デートアルケミスト   作:+無音+

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今回は(も)短いです


第二十三話 忠告

 

 

時刻は、夕方。士道は、妹の琴里と共に通学路を歩き帰宅していた。

何か疲れたことがあったのか、士道の表情に疲労が見える。

 

「うちの学校に転校生がくるなんてなぁ」

 

そう、今日は転校生が転入してきたのだ。

黒髪で、前髪で片目だけ隠した以下にもおしとやかな少女。滅多にない転校生、しかも美少女と来れば大興奮だろう。その証拠にクラスの男子は少女を見て大興奮だった。

だが、それだけでは終わらなかった。

 

「まさか、あの子が精霊なんてなぁ」

 

「本当よ。まあ、でも探す手間が省けていいわ」

 

その少女は、自己紹介で自分を精霊だと言ったのだ。

そのままにしていればクラスの人気者(男子から)だった筈だが、その一言で周りから電波少女扱い。

一般人が聞けばそう思うだろう。

だが、士道は知っている。精霊が何なのかを。

少女は、他の生徒には目もくれず真っ先に士道の元へ足を運んできた。

そして、学校の案内を頼んできた。

此方としても、攻略するに当たって有難いがこうも積極的だと尻込みする。

フラクシナスにも連絡を取り、攻略が始まる。

攻略は順調に進み、途中アクシデントがあったものの相手の好感度は悪くないもの。

このままいけば、霊力封印まで行けると妹の考えだ。

 

と、そこで前から歩いてくる人影に気付く。

そいつは、まるでそこに闇があるかのように真っ黒なローブを羽織、頭をローブですっぽりと被っている。明らかに不審人物だ。

 

「あれ?灯夜じゃないか」

 

「げっ」

 

露骨に嫌な顔をする琴里に苦笑する。

そう、前から歩いてきたのは灯夜だった。

灯夜は、士道の声に気付いていたのか此方へと近寄る。

 

「やあ、五河兄妹。学校生活は楽しんでいるかな?」

 

当たり障りのない挨拶を言う灯夜。見えない顔にはきっとニヒルな笑みを浮かべているのだろう。

 

「相変わらず真っ黒な服装ね、あんたは」

 

「灯夜は、何をしてるんだ?後、前から気になってたけどその服装暑くないか?」

 

「なに、ちょっとした散歩だよ。あと暑くない」

 

「外出るくらいそれ脱げよ」

 

「断る。この姿こそ私の個性だからな。これがなければただの錬金術師となってしまうではないか」

 

何も変わらないだろう、と心で呟くが口には出さない。

 

「ところで、士道。聞きたいことがあったのだが少し良いだろうか?」

 

「聞きたいこと?これから夕食の準備が」

 

「なに、そんなに時間は取らせんよ。少し聞きたいことがあってな。士道のクラスに転校生が来たようだな?」

 

「あれ?なんで知ってるんだよ」

 

いったいその情報を何処で仕入れてくるのか、謎でしかない。

もしかして、こいつ。俺をつけて....

 

「安心してくれ。ストーカー紛いの事はしていない。ちょっとした風の噂で聞いたのだ。それに、そいつは精霊だとか」

 

まあ、こいつに至っては何があっても不思議じゃないしな。

 

「まあ、そうだけど」

 

「なら、士道。これは忠告だ」

 

急に真面目な声色になる灯夜。何時もは人をからかうが今は違う。

 

「あの女に気を付けろ。今までの精霊とは違う。油断すれば喰われるぞ?」

 

「....え?」

 

俺が、喰われる?

灯夜の言葉に思考が止まる。

 

「ちょっと!一体どう言うことよ」

 

いきなり、兄が喰われると言われ琴里が灯夜に怒鳴りこむ。それに対して灯夜は、気にも止めずにいた。

 

「そのままの意味だ。私から言えるのはここまでだ。では、また」

 

「あ、おい待て!」

 

「待ちなさい!」

 

呼び止めようとするがそれより灯夜の練成が早い。

赤い閃光が、周囲に飛び散ると灯夜の身体が重力を無視したように浮き上がりそのまま飛んでいく。

そのまま、蜃気楼のように揺らぎ消えていった。

残された士道と琴里は、唖然とするが士道は先ほど言われた言葉を思い出す。

 

「喰われるって、狂三が?」

 

前髪で片目だけを隠した少女の顔を思い出す。いきなり転校してきてこっちに積極的だがそんな風には見えない。

だが、灯夜が無意味にそんなことを言うはずがない。

 

「士道、灯夜の事は気にすること無いわ」

 

「あ、ああ」

 

琴里の言葉に返事を返す。

そうだ、既に狂三の攻略が始まっている。今さら引き返すなんてできない。

士道は、灯夜の忠告を心の奥へとしまいこんだ。

 

だが、士道は知らない。精霊が、時崎狂三がどのような存在なのかを。

 

 

 

 


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