竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
ぺろぺろ
―――ごめんね。
……声が、聞こえる。……聞いたことのないはずなのに、どこか懐かしい声が。
―――何もかも貴方たちに押し付けてしまってごめんなさい。
……謝る必要はないはずだ。だって、俺だって……!
―――辛いことを押し付けしまうかもしれない。でも、どうか負けないで。
……当たり前だ。
―――ありがとう。
―――俺か■も頼■。禰豆子■守っ■■って■れ。そ■て、
……待て。お前は――
―――――――――
――――――
―――
「……はっ⁉」
背筋に感じる雪の寒さに震え、目が覚めた。
今のは……夢? 多分、最初の奴は母親だろう。でも、最後の奴は一体……。
ふと、辺りを見渡してみると、横に上着をかけて眠っている禰豆子がいた。そして、奥の方には冨岡義勇がいる。
「起きたか。狭霧山の麓に住んでいる、鱗滝左近次という老人を訪ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え。今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽の下に連れ出すなよ」
一方的に言うだけ言った冨岡義勇は、一瞬で俺たちの前から消えた。
その後、無事に目覚めた禰豆子と一緒に、残っていた死体を埋葬した。
「……なあ、禰豆子」
「?」
「この人たちの死体、結構綺麗だったけど、ホントに食べたのか?」
「……食べようとはした。でも、なんとなく、それをしたら戻れない気がしたの。それでも耐えられなくて、せめて血を飲もうとしたら、貴方が来て……吹いた」
吹いたって……あぁ。だから口元が血で濡れてたのか。
「……行くか」
「……うん」
そうして、俺達ははぐれないよう、手を繋ぎながら山を下りた。
「すみませんが、あそこの篭と竹を少々いただけますか?」
山を下りた村で、俺は一人の村人に尋ねる。
「そりゃあ構わねぇけど……篭には穴が空いてるぞ?」
「問題ないです。自分で埋めるので」
「そうかい。じゃあ勝手に持ってけ」
どうやらタダでくれるらしい。やったぜ。
俺は取りあえず必要なものを貰っていき、禰豆子が隠れている洞穴に戻る。
「籠持ってきたぞ引き籠り」
「誰が引き籠りよ誰が」
「昼間っから穴掘って寝てるやつが引き籠りじゃない訳がない」
「しょうがないでしょ⁉ 一応鬼なんだから!」
禰豆子は別の生物へとジョブチェンジするのがマイブームらしい。
俺は取りあえず竹で籠の穴を塞ぎ、禰豆子のもとに持ってくる。
「ほーらほらー。これが新しいお家ですよー?」
「シルバニアファミリーでももっとマシな家建てるわボケ!」
ブータラ文句垂れてないでさっさと入れよ全く。
禰豆子が渋々、体を小さくして籠の中にすっぽりと収まる。俺はその上に布を巻き、直射日光を完全にシャットアウトする。これで昼間も動けるのか。直射日光じゃなきゃなんでもいいのかね鬼ってのは。
そして、先ほど籠を譲ってくれた村人に礼を言い、再び移動を開始する。一応、狭霧山の場所も聞いているので迷いはしない。
「……にしても、結構慣れてきたんじゃないか? 大正時代の暮らしってやつ」
「現代っ子からすればちょっと不便だけどね」
今はすっかり夜なので、禰豆子も横に並んで一緒に歩いている。
「まあ、ウォシュレットがないのは確かに不便だな」
「デリカシーない。ぶん殴るよ」
やめて。怖いから。
すると、明かりのついた御堂を見つけた。
「……なぁ、あれって……」
「あれね。間違いない。鬼の気配もする」
えっ、嘘? マジで? いつの間にそんな能力身につけたの?
「……匂いしないの?」
「全然しない」
炭治郎は鼻が利くのが売りなのに、鼻が使えないとか終わってんじゃん。
そんなことは置いておいて、俺達は御堂へと向かっていく。
「……行くぞ?」
「うん」
俺は勢いよく襖を開ける。
そこでは……、
「「ッ‼」」
分かってはいた…………分かってはいたが、それでも惨い。
恐らくはこの御堂の主であるだろう男性が、鬼に貪られていた。
すると、こちらの存在に気づいたのか、鬼はこちらを振り向き言う。
「なんだおい、ここは俺の縄張りだぞ。俺の餌場を荒らしたら……許さねぇぞ!」
その殺意と気迫に、呑み込まれかけるが、この程度で怯んでいては、到底禰豆子を守ることなどできない。
そう思い、俺は恐怖を押し殺して鬼に叫ぶ。
「お前……その人から離れ――」
瞬間、俺の体は御堂から飛び出していた。何が起こったのか分からなかった。
考えられるとすれば、蹴り飛ばされたか、殴り飛ばされたか。
「ガハッ⁉」
俺が痛みを堪えて視線を向けると、俺にマウントを取る鬼が、にやりと笑って左手を伸ばしている。その腕で俺の首を絞めるつもりか。或いは突き刺すつもりか。
いずれにせよ、俺が今できるのは一つ。
「そんな簡単に……やられるかぁぁぁぁぁぁぁあああああああ―――ッッッ‼‼‼」
「な――⁉ げぶッ⁉」
気合とともに俺は斧を縦に振り下ろす。
その行動が予想外だったのか、鬼は一切抵抗もせず真っ二つになった。
「……えっ?」
正直、止められるか、当たって腕一本取れれば上等だと思ったのだが、まさかこんなチーズみたいに裂けるとは思わなかった。グロい。
「ぐぉぉっっ……! やりやがったなテメェ……!」
うそーん。いや、死なないのは分かってたけど、半分になった状態で喋るなよ。トムとジェリーかおい。
「くそっ!」
俺は斧を刀を振るう様に構えるが、さっきのようなラッキーはもう訪れないだろう。正直勝てる自身が無い……っていうか、禰豆子は何をして……。
「……、」
「食うなよ⁉ 駄目だからな⁉ ……そんなキラキラした目を向けるな! 駄目なものは駄目……っていうか、唐突に無言になるな! 怖いから‼」
どうやら、冨岡義勇との戦いで鬼としての本能が目覚めてきたらしい。滅茶苦茶涎を垂らしてるけど、耐えられるかなあれ……?
「畜生……舐めやがって……‼」
「いや舐めてないです。出来ればさっさとどっか行ってくださいお願いします」
「ここは俺の縄張りだっつったろ! 出ていくのはオメーらだ‼」
あっ、そう言えばそうだった。っていうか、いい加減裂けるチーズから戻ってくれない?
「テメェ……マジで許さねぇからな」
なんでさ。
「……待たせた」
すると、禰豆子が俺の隣に戻ってきた。いや遅いよ。別にいいけど。
それに合わせ、向こうも右半身と左半身を接着した。
「……行くぞ!」
「うん!」
俺が左から、禰豆子が右から攻める。
「ちっ……まずは女からだ!」
俺に切り下されたのを警戒しているのか、鬼は禰豆子の方から狙いだした。
鬼は禰豆子に拳を振るうが、彼女はそれを片手で受け止め、反撃として溝に蹴りを入れる。
「ぐぉぉぉ……テメェ、鬼か⁉ なんで人間なんかとつるんで――」
「隙あり!」
怯んだ鬼の足を斧で両断する。
こいつが人を食った鬼だからか、それとも何か別の理由か、鬼を傷付けることへの抵抗が薄れている。
けど、好都合だ。いずれはもっとたくさんの鬼を切らなければならないのだ。今のうちになれておくべきだろう。
「「はぁぁぁぁああああああああ―――――ッッッ‼‼‼」」
「ギャァァァァッッッ!!!」
禰豆子が蹴りを、俺が斧を逆に持ち、バットでボールを打つように振り抜いた。
鬼は断末魔とともに吹き飛ばされ、森へと入った。
「まずっ……! 逃げられる!」
「追いかけるよ!」
「ああ!」
飛ばした鬼を追いかけるために、二人で森へと入る。
鬼は失った足を生やし、俺達から逃げるように奥深くへと走っていく。
それを追いかけていると、
「ねえ、一つ聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「……もし私が、人を喰ったら、どうするの?」
その禰豆子の問いに、思わず呼吸を忘れた。
判断が遅い!
どっちがいい?
-
一人称視点
-
三人称視点