竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
これは入れておきたいんです……! 入れないとダメなんです諸々の理由で……!
煉獄家での生活から、四ヶ月が過ぎようとしていた。
炭治郎たちは厳しい修行を経て、今までとは格段に強さを磨き上げていた。
それこそ、今ではそれぞれが単独で、十二鬼月の下弦が相手でも問題なく対処できるほどに……。
そんなある日、炭治郎は鴉の命で新たな任務に向かっていた。
「……はぁぁぁぁ……」
その道中。
まるでこの世の終わりだと言わんばかりにどんよりとしたため息をつきながら。
背中からは漆黒の
たまたま同行することになった隊士の一人、村田と尾崎は、その姿を見て声を掛けあぐねている。
「(……どうする?)」
「(いや、どうするって……那田蜘蛛山でのお礼を言おうと思ったのに、そんなこと言える雰囲気じゃないし……アンタがどうにかしてよ)」
「(いや無理だろ! どう考えても俺の手には負えないでしょ! っていうか、炭治郎の奴マジでどうしたんだろ……)」
「はぁぁぁぁぁ……」
もはや構って欲しいのかと言わんばかりにクソデカいため息。
(……あれ?)
ふと、村田は以前炭治郎と出会った時との違いに気づいた。
「炭治郎、お前……箱は背負ってないのか? それに羽織も――」
「―――」
瞬間、明らかに空気が変わるのを二人は感じた。
二人は全く同じタイミングで、「あ、やばい」と思った。
「聞ぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁぁぁ――――ッッッ‼‼‼」
「「いや怖い怖い怖い怖い怖い‼」」
幽鬼のような表情で、ゆらゆらと揺れながら二人に接近する炭治郎。
村田と尾崎は身を寄せ合って涙を流すしかなく―――
「うわぁぁぁあああ‼ 最近、禰豆子が反抗期なんですよぉぉぉ‼」
「「…………………へっ?」」
雰囲気とは裏腹な内容に、二人は思わず間抜けな声を出した。
話を聞いて見ると、最近炭治郎の妹が反抗期……という、思春期ならよくあるやつに突入したらしい。
今まではしっかり言うことを聞いてくれて、自分の言葉に笑顔で答えてくれた妹の反抗期……。
「長男だから耐えられるわけじゃない! むしろ長男だから耐えられない‼」
「知らねえよ、心配して損したぞこのヤロウ」
「はぁ……びっくりさせないでよ」
「っていうか、さっきから知り合いみたいな雰囲気で話してますけど、別に知り合いじゃないですよね?」
「「知り合いだよ⁉」」
へ? と炭治郎は小首をかしげる。
本気で忘れてんのかコイツ……! 村田は先輩としての威厳がドンドン失われていることを嘆いた。
道の端でいじけている村田を流し見て苦笑いする尾崎が、
「あ、えーっと……ほら、私はあれよ、那田蜘蛛山の時に貴方に助けられた――」
「……那田蜘蛛山?」
「そこからかー」
尾崎は遠い目で空を見上げた。
「あーっ! いたいた、いましたね! すいません、すっかり忘れてました」
「いいのいいの……うん、影薄いよね私」
「だ、大丈夫ですって……村田さんよりはマシですから」
「オイコラ」
曖昧な笑みから放たれた毒に、村田は真顔でツッコミを入れる。
「む、村田よりマシな程度なんだ……はぁ……」
「落ち込むトコそこ⁉」
「村田さん、女の子落ち込ませてはいけないと思います」
「原因作ったの、お前!」
あまりにも理不尽な仲間に、村田の精神は崩壊寸前だった。
そうこうしているうちに、鴉の指定した町まで到着する。
「あ、この辺だな……丁度夜だし、まずは鬼探しとしますか」
「……単独行動で行きますか?」
神妙な顔つきで、炭治郎が問いかける。
いざという時に気持ちを切り替えられるのなら、問題ないだろう。と、村田は内心安堵する。
「……そうだな、分散したほうが早く見つけられるだろ。とりあえず、一刻経ったらもう一度この場所に集まろう」
「了解、それじゃ、先に言ってるわね」
そう言うと、尾崎はあっという間に先を行く。
「おっ、早いな……じゃ、俺も行くわ。お前も気を付けろよ」
「あ、はい……」
少しだけ挙動不審に見える炭治郎に、村田は安心させるように笑いかける。
(緊張してんのかな? へっ、これは先輩としての威厳を取り戻すいい機会かもな!)
若干の下心とともに、村田も鬼を探す為に町の深くに踏み込んだ。
「……さて」
ようやく一人になれた、と言わんばかりに、炭治郎の纏う空気が一変した。
普段から着ていた市松模様の羽織はない。本来なら煉獄の羽織を着るはずだが、炭治郎は「自分にはまだ重い」と断っている。
よって、今の彼の恰好は鬼殺隊の隊服のみであるが……それでもなお、彼がただの隊士でないと感じさせる、貫禄があった。
「……そこか、出て来いよ……そこにいるんだろ?」
炭治郎は目を閉じ、何かに気づいたように右側の路地裏の一角を鋭い視線で睨む。
すると―――
「へぇ、俺の気配に気づくのか。さっきの二人とは別格のようだな……こりゃ、楽しめそうだ」
薄暗い影から、男が現れた。
茶色い癖っ毛に、強気の言葉……とは裏腹に、割と身長の低い小男だ。
目を黒い目隠しで覆っているのは特徴的である。
「つか、テメェどこ向いてんだ? 俺はこっちだぞオイ、舐めてんのか?」
「…………………いえ、別に」
炭治郎は気まずそうに、自分の背後の路地裏へと通じる道から出てきた男……否、鬼に向き直る。
「ごほん……俺は鬼殺隊、階級丁、竈門炭治郎だ。今からお前を斬る」
「丁寧な挨拶どうも……生憎、あの御方からはまだ名を授かっていないんでな。名乗ることはできない」
「そうか……」
鬼は鉢巻の奥から殺気を飛ばし、炭治郎を睨む。
それに合わせ、炭治郎も刀の柄に手をかけた。
(……強いな、こいつ)
それは、炭治郎の純粋な評価だった。
並の鬼とは比べ物にならない殺気……間違いなく、十二鬼月に相当する実力者だ。
これは炭治郎のあずかり知らないことだが、もし仮に下弦の鬼が解体されていなかったら、彼が空席に入っていてもおかしくはない……それほどの力を感じる。
ギリッ、と炭治郎は奥歯を噛んだ。それだけの強さを得るために、どれだけの人間を犠牲にしたのか……彼の糧となった人達を思うと、悔やみきれない。
「行くぞ」
「上等、返り討ちにしてやる」
戦いの火蓋が切られた。
最初に仕掛けたのは炭治郎だ。得意の竜の呼吸で、一気に勝負を決めに懐に潜り込む。
(【水ノ舞 水分神】――!)
「血鬼術……」
ボソッと鬼が呟く。
炭治郎は僅かに目を細め、攻撃の手を止めた。
この瞬間での血鬼術……果たしていかなる効果があるのか……。それを見極めようと、攻めの姿勢を崩した。
その崩れた隙間を縫うように、鬼は鋭い貫手を繰り出した。
「――ッ⁉」
咄嗟に刀の柄の底を使って拳を受ける……が。
ドガッ! 防御した柄が、
「なっ――⁉」
衝撃の風圧からか、炭治郎の髪が不自然になびいた。
「隙――ッ!」
困惑する炭治郎の顔面に向け、強烈な左拳が放たれる。
炭治郎は咄嗟に身を屈め躱すが、それでさらに大きな隙を晒し、突かれる。
即座に鬼が蹴りを入れ、炭治郎を壁へと吹き飛ばした。
「ガハッ――⁉」
「……やるな、後方に飛んで威力を最小限にしたか。だが、今のは相当効いたはずだ」
鬼の言葉通りだ。炭治郎はほぼ無意識で攻撃を迎撃しようとしたが、それでも間に合わず、強烈な一撃をまともに食らった。
しかも、壁に叩きつけられたことで肺の中の酸素がすべて吐き出された。つまり、今だけは肉体は鍛えた一般男性程度。
そして、その隙を見逃すほど、生易しい相手ではない。
「死ねェ‼」
「くっ……!」
再び放たれる拳、拳、拳。
炭治郎はゴロゴロと転がり、柄の底で受け止めを繰り返す。
だが、やはり受け止めた時に、奇妙な遅れる衝撃が発生して、炭治郎の防御を妨害する。
(くそっ、この遅れてやってくる衝撃はなんだ? これがアイツの血鬼術か? ……いや、待て……)
「……お前、
「―――」
一瞬、鬼の肩が揺れた。
「……テメェには、関係ねェ話だァァァァーーッ!」
そして、何故か途轍もない激高とともに、炭治郎に向けて拳を放つ。
今までとは比にならない速度、威力……まともに食らえば頭はトマトのように潰れて死ぬだろう。
食らうわけにはいかない。炭治郎は下がろうとし、驚愕した。
(後ろに壁⁉ くそ、地形把握を怠った!)
焦る。だが、その間にも拳は迫り続けている。
どうする、どうすれば抜け出せる……⁉ 炭治郎が必死に思考を回転させ、
「! コ、コかぁ―――っ!」
「な――」
炭治郎は敢えて鬼へと接近し……その股の下を滑って通り抜ける。
空を切った拳が、行き場を無くし壁に叩きつけられる。凄まじい膂力を持って放たれた一撃は、壁と、それを支えにしていた民家……幸い、売家だが、それをボロボロに破壊した。
やはり躱してよかった。あれを受ければ、自分が民家の中に叩きつけられ、崩壊の巻き添えになったかもしれない。
ずんっ! と。辺りを覆い隠していた土煙が、
「……やるな、まさか今のが回避されるとは……」
「……?」
今の発言に、何かが引っかかったのか、炭治郎は眉をひそめる。
普通に考えれば、予想外の一手を打たれたら、そのような方法で躱すとは、くらいで十分だ。今の発言では、躱したのは分かるが、どうやって躱したかは分からないと言っているようなものだ。
(……まさか)
しかし、本当にそんなことが?
鬼は不死者だ。太陽と日輪刀以外では決して死なず、どんな傷も再生し、病にも罹らない。だから、
しかし、あの目隠しと言い、先ほどの発言と唐突な激高……炭治郎の疑問は、半場確信に変わりつつあった。
「お前……」
故に、炭治郎は疑問の解消のため、即座に切り出した。
「……目が、見えないのか?」
ドクン、と。
鼓動の音が、夜の町に木霊した。
オリキャラタグ付けるべきか否か……。
禰豆子ちゃんは現在善逸と鬼殺してますねハイ……反抗期はマジです。
そういえば、大正に反抗期の概念ってあるんでしょうか? なかったら修正入れないとなぁ……。