竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった   作:シスコン軍曹

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派手を司るやべぇ奴ってとんでもないキャラだな


祭りの神

 取りあえず、宇随の任務にはしのぶと善逸、伊之助とカナヲが助っ人としてついていくことになった。

 伊之助と善逸は一応、名義上は煉獄の継子なので連絡を取ったが、二つ返事で了承を得た。

 なので、早速移動を開始することになったのだが……。

 

「いいか? 俺は神だ! お前らは塵だ! まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め、ねじ込め‼ 俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ‼ 猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に窺い全身全霊で()()()()のだ‼ そしてもう一度言う……俺はか――」

「子供に何教えてるんですか貴方は」

「あだだだだだだッッッ‼⁉⁇」

 

 頭のおかしなことを平然と、決め顔で叫ぶ祭りの神に、(しのぶ)の鉄槌(関節技)が放たれた。

 

(……なんだこいつ)

 

 善逸が呆れた視線を宇随に向けている。

 普段からどこに出しても恥ずかしい剣士として自覚のある彼だが、流石に受け入れられなかった。

 

「俺は山の王だ、よろしくな祭りの神!」

 

 何故か伊之助が張り合おうとそんなことを言う。

 

「あだだだッ……あ? 何言ってんだお前、気持ち悪い奴だな」

「「いやアンタ(貴方)とどっこいどっこいだろ(ですよ)⁉」」

「私は森の精霊である」

 

 言い出したのはカナヲだった。

 しのぶと善逸が驚いたようにカナヲを見る。

 彼女は自分の顔を覆う程大きな葉っぱを、目と口の部分だけ繰り抜いて仮面のように身につけている。

 そしてどこか得意げな雰囲気だった。

 

「……一応聞きます、カナヲ。それは誰に教わりましたか?」

「? 勿論……炭治郎です」

「あの馬鹿覚えてろ」

 

 もはや口調がブレるほどしのぶの怒りは限界点を越えていた。

 

「……ま、まぁ……兎に角だ。花街までの道のりの途中に藤の家があるから、そこで()()()()()()。ついてこい」

 

 瞬間、宇随の姿が消えた。

 突如消失した宇随にギョッとするカナヲたちだが、しのぶは呆れたようにため息をつき、

 

「……相変わらずですね」

「あの、師範……音柱様は何処に?」

「どこって……あそこですよ。あとカナヲ、その葉っぱの仮面取りなさい」

 

 しのぶの指さす先には、いつの間にか胡麻粒のように小さくなって、今にも見失ってしまいそうな音柱がいた。

 

「えっ、はやっ⁉」

「あの人は元忍で、足が速いんです。短距離ならいざ知らず、長距離の走行となると柱の中でも一、ニを争う速さですよ」

「これが祭りの神の力……!」

「っと、追わないとですね。行きますよ三人共」

 

 そして、藤の家に到着した四人。

 一室を借り、そこで任務について詳しく話してもらうこととなった。

 

「ふぁぁ……あれ? これどう言う状況?」

 

 疲れが取れたのか、目覚めた禰豆子が眠気眼で問いかける。

 善逸が状況を説明する中、宇随が本題を切り出した。

 

「遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」

「とんでもねぇ話だ!」

「あ”あ?」

「ふざけないでいただきたい! 自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは!」

「あの、善逸くん……」

「止めないでしのぶさん。これだけは言わないといけないんです……アンタみたいな奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも‼ だがしかし、鬼殺隊員である俺たちをアンタ嫁が欲しいからって―――‼」

「馬ァ鹿テメェ! 俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ! 定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての‼」

「そういう妄想をしていらっしゃる……?」

「殺す」

「あの善逸くん……信じられないかもしれませんが、彼に言ってることは妄想ではないんです……信じ難いですが」

「胡蝶、てめェも地味に煽ってんなオイゴラ……!」

 

 ピクピクと額を引くつかせる宇随が、懐から紙の束を取り出し善逸に投げつけた。

 

「読め、それが鴉経由で届いた手紙だ」

「え、多くない? どんだけ長い間遊郭にいたの?」

「そりゃ多いだろ、三人分なんだ。てか、お前本気(マジ)で平気なんだな竈門禰豆子」

「ちょっと待って三人分……?」

「察しが良いな。そう、俺には三人の嫁がいる」

「さ――⁉」

 

 またしても善逸が発狂しながら叫ぼうとするが宇随に物理的に黙らされた。

 宇随の嫁の三人。

 彼女たちは俗にいう女忍者の『くの一』で、客よりも内側に潜入する……つまり、店側、遊女として調査を行っていたのだ。

 宇随が絞り出した候補は三つ。”ときと屋”の「須磨」、”荻本屋”の「まきを」、”京極屋”の「雛鶴」――

 

「嫁もう死んでんじゃねえのか?」

「ふん!」

「ごっ――⁉」

 

 縁起でもないことを口走った伊之助も腹を殴られた。

 すると、部屋の戸を叩く音がし、外から藤の家の主人が宇随の手配した着物を持ってきた。

 

「……なんですかこれ?」

「言っただろ? 遊女として潜入しろって」

「着ろと? 誰が?」

「お前とお前の継子。あと……」

「禰豆子ちゃんに遊女なんてさせないぞ!」

 

 復活した善逸が宇随に牽制を入れる。

 

「えー! 私もたまにはいつもと違う着物が着たい! お兄ちゃんはそう言うの全然買ってくれないし、そのくせ無駄に過保護だし!」

「そ、それは禰豆子ちゃんが大事なだけで……で、でも、禰豆子ちゃんの新しい衣装……」

「絶対来てね、善逸さん!」

「ぶ――⁉」

 

 善逸、鼻血とともに気絶。

 いきなり倒れた善逸を、伊之助が指で突っついている。

 

「……やるんだな?」

「勿論! むんっ!」

(……まあ、使えるなら使うか)

 

 こうして、遊郭への潜入が決まった。

 

 

 

 

 

 ―――――。

 

 

 

 

 盲目の鬼と炭治郎が、互いに背を向けた状態で立っている。

 炭治郎は刀を突きの状態にしたまま制止。

 対する鬼は……。

 

「……あり得ない」

 

 震える声で、鬼は言う。

 

「何がだ?」

「俺の拳は風で防御されている。刀が触れたらその勢いを殺す……だから」

 

 恐る恐る、鬼は自分の右腕を見て。

 そして、叫んだ。

 

「なんで……俺の右腕は切断されてんだよ‼」

 

 鬼の言う通り、彼の右腕は……肘から先が消失していた。

 正確には、彼の足元に、先程まで在ったはずの腕が落ちている。

 

「別に、大したことはしてないよ。ただ、圧縮した風を破壊しながら攻撃しただけ」

「出来るはずがねえ! お前に、俺の風を破壊するだけの力なんざぁ……‼」

「確かに、()()()()()()()()()

 

 風は拳に乗せられている。

 それは、握り拳の、直撃する正面の部分に。

 炭治郎の刃は風の塊に向かって直進し、その真逆の位置から鬼の拳が圧力をかけていた。

 つまり、双方向からの圧力に耐えられなかった風は、挟まれた瞬間に瞬時に破裂したのだ。

 ようは風船と同じだ。

 風船は、空中から衝撃を受けても、例えそれが金属バットによるものであろうとも割れることはない。威力を外部に逸らすことが出来るからだ。

 だが、地面に置き、上から座れば破裂する。圧力を逃がすことが出来ないから。

 また、別に座らずとも、爪楊枝の一つで割ることも可能だ。

 炭治郎は、自身の刀を爪楊枝に見立て、双方向からの圧力により風の塊を破壊。切っ先によって文字通り風穴を開けられた塊はそこから瞬時に分散し、威力に消えなかった炭治郎の一撃が鬼の腕を刺し貫いた。

 

「……クソがァァァァぁ‼」

 

 仕組みは理解できない。原理は説明できない。何が起こったのか分からない。

 それでも、自身の技が破られた。それが意味するのはつまり――

 

「【銀ノ舞 乱舞】――!」

 

 滅茶苦茶な軌道で放たれた斬撃に、鬼の血が宙を舞う。

 部分的にしか装備出来ない風は、急所の頸以外を守らせていない。

 それを見抜いている炭治郎の攻撃に、鬼はドンドン追い詰められている。

 無論、傷は治る。鬼は不死だ、この程度はなんて事ない。だがそれ以上に、二人の間には隔絶した経験の差が、地力の差があった。

 再生するといっても、痛みがないわけではない。攻撃を続けられれば、頸の守りが消えてしまう恐れがある。

 

(……なんで、俺がこんな目に……)

 

 左腕を斬り飛ばされながら、鬼は思った。

 こんなはずじゃなかった。もっと、上手くやれるはずだった。

 そもそも、鬼になれば目も治る……()()()()()

 

(? ……聞いたって、誰に……?)

「――ッ⁉」

 

 その時。

 鬼の脳裏に、流星のような速度で、一人の人間の記憶が巡った。

 

 

 

 

 

 

 貧しい暮らしだった。

 夫に出ていかれ、女手一つで息子を育てる母がいた。

 彼女は苦労した。金もない、住処もボロボロ。そして何より……彼の息子には、()()()()()()()

 生まれつきだった。夫が逃げたの理由の一つだ。産婆すら顔を青くし、何も言わずに去っていった。

 近所の人間の噂を耳にした。子供が呪われている。関われば自分たちも目を奪われる、と。

 

『……大丈夫、アンタは呪われてなんかない。いつかきっと、みんなもあんたのことを分かってくれるさ、勇希』

 

 息子は、母にだけ心を開いていた。

 その母は、息子を捨てることはなかった。どれだけ苦しい生活であっても、常に息子のことを思っていた。

 例え目が見えなくても、息子はそれを分かっていた。心で感じていた。

 ……だからこそ、息子は目が欲しい、と心の底から思った。

 迷惑を掛けたくない。一人でも頑張れるところを見せて、安心させてあげたい。それだけが、息子の……少年の願いだった。

 

 時は流れる。

 

 少年……風魔勇希(かざまゆうき)は家事をしていた。

 目がない生活にも十分慣れ、構造を把握した家の中では自由に動き回れるようになっていた。

 外も、近所であるなら問題なく動け、最近では目がない自分を気遣ってくれる人物も増えた。

 母の言葉に嘘はなかった。それを実感した勇希は、より一層、母の助けになりたいという思いを強めた。

 そんなある日だ。母は病を患った。遠くの町で医者を呼ばねばならない重症だ。

 しかも都合の悪いことに、自分たちに理解を示してくれる人たちも遠出しており、それ以外の人は未だを自分を忌避している。

 医者を呼ぶにしても、薬を買いに行くにしても、薬草を取りに行くにしても、自分がやらなければならない。状況は最悪。しかし、同時に好機だと勇希は思った。ずっと助けてくれた母に恩返しができる。

 だが、彼は目が見えない。薬も医者も金がないのでどうしようもない以上、行先は決まっている。

 

 山の中に入った勇希は、案の定転落した。

 

 頭から血が流れ、骨は曲がってはならない方向に曲がっている。見えはしないが、薄れゆく意識が勇希に死を悟らせた。

 そんな時だ。

 男の声が聞こえた。

 

『ほう、目の無い怪物がいると聞いて来てみたが……すでに死に体か。つまらぬ』

『……誰、だ……?』

『私に問いを投げるか? 不敬な……だが、私の姿が見えぬのでは仕方あるまい。一度目は見過ごす、次はない』

 

 二度目の問いはなかった。そもそも、そんなことを言う気力すら勇希にはなく、男の声はもう聞こえていなかった。

 

『心臓も肺も止まったか……だが、細胞だけは生きているな。その生への執着……気に入った。間に合うかは知らんが、私の血をやろう。上手くいけば、お前は鬼になる。ともすれば、失われた目も治るやもしれんぞ?』

 

 男が手首を薄く切り、勇希の頭の傷口に数滴、己が血を流し込んだ。

 途端、勇希の体が不規則の動きを見せた。

 声にならない悲鳴を上げ、あちこち転がりながら全身に砂を付け……止まる。

 

『……む? 鬼となっても目が再生しないのか。そうか、目がないのは生まれつきであったか。再生はあくまで元の状態に戻すもの。元から目がないのであれば、治らないのも道理か。……それにしても、いつになったら太陽を克服する鬼は生まれるのやら』

 

 ため息をつきながら、男はその場を去っていく。

 停止していた勇希の体に、変化が訪れたのは直ぐだった。

 

『……、』

 

 相変わらず目のない顔。

 しかし、口元からは獰猛なオオカミのような牙、垂れる涎……まるで飢えた獣のような佇まい。

 もう、かつての風魔勇希はどこにもいなかった。

 そして、()()()()は駆ける。己の食欲を満たすため、掠れ、消えかけている記憶を辿る。

 

『……勇希? ごほっ、も、戻ったの……?』

 

 鬼となった勇希には、布団の上で苦し気にしながら起き上がる女性が誰か分からなかった。

 だが、この時確実に分かっていたのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……喰わないと』

 

 

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