デートアルケミスト   作:+無音+

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間違えて別の作品に更新してしまっていた……
教えてくれた方ありがとうございます


第十六話 交渉【前編】

喫茶店ケミストで、不穏な空気が流れているのを士道は感じ、居心地悪そうにそわそわとしているのを横目で見てから視線を前へと戻す。そこには五河妹がこちらを睨み付けて立っている。どうやらちゃんと招待状は受け取ったようだ。

俺はへらへらと笑いながら言う。

 

「おや、お気に召さなかったのかな。ただ、お兄さんと精霊がいると書いてあっただけだが」

 

「どの口が言うのかしら」

 

何故か機嫌が悪い妹さんに席を勧める。勿論、士道の隣だ。

琴里が座ったのを見計らったように何時から居たのかわからない黒執事が飲み物を出す。

それに琴里は驚くが、礼を言ってカップを手に持って匂いを嗅ぐ。

 

「別に毒なんで入ってはいないさ。御客さんにそんな失礼なことしない」

 

「どうかしら、怪しい風貌の貴女に言われても説得力ないわよ」

 

そういって一口口に含み、味を確かめてから飲み込む。

 

「……美味しいわね」

 

「ウチの黒執事が作るのは美味しいからな」

 

自分も飲み物を手に取る。今日はコーヒーの気分。

……黒執事よ、砂糖とミルクを所望する。

黒執事を呼ぶ、前に目の前に砂糖とミルクを置かれる。分かっているなら最初から出しても良かったんだよ?

俺が、砂糖とミルクを投入しているのを見計らって、士道は俺に声をかける。

 

「なぁ、なんで琴里が来たんだ?」

 

「ん?私が招待したから」

 

「脅迫状でね」

 

「脅迫状?」

 

士道が、首をかしげているのに琴里がポケットから紙を取り出す。

それは1つの封筒だった。勿論、俺が送ったものだ。

丁寧に封蝋も付けてある。封蝋の模様はフラメルの十字架だ。

士道は、受け取った封筒の中の手紙を見て内容を読み始める。

 

「『貴方のお兄さんと保護対象の精霊は、私が預かりました。返してほしければ代表者一人のみお越し下さいまし』……脅迫状じゃねえかよ!」

 

「だからそう言ったじゃないの。数分前の事も覚えきれないの?だからウチワヒゲムシなんだから」

 

妹の相変わらずの口の悪さに士道はガクっと落ち込む。

それを見ている俺は面白そうに笑う。

見てて飽きないな。うん。

 

「ま、士道が単細胞なのはどうでもいいわ。それで、何故私を呼んだのかしら?」

 

「おや、別に君が来るようにとは書いてなかった筈だが」

 

「ええ、そうね。でもこの手紙には士道のことを兄と書いてあったつまり、私を示して書いたってこと」

 

「……ふむ」

 

どうよ、とドヤ顔を決めている琴里には悪いんだが、そこまで考えて書いた訳じゃないんだよなぁ。

正直、令音さんでもよかったし。自分で言うのも何だけど普通に考えて司令官自らこんな怪しいやつの所に来るか?

 

「君がそう思いたければそうすればいい。私は特に言うこともない」

 

「そ、ならさっさとここに呼んだ理由を言いなさい」

 

「せっかちな人だ。君を呼んだのは幾つかあるがまずは四糸乃について」

 

隣にいる四糸乃を指を指して言う。

 

「四糸乃?その子の名前はよしのんじゃないのかしら?」

 

「いや、腕につけているパペットがよしのんだ。詳しいことはそちらで調べてくれ」

 

「わかったわ。それで、四糸乃をどうすればいいの?私達、ラタトスクとしては保護したいのだけど」

 

「その保護についてだ。彼女は私が保護したいと思っている」

 

「本気で...言ってるのかしら?」

 

俺の発言を聞いた琴里の目が細められる。

 

「ああ。君たちラタトスクは精霊の保護を目的としている。それは間違いないな」

 

「ええ、そうよ」

 

「それは、上層部皆が思っていることなのか?」

 

「....」

 

それを聞いた瞬間、琴里は沈黙する。

原作では士道が今まで封印してきた精霊の力が暴走した際の処置として、フラクシナスの司令官であり妹でもある琴里に始末するように指示を受けている。

確かに、彼らの選択は正しい。だが、それではASTたちと何ら変わらない。

それに四糸乃を封印しなければ士道は暴走しないかもしれない。

だが、それでは四糸乃が常にASTに危機に晒さ続ける。

 

「そんな組織に彼女を預けるわけにはいかない」

 

「でも、貴女が保護したとしてもASTから守りきれるの?今回の事があってよくそんなことが言えるわね」

 

「……」

 

琴里の言うとおり。士道と四糸乃を守れたが自分が犠牲となった。

何とかなったが、もしあの場に人類最強が居たのなら、例え瞬時に身体を錬成している間に仕留められていただろう。具体的に、頭と胴体がお別れして。

この力も、万能であるが使いこなす人物が未熟なら意味がない。それが今回の事でよく理解した。

 

「確かに。今の私では厳しいだろう。だから、君たちフラクシナスの力を借りたい。期間限定でもいい。無論、タダとは言わない」

 

トンッとテーブルを叩くと、青い錬成光が放ちテーブルの上には何かの機械がごろごろと錬成される。

 

「私が壊してしまったフラクシナスの観測機の数だけある。承諾してくれるのならそちらが望む物を出そう」

 

「物で釣ろうってわけね」

 

「そういうことだ」

 

琴里は、少し考えた素振りを見せた後に顔をあげる。

 

「……何が目的なのかしら?」

 

「ん?」

 

「正直、その申し出は有り難いわ。ええ、私たちも力を貸してあげる。でも、どうしてそこまでしてその子を守りたいの?守りたいなら、私たちのとこで保護した方がマシよ。悪いことは言わないわ。今すぐに彼女を━━━」

 

「別に、私は彼女を任せても良いんだよ」

 

「え?」

 

琴里の言葉に被せるように言う。いきなりのことに戸惑いの表情を見せる。

 

「彼女を守りたい、私はそう思っている。君や士道が精霊を保護、守りたい気持ちも解る。だが、彼女はどう思っている?全く知らない訳が解らない組織に守ってやる、保護してやる。そう言われて信用するか?自身を任せられるか?」

 

「それは、士道が―――」

 

「そう、士道が渡り橋となってくれる。相手が士道を信用すれば士道自身が安全と言う組織に保護を求めるだろう。士道自身も精霊を守りたいと思っている。

はっ、使い勝手の良い兄だろうな」

 

ここまで言われた琴里は、顔を赤くさせ怒りで身体を震わせている。

今にも拳が飛んできそうだ。いや、飛んで来るのは砲弾か?

 

「だが、結果的に精霊は救える。兄が死にかけようが、他人が死のうが、精霊を救えればそれで言い。こんな過程は重要では無い。結果が全て。結果良ければ全て良し。ハッピーエンドだ」

 

「……そうね。だけどね、そうならないよう私達フラクシナスが全力でサポートするのよ」

 

琴里は、鋭い目付きで睨み宣言するように言い放つ。その瞳の奥には確かな意思が感じられる。放った言葉が彼女の本心だと。

 

「……わかった」

 

「え?」

 

「四糸乃の保護は君達がやってくれ。そこまで言うのなら彼女を、精霊を守ってくれるのだろう?」

 

「え、ええ。勿論よ」

 

相手がいきなり賛成してきたのに戸惑う琴里。

 

「なら、先ずは四糸乃を探さないとな」

 

「え?」

 

隣を指差し、それに釣られ琴里たちの視線を俺の横に向けると空になった器と誰もいない席が移る。

 

「どうやら、隣界へ戻ってしまったようだ。次現界するのを待つしかないようだな」

 

「あんた、わかってたわね」

 

「さてさて?なんのことやら」

 

「まあいいわ。それで、他にも何かあるんでしょ?さっさと話しなさい」

 

「せっかちな妹さんなこと。……私のことについて。君達は私を精霊として観測しているようだが」

 

「そうよ。識別名〈アルケミスト〉。物質を他のモノへと変える錬金術師。貴方にぴったりな名前ね」

 

あ、俺の識別名〈アルケミスト〉なんだ。

てっきり災厄とか深淵みたいな識別名かと思ってた。

 

「確かに、私にぴったりだ。まあ、今はそれは置いておこう。協力に承諾してくれる君達に私の事でも話そうかと思ってな」

 

「貴女の事?」

 

そのことに疑問に思うが、攻略の幅が増えるのは良いことだと思い直し聞くことにする。

 

「私は……精霊ではない」

 

その言葉に琴里の顔は不機嫌そうで呆れているような表情となる。

 

「……それは無理があるんじゃないかしら」

 

正直、その言葉に琴里は呆れ一瞬言葉が出なくなる。

それに対し、やれやれといった態度で話し始める灯夜に顔をひきつらせる。

 

「本当にそう思っているのか?霊力が確認されず、空間震も初めて現れた時のみ」

 

「霊力をうまく隠せる精霊もいるし、空間震も静粛現界すれば問題ない筈よ。それだけでは貴女が精霊ではないと言い切れない」

 

琴里の言っていることに一番良い例が狂三だろう。隣界に帰らず任意で空間震を起こす。霊力も観測機で直接観測しなければ分からないほどだ。他の精霊も出来るかは知らんが。こちらの世界に然程興味がない限りそんなことはしないだろう。

 

「なら、これならどうだろうか」

 

今まで隠してきたフードに手を掛け、取り去る。

幅迫っていた視界が一気に広がる。頭全体で店内の涼しい空気を感じられる。

うーん、フードが無いと落ち着かないな。

さて、お二人の反応は如何かな?

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

目の前の精霊は、自分は精霊ではないと言い出すことに琴里は困惑している。

精霊じゃなければ今までのあれはいったいなんなのよ……

今までも起こしてきた事象を思い出す。

だが、確かに目の前の精霊は精霊らしくない行動が多い。最初はそんな性格の精霊なんだろうと思っていたが次第に疑念が出てくる。

もし、本当に精霊じゃないなら……

 

「なら、これならどうだろうか」

 

目の前の彼女は出し惜しむかのようにフードに手を掛けて、ゆっくりと脱いでいく。

フードから現れたのは、黄金だった。

光に反射してキラキラと輝く金髪。髪と同じ色をした瞳がうっすらと光を放っている。

そして、整った中性的な顔立ちをしていた。

なかなか、綺麗な顔をしてるわね。それを見せてどうするのかしら?

 

「私、いや俺は男だ」

 

……?…………はぁ!?

 

いきなり何を言ってるんだこの精霊は。

おとこ?精霊なのに男?いや、こいつは自分を精霊じゃないと言ってたけど……いやいやそんな筈は。

 

「そんなに疑うならこの部屋にある観測機で俺を確かめれば良い。これ程の距離だ。正確な観測結果が出るだろう。そっちには優秀な解析班がいるだろ?」

 

本当にどこまで知っているんだこいつは。

琴里は、言われた通り耳につけているインカムでフラクシナスに連絡を取る。

出たのは令音だ。丁度良い、今すぐこの精霊を解析して貰おう。

 

「令音、アルケミストの解析をーーー」

 

『既に彼女、いや彼を調べ終わった所だよ』

 

令音は、私の言葉を遮って驚くことを言った。今、彼って……

 

『間違いなく彼は男だ。その上霊力の反応はない……彼は精霊ではない』

 

「……なんですって?」

 

驚きを隠せない私を見ている目の前の精霊モドキは、ムカツク笑みでこちらを見ている。

……余談だが、灯夜が着ているローブは、その上から通して観測機での解析などが出来ないようになっている。

フラクシナスは、まずはそのローブから解析しようにも機械が解析不明とエラーを吐き出しお手上げ状態だった。

そして、今フードを脱いだ灯夜に対し一時的だがその効果が消え観測機での解析が可能となった。

 

「分かってくれたか?」

 

「……ええ、納得はしてないけど」

 

「俺が男で、精霊では無いと認識してくれるだけで結構。正体を見せたのは君たちに対して信用を得るため。それと君のお兄さんに攻略されるのだけは御免だからね」

 

そう言いながらまたフードを被り、素顔を隠す。フードを被った瞬間、中は黒く染まり顔を見えなくしていた。一体どういう仕組みなんだろうか。

 

「お、俺も男には興味ねぇーよ」

 

「の割には会ったときにナンパしてきたけど?」

 

「あれはお前が精霊かと思ってだな!」

 

「精霊なら誰にも構わず口説くんだ。へぇー?」

 

「いや、ちがっ!?」

 

焦る士道を弄っている灯夜に、琴里は会話に割って入る。

 

「士道が男色なのはどうでも良いわ。四糸乃のこと以外にもまだあるんでしょ?」

 

「ど、どうでも良いって……」

 

落ち込む士道は無視する。このままじゃ話が続かないわ。と、思いきや

 

「あれぇ?士道君が男に走っていいの?琴里ちゃん、お兄ちゃんのことが大すーー」

 

最後まで言わす前に手に持っていたカップを顔面目掛けて投げつける。

 

い、行きなり何を言い出すのよこいつ!?

 

カップは、憎たらしく笑う顔に当たる前に見えない壁のような物に当たったと思ったら青い稲妻がカップから走り、その形を消していってしまった。

それに、忌々しげに睨み付ける。

 

「ほんとに何なのよ、それ……」

 

「既に知ってるだろ。錬金術だ。卑金属を貴金属へ精錬し、金属に限らず様々な物質を錬成する」

 

「私の知ってる錬金術とは程遠いわね……まるで魔法ね」

 

「行き過ぎた科学は魔法と変わらない。誰かがそう言ってたな。あのAST達が使う顕現装置(リアライザ)も科学技術によって魔法を再現するものだ。そう変わらんだろう」

 

「原理が全く違うわよ……そういえば、貴方が錬成したものを此方で解析してみたところ一部解析不明だったわ。丁度いいわ、これについて説明してくれないかしら?」

 

……え?解析不明?

 

 




前編と後半にわけてみました。






※2017/4/27
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