・水も滴る士道
・店、開店
・シドーは灯夜の名を覚えた!
いくつもの店が立ち並ぶ大通り。今時刻は昼。街の人で騒がしいであろう通りには人の姿は見えない。
まるでゴーストタウンのようになっていた。
その中心、何もない場所に波紋ができる。
それは次第に大きくなっていくと空間が歪み始める。どんどん、大きくなっていく。
歪みの中に小さな光が現れたと思った瞬間、光と爆音が周りを支配する。
音と光が、止むとそこには別の光景があった。
空間の歪みがあった場所を中心に浅いすり鉢状に削り取られている。
店、街灯、電柱、道路の舗装すら全て無くなり、周囲も、悲惨な状況となっていた。
《空間震》
今のがそれだった。空間の揺らぎで起こる災害。となっている。
本当は、精霊と呼ばれるものがこちらの世界に現界する際の空間の歪みによって引き起こす突発性災害。
それが、この世界では当たり前に起こっている。
地を照らしていた太陽は分厚い雲に覆われ、光を妨げ周囲が暗くなった。
すると、ぽつ、ぽつと雨が降り始めてた。
次第に雨は勢い増し、水のカーテンを作り上げる。
冷たい雨の中、空間震によってできた穴に誰か立っていた。
緑色のレインコートを羽織った水色の髪と蒼玉の瞳を持った少女。
無人の街に彼女唯一人いるのは酷く異常だった。
雨に打たれながら彼女は、左に手に付けているパペットを持って表情の無い顔で立っている。何をする訳でもなく。
けたたましい音が空から降ってきた。
空には鎧のような奇妙な格好をした人間が数名飛んでいた。その手に持っている武器の照準は少女に向けられていた。
そして、その引き金が引かれ―――
「あー、寝すぎた」
ケミストの二階にある住宅スペースでその日を過ごしていた。
服装は相変わらず黒いローブ姿。いい加減服装を変えたらどうだと思う。
フードの上から頭を掻きながら一階、店内へと降りていく。
すると既に店を開ける準備をしているホムンクルスである黒執事、この店のオーナーがこちらに気づき礼で挨拶をする。
「あーうん。おはよ、いやおそようか?」
それに挨拶を返し、お気に入りである曇りガラスで仕切られた席に座る。
席に座ると黒執事が、トレーに食事を持ってくる。時刻は既に昼。この食事は昼食となるな。
「おー、オムライスじゃん」
チキンライスをふっくらとしたオムレツで閉じたオムライスが目の前に出された。オムライスにはこの店名である『ケミスト』とケチャップで書かれてた。
その隣には、コンソメスープにサラダの盛り付け。
自分が作ったホムンクルスに感心しながらスプーンを手に取り、一口食べる。
「うん、美味しい」
自然と感想が口から出る。それを聞いて満足したのか黒執事は奥へ戻っていった。
その背を視線で見送り、食事へと手を付けていく。
ちなみに、食料などは錬成で作ったもので実質ゼロ円です。
本当にこの力があってよかったと思う。
欲しいものは錬成。金が欲しいなら錬成。何か作りたいなら錬成。
錬金術万歳だ。
「食べ終わったらなにすっかなぁ」
正直、この世界に来てからやることが無い。
ゲームや漫画などを買って家に引きこもってもいいが、それはそれで暇すぎる。
だから、この原作に関って暇を潰す。
というのは建前で、好きなキャラに会いたいというのが本音。
狂三とか、八舞姉妹とか。四糸乃は昨日会ったな。
「そういや、何か忘れているような・・・」
そう呟くと同時に、けたたましい警報が鳴り響いた。
街中に響くその音は、街に危険を知らせていた。
「・・・そういえば、今日だっけなぁ」
まだ残っているオムライスとサラダを口にかきこみ、コンソメスープで流し込む。
とりあえず、黒執事にはシェルターに避難してもらおう。別にここに居てもいいが万が一のこともある。
それに、初めて造ったホムンクルス。愛着も沸く。
てか、この店大丈夫か?一応、特殊合金を挟んで建てているけど。
因みにこの店も俺が造った。勿論、ちゃんと土地は買った、一括で。
軽いストレッチをしていざ行こうとするが、避難していたと思っていた黒執事が俺にお茶を差し出してきた。
態々俺の為に残っていたのか?
灯夜は苦笑いでお茶を受け取り、一気に飲み干す。お茶は飲んでも舌が火傷しない丁度いい温度だった。
この何気ない優しさに愛着が沸くのだろう。
絶対この黒執事顔あったら、イケメンだわぁ。
黒執事に礼を言って、店内を出て行く。
「やっぱり、雨か」
天気予報では、今日一日は晴れ。だが今は雨だ。
用意しておいた傘を差し、駆け足で行く。
向かうは、商店街。
「よしっ行きますか!」
と気合をいれてものの、数十分後に空間震に巻き込まれるってどうよ?
埃やら土やらで汚れたローブを叩いて落としながら愚痴る。
いやぁ、まさか目の前で空間震で起きるなんて・・・・
商店街に着いた俺は、どこで空間震が起きるかわからないことに気づきトボトボと歩いていた。
商店街ということは分かっているけどどこかなんてわかんないよ・・・
そのときに、数メートル先の空間が歪み、突然の爆発。
近くにいた為、爆風で遠くへ飛ばされ、顔面を何度か打った。見事に鼻が折れたよ!イテェ・・・
とりあえず、生体錬成で鼻を修復。痛みもすっかり消えてたよ。
さて、ASTは既に現界した精霊を銃器で狙い撃ち。その精霊はぴょんぴょん飛んで逃げ回っている。
一応、俺も精霊だお。ASTの皆さん、精霊(誤認)はここにもいますよー。てか、ラタトスクに精霊認定されてるけどASTはどう判断してんだろう?
空を見ると銃弾の他にミサイルが飛び交い危険区域となっていた。あの中に飛び込みたくねぇ。
逃げ回っていた精霊は、どうやらデパートに逃げ込んだようだ。追っていたASTもそのデパートの周りで待機している。
しかも、そのデパート。俺が最初に入ったデパートなんですが。まさか二回もあのデパートに行くとわ。
そんなことはどうでもいい。今は中に入ろう。
デパートはASTが全方位で待機している。真正面から入ればアウト空からもアウト。
どこから入るか・・・
「・・・無ければ造ればいいじゃん」
無事、デパートに侵にゅ、ではなく入り口を作って入店。
一体何処から入ったのか。地面に空洞作って、そこからデパートに入ったのだ。
いやぁ、途中どっかの地下トンネルにぶち当たったときは驚いた。
丁度、列車が目の前に出てきたときはびびった。思わず分解してしまった。
トンネルに残っているのは不自然に一車両だけない列車。きっとASTの方々が直してくれるだろう。
さて、精霊はどこの階にいるのだろう。とりあえず、上へと上がっていく。
「精霊はどこだーい」
「ん?」
『お?』
案外早く見つかった。
ただ、四糸乃が士道に追い被さる様子が見えた。二人は俺の声が聞こえたのか此方を見る。
その光景を見た俺は。
「あ、警察ですか?今、幼い少女を襲っている青年が」
警察に電話を。
「待て待て!?これは事故だから!!それに、今は避難中だから繋がらないだろ」
「え、警察じゃなくてASTの本部ですか?なら、目の前の精霊より凶悪な獣を・・・」
「何処に電話掛けてるんだよ!?」
士道は俺の携帯を奪い取ると直ぐに切る。
冗談で掛けた先がまさかASTの本部に繋がるとは・・・
何故か息が上がっている士道を無視しよう。
「昨日ぶり、よしのん」
『おお!トウヤくんじゃない、昨日ぶりー』
器用にパペットを動かしながら喋るよしのん。
その隣には驚いたような顔をしながらインカムの向こうに小声で話しかける士道がいる。
「二人っきりだけど大丈夫だった?よしのんくらいの子が好みだと士道が・・・」
「そんなこと無いし、言った覚えも無い!?」
『あはは!士道くんはよしのんの誘惑に負けちゃったもんねぇ?』
「いつ誘惑してたんだよ・・・」
士道は疲れた顔をしている。士道も苦労しているのだろう。
「それで、幼い少女に押し倒され唇がゼロ距離だった理由を三行で答えなさい」
「み、見てたのか?」
「事後だけ。過程も見ていた子ならあっちにいるけど」
士道の後ろを指で指す。
そこには、士道にとって意外な人物がいた。
雨で濡れた黒髪を揺らして立っている少女。その少女からは身がすくむプレッシャーが(主に士道へ)向けられる。
彼女は、夜斗神十香。精霊、プリンセスと呼ばれる少女。
少し前に、士道が彼女の力を封印し、ラタトスクに保護され現在は地下シェルターに避難していたはずだが、何故かこの場にいた。
灯夜は、どうやってこの修羅場となりそうなこの空間から逃げようかと考えていた。
投稿が遅くなって申し訳ないです。
次回は修羅場です。
ちなみに、原作メンバーの性格を少々変えたいと思ってます。
苦労するのは士道だから大丈夫
※2017/4/25