竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
多分無限列車終わったら投稿間隔が結構空くと思いますみません……!
猗窩座が血鬼術を発動し、煉獄へと迫る。
繰り出される拳を、煉獄は【壱ノ型 不知火】で迎え撃つ。
猗窩座は煉獄の放つ鋭い斬撃を紙一重で躱し、間髪入れずに攻撃に転じる。
息もつかせぬ連撃を、煉獄は振り向きざまに斬撃で受け流す。
「今まで殺してきた柱達に炎はいなかった!」
絶え間なく拳を繰り出しながら、猗窩座が楽し気に言う。
顔の前に刀を構え拳を受けた煉獄は、そのまま切り伏せようとするが、猗窩座の拳が強い力で押し返してきた。
「そして俺の誘いに頷く者もなかった‼」
弾かれるが、再び刀を振るう。
煉獄の一撃を、猗窩座見もせず躱し、すかさず彼の頭部に手刀を放った。
素早く刀を振り上げた煉獄が猗窩座の手を切り裂く。
猗窩座は後方に飛びながら、弾かれた腕を掴み、傷口に擦り付けた。
「なぜだろうな? 同じく武の道を極める者として理解しかねる。選ばれたものしか鬼にはなれないというのに!」
無理やり引っ付けられた腕が、傷口と接合する。
再生力が高い……だが、それでも隙はある。絶望的と言えるほどではない。
禰豆子の血鬼術による再生阻害は間違いなく効いている。今の猗窩座の再生は下弦程度のものでしかない。
そして、それは猗窩座も理解していた。
(思いのほか厄介だ……本来なら瞬時に治せる傷も、僅かとは言え時間をかけないと修復できないとは)
「素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく。俺は辛い、耐えられない!」
叫びながら、猗窩座が鋭い拳を放つ。
煉獄もそれに合わせるように刃を叩き込んだ。
猗窩座が煉獄の眼前に自分の顔を寄せ、至近距離で睨み合う。
「死んでくれ、杏寿郎。若く強いまま」
「はぁっ‼」
煉獄が刀を振り上げる。
同を狙った太刀を猗窩座は背後に大きく飛んで躱し、宙に浮かんだまま拳を構えた。
「破壊殺―――空式‼」
「――ッ⁉」
空中で拳を振るう猗窩座に違和感を覚え、煉獄は咄嗟に刀を体の前で構える。
直後だった。拳によって発生した圧と言うにはあまりに重く、鈍い衝撃が伝ってきた。
再度、猗窩座が拳を振るう。
放たれる一撃を刀で受け止めながら、冷静に思考する。
(なるほど……)
どうやら、虚空を拳で穿ち、その衝撃を遠方に放つ技のようだ。しかも、その速度は僅かにも満たない。
術の仕組みを見抜いた煉獄が、改めて日輪刀を構える。
「炎の呼吸【肆ノ型 盛炎のうねり】――ッッ‼」
巨大な渦のように宙をうねる炎の刃が、猗窩座の連撃を防ぐ。
だが、それでも攻撃はやまない。
(向こうは再生を阻害できる刃を警戒して距離をとっている……このままでは頸を斬ることも困難……ならば――!)
煉獄が重力に従って落下する猗窩座へ合わせるように飛び、一息の間に間合いを詰める。
至近距離から刃を振るう。だが、それを紙一重で躱し、堪えきれないとばかりに笑みを漏らす。
「この素晴らしい反応速度! この素晴らしい剣技も失われていくのだ、杏寿郎! 悲しくはないのか⁉」
「誰もがそうだ、人間なら‼ 当然のことだ‼」
激しく打ち合い、叫び合う二人。
そんな彼らの姿を、炭治郎たちはただ見ていることしかできない。
「クソッ……!」
「お兄ちゃん、動いちゃダメ……」
「分かってる……分かってるよ……でも……」
炭治郎の視線の先では、煉獄と猗窩座が死闘を繰り広げている。
その移動の速度は尋常ではなく、炭治郎は目で追うことしかできない。
「……何か、ないのか? 俺に出来る事……何か……‼」
「……お兄ちゃん」
悔しそうに地面に拳を叩きつける炭治郎を、禰豆子がそっと抱きしめた。
「……禰豆子……?」
「大丈夫……お兄ちゃんは休んでて」
「……ちょっと待て、お前なにを―――」
すると、禰豆子がのっそりと立ち上がる。
一度、炭治郎に、泣きたくなるような笑みを向けると、猗窩座に向かって駆けだした。
「禰豆子ーーーッ‼ ――ぐっ‼」
叫び、炭治郎がその背中を追いかけようとするが、足が縺れて倒れこむ。
「はぁぁぁぁーーッ‼」
「「――ッ⁉」」
突然の乱入者に、二人の戦士が驚愕する。
驚き、後退する猗窩座に、禰豆子は血を出しながら拳を構える。
「爆血拳‼」
叫んだ途端、禰豆子の拳が発火した。
その拳が猗窩座の左頬を捉え、渾身の力で振り抜いた。
「ぐっ……‼ おのれ、邪魔を……!」
「炎の呼吸【参ノ型 気炎万象】‼」
仰け反る猗窩座の隙を縫うように、高く跳躍する煉獄が、赤き刃を振り下ろす。
燃え滾るような斬撃が、猗窩座の右肩から脇腹までを袈裟斬りにした。
猗窩座は苦悶の声を漏らし、技を放って隙が出来た煉獄の中腹を蹴りつける。
「うぐっ――‼」
「煉獄さん⁉ こ、のぉ……‼」
「ええい、邪魔をするな小娘‼」
大きく拳を振り上げ、禰豆子の拳が猗窩座の右頬を捉える。
だが、猗窩座は僅かに仰け反るだけで、大して意に介した様子を見せない。
禰豆子はそんな猗窩座に驚愕する間もなく、鳩尾を殴りつけられ、唾を吐き出した。
「が……っ⁉」
「俺と杏寿郎の時間を邪魔するな、娘」
感情の読めない冷たい目で、蹲る禰豆子を猗窩座は見下ろす。
その衣の襟を掴み、投げ飛ばそうとした……その時だった。
『やめて! ■■さん‼ 貴方はそんな人じゃないでしょう‼』
―――幻聴が、猗窩座を止めた。
「……?」
猗窩座は何かを確認するように、周囲を見渡す。煉獄、禰豆子、炭治郎、伊之助、善逸……この場にいるのは、この五人だけだ。
だが、今聞こえた声は、その誰のモノでもない。ここにはいない、別の誰か……。
気のせいか……そう結論付けた猗窩座の頭蓋に、割れるような痛みが走った。
「うっ……⁉」
その余りの痛みに、両手で痛み頭を抱えて座り込む。
おかしい、鬼になった自分に、この程度の痛みは大したものではないはずだ。そもそも、怪我などすぐに再生する。
「――っ、チッ!」
「くっ!」
蹲る猗窩座に、煉獄が横一線に刃を振るう。
しかし、一体いつ察知したのかと言うほど完璧な動きで、猗窩座は攻撃を回避した。
痛みはもうない。幻聴も聞こえない。ならばあとは、全力で拳を振るい、目の前の男を殺すだけだ。
「破壊殺・乱式‼」
「炎の呼吸【伍ノ型 炎虎】――ッ‼」
途轍もない速度の連撃と、煉獄の烈火の猛虎を生み出すが如く刀が、咬みつくかのように振るわれた。
「……ハァ、ハァ……!」
「……鬼になれ、杏寿郎。そして俺とどこまでも戦い、高め合おう」
猗窩座は斬り付けられた自身の肉体を見ながら、惜しむように誘う。
煉獄は肩で息をしていた。
仕方のない事だろう。鬼と違い、人間の体力は有限だ。先程の打ち合いで体に拳撃を打ち込まれ、今にも倒れそうになっている。
だが、猗窩座のほうは、あと数秒もすればたちまち治るだろう。
猗窩座は、少しづつ塞がれていく傷をこれ見よがしに見せつけながら、再び誘いを掛ける。
「その資格が、お前にはあるんだ」
「断る。もう一度だけ言うが、俺は君が嫌いだ。俺は鬼にはならない」
煉獄は刀の柄を握りしめ、毅然とした態度で立ち上がる。
夜明けは……まだ遠い。
―――真っ暗な世界だ。
深層心理の世界と言う奴だろうか。
禰豆子は薄れゆく意識の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
眠い……体力が限界だ。これ以上は立てない。
……すると。
『……がい、お願い! もう貴女しかいないの!』
声が、聞こえた。
知らない人の声だ。でも、すごく優しそうな……女性の声。
『……お願い、■■さんを助けて、もうやめさせてあげて‼ もうこれ以上、彼を苦しめさせないで!』
何故だろうか。
その声を聞くと、不思議と立ち上がれた。
心が、燃えるのを感じる。
血鬼術によって失われたはずの体力が、戻っていく。むしろ、今までよりも増えてると感じるほどだ。
「……任せて、知らない誰かさん」
禰豆子は立った。
拳を握り締め、大地を踏みしめる。
強い視線で、己が立つ戦場を睨んだ。
「! ……禰豆子、起きたんだな⁉ よかった……」
「……お兄ちゃん」
「今は見て居よう。きっと、煉獄さんなら――」
「ごめんね。またもう一度、
「えっ……」
呆気に取られる炭治郎を無視して、禰豆子はゆっくりと立ち上がる。
すると、その肉体が徐々に変化していった。
額の左側に、角のようなものが生えた。体は今よりも数年経った女性のように成長し、全身に花のような形をした紋様が駆け巡っている。
右目を覆うように、氷の結晶の形をした痣が出現して、牙が剥き出しになっていた。
「ふっ――!」
「何――ッ⁉」
目にも止まらぬ速さで猗窩座に肉薄し、その胴体を蹴り飛ばした。
「竈門妹! 無事だったのか⁉」
「はい……煉獄さん、下がってください。……このままでは、貴方が死んでしまう」
「む? 少し雰囲気が……いや、それよりも……悪いが、柱である俺が、ましてや女性を矢面に立たせるわけには――」
「……お願いします」
禰豆子は頑として譲らない。
その目は真っすぐと煉獄を見据え、何かを訴えるようであった。
さしもの煉獄も、その意志の強さに根負けしたのか――
「……危ないと思ったら、すぐに退くのだぞ」
「はい……ありがとうございます」
刀を下ろす煉獄に、禰豆子が頭を下げて感謝する。
そして、猗窩座のいる林へと足を踏み入れた。
「……!」
「小娘ェ‼」
木々の合間を抜け、森の奥へと進む禰豆子に、突如現れた激高する猗窩座が拳を振るう。
禰豆子はそれを紙一重で躱し、己の左側にある木を回り込み、手刀でその剛腕を叩き折った。
今までとは格段に違う動き、力に、猗窩座がギョッとする。
(馬鹿な、何処にこんな力が……⁉ この力は、上弦並――)
「……目を覚ましてください、
誰かの名を呼び、禰豆子の燃える拳が、鳩尾を貫く。
「……血鬼術・
途端、猗窩座の傷口が凍り付いた。
(なっ……こいつの血鬼術は炎のはず……二つ目の属性……あり得ん、二つ目の血鬼術だと⁉)
「貴様、何をした⁉」
猗窩座が禰豆子の持つ力に違和感を感じ、その額にある角をへし折ろうと横から殴りつける。
禰豆子はその一撃をわずかに仰け反る形で回避し、凍り付いた傷口を再び燃焼させる。
凄まじい熱さに、猗窩座が苦悶の声を漏らした。
「思い出して、狛治さん……」
「誰だそれは⁉ そんな奴は知らん‼」
「……いいから、思い出せつってんだよ馬鹿座ァ―――ッ‼‼」
貫いた鳩尾から右手を引き抜き、その顔面を力の限り殴りつけた。
―――その時だった。
猗窩座の脳は、奇妙な感覚を得ていた。それは、懐かしさ。
その拳は初めて受けたのに、まるで今までも受けたことがある……そんな、懐かしさを。
(なんだ……これは、男? それに、花火……女……いや、
『猗窩座、命を果たせ。私の言葉に従え、貴様は何も考えるな』
(……誰なんだ、この人は……とても、暖かい……俺は、何かを忘れている……?)
「竈門妹! すまないが夜明けが近い! 既に日が昇っている‼ 早急に決着をつけるぞ‼」
「えっ、そんな!」
「……くっ!」
日が上ったという情報に加え、煉獄が姿を現した。彼一人ならともかく、上弦に匹敵する力を持つ禰豆子まで相手取るとなると、分が悪い。
即座に判断し、猗窩座は驚異的な脚力でその場を脱した。
後には、突如撤退した猗窩座に驚きつつも安堵する煉獄と、その姿を呆然と見つめる禰豆子だけが残っていた。
一瞬呪いが外れかけてて草。
最初はこんな感じにするはずじゃなかったのに、いつの間にか迷走してた。
このままいくと無限城編で猗窩座が敵として出てこないかも……ヤベーイ、ガバだ。
禰豆子の急激なパワーアップは今後本編で言及します