竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
「はぁ……疲れた。にしても、ここが浅草か」
あれから一日中歩き、ついに東京にやってきた。
現代人からすれば遅れていると言わざるを得ないが、やはりこの時代だと相当都会なのだろう。
道行く人の服装が、今まであってきた人物と全然違う。夜でも明かりがあるというのが、こんなにも心強いのだと再確認させられた。
「……さて、この街から鬼を探すのか」
人が密集している中じゃ、気配を察知することも出来ないな。
だったらやっぱり目で探すしかないが、時間が掛かり過ぎるし……一度、上から見てみるか。
そう思い、近くの路地裏へと入って、壁キックで建物を登っていく。
屋上に辿り着き、一息つきつつ鬼探しをする。
「ふぅ。……眺めはいいけど、逆に分かり難くないかなこれ……?」
上から眺める限りでは、鬼らしき存在は見当たらない。まあ、見えるほど目良くないけど。
「……やばいな。原作じゃどうしてたんだ? 確か、匂いを嗅いでたと思うけど……」
匂い……ダメだ。空気の匂いしかしない。……空気の匂いってなんだろ。
「にしても、他の街と比べるとホントに人が多い――」
「何をしておるのじゃ小僧?」
「⁉」
背後から声を掛けられると同時に、俺は直感的に刀を抜いて背後に立つ存在を薙ぎ払う。
だが、俺の一刀は躱され、一撃は空を切った。
刀の先を見ると、毬を片手に持つ黒と橙色の着物を着た少女……否、鬼がいた。
「……何者だ」
「知れたことを。刃を振るった時点で、私の素性など見抜いておるのだろう? その問いかけに何の意味がある?」
いや、咄嗟に振っただけで別に見抜いてないですね。
っていうか、人だったら俺今頃殺人犯だったんじゃ……。
「…………俺は鬼殺隊、竈門炭治郎!
「いや、さっき切る気満々だったじゃろうが……まぁよい」
俺は宣誓し、再び刀を構え直す。
すると、毬の鬼はキャハハと笑い、上の服を脱ぐ。……えっ?
「ちょ! おまっ、なんで脱いで……!」
「何を慌てておる? そんな様では……死ぬぞ?」
すると、黒い下着に覆われた胸元から、
ちょっと待て。こいつ知ってる……というかあれだ! 無惨に騙されてる鬼の朱紗丸!
(まさか、こんなところで会うなんて……まあ、指パッチンでやってくるくらいだし、街に潜伏はしてたんだろうけどさ)
流石に予想外だ。
だが、それ以上に好都合だ。原作ではこの鬼と一緒に、矢琶羽という方向を操る鬼がいた。
この二人のコンビネーションが抜群に良いのだが、基本的に鬼は群れない。大正コソコソ話でも言っていたが、彼らは無惨に呼ばれるまで会ったことがないはずだ。
つまり、ここで彼女を倒せば、いずれ起こるかもしれない矢琶羽との戦いも一対一になり、楽になる。
「はぁぁぁぁーーっ!」
全集中の呼吸で身体能力を高める。全集中の呼吸・常中は今のところ十二時間程度しか持続できないが、いずれは一日中出来るようにしたい。
俺は朱紗丸へ攻撃を仕掛ける。それに対し彼女は、毬を一つ、凄まじい力で投げつけてきた。
「水の呼吸、【漆ノ型 雫波紋突き・曲】ッ!」
斜めから曲線に突くように、刀を突きだす。朱紗丸の投げた毬がそれに衝突して、刀が毬を貫通した。
俺はそのまま、刀に突き刺さる毬を、刀を振って落とし、朱紗丸へと接近する。
「チッ、面倒な……! ふん!」
朱紗丸は六つの腕全てで毬を持ち、連続で投擲を開始する。
咄嗟に【参ノ型 流流舞い】を使い、攻撃をすべて回避し、逆に更に間合いを詰めた。
俺が接近したことで、朱紗丸の表情に焦りが生まれた。
「ここだ! 【壱ノ型 水面斬り】ッ!」
腕を十字に交差させ、勢い良く水平に刀を振るう。
「くッ!」
その一撃は朱紗丸の腕を切り落とすが、一瞬で再生し、生えかわる。
だが、分が悪いと思ったのか、屋上から飛び降りて撤退しようとする。
「まずっ……! アイツ人前に……!」
俺はすぐに後を追うために、建物を飛び降りる。
この程度の高さ、鍛錬の時に崖渡りをしたのと比べたらなんてことない。
「ふっ」
「な――ッ⁉」
だが、下で朱紗丸が毬を構えているのを見て、瞬時に彼女の思惑を察し、血の気が引いていくのを感じた。
俺を誘い出したのだ。空中では回避が出来ないと思って。
「キャハハ! これで貴様も終わりだ!」
朱紗丸が毬を大きく振りかぶる。
その姿を見て回りの通行人が怪訝な目を向けているが……その中で一人、
俺は思わずその姿に目が行った。何故なら、その人物を俺は知っていたからだ。
鬼舞辻無惨。……全ての元凶にして、最強の鬼。禰豆子を鬼した男。無論、向こうはそんな事覚えてもいないだろう。
だが、関係ない。いずれ必ず倒す。
「うぐッ⁉」
そんな、余計な思考をしていたせいだろうか。
防御を行ったが体勢が崩れ、打ち落とされる。幸い、下には屋根があり、そこで受け身を取ることが出来たので、ダメージは大きくない。けど、軽いわけでもない。
痛い……骨は折れてないけど、結構痛い。というか、禰豆子にダメージ行ってないよな? 大丈夫だよな?
「くっ!」
『ちょっと!? 急にどうしたの⁉』
やべっ、禰豆子を起こしちゃったか? 鬼舞辻いるから出てきて欲しくないんだけど……。
というか、なんでアイツずっとこっち見てるんだよ。そしてなんで朱紗丸はそれに気づかないんだよ……あぁ、鬼舞辻に関すること言えないから、分かってても言えない。もしくは、鬼舞辻が溶け込み過ぎて気づいていないだけか? まあどうでもいいけどさ。
取りあえず、禰豆子には静かにしてもらうよう言って、俺は朱紗丸に向き直る……が。
「おい! 何をしている⁉」
すると、横合いから怒号が響く。
恐らくは警察組織の人間だろう。俺達の戦いを見た人が通報したのか、それともただ通りすがっただけか。
まあ、そこはどうでもいい。問題なのは……、
「なっ、君! 何故刀を持っている⁉」
「……チッ、余計な……」
警官の一人が、俺を指差して叫び、それを聞いた朱紗丸が舌打ちした。
そして、その人が俺の方にやってきて手錠を掛けようとする。
「ちょ、待ってください!」
「詳しい話は後で聞く。抵抗は――」
「危ない!」
俺は咄嗟に警官の人を転ばせる。
次の瞬間、警官の人の頭があった部分に毬が飛んできた。転ばせたので本人には当たらなかったが、毬は近くの店に衝突し、店を半壊させた。
その破壊力を見て警官の人は顔を真っ青にし、静寂が辺りを包む。
そして、誰かが叫び声を上げると同時に、パニックが始まった。人々が叫び声を上げて我武者羅に逃げ惑う。
警察の人が落ち着くように言うが、聞く耳を持っていない。
「キャハハ! さあ、行くぞ小僧!」
朱紗丸が俺に向かって六つの毬を構える。
人が入り乱れるこの場所では、迂闊に刀が振るえない。かと言って、逃げるわけにはいかない。鬼舞辻がいるとはいえ、これだけ目撃者……いや、人間がいるなら、何人かが襲われるかもしれない。
それはあってはならない。俺の目的は禰豆子を人間に戻すことでも、そこに犠牲があるのは許容できない。
「くそっ!」
「ほれっ! ほれっ‼ どうした、こんなものか⁉」
好き勝手に毬を投げつける朱紗丸。
俺は広く、人の少ない場所に移動しようとするも、朱紗丸がそれを妨害するかのように、周囲の人を巻き込みかねないような一撃を何度も放つため、上手く移動できない。
俺は巻き込まれそうになっている人を庇いつつ、彼女の攻撃を捌き続ける。
(せめて……もう一人味方が居れば……!)
しかし、そんな俺の想いとは裏腹に、助けがやってくることはない。
禰豆子に助けを求めるのはダメだ。怪我でもされたら困るし、なにより鬼舞辻がいる。アイツに禰豆子のことを知られるのは少しまずい気がする。
せめて善逸がいれば……いや、気絶してくれないと意味が……人を逃がすことくらいは出来るか? っていうか、警官はなにしてるんだ? さっさと避難を……。
「……おいおい、警官いねーし。まさか、みんな逃げたのか?」
それでいいのか公務員。一般市民守るのが仕事だろてめーら。マジで税金泥棒かよ。
「キャハハ! 守るべき側からも見捨てられるとは、哀れな奴じゃのう!」
思わず俺は顔をしかめる。
この状況で助けが来ないというのは少しやばい。俺の背後には、高そうな紫色の着物を着た女性と、書生のような恰好をした少年がいる。
幸い、表情を見る限りパニックは起こしていないようだが、このままでは守り切れない。せめて広い場所に出れば、毬の攻撃を捌けるくらい範囲の広い攻撃で……。
「広い場所?」
「これで終いじゃ!」
俺が呟いた瞬間、朱紗丸が再び投擲を行う。
俺は後ろにいる人たちを無理やり退かすが、二球ほど体に掠ってしまった。直撃していたら死んでいただろうから、本当に助かったが、掠っただけで凄い痛みだ。
けど今、朱紗丸は無手。今度こそ、決めるなら今しかない。そう思い俺は跳躍し、近くの壁を蹴って勢いよく朱紗丸に突撃した。
「バカめ! 何も学ばんかったのか⁉ いい的じゃ!」
それは先ほど、空中で朱紗丸の攻撃を受けた時のことだろう。
だが、あの時は考え事をしていたせいで反応が遅れただけで、実際は十分対処することが出来た。
目の前に迫る弾幕に対し、俺は刀を構える。
「水の呼吸……【肆ノ型 打ち潮・乱】ッ‼」
朱紗丸が放った六つの毬を、全て切り落とす。
空中で発動し、攻撃を行える技、【打ち潮・乱】。これにより、朱紗丸の放った毬を打ち落とし、一気に懐に入り込む。
「⁉ しまっ――!」
「終わりだ!」
一閃。
朱紗丸の頸を、俺の刀が通り過ぎ、その頸を落とす。
「……バカ、な……」
呆然と、地面に転がり頭だけになった朱紗丸が、呟いた。
彼女はどうして自分が死ぬのか理解できないと言った表情をし、頸のない体が何かを求めるように腕と足を動かす。
だが、不安定な上に死にかけなせいか、バランスを崩して倒れこんだ。
「……、……ま…………り」
「……、」
毬。
彼女の力を象徴するものだ。
俺は一つだけ、自分の足元に転がっている毬を手に取り、倒れた彼女の体の手に渡す。
「! ……な、にを……」
「……分からない。自分でも何やってるんだって思うよ。……でも、俺は君を憎んでない」
「……、」
「だから、君には安らかに成仏してほしい。……
その言葉に、朱紗丸は大きく目を見開いて……うら若い少女のように、無邪気な笑みを浮かべて言った。
「……ねぇ、またいつか、一緒に……あそ――」
最後まで言い切る前に、朱紗丸は灰となって消えていった。
……俺はゆっくりと立ち上がると、完全に興味を無くしたのか、この場から去ろうとしている鬼舞辻無惨に向かって叫ぶ。
「鬼舞辻無惨‼ 俺はお前を切る。今は無理でも、いつか必ず! 精々不可能だと鼻で笑っていろ‼
……言いたいことは言った。
既に鬼舞辻の姿は見えなくなっている。俺もこの場を離れないと、警察に捕まってしまう。
「いてて……傷が……これ、次の任務までに治るか?」
「よろしければ、私が診察しましょうか?」
「えっ……?」
俺が守っていた女性が、そう声を掛けてくれた。どうやら、彼女は医者らしい。
「えっと……貴女は?」
「失礼。……初めまして、珠世と申します。以後、お見知りおきを」
珠世と名乗った女性は、丁寧に頭を下げ、その隣にいる少年は、忌々しそうにこちらを睨んでいた。
鬼舞辻さんが居たのは偶然。原作と時系列が違うから娘と奥さんはいない。
しかし、鬼舞辻がいることを見抜いたので当然警戒される。
その上喧嘩売ってるのでもうオワコンです
どっちがいい?
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