達成できなかった性能が今では電磁モーターでコンパクトに。
また、ブラックトライクでは一つの形態でオフロードとオンロード両方に対応する為に大型化していた部分をシリンダーを駆動させ変形、車高を切り替えられるようにした事でスッキリとさせた。
ブラックトライクに付いていた大口径機関銃は……大学で作ってるものなので付いてない。代わりに作ったEMPRESS*4を搭載している。参考にしているのはウィドウズバイトの様な電気攻撃である。
これはステラが"すごい電気のレーダー"とか"ブラックショックシューター"とか名付けようとしていたところをみんなに止められて公募で決定した。
ブラックトライクⅡを中心とした索敵が出来ることが基本で、電磁パルスや電撃を発したりもできる。ステラ自作の制御用AIが凄まじく拙い上電磁パルスが出る都合ネットを介さないスタンドアローンで作ったのでネットで自動学習も出来ず情報処理が追いついていない為、現状は平面のレーダーの様にしか使えない。
将来的な目標はF.R.I.D.A.Y.なのでステラはE.M.P.R.E.S.S.と名付けた。最終的にはAR装置で立体的レーダーや電磁パルスや電撃をステラの指示で的確に撃てるようになって欲しいとステラは思っている。
ひとまずAI面は置いといてハードと電子制御のリバーストライクとしての完成ということで、MITの作業場の近くの広場でみんなでお祝いパーティをしているとそこにピーターがいた。ネッドとMJと楽しそうに談笑している。
ステラはびっくりして駆け出した。
「ピーター!」
「や、やぁステラ。初めまして僕の事誰かと勘違いしてない?」
「ピーター・パーカー、ミッドタウン高校で私の同級生」
近くで話を聞いていたMJとネッドが首を傾げる。ピーターは見るからに動揺して、ステラや周囲の人ではなく
「ケインは僕たちが大学生になる時に知り合ったんだよテリア」
「そう、お友達になってくださいって」
「ケイン?」
「そう、テリアには初めて紹介するけどケイン・ライリーだよ」
ステラが混乱していると、近くの研究練で爆発が起きた。
「ふぅ~! ここの研究は貰ってくよ! 教育の為に必要だからねー!」
笑顔のマネキン頭をくっつけた四足歩行ロボットのような変なのが重要そうな鞄を持って爆発の中から飛び出してきた。ステラがウィングを展開して駆け出し大きな翼を生成しドーム状に展開する事で下にいたMIT学生を守る。
「わあ! ブラックロックシューターだなんて運が悪いんだい!」
「スマイリー、懲りないの?」
研究施設などを無秩序に襲撃する自称教育者のヴィラン、スマイリーだった。笑顔のマネキンが特徴で、おそらくは遠隔操作のロボットの類いだ。
ステラが入学する前からちょくちょくMITの研究設備や研究成果を襲撃していたらしいのだが、最近はステラに撃退され続けている。
「教育者は懲りるなんて事はないのだー!」
「ブラックトライク! みんなにぶつからない様にしながら来て!」
『了解』
四足がタイヤに変形しスマイリーが逃げ出したので、ステラはブラックトライクⅡを呼ぶ。搭載したEMPRESSはスマイリー対策の側面もあった。捕まえようとすると自爆して調査が進まないので電子的に行動不能にしようという算段である。
ステラの呼び声に搭載されたAIのE.M.P.R.E.S.S.が反応、ブラックトライクⅡの電磁モーターがうねりを上げる。パーティの人々が避けるまではゆっくり動き、進路が空いたら急加速。十年以上の月日が経ち、宇宙由来の技術も多く入り込んだ事で起きた世界的基礎技術の発展で1/4マイルのドラッグレースをするなら加速力はブラックトライクを上回る程になっていた。
「ぐえっ」
その素晴らしい加速のままステラの元に減速せずに突っ込みステラを撥ね飛ばした。交通事故である。ステラが普段出さない様な声が出た。
ステラ製のAIが未完成も未完成で呼ばれたらステラの元に最速で移動する事だけ考えていたのである。
トニーが作ったブースターウィングセットをステラの腰に飛ばして装着するシステムがいかに優秀かがステラは身に染みてわかった。なおトニーもそれに類する仕組みのアーマーを作った時に痛い目を見ている。
ステラは何も言わずに衝突した腰と地面と激突した頭をさすりながらまた突っ込んでくるブラックトライクⅡに飛び乗って進路を逃げるスマイリーの方へ向ける。
「みんな! 私追いかけるから!」
「行ってらっしゃい!」
「あの変なのやっつけろ!」
「マジでいい加減にしろよあのマネキン野郎……」
「僕らは研究練で逃げ後れがいないか確かめに行こう! ケインはゲストなんだから避難しててね!」
MITで定期的に襲撃が発生して実験器具が使えないとか作ってたレポートが破損したとかそういう被害もかなり出ているので学生や教授からの怒りも積もりつつスマイリーの襲撃には若干慣れ始めているところがあったMIT学生達だった。
スマイリーがキャンパス内に立っている幾何学的オブジェを飛び越えて逃げていくので、シリンダーを駆動させて変形、立ち乗り状態になったステラが力一杯ハンドルを引いて車体を跳ね上げて同じ様にオブジェを飛び越える。
「動作はいい感じ」
着地も高くなった車高に合わせたサスペンション変化でスムーズだ。ブラックトライクなら車体下を擦ってしまうか、ワンバウンドしてから着地だったろう。
頑張って設計した甲斐があったと思わず感慨に耽りそうになるのを頭を振って払い飛ばす。
「ロックシューターにロックオンされてるよー!」
スマイリーはケタケタ笑いながら回るように逃走を続け、大学を抜けてハーバード橋を渡ると見せかけ手前で進路を変更してステラを振り切ろうとする。ブラックトライクⅡの車高を戻すとステラは全力でアクセルを回した。ブラックトライクⅡの最高速度は初代と変わらず四百マイルだが、
つまり今まで高速走行の制御に取られていた分の腕力を全部進路変更の方へ注げるわけである。
「のっぽう!?」
さっきと似たような構図で今度はスマイリーにブラックトライクⅡが超高速で衝突した。撥ね飛ばされたステラと違い速度差がありすぎて車体の装甲がスマイリーにめり込んで引っ付いたようになる。
スマイリーはタイヤになっていた脚を元に戻してブラックトライクⅡに張り付き乗っているステラに襲い掛かろうとする。
「こうなったらあなたを教〜〜育〜〜!!」
「E.M.P.R.E.S.S.、電磁パルス攻撃最大出力」
『了解』
車体両側上部の保護ハッチが開いてそこからEMPRESSが姿を現して照準を前方のスマイリーに向ける。
火器管制と照準はAIに、発射トリガーはステラの握るハンドルが基本担っている。まだ照準精度も未完成だがセンサーユニットの搭載場所は今スマイリーがめり込んでいる所だ。ゼロ距離で外す事はないのでステラは躊躇う事なくトリガーを引く。
「導っばぁ!?」
強力な短射程電磁パルスがスマイリーに二方向から叩き込まれ内部に過電流が発生。スマイリーの動きが完全に止まり、ついでに発生して行き場を失った電流がブラックトライク表面を伝ってステラに到達してステラも感電した。
ウィドウズバイトを使うナターシャが絶縁体でできたスーツを着ている理由である。
感電して命に関わる事はないが思わず体が突っ張ってしまい操縦に乱れが出た。そのせいで動かなくなったスマイリーが車体下に落っこちてブラックトライクⅡの車体下と地面に引っかかって急ブレーキがかかり車体が跳ね上がる。
一トン超の車重を持つブラックトライクⅡと地面の間でつっかえ棒になったスマイリーは負荷に耐えきれずマネキン頭と体が断裂して火花を撒き散らしながら四散する。
「あっ」
宙を舞っているブラックトライクⅡとステラの目の前に迫るのはチャールズ川である。
ステラがウィングブースターを腰から生やして落下軌道から無理やり飛ぼうとするが想定外の負荷が掛かったブラックトライクⅡのハンドルが捥げてステラだけ上空に飛ばされた。
「ブラックトライク!」
悲しいが落ちる先は川だ。引き揚げるのは大変でも一般人の人に被害が出たりしないから……と諦める。
「やぁやぁ! AAAのロードサービスだよ!」
ハーバード橋の複数の陸橋と川で作業しているクレーン船のクレーンにウェブが接続。川面ぎりぎりを水飛沫を上げながらブラックトライクと謎の人物がスイングし、ハーバード橋の上に乗っかって横転、ウェブの網で路面にくっつけて火花を上げながら止まった。
「スパイダーマン!」
「やぁやぁ、ニューヨークの隣人だけど、今日は偶然通りかかってね」
ステラが近くに着地する。そこにはTシャツに半ズボンで、頭にだけスパイダーマンのマスクを被った不審人物がいた。ウェブシューターを着けてるので本物のスパイダーマンだろう。
「ありがとう。水没しちゃうところだった」
「お安いご用意さ、研究がんばってね」
「何か理由があるんだと思うけど」
スパイダーマンが手を振って去ろうとした時にブラックトライク起こしながらステラが声をかけた。
「私は知ってるから」
「……ありがとう。僕の名前を教えてくれて、ブラックロックシューター 」
マスクの下でスパイダーマンは少し目を細めると、ニューヨークのように高層ビルがないので一旦走ってキャンパスの方の森に消えていった。
それを見送りながらステラは絡まったウェブを無理やり引きちぎっていく。
『自走できる。もう一度電磁パルスの許可を』
「あ、ハンドル無いもんね。良いよ」
E.M.P.R.E.S.S.がそんなこと言うので許可を出してみるとEMPRESSをウェブに向けて照射、するとあれだけ頑丈なウェブが霧散するように解けてしまった。
「そのパルス波長だと高分子構造の分解が早まるんだね」
『分析した』
「偉い」
『しかしバッテリー切れ』
人工知能とステラが口数が少ないやり取りをしてたら電力が尽きたらしく結局ステラはもげたハンドル片手にブラックトライクⅡを押して大学まで戻るのだった。
スマイリーの残骸を大学の修繕にきたD.O.D.Cに預けて(渡す時に学生と教授から拍手喝采が起きた)数日が経って作業場で破損したブラックトライクⅡの修理をしているとエネルギー工学の教授がやってきた。
「シェパード君、いやここはあえてブラックロックシューターと呼ばせてくれ」
「どうかしたの? 何か授業に?」
「いや、違うよ。むしろ私の我儘を聞いて授業に出てくれた事へのお礼をしたい。見たところ強度不足で破損したようだね」
ステラが頷いて、作業場の隅に放り出されていた捥げたハンドルを見せる。
「オザキ・ロス協定で新金属の大学の代表として採掘実験をしに行くんだ。妻と娘も連れてね」
「その金属をブラックトライクに使わせてくれるの?」
「それもあるが、君も来るといい。課外授業扱いで単位も取得できる」
ステラは少し悩んだ後に承諾した。
「よろしくお願いします。デイヴィッド教授」
「こちらこそ。向こうではよければ娘の話し相手をしてもらえると嬉しい」
ステラは大学三年生でインド洋に行くことになった。
この時空ではリーダーはINSANE編で死亡している為ブレイブ・ニュー・ワールドの事態は発生せず別の事件が発生していると思います