・よしのんが来店
・黒執事マジ執事
・デートのお誘い
今回は、よしのんとのデート回です
身支度を終えた灯夜は、待ち合わせであるデパートを目指してゆったりとした足取りで歩いていた。
もう一度シャワーも浴び、一応デパート内と外でのデートコースを考えて来るなど準備万全だった。
何も問題ない。そう本人は思っているのだろう。
歩く様子を見れば自信に溢れている、ように見える。
だが、一つ。たった一つだが問題があった。
デートであるにもかかわらず、灯夜はいつも着ている黒いローブを着ていたのだ。
さも当然のように堂々と歩く姿は呆れを通り越して感心する。
端から見れば変態にしか見えない。実際、通り掛かる人の視線が痛い。
当本人は、気にしていない様子で歩いていく。
何故、服装を変えなかったのか。
本人によると、これが俺のアイデンティティーだから、だそうだ。黒執事もそれでいいそうな。
デートくらい脱げや。
さて、目的地のデパート近くまで来ると、黄色いテープで立ち入りを禁止している道まで来た。
そこまでくると昨日の戦闘の後があちらこちら見受けられる。
灯夜は、そんなテープを気にせず踏み越えて先へ進んでいく。
暫く瓦礫の景色を見ながら歩くと、目的地のデパートにたどり着く。ASTの攻撃や俺の対AST攻撃などで今にも崩壊してしまいそうな見た目となっていた。
そんなデパートの入り口に、レインコートの少女が壁に持たれかけてボーとして待っていた。
時間的には、まだ昼まで一時間近くある。
灯夜は待たせるのも悪いと思い、早めに来たがどうやら先にいた少女も同じようだ。
「やあ、よしのん。待たせたかな?」
何時もの口調で待っていた少女に話しかける。
話しかけられてから気付いたのか、ビクッと震えてから灯夜の方を向き、パペットを揺らす。
『やっほぉートウヤ君!えぇと確か、今来たところよんっ』
よしのんはお決まりの台詞を言ってケラケラと笑う。
『トウヤ君は何時もの黒いローブなんだねぇ?折角のデートなんだから脱いだりしないのかなぁ?』
「生憎、これは私が私であるためのものでね。脱いでしまっては意味がない。それに、よしのんも何時もの服装ではないか」
『あはー、残念ながらよしのんの服はこれしかないのよー。トウヤ君は、よしのんの私服姿に期待しちゃた感じぃ?』
「おや、期待したのがバレてしまったか。よしのんは勘が鋭いな」
ニヤニヤと体を揺らして茶化してくるよしのんに灯夜は、肩をすくめる。
「さて、冗談はさておきさっそくデートを始めようか。よしのんがいきたい場所があるならそこを優先的に向かうがどうする?」
『そうねぇー』
うむむ、と腕を組んで悩むよしのん。ぽんっと手を叩く。
『よしのんってさっきも言った通り、よそ行きの服が無いのよぉ。トウヤ君、何処か良いところないかなぁ?』
「成る程、服屋か。ならこの近くにあった筈だからそこに行こうか」
『おぉー!流石トウヤ君、頼りになるねぇ』
「はは、そう褒めてるな照れてしまうではないか」
二人は会話を楽しみながら服屋へと向かっていった。
『そう言えば、トウヤ君。聞きたいことあるんだけど』
「どうした、よしのん?」
『トウヤ君の顔って一度も見たことないんだよねぇー、と言うかトウヤ君のこと君付けで呼んでるけど、ほんとのとこどっちかわかんないんだよねぇ。実際、どなの?男の子なの?男の子にしては声は高いしやっぱり女の子なのかなぁ?』
「…え?」
いきなりのよしのんの質問に俺は言葉がつまる。
顔に関しては、一度もフードを脱いだことがないから仕方ないが、まさか男と解っていなかったのか。
君付けだからてっきりわかっていたものだと。
「よしのん、私は男だよ」
『そうだよねぇ、ねぇねぇ!トウヤ君の顔、見せてくれないかなぁ?どんな顔かよしのん、見てみたいなぁ』
「ふむ、私の顔か」
『いやいやぁ、真っ黒なフードの中に隠れたその顔には、すっごい興味がある!駄目かな?』
「…まぁ、フード位なら取ってもいいか」
そう言ってフードに手をかける。
「後、私の顔など大したことないから、あまり期待しないでほしいのだが」
『いいから、ほらっ!』
急かすよしのんにため息を付く灯夜は、フードを取り払った。
バサッと音と共に、フードの中に隠れていた顔が現となる。
最初に目についたのは肩近くにまで延びたキラキラと輝く金の髪だった。さらさらと風に揺れる金髪は、眩しく輝いている。
次は、長い間太陽に晒されなかったのか真っ白な肌。
童顔だが、ある程度整っている顔。
そして何より目を引かれたのは、彼の瞳だった。
髪と同じ黄金に輝いているが、妖しい魅力がその瞳にはあった。
灯夜の素顔を見たよしのんは、凍ってしまったかのよあに動かなくなる。
灯夜は、自分の顔の何処が面白いのだろうかと考えながらフードを被り直すと、フードの中が暗闇となり見えなくなった。
「ま、こんな顔だ。これと言って面白くは――」
『トウヤ君、すっごい美人じゃん!!なんで今まで隠してたの?いやぁ、まさかフードの中にこんな顔を隠してたんなんてトウヤ君って恥ずかしいやがりさんねぇー』
「別に隠していたわけではないが、好き好んでフードを脱ぎたくなかっただけだ。因みに、美人と言うのは女性に使うのではないだろうか。せめてイケメンとか」
『あ、女顔だから隠していたのかなぁ?それなら気にしてたらゴメンね?』
「…いや、もういいや」
色々と諦めた灯夜は、もう二度と人前でフードを脱がないと決めた。
さて、暫く歩いて服屋に着いた灯夜達だが、店に入ってきた灯夜達の服装を見た店員は訝しげそうに見ていたが、本人達は気にせず服選びに夢中となっていた。
今は更衣室の前で灯夜が待ち、中で着替えているよしのんが出てくるのを待っていた。
『うんしょ、ふぬぅー。片手だと着替え辛いわねぇ』
苦戦しているのかごそごそと言う音と一緒に声が聞こえる。パペットを持っている手じゃ厳しいだろうな。
さらに時間が立つと、お待たせーと言いながらカテーンを開けて出てくるよしのん。
「ほぅ、なかなか似合っているじゃないか」
よしのんの服装は、薄水色のワンピースに麦わら帽子だ。
「だが、今の季節。少し寒いのではないだろうか?」
『そうだねぇ。なら、これを着てみようかな』
そう言ってカーテンを閉め、着替え始める。
暫くするとまた苦戦している声が聞こえる。
『あれー?入らないなぁ、ふぬぅー!って、おわわわ』
ドンッと音と共にごろんと更衣室からよしのんが転げ出てくる。
着替え途中だったようで服を片手まで通した状態で、あとは下着姿のよしのんが目の前にいた。
「大丈夫か、よしのん」
「……」
「ん?よしのん、どうかしたか?まさか、何処かぶつけたのか?」
無言のよしのんを心配した灯夜が近付くと、ずざざと後ろへ下がり距離を取られる。
「み、ないで…下、さい…っ!」
持っていた服を握りしめながら、恥ずかしいのか涙目で顔を赤くして灯夜を拒絶する。
いきなりのよしのんの行動に目を丸くしている灯夜は足元に見慣れたものが落ちていた。
「なるほど、パペットを落としたのか」
拾い上げて、四糸乃に渡そうとするが一定の距離を離され、なかなか渡せられない。
このままでは色々と不味いので(周りの目が)、パペットを四糸乃に投げ渡す。
四糸乃は、帰って来たパペットを直ぐに手に嵌める。
『いやぁ、転んじゃうなんてよしのんドジっ子!』
「次から気を付けてくれ」
ケラケラと笑うよしのんに俺は注意し、ため息をつく。
そんな事があったが、それから服選びを再開し、幾つかの服を決め購入した。
勿論、服の代金は俺持ちである。
よしのんはこの世界の金を持っていないから、仕方ない。それに、手持ちの金ならかなりあるから大丈夫だ。
『奢ってもらっちゃって悪いねー』
「気にすることはない。金銭ならいくらかある。それより、本当にその服装でいいのか?」
今のよしのんの服は、元のレインコートだ。
『ふふーん、この服はまた今度の時に着る事にするよ』
ニヤニヤと笑うよしのん。まぁ、本人がそれがいいならこれ以上言わなくていいか。
服屋を出ると相変わらず雨が振り続いている。
そう言えば、天気予報では晴れると言っていたが大外れだな。
「…?」
灯夜はキョロキョロとなにかを探すように周りを見回し始める。
『どうしたの?』
「いや、誰かに見られてたような気がしたんだが…気のせいか?」
『ふっふっふ、もしかしたらトウヤ君の隠れファンか何かかなぁ?』
「はは、それは無いかな。さて、次は何処に行こうかね」
歩きながら次のデートスポットへ行こうとすると、急にローブが何かに引っ張られるのを感じ足を止める。
隣にいるのはよしのんだけだが、よしのんが引っ張っているのか?
そう思いながら隣にいるよしのんを見ると、確かによしのんが俺のコートを引っ張っていた。
だが、少し違っていた。
引っ張っていたのはよしのんでは無く、四糸乃本人だった。
「…ぁ、その……」
小さな声を出して何かを伝えようとしているが聞こえない。恥ずかしいのか顔を少し赤らめている。
「ゆっくりでいい。言いたい事があるのだろう?」
出来るだけ優しく言ってみるがどうも威圧的だ。
四糸乃は一瞬で顔を真っ赤に染め、下を向いてしまう。
『あらぁー、四糸乃ったら。ほら、トウヤ君に言いたいことあるんでしょ?』
よしのんは四糸乃を急かすように言う、たどたどしい言葉で喋る。
「さ、っき…はごめ…んなさ、い」
「…さっき?ああ、別に気にしていないさ」
灯夜は今ので三度目彼女達に驚かせられている。
まさか、封印前で四糸乃が表に出てくるとは…
四糸乃は二つの人格を持っており、今まで話してきたよしのんというのは、自らの臆病故に暴走しがちな自分の力から世界を守ってくれるヒーローとして、生み出したもう一人の別人格だ。
いつもはよしのんに身体を任せているはずが、なぜ今出てきたのだろうか?
やはり、四糸乃パペット編は完全に崩壊したと見た方がいいな。なら、士道が四糸乃を封印する可能性が低くなる恐れが、いや彼女の行動を見れば限りなくゼロに近いと見て間違いない。
原作ではASTの攻撃にされる中、一人で寂しく泣いていた所へ颯爽と命がけで無くしたよしのんと再会させた士道に心を開いていき、霊力の封印するが…
この状況じゃ無理ですよねー。
「…ぁ、あと…そ、の」
まだなにか言いたそうに、よしのんを着けていない手をもじもじとする。
なにこのかわいい生き物?
『もおぅー、トウヤ君って鈍感さんねぇー。四糸乃はデートなんだから手を繋ぎたいって言ってんだよねぇー?』
「よ、よしのんっ!」
よしのんの口を押さえる四糸乃。もごもごと何か言いたそうにしている。
「その…だめ、ですか?」
「駄目ではないよ。私もデートなのに初歩的なことを忘れていたよ」
そう言い灯夜は、四糸乃に手を差し出す。
四糸乃は、また顔を赤くして震えながら自分の手を灯夜に手に近づけるが、途中で躊躇う。
思わずその姿に微笑みその手を握ると、ビクッと震え赤い顔を更に赤くする。
四糸乃はあうあうと言って、どうしたらいいのかわからなくなっている。
「と、灯夜、さん」
「なにかな?」
「手…暖かい、です…安心、します」
「…そうか、私の手でよければいくらでも差し伸ばすよ四糸乃」
「…は、ぃ」
「よし、それじゃあ行こうか」
灯夜達はそのまま手を繋いだままデートを再開していった。
近くの建物から覗く影に気づかぬまま。
最近スマホから書いている作者です。
主人公の服装、結構悩んだんですがやっぱりこのまま変態ローブを突き通したほうがいいかなと思い今回のようになった。後悔はしていない。
さて、最後のほうによしのんではなく四糸乃が出てきましたが、不自然ですかね?
四糸乃は、よしのんというとは人格の後ろに隠れているだけだから別に出てこれないわけだろうと思って書きましたが・・・
そして、最後の影はいったい何なのか。
次回、最終デート
※2017/4/25