プロローグ
白い空間、筒状の部屋。上を見れば先が見えない程高い。
気づいたら俺はここにいた。
ここにくる直前の記憶がどうやら曖昧、というより無いに近いかな。
普通に学校から帰ってきて通学路って辺りから記憶に靄が掛かったかのように思い出せない。
いくら思い出そうとしても無駄みたいだ、今はこの部屋を調べるか・・・・
壁に近づいて触ってみる。暖かいようで冷たい、柔らかくて硬い奇妙な感触。
壁一周して調べたが出入り口は存在しない。床も同様。完全に隔離されているようだ。
あとは・・・・この上か。
上から落ちてきたのなら出入り口が無いことが説明がつく。しかもこの床は柔らかいから落ちた衝撃を吸収でもしたんだろう。
だから俺は無事なんだ。
……固くもあるけど。
なら、この壁を登っていきたいところだが足を掛ける場所どころか、継ぎ目もない。
八方塞。ツミ。
そのうち誰か来てくれるだろう、そう願いながら腰を下ろし床に座る。硬いようで柔らかい意味不明な素材だ。理解し難い。
待っているのも暇だ、暇をつぶせるような物をポケットなどから探す。
ガム、財布、携帯、ゴミなどなど。
携帯があることは嬉しい、早速使う。
電源ボタンを押してもうんともすんとも動かない。バッテリーがない....だと?
使えない携帯をそこ等辺に放り出しガムを食べながらごろごろと床に寝そべる。
こうなったら寝てやる。
そう思っても睡魔はこない。そういえば、昨夜はぐっすり寝たんだっけ?
ひたすらゴロゴロとしているだけ。文字通り、あっちこっちゴロゴロと移動して。
軽くドンッと何かにぶつかる。壁かな?なんて思い見ると人が立っていた。
「うおっ!!?」
驚きのあまり飛び起きたがバランスを崩し、後ろへと倒れ転がり壁へとぶつかり悶絶する。やっこいのかかったいのか解らん壁でも頭をぶつければ痛いのね。
相手は驚愕を顔に表していた。いきなり転がって壁にぶつかっている所誰も見れば驚くだろう。
「え...っと、大丈夫?」
相手は俺に声を掛ける。鈴のような凛とした声。聞き惚れるほど透き通った美しい音。
俺は痛みを忘れて思わずその声に聞き惚ける。そんな俺を見て心配そうにする。
俺は慌てて身体を起こす。
「あ、ああ!大丈夫、大丈夫だ問題ない」
立ち上がり、改めて相手の顔をみる。
まだ幼さが残る童顔の少女。肌が透き通るような白さ。宝石のように金色の瞳。燃えるような色をした紅。何もかもが美しかった。
相手に失礼だが生きた芸術、ともいえるだろう。
「き、君は....?」
「私は....天龍」
天龍?....軽巡洋艦?
ってこれはちょっといろいろと危ないか?
「天龍...それが君の名前なのか?」
「......皆にそう言われている...天をも揺るがす煉獄の龍。それが私」
RPG風に言うとわがうでの中で息絶えるがよいあたりの人なんじゃないですか、もしかしての。初めて出合ったヒト?、いきなりラスボス?ここで人生終了?
「えーと、強いの?」
「わからない、でも最高神と戦って引き分けだから...多分」
最高神って誰ですか?もしかしての創造神と同列の神様のことですか....?
何このヒト、強いじゃん。そりゃ、天をも揺るがすわな。てか、このひと神様?ドラゴン?
「うん、おーけー分かった。君には逆らわないほうがいいと言う事が」
「....?」
彼女は不思議そうな顔をして首を傾げる。その姿はあざとく可愛い。思わず顔を紅くしてしまう。
「おぅふ....と、ともかく!なんで俺ここにいるかわかる?」
胸の鼓動を抑えながら話を変える。
「それは私がここに連れて来た。貴方にお願いがあって」
彼女が俺を?お願い?
彼女の話は俺に疑問を増やすばかりだ。
てか、その前に連れて来たってそれ誘拐。
「貴方にはある世界に行ってもらいたい」
あれ、まさかまさかの俗に言うテンプレの転生ですか?特典とかあれば、ボク嬉しい。
「安心して、特典はある。だけど、ごめんなさい...こちらで既に決めてあるの」
あるんだ、でも既に決められちゃってんのかぁ。できれば自分で決めたかったな....幻想殺しとか。あ、あれは幸福とか全部消しちゃうからいらんかな。ならば、王の宝物庫とか無限の剣製とかニコポナデポ。やばい、此じゃあ踏み台転生だ。
「特典は....錬金術」
錬金術?あの、アニメの手を合わせてからの床とかに触ると発動するあれ?それとも、首に針刺して言葉のままに色々と書き換えるどM染みたやつとか?
「ちなみにどんな感じに?」
「貴方が錬金したいと思う物を錬金できる。鉱物でも食べ物でも生物でも創造物でもなんでも。貴方が望むもの大抵が錬金できる」
どうやら変態のほうでした。
万能やん。そんな力をくれるのか、無償で?
「ふふふ、どう?」
初めて笑みを見せるながらどうと聞いてくる。
「なんか、すごいとしか言えない」
うん、俺の語彙力の無さが伺える。
まぁこの人、最高神とか戦っているだけはあるといえるなぁ。
「褒めていいんだよ」
フンスと胸を張る天龍。なかなかの小山が主張する。
「さすが天龍、しびれるあごがれるぅ」
「えへへ」
褒めなれていないのか顔を染めて照れる天龍。うん、かわいい。かわいい。
「はっ!と、とにかく特典はあとで確認してっ。早く転生するから!」
忘れていたな・・・こいつ。
あれ?時間が無いの?
「じゃあ、転生するね」
彼女は指を鳴らすと何かが開く音がした。もしやと下を見たが穴は開いていなかった。
ではなんだろうか?っと思っていると上から何か落ちてくる音が聞こえる。
上を見ると遠い所為か黒い点にしか見えない何かが落ちてきている。
それはどんどん迫ってくる。一体なんだろ?
気づいたら既に眼と鼻の先まで迫っていた。
ガァアン!
金属音が響き渡る。俺は見事にデコと鼻をぶつけ蹲る。
どうやらタライが落ちてきたようだ。
くほっ!鼻がっデコがぁぁ......!!
「あ、間違えた」
「間違えた、じゃねぇよ!!」
「ごめん、もう一回」
もう一度指を鳴らすと今度は床に穴が開き俺は、落ちてい.....
「って、ふざけんなぁぁぁぁぁぁ..............!!!」
テンプレの如く、俺は真っ暗な闇の中に落ちていった。
■■■
白い空間に残った天龍は深い溜息を付いた。
その表情は疲れや呆れ、喜び。そして悲しみ。
それらが入り混じった表情で先ほど彼が落ちていった穴を見つめる。
「やっぱり・・・・私のことは」
小さく呟く。
【当たり前だね、記憶なんて消してあるんだから】
天龍の背後から声を掛けられた。
「....お前か」
振り返りその姿を見る。そこにはなんとも言えない、モノがいた。
全てがノイズのようにモザイクがかかっている、そこに『何か』がいることだけ分かる存在がいた。声は、男のようで女のような声。老人のようで子供の声。全てがあいまいな存在。
それを見た天龍は、嫌なものを見たような嫌悪する表情をしていた。
【彼は君の情報を記憶、記録、全て消してしまったじゃないか。期待なんてしないほうがいいと思うよ】
まるで全てを知った様な口でその『何か』が喋る。
「期待などしていない、私のことを覚えてるだけで迷惑だ」
【の割には緊張して、ドジって―――】
『何か』が言い終わる前に天龍は焼き払う。全てを焼き尽くす煉獄の炎で。
これであれを殺せたとは思えない。そんな考えを読んだのかその『何か』はまた、話しかけてくる。何処に居るか分からない、周りから聞こえるかのように。
【本当のことを言ったのに、酷いね。彼を私達の世界に招いてあげたと言うのに】
「ちょうどいい人材がいただけだ。別にあの男に特別な感情など一切無い」
そう言い切る天龍。
そんな天龍を見ている『何か』はクスクスと笑いながら気配を消していく。ただ、天龍をからかいに来ただけのようだ。
不機嫌な顔をした後、もう一度彼が落ちた場所を見る。その表情は先ほどの怒りだけではなく様々な表情が入り混じっていた。
「『灯夜』・・・・」
落ちた彼の名を呟きながらその姿を霧のように消えていった。
To Be Continued
どうだったでしょうか?
感想、誤字、脱字などの報告待ってます
書き直しで主人公の特典を天使から錬金術にしました。
錬金、中二心をくすぐられるような響き。
と思いながら、現実逃避する作者。
リアルがつらい今日この頃。頑張って更新していこうっ
※2017/4/22 更新