デートアルケミスト   作:+無音+

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【三行あらすじ】
・主人公転生&現界
・空間震で天宮市ピンチ
・折紙退場


第二話 逃避

デパートに入った俺だが、いつの間にか服装がローブへとなっていることに気が付いた。

ブカブカのローブは俺の肌に馴染み、違和感を感じさせない。まるで身体の一部のようだった。

これといって問題はないようだから置いておくことにした。出来れば鋼兄弟の兄のほうの服装が良かったが。

 

そこで、二階で見つけたカフェテリアへ入っていった。

小さめのカフェテリアは今の俺にとっては休憩場だ。

店内は空間震でテーブルやら椅子などが倒れているが、そこまで酷くはない。

少し小腹が空いた俺は錬金術の確認と同時にまずはこの乱雑とした店内を変えていく。

 

天龍が言ったとおりなら望めば錬金できるみたいなことを言っていたが言うなら簡単だが、いざやるとなるとどうしたものか。

最初は何かモーションを使ってやってみよう。

 

思いついたのが、手を合わせ床に付くこと。例のアレだ。

どう練成するかイメージする。錬金といえば金?鉱物?宝石とか?

そして手を合わせ、床に付く。

 

するとどうだろう、青い稲妻を発しながら壁、床、天井を変えてゆく。

様々な色をした壁、床、天井が現れた。光り輝く宝石の数々。

イメージが曖昧でこうなったか......

 

なら今度はモーションなしで家具のほうを変えていく。まずは分解、再構築。全てを金へ変えていく。

今度は成功した。モーションも必要とせずにできた。

目の前には金のテーブル、金の椅子が並んでいた。

それに座ると金持ちになった気分だ。座り心地は最悪だがな。

 

さて、次に移ろう。

まずはテーブルの一部を練成していく。そこからカップと皿を練成。

ふむ、質量を自由に変えられるようだ。

そのカップの中にティーを練成しようとする。

これも成功のようだ。沸くように水が現れる。それはレモンの香りがする。レモンティーだった。

それを一口、味もちゃんとある。

茶だけでは物足りない。ケーキも出そう。

ポンっとケーキを練成していく。使い方が慣れてきて一瞬で出せるようになってきた。

ケーキはショートケーキ。ちゃんとイチゴも乗っているぞ。

一切れ、口へ運ぶ。甘い生クリームとスポンジの柔らかさ、イチゴの酸味。

これが俺が創ったとは思えないな。

口の中に残った甘さを紅茶で飲み込み、これについて考える。

 

錬金術には等価交換の法則があるはず。これらを見ると質量の法則を無視している。

なら、魔術のほうの黄金練成(アルス=マグナ)のほうだろうか?

でも、あれは世界を思い通りに歪める力。これとは違うだろう。

死ねといえば死んじゃうとか、記憶を消したり。

オリジナルということか・・・

黄金練成とまではいかないが十分チートだな。

 

とにかく、これからもいろいろと錬成していこうと思う。何ができて何ができないのかがまだわかっていないからだ。

もう一口、紅茶を飲み外からこちらを見ている何かをどうするか考える。

 

ついさっき気づいたけどじっとこっちを見ている視線?を感じた。

多分、それの観察機だろうなぁ。

 

・・・・いやいやいやいや。

 

観察機出すってことは精霊が現れたってことだよな。

つまり、観察されている俺が精霊?そんなバカなことがあってたまるか。

俺、霊力とか霊結晶持っていないし。

 

と、とにかく壊しておくか。

 

踵で地面を叩くと、俺を見ていた視線が消えたことがわかった。

何をしたかっていうと、錬成で観察機を分解しただけ。

対象を目視で確認しなくても錬成ができるのか?

次は遠くのものを錬成してみるか・・・・

 

現実逃避をしながら店内から出て行く。

彼にとってつらい現実が待ち受けているとも知らずに・・・

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

〈フラクシナス〉の転送装置でデパートの前に送られた士道は、右耳に装着した小型インカムに向かって言う。

 

「ここで・・・いいのか?」

 

できるだけ周りを見ないようにして見る。

唯一ここだけが崩れずに残っている。偶然なのか、それとも。

 

『ええ、さっきの映像ではそこの階で確認されたわ。今、他の観察機を送って探しているわ』

 

新たに出現した精霊、〈アルケミスト〉が居るであろう、この大型デパートに来ている。

観察機で確認されたが、破壊され直ぐに他の観察機を出したが既に行方をくらませていた。現在、行き先は不明のようだ。

あの映像やカフェテリアから採取された物質から〈アルケミスト〉は物質を別の物へと変換させる力があるようだ。

光り輝くカフェテリアのあの有様がそれだ。

精霊自体に今のところ危険性がないが、現界したときの空間震は十香のときよりもはるかに危険だ。

もしあの空間震が地上で起きたのなら、天宮市は地図から消えていたそうだ。

 

これよりも被害が?

 

それに聞いたときには恐怖で身体が震えた。あれよりも人が...?

 

 

四月、中旬。このインカムをつけて、〈ラタトスク〉の指示を仰ぎながら、十香と会話をしたときを思い出した。

それから、半月しか経っていない。再び戦場に舞い戻ることになるとは思ってもみなかった。

だが、それも仕方ないだろう。

この精霊を封印する力があるから。これを使えば空間震を止められ、精霊も助かる。

 

「まあ、っていっても」

 

小さく息を吐く。その方法が、精霊を口説いてキスすることだというのだから、士道にはいささか難易度が高い。

彼女いない暦自分の年齢。そんな自分ができるのか?

・・・既に十香のときでやってしまったが。

 

『――士道。〈アルケミスト〉を見つけたわ』

 

あの精霊は〈アルケミスト〉となった。たしか、錬金術師って意味だったかな。

 

「・・・!何処に」

 

『屋上よ。今のところ移動する様子はないわ』

 

「わかった」

 

そう琴里に伝え、屋上に行くための道を探す。

 

「エレベーターは・・・使えるわけ無いか」

 

電力がないためエレベーターは使えない。ふと、中央のエスカレーターが見えそれをつかって上へと上がっていく。

 

 

 

 

 

途中から階段へと変え、少し乱れる呼吸を整え屋上の扉の前で緊張する。

扉は何故かスライド式になっている。〈アルケミスト〉が変えたのか?

扉にかける手が止まりそうになるのを抑え、一気に開く。

 

 

視界が一気に広がる。

青空が見える屋上。そこから見える廃墟と化した街。それを見て顔をしかめてしまう。

落下防止のフェンスに誰かいる。

黒いローブを着た人物。件の精霊、〈アルケミスト〉だ。

士道に気づいていないのか〈アルケミスト〉はただ街を見るだけだ。

 

「え、っと」

 

『士道、待ちなさい。』

 

右耳から琴里の声が聞こえてくる。

〈フラクシナス〉が精霊をモニタリングでサポートし、士道の対話を手伝っているのだ。

幾つかの選択肢からクルー達が選ぶという。中には酷いものがあるが・・・

少しすると琴里から指示がある。

 

『――士道。今から言うことを言って頂戴』

 

「ああ、わかった」

 

士道は精霊の近くへと歩いていく。

するとやっと気づいたのか、こちらを見てくる。

そこで琴里に言われた通りに言おうとする。

 

「俺は名は、五河士道!よろしくぅ!!」

 

「・・・・・」

 

結果は壮大にスベッタ。琴里にいろいろ話し、どうするかと聞いていると。

 

「はぁ・・・」

 

ため息が聞こえた。重々しく吐かれた息は空気となって溶けていく。

 

「あー、五河 士道だったか?」

 

凛とした声で話す〈アルケミスト〉。その声からは疲れたものを感じる。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

屋上で外を眺めている灯夜。その顔はフードの中であって見えないが酷く窶れている。

ここに来る前に、尿意を感じトイレにいった。そこまではよかった。トイレでローブのフードを取るとそこには自分の記憶とは違う顔があったのだ。

黒かった髪は金髪に、茶色かかった黒瞳は髪と同じ金色へ、そして顔が前より若く変わっていた。

俺の嫌いな顔、昔から女顔でバカにされてから嫌いになった。今となってはなんとも思わない。

それにしても。

 

俺は外国人だったのか・・・・

 

んなわけねぇよ!!

 

昔も今も日本人だよ。今は変わっているが・・・

どうしてこうなった。

 

さっさと屋上へ上り、屋上の扉を意味無くスライド式の扉へと錬成し入っていく。

外の様子は変わらず廃墟。

 

ここからだと俺が現れた場所のクレーターが見える。

俺がこの世界に現界したために出来たクレーター。吹き飛ばされたように倒壊しているビル。

全てが破壊されている街。もう、気づいている。

 

街の人たちを殺したのは俺だ。

 

身体能力までも変わったのか、強化された視界ではあっちこっちで人が倒れている。中には四肢がないものもいる。勿論、息はしていないだろう。

やっと出撃できたのか陸上部隊がまだ残っている人たちが救出している。

多くの人が死んだ。俺が殺した。

 

はは、人殺し・・・か。

 

そこで、屋上に他に人がいることに気が付く。

学生服を着た男子生徒。この世界の主人公、五河士道がそこに立っていた。

世界は、俺を精霊として認識したのか。

士道は口を開き、

 

「俺は名は、五河士道!よろしくぅ!!」

 

などと言う。

居た堪れない空気が流れる中、士道は何か呟いている。

右耳に付いているインカムで〈ラタトスク〉から指示を聞いているのだろう。

俺はこの空気に耐え切れずに。

 

「あー、五河 士道だったか?」

 

そう言ってしまった。

士道は驚きを顔に表していた。

 

「俺、いや私に一体何のようかな?」

 

「それは・・・」

 

インカムの向こうで止められたのか、言葉が詰まった。

これ以上、空気が凍るのは勘弁願いたい。

踵で地面を叩くと、インカムがポンッと音と共に動かなくなる。

 

「どうかしたのか?」

 

「い、いやなんでもないっ」

 

急にインカムが壊れたことに焦りながら答える士道。

それを見て、俺は笑う。

 

「さて、さっきの質問の答えを教えてもらうかな?五河士道」

 

士道の顔を見て、壊れた天宮市を見て。

 

嗤って哂って笑う。

 

 

 




空間震の余波を観測できなかったため街の人たちが避難できなかったということがわかりました。
少なからず、その事実に主人公は心を痛めているようです。
その為、倒れている人は見てない振りをしています。

では、次回は主人公とオリ主との対話になります。

できれば、オリ主の力の万能チートを見せたいと思っています。

※2017/4/24
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