デートアストライク 1
雨雲一つない快晴の空。まるで先日の精霊の天使の使用で覆われた雲が嘘のように無くなっていた。その影響か、天宮市の天気は晴天続きだった。そんな天宮市にある陸上自衛隊天宮駐屯地。そこに一人の男が訪れていた。
「初めまして、日下部燎子一尉。私はDEM社から来ましたエドワード・エリックです。既に我が社のほうから連絡はしている筈ですが」
燎子の前には金髪の青年が立って此方に手を差し出して自己紹介をしている。
彼の口からも言ったように、数日前にDEM社の社員がこの駐屯地に来訪すると連絡は来ていた。
その手を握り返す。
「ええ、聞いているわ。まさか、見知らぬ人物が基地内で歩いてたから声を掛けてみれば、DEM社の派遣員とはね」
燎子は、今日配属となった新人を案内次いでに今基地内にいる隊員に紹介しようと歩いていたら見知らぬ人物が此方に来るのだから声を掛けたのだ。
「それで、DEMの方がうちに何の用なのかしら?」
そう、来るとは聞いてはいるがどういう理由で来るかまでは燎子は聞いてはいない。
その問いにエドワードは、首を傾げ一言言ってから携帯で何処かに連絡をし始める。
何度かのやり取りをした後に、最後に深い溜め息をついて携帯を切る。
「……その様子を見る目的のほうが伝わっていないようですね。申し訳ありません」
燎子のほうへ向き直し謝罪するエドワードの表情は笑顔だが、その頬は少し引き吊っている。
「私が此方に来られた理由、それは数日後に此処天宮駐屯地に搬入される新型顕現装置"アシュクロフト"の性能チェックとアップグレードを行う為と、そちらに配備されているCRユニットのアップグレードです」
「ああ、あの新型ね。でも、CRユニットもアップグレード?私達としては有り難いけれど、具体的にどういった風に変わるのかしら?」
燎子は、エドワードの話に今一ピンと来ないのか首を傾げている。
そもそもCRユニットの強化と言えば、先ほど言ったように新型か、新たな武器……『
「そうですね、脳への負荷を抑えたり任意領域の出力や展開速度の上昇等が主ですね。今まで脳への負荷が大きく使うことが武器等が円滑に使える様にするのが目的ですので」
燎子はそれを聞き驚愕する。それが本当ならこれからの精霊討伐での作戦の幅がさらに広がる。これから搬入される新型の事も考えれば精霊討伐も夢ではないかもしれない。
「それは……成る程理解したわ。そうだ、この子にこの基地内を案内するのだけど貴方もどうかしら?」
燎子は、隣にいる少女に視線を向けて提案する。
「右も左も解らない状態だったのでその誘いに乗らせて頂きます」
それに嬉しそうに笑顔を振り撒くエドワード。その隣にいる少女はその顔に見惚れているのかボーと見続けていた。
それに気付いたのか、エドワードはその少女の前に立つ。
「エドワード・エリックです。暫くの間宜しくお願いしますね」
自分に言われていることに気付いた少女は、顔を紅くして慌てて自己紹介を返す。
「はははい!ほ、本日付でここ陸上自衛隊天宮駐屯地に配属となった岡峰美紀恵二等陸士です!こ、こちらこそヨロシクお願いします!」
「あはは、そんなに堅くなくていいですよ。私は御偉いさんでもないので、ただの研究者だがらね。改めてヨロシクお願いしますね、美紀恵さん」
そう言い美紀恵に向かって右手を出す。オドオドと差し出された手に握り返す。初めて異性の手を握ったのか更に顔を紅くしてしまう美紀恵に可笑しそうに笑うエドワード。
「んん、そろそろ基地内を案内したいんだけど?」
「あわわ、そうでしたっ。すいません!」
「ああ、そうでしたね。それでは、案内宜しくお願いします」
まったくと呆れ気味な燎子は、基地内を案内する為に歩き出す。
それに着いていく美紀恵にエドワード。
だが、笑顔を絶やしていないエドワードの瞳は、後ろ姿の二人を品だ目するような目で観察していた。
「……一人目」
基地内を案内をほぼ終え、最後に今いる隊員への紹介だけとなった。その隊員は鳶一折紙で、エドワードは折紙が更衣室に居る為に少し離れた場所で待たされていた。
「社長、ちゃんと連絡して貰いませんと此方が困りますよ」
暇となったエドワードは携帯で、DEM社の社長であるアイザックへ連絡をしていた。ASTへの連絡の不備に対しては文句を言うが肝心な社長は悪びれもなく、
『それはそれで面白いだろう?』
エドワードの態度に心底可笑しそうに笑うアイザック。
「笑い事じゃありません。説明が一々面倒なのですよ」
『そう言わないでくれ、折角の君から持ってきたビジネスだ。最後までやると言ったのは君だろ?"アルケミスト"』
「今はエドワード・エリックだ。そこら辺は間違えないで欲しいね」
アルケミストと呼ばれたエドワードは、訂正を求めるようアイザックに正す。
そう、この男はエドワード・エリックの正体は灯夜である。
『おっと、それはすまない。ならエドワード、最近怪しい動きをしている者がいるようだから彼女等の処分は任せたい』
「彼女等と言っている時点で誰かは解っているみたいだが?」
『さあ、どうだろう?では報告、楽しみに待っているよ』
意味ありげな事を残し、アイザックのほうから切られる。
それに、苛立ったのか乱暴に携帯をポケットへ捻り込む。
そして、丁度良く燎子と美紀恵が折紙を連れて此方に来るのが見え態度を替える。
「ごめんなさいね、待たせたかしら?」
「いえ、其ほど待ってはいませんよ。……そちらは?」
エドワードは、視線を隣にいる折紙へ向ける。
「こっちは鳶一折紙一曹よ。折紙、DEM社から派遣されたエドワード・エリックよ」
「エドワード・エリックです。宜しくお願いします」
「鳶一折紙一曹、よろしく」
エドワードから差し出された手を折紙は、握り当たり障りのない挨拶する。
「さて、自己紹介も終わったことだし美紀恵の訓練でもしようかしら」
「え?」
自己紹介を丁度終えた二人に燎子は言う。行きなり訓練と言われ理解しきれていない美紀恵。
「美紀恵は顕現装置の適応テストで数字を叩き出したって聞いたからそれを見てみたいわ。どうかしら?」
「は、はい!大丈夫です!」
燎子の言った訓練は美紀恵な実力を見たい為のようだ。それに美紀恵は緊張しながらも元気良く返事をする。
「そう、それは良かったわ。エドワード、貴方はどうする?」
エドワードに訓練を見てくるかを聞いてくる。エドワードは、少し悩む仕草をした後に断ることにした。
「今日は此方に置いてあるCRユニットの性能チェックとアップグレードを行いたいと思ってます」
「あらそう。保管庫はさっき案内したから解るわよね?なんなら誰か呼んで案内させようかしら」
「大丈夫です。保管庫の場所は覚えてますし、幸い其処まで距離は離れてもいませんので」
その後に幾つかの予定を聞き、終わり次第集合場所を決めてからエドワードはその場を後にする。
充分、三人から距離が離れ辺りに人気が無いことを確認しながらエドワードは再び携帯を手に取りある人物に連絡をする。
数回のコールで直ぐに受付の女性に掛かり、自分の名を告げある人物へ繋げるように伝えてから暫く待つとその人物へ掛かる。
『……エドガーだ』
「どうも、エドガーさん。エドワード・エリックです。先程の天宮駐屯地へ到着しました」
『そうか……社長には気付かれてはいないだろうな?』
「勿論です、社長には新型顕現装置のメンテナンスと天宮駐屯地のCRユニットのアップグレードを行う一研究者と報告しています。裏で色々と細工をしておりますのでバレる危険性はないと」
その言葉に安堵の溜め息が聞こえる。
『なら、アシュクロフトが到着次第、回収は任せたぞ。万が一でもこの事がバレたとしたら……』
「ええ、解ってます。安心してください、迅速に事は終わらせますのでエドガーさんは良報を気長に待っていてください。では、私は用がありますのでこれで」
エドガーが何か言ってきたが無視し通話を切る。
「やれやれ、小心者だなエドガーさんは……」
先のアイザックとの話し合いで無事にDEM社に入った灯夜は、自身の持っている力をDEM社へと貢献した。少ない時間ではあったがここではDEM社の技術力が更に上がったと言っておく。
そして、今回の目的である今回の目的であるアシュクロフト、それのアップグレード。
単にプログラム等を弄る等ではない。いや、少しは弄る必要があるがそこが重要ではない。
在るものを組み込むことで顕現装置での性能が格段に上がるのだ。勿論、それを造ったのは灯夜だが。
「CRユニットでは性能が倍になったが、果たして新型ではどうなるか」
結果を考えなから灯夜、エドワードは保管庫へと向かっていった。