竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった   作:シスコン軍曹

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ようやく三人セットで書けます。
因みにですが、今のところかまぼこ隊は無傷です。
強いて言うなら治ってないのは炭治郎くらいです


集う三人の鬼殺隊士

「うわっ! 伊之助⁉」

 

 突如、二階から飛び出してきた伊之助に、炭治郎が驚きの声を上げて、それ以外の全員が怯えた視線を向ける。

 

「あァ? テメェ、権八郎じゃねぇか」

「あ、その声! 五人目の合格者! 最終選別の時に誰よりも早く入山して、誰よりも早く下山した奴だ! せっかち野郎!」

 

 善逸が思い出したように言う。

 その言葉を聞き、伊之助も同期だったことに気づいて驚愕する炭治郎だったが、伊之助の次の行動でその思考が停止した。

 

「おっ、見つけたぜ。しゃあ! 死ね、鬼!」

 

 鬼。

 この場においてそれをさす人物は一人だけだ。

 禰豆子。

 伊之助は禰豆子を鬼だと見抜き攻撃しようとしている。

 

「……や、めろ……! やめろ伊之助!」

「あァ⁉」

 

 伊之助と籠の間に炭治郎が割り込む。

 両手を広げ、これ以上先にはいかせないという意思を示している。

 

「なにやってる権八郎! そこ退け!」

「退かない!」

「えっ、権八郎ってなに? まさか炭治郎のこと?」

 

 すると、伊之助は刀を炭治郎の頸に掛ける。

 

「退け。テメェごとそこの鬼を斬るぞ」

「退かない! それに知らないのか? 隊員同士でいたずらに刀を抜くのはご法度だぞ!」

「ほう……じゃあ、素手でテメェをぶっ倒して、鬼を斬る!」

 

 そういった伊之助は、刀を放り棄て、拳を握って炭治郎に一撃を放つ。

 伊之助の貫手を右手で払い、反撃の一撃を放つ炭治郎だが、伊之助はそれを身を低くして躱し、まるで四足獣のような動きと俊敏さで迎え撃つ。

 戦いが始まった以上、どちらかが倒れるまで止まらない。伊之助は禰豆子を殺すつもり満々で、炭治郎はそれを絶対に阻止したい。ならば、戦うしかないのだ。

 

「ハハッ! やっぱ面白れぇなお前!」

「くっ!」

 

 伊之助が後ろから振り上げるような蹴りを放ち、それを身を引いてギリギリで躱す炭治郎だが、振り上げた足を今度は上から叩き落すように蹴り落とす。

 炭治郎は両腕を交差させ、伊之助の蹴り下ろしを防ぐと同時に、自身も伊之助に足で攻撃を行う。

 だが、それさえも伊之助は腕だけで飛び上がり、回避した。炭治郎の腕から足が外れ、炭治郎は交差した腕を再び伊之助に向けて構える。

 

「ハァ!」

 

 気合の入った声とともに、回転しながら炭治郎に頭突きを放つ伊之助。それを前方に腕を交差させて防ぐ炭治郎。

 伊之助はそこから体勢を変え、炭治郎に貫手を放つ。それをはたき落とすことで防ぐ炭治郎だったが、いい加減限界に来ていた。

 

(クソ、いつまでこうしていたらいいんだ⁉ 伊之助は姿勢が低いせいで攻撃が当てづらいし……!)

 

 どれだけ伊之助より下を取ろうとしても、伊之助の関節の異常な柔らかさには敵わず、攻撃を受けてしまう。

 このままではジリ貧……否、炭治郎の敗北は必然だった。

 

(何かないのか……この状況を打破する何かは⁉ ……そうだ、鱗滝さんの!)

 

 かつて鍛錬で、鱗滝に何度も転ばされた記憶が蘇る。

 彼の使っていた技で、伊之助を転ばせて上を取る。今考えれるのはこれだけだった。

 

「オラァ!」

(今だ!)

 

 伊之助が突進してきた瞬間、記憶にある限りの鱗滝の動きを再現し、なんとか伊之助を転ばせることに成功した炭治郎。

 急いで上にのしかかり、両腕両足を押さえつけて動きを封じた。

 

「クソッ、離せ!」

「頼む伊之助、俺の話を聞いてくれ! 禰豆子は違うんだ!」

「知るか! 退けクソ野郎!」

「頼む……!」

 

 ジタバタと暴れる伊之助だが、炭治郎が四肢を押さえつけているため、動くことが出来ずにいた。

 それでもなんとか抜け出そうとするが、やがて糸が切れたかのように動きを止めた。

 

「……ちっ、分かったよ。今回はテメェの勝ちにしてやる。どのみちこれじゃ動けねぇから鬼は斬れねぇしな」

「伊之助……!」

「だが! 次は俺が勝つ! いいか、覚えとけよ!」

 

 炭治郎はゆっくりと伊之助の上から退き、彼を解放した。

 それに合わせ、伊之助も飛び上がり、ウンと伸びをする。

 なんとか伊之助を傷付けることもなく、和解出来た。その事実にホッと胸をなでおろす炭治郎。

 すると、伊之助は投げた刀を拾い上げ、何処かへ行こうとする。

 

「ちょ、何処に行くんだ?」

「うるせぇ。新しい鬼を狩りに行くんだよ」

「待ってくれ。まだ屋敷の中に鬼に殺された人がいる。埋葬してやらないと……」

「ハァ? 生き物の死骸なんぞ埋めて何になるんだ。俺はやらねぇ」

 

 確固たる意志で炭治郎の要求を拒否する伊之助。

 すると、そこへいつの間にか起きていた禰豆子が口を挟む。

 

『そっか。疲れたんだね。死体を運ぶのは大変だから、疲れてるんなら仕方ないね』

「あァ⁉ 何言ってんだこの鬼! ぶった斬られたいのか⁉」

『いいのいいの。分かってるから。で~も~、死体も埋められないような人じゃ、百年経っても私には勝てないと思うけどな~』

 

 その言葉で、伊之助の怒りは頂点に昇った。

 

「上等だこのクソアマァッ! 百だろーが二百だろーが埋めてやらぁぁああああああッ!」

 

 怒りの叫びをあげて屋敷の中へと走り去っていく伊之助を、呆然と見送る炭治郎達。

 そして、一連の流れを見ていた善逸は呟いた。

 

「禰豆子ちゃんって……実は悪女?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伊之助の協力により、死体の埋葬が手早く終了したので、速やかに三兄妹を家に送り届ける炭治郎たち。

 

「駄目だ―! 駄目駄目駄目だぁぁああああああーーッ! 清君は行っちゃだめだぁぁああああああーーッ! 俺はこれからも清君に守ってもらうんだぁああああああッ!」

 

 だが、山を下り分岐に入った後、ここからは自分たちでも帰れると言った清に、善逸がしがみ付いて放そうとしなかった。

 

「清君は強いんだ! 清君に俺は守ってもらうんだぁぁぁああああああッ!」

「やめんかゴラァ!」

「アギャッ⁉」

 

 恐ろしく早い手刀を善逸の首筋に放つ炭治郎。

 すると、いつの間にかやってきていた炭治郎の鎹鴉が、清くんに手を出すように促した。

 何事かと彼が手を出すと、体の胃酸とともに口から小包のようなものを吐き出した。

 その汚さに顔を真っ青にする清。

 

「なんなんだそれ?」

「コレハ藤ノ花ダ! 鬼除ケニナル!」

 

 藤の花は鬼が嫌うもの。それならば、稀血という特別な存在である清も安全を確保できるだろう。

 そこで彼らは分かれ、炭治郎と善逸と伊之助は三人で山を下りていた。

 

「いいか⁉ 俺は隙を見てお前にも勝つし、お前の妹にも勝つ!」

「いや、出来れば妹には勝たないで欲しいんだが……」

「いいや勝つ!」

「もういいっての……」

 

 炭治郎と伊之助の言い合いをうんざりして顔で聞き流す善逸。

 そして、山を下りた辺りで、鎹鴉が炭治郎たちに自分についてくるように言い渡した。

 彼らがそれについていくと、藤の花の家紋のついた門がある旅館の前に到着した。

 

「休息! 休息! 炭治郎負傷ニツキ、休息!」

「えっ、休息とかあるの? 俺、前の怪我治る前に戦わされたんだけど。まあ、戦闘に支障はなかったけど」

「……ケケケ」

「ケケケじゃねーよ」

「……こいつ食おうぜ」

「ナヌ⁉」

 

 ぼそりと呟いた伊之助に、鎹鴉が驚きの声を上げる。

 すると、家紋のある門が開き、中から背の小さな老婆が現れた。

 

「あ、こんな夜分にすみません」

「お化けだ! お化――」

「失礼だろうがやめろ!」

 

 老人には優しくしろと教わらなかったのか、と内心愚痴をこぼす炭治郎。

 そして、頭を下げる老婆に近づいた伊之助が言った。

 

「なんだてめぇは!」

「鬼狩り様でございますね?」

「弱っちそうだな」

「アホバカやめろ!!」

 

 老婆の頭をつつく伊之助に、炭治郎が怒鳴る。

 そして、老婆に連れられ、炭治郎たちは旅館の中へと入っていく。

 

「お召し物でございます」

 

 襖を開けた先にはいつの間にか移動していた老婆が着物を用意しており――

 

「お食事でございます」

 

 服を着替え、新たな部屋に入った先ではいつの間にか老婆が夕食を用意しており……

 

「妖怪だよ炭治郎! あのばあさん妖怪だ! 速いもん異様に! 妖怪だよ妖怪ババア!」

「失礼だろうが!」

 

 そして、三人は差し出された夕食を食べ始めたが……

 

「えっ、ちょっと待って! 伊之助何その顔⁉」

「あァ? 俺の顔に文句でもあるのかコラ」

 

 猪の被り物を脱いだ伊之助の顔は色白で、女性のような顔をしていた。 

 

「あっ! 伊之助、俺の天ぷら取るなよ! どうせ食べるのならこっちのニンジンを――」

「それ炭治郎の嫌いなモノ押し付けてるだけだよね? ちゃんと食べろよ」

 

 こんな時だけ真面なことを言う善逸。

 そして、夕食を終え、次の部屋に行くと……

 

「お布団でございます」

 

 この後、再び善逸が妖怪と言ってついに炭治郎に殴られたのは言うまでもない。

 

「早い者勝ち! 俺がこっちだ!」

「ん? 別に布団はどこでもいいぞ俺は。善逸も好きなところに――」

「違ぇぇえええええええッ!」

「フガッ⁉」

 

 奇声を上げて善逸に枕を投げつける伊之助。

 そして、老婆によって部屋に医者が連れられ、炭治郎達の診察を行った。

 

「はい。全治一週間です」

「えっ」

 

 全治一週間ほどだそうだ。

 それほど重症じゃなくて、拍子抜けする炭治郎。

 そして、渡された薬を飲んで早めに就寝に入る三人。

 

「……なあ、炭治郎。ずっと気になってたんだけどさ……」

「何がだ?」

 

 炭治郎は善逸に禰豆子のことは話してるので、それ以外に何か聞かれるようなことがあったか思考を巡らせる。

 

「いや、なんでさっきから全集中の呼吸してるんだ?」

「ああ……これは全集中の呼吸・常中っていうんだ」

「なんだそりゃ?」

 

 伊之助も知らないもののようで、炭治郎に聞いてくる。どうやら、禰豆子のことはすっかり忘れてるらしい。

 

「えっと、一日中全集中の呼吸をすることで身体能力の増強を図る……らしい?」

「曖昧だな……」

「俺もまだ一日中出来るわけじゃないからな。眠りながら全集中の呼吸は出来ないし」

「眠りながらとか意味分かんないだけど」

 

 そもそも、一人でやっていると眠っている時に正しい呼吸が出来ているか分からないのだが、当の本人は気づいてない。

 

「そうだ、二人もやってみたらどうだ?」

「えぇ⁉」

「面白そうだな!」

 

 数分後。

 

「はぁ……はぁ……! 無理ぃぃぃーーッ!」

 

 過呼吸になって倒れる善逸と伊之助がそこにいた。

 

「えっと、俺も習得には時間が掛かるし、すぐにはできないって……」

「無理! 俺もうやんない! おやすみ!」

「あ、あはは……」

 

 完全に不貞腐れて眠りに入る善逸。炭治郎は伊之助はどうかと見てみるが、疲れからか善逸と同じように不貞腐れたからか、反対側を向いて眠っていた。

 これ以上は起きていても仕方ないので、炭治郎も目を閉じて眠りに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん? あれ、炭治郎寝ながら全集中の呼吸してない⁉」

 

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