竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった   作:シスコン軍曹

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前回鬱展開のまま終わっちゃった……


視えたもの

「――ッ⁉」

 

 その時。

 炭治郎は無意識に攻撃の手を止めていた。

 理由なんてない。ただ、何となく……これ以上攻めるのはまずい、と。

 そう、思っただけだ。

 そして、その予感は的中した。

 

「ぁ」

「?」

「ああああああああああ! ああああああああああああああああああああああ‼‼‼ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――ッッッ‼⁉⁇」

 

 悲鳴にも似た絶叫。

 街の中心で、静まり返っているせいかよく反響する。

 

(……待て、おかしくないか? これだけ暴れてるのに、どうして人が集まってこないんだ……?)

 

 不自然だった。

 既に戦闘が始まって十分以上経っている。いくら夜だといっても、これだけ派手に暴れ、大きな音を出したら野次馬の一つや二つできてもおかしくはない。

 だと、言うのに。

 彼らの周囲には人っ子一人いない……まるで、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……そうだ、ここだ……ッ! ここが、()()()()()()……‼」

「は?」

「そうだ……こっちだ……俺の家は……母さんは……ッ‼」

 

 ドンッ‼ 蛙のような跳躍力で鬼が跳ぶ。

 空中で風を起こし、方向を調整しながらの飛行している。

 

(なっ……あそこまで操作性能が……⁉)

 

 思わず愕然とする。だが、それを眺めている場合ではない。

 

「やばっ……追いかけないと!」

 

 急いで足を動かす。

 家の屋根を伝い、姿を見失わないように走る。走る。走る――

 

「あ、村田さん、尾崎さん!」

「うっ……!」

 

 道中。

 ボロボロになって横たわっている村田と尾崎を発見した。

 彼らのいる道は、まるで大きな風が直線で突っ切ったかのような穴が出来ている。

 間違いない、あの鬼の仕業だ。

 幸い、風に吹き飛ばされただけのようで、二人の怪我は軽傷だ。このまま安静にしておく方がいいだろう。

 

「……ッ!」

 

 ふと、右手を見た。

 震えている。得体の知れない狂気を感じた心が、恐れを抱いてしまった。理解のできない存在を無意識に排泄しようとしている。

 

「……耐えろ、戦え! あいつを野放しにはしておけない! 行くぞ、竈門炭治郎‼」

 

 己を鼓舞し、右手を膝に叩きつける。

 そして、悠然と風穴へ向かって歩いていく。

 

「……ぁあああ……‼」

「……いた」

 

 鬼は、壊れた家屋の前で膝をついていた。

 覚えがある。あれは一番最初の戦闘で、あの鬼が吹き飛ばした売家だ。

 

「……おい!」

「……、お前のせいか……?」

「えっ……?」

「お前のせいで、みんな死んだのかァァァ――――ッッ‼」

 

 激高しながら襲い掛かってくる鬼の姿に、炭治郎が驚愕する。

 

 鬼は、泣いていた。

 

 目なんてないはずなのに。

 眼球の無い虚空から、一筋の涙を。

 余りにも哀れな姿を前に、炭治郎は身動きが出来ず固まってしまい――

 

「ガッ―――⁉」

 

 無防備のまま、鬼の拳を受けてしまった。

 激痛から、膝をついて蹲る炭治郎を、追い打ちをかけるように鬼が蹴飛ばす。

 

「あが、ぁ……ッ!」

「殺すゥ……‼ お前だけは、お前だけは――――‼」

「何、の……話だ――!」

「とぼっけんじゃねぇ―――!」

 

 馬乗りにした炭治郎に、鬼は容赦なく拳を振るう。

 何度も。何度も。何度も。

 

「……ハァ、ハァ、ハァ……くそ、なんで……なんで死なねえんだよ!」

 

 ボコボコに殴られた炭治郎は、それでも息をしている。

 鬼を烈火の如く睨みつけ、虎視眈々と反撃の機会を窺っていた。

 

「お前が……お前のせいで――!」

 

 ヒュオオオオ‼ 風の音が木霊する。

 凄まじい勢いで、鬼の拳に風が収束するのが分かった。

 これを受ければただでは済まない……そういう直感染みた推測も。

 焦った炭治郎は、鬼を振りほどこうとするも、受けた傷の痛みでまともに体を動かせない。

 ここまでか? 炭治郎は、襲い掛かる拳を前に、身を固くすることしかできず―――

 

「……?」

 

 しかし、鉄槌はこない。

 風の拳は、いつの間にか止まっていた。不自然な停止だ。まるで、()()()()()()()()()かのようだった。

 鬼の様子もおかしい。ずっと虚空を眺めたまま動かない。信じられないものでも見たかのように、石造のように停止していた。

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………ぁ」

 

 鬼は、幻を()()()()。ありもしない幻想を……心で。

 

『ダメ……もう、いいの。終わりにしよう? 一緒に行こ、ね?』

 

 知らない女性……だが、懐かしい声だった。

 そもそも、誰かを『視る』という行為が、鬼にとっては新鮮な行為だった。

 そして何より……鬼は知っていた。

 見たことはない。目が見えないのだから。それでも、分かった。分かってしまった。

 

「……ぁさん……!」

『もう終わりにしましょう』

 

 優しい声が、鬼をそっと抱き寄せて―――

 

「ぐああああああああああああ‼‼」

 

 そこで、彼の意識は現実に戻った。

 それと同時に、拳を地面に叩きつける……が。

 

「……いねえ。……そこか」

「ハァ、ハァ、ハァ……危ない」

 

 本当に危なかった。

 あの時拳が止まっていなければ、潰されて終わりだっただろう。

 ともかく、最悪は回避できた。

 ならばあとは、勝ちに行く。

 

「竜の呼吸【花ノ舞 紅蓮華(ぐれんげ)】‼」

 

 振るわれる、新たな技。

 炭治郎の刃が(くれない)の花を纏い、弧を描く形で斬撃を放つ。

 その刃が鬼の頸を捉える……その瞬間に。

 鬼の周囲から凄まじい暴風が発生した。

 

「ぐっ……⁉」

 

 余りの風圧に吹き飛ばされ、上空に押し上げられる炭治郎。周囲には瓦礫や残骸が舞い、下からも追い打ちをかけるように昇ってくる。

 咄嗟に、自身の体に当たる残骸を破壊し、炭治郎は自分の頭上にある残骸に足を置く。

 まるで天地が反転したかのような態勢で立つ彼は、上……つまり下へと視線を向ける。

 

「……竜の呼吸」

 

 言葉は要らない。

 あの鬼がどんな罪を犯しているのかも、どんな業を背負っているのかも分からない。

 だから。

 今はただひたすらに、刃を振るう。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼‼‼」

 

 獣のような咆哮とともに、鬼は地面を蹴って跳躍。

 真っすぐ、残骸を薙ぎ払いながら炭治郎へと突進する。

 炭治郎はそれに対し、刀を鞘に納めて居合の構えを取る。

 瞬間、彼の周囲から紫電の覇気が発生した。

 

「今からお前を殺す、恨むなら好きなだけ恨め!」

「ぁああああああああああああああああ‼‼‼」

 

 彼我の距離、僅か五メートル。

 その時。

 炭治郎の額に、銀色の、竜の鍵爪のような痣が浮かび上がった。

 それと同時に、体温の高まりを感じる。かつてない高揚感により、今まで以上の力が刀に込められる。

 

「【(かみなり)ノ舞 紫電一閃】‼‼」

 

 残骸を蹴る。

 その行為だけで、足場が木っ端みじんに粉砕された。

 凄まじい速度で鬼に肉薄し、目にも止まらぬ間に刀を引き抜く。

 交差。

 二人は一息の間にすれ違い。

 

 

 ……鬼の頸が落ちた。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 浮遊感。

 それと同時に感じる、身に迫る死の気配。

 凄まじい喪失感が鬼の心を襲った。

 だが。

 

(なんだ、この……妙な安心感は……?)

 

 まるで。

 これ以上罪を犯すことがない事を、喜んでいるような。

 ようやく、母がいる場所へと逝ける――そんな、安堵があった。

 

「……ッ⁉」

 

 気が付けば。

 鬼は、見知らぬ場所に立っていた。

 見渡す限り闇。足場すら目に見えない、虚無の世界。

 ふと、ある場所に視線を向けた。

 そこには、花畑があった。色鮮やかに咲き誇る花の群れ。まさしく百花繚乱。余りの美しさに、目を奪われた。

 そこで気づく。

 自分が、何かを()()()()ことに。

 

「……見える……でも、どうして」

『勇希』

 

 ばっ、と。

 名を呼ばれた鬼が、勢いよく振り返る。

 奇妙な女性だった。髪を後ろで纏め、若干ボロい着物を身に付けている。

 

『ごめんね。私のせいで……』

「……そんな」

 

 女性の声に、勇希は覚えがあった。

 何しろ、彼は。

 その声の主の為に、人生を尽くすと誓ったのだから。

 

「母さん……‼」

 

 初めて見た母親に、勇希は泣いて縋り付く。

 彼の口からは、懺悔の言葉が留めなく溢れた。

 それは、彼女に向けるべき言葉ではないと分かっているけれど。

 自分が殺した者にこそ向けるべき謝罪であるけれど。

 

『もういいの。アンタはよく頑張った』

「そんなことない……俺は、俺は……ッ‼」

『キチンと罪を償おう、ね? 私も、一緒に行くからね』

 

 二人は、互いに抱き合ったまま。

 その身を、地獄の業火で焦がすのだった。

 

 

 

 

 

 

「……ハァ、ハァ、ハァ」

 

 炭治郎は過呼吸気味に、息を吸って吐いてを繰り返していた。

 彼の右手には、鬼の血の入った採血ような小刀が握られている。

 既に鬼の肉体は灰となってい消えていた。

 戦いは終わった。

 それでも、炭治郎の心は晴れない。

 

「……鬼は、虚しくて、悲しい生き物、か……」

 

 唐突に、そんな言葉が頭に浮かんだ。

 あの鬼がどんな業を抱えていたのかなんて分からない。彼は鼻が利くわけでもないから、他人の感情を読み取ることなんてできない。

 それでも。そんな炭治郎でも。

 あの鬼が、何か、辛い境遇にいたであろうことは……十分、推測できた。

 

「それでも、折れるわけにはいかない」

 

 既に決意は固めた。

 ここで立ち止まっていては、何も守れない。

 そう、己を叱咤し、立ち上がろうとした……その時。

 

「ニャーオ」

「……お前は、えっと、茶々丸だっけ?」

「ニャー!」

 

 名を呼ぶと、三毛猫は嬉しそうな鳴き声を上げる。

 そして、炭治郎から血を受け取ると、何処かに去ろうとし、

 

「ニャー」

「……? ついて来いってことか?」

「ニャー」

 

 普段、茶々丸は採決を終えると現れ、血を受け取ったら消えてしまう。

 だが今回は、消えることなく、自身のついてこいというのだ。

 炭治郎は、鴉に報告と救護班の要請を行い、茶々丸についていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 ―――――。

 

 

 

 

 

 吉原・遊郭。

 男と女の見栄と欲、愛憎渦巻く夜の街。

 遊郭・花街はその名の通り、一つの区画で街を形成している。ここに暮らす遊女たちは、貧しさや借金などで売られてきた者が殆どで、沢山の苦労を背負っているが。

 その代わり、衣食住が確保され、遊女として出世できれば裕福な家に身請けされることもあった。

 中でも遊女の最高位である”花魁”は別格であり、美貌・教養・芸事、全てを身に付けている特別な女性。

 位の高い花魁には簡単に会うことすらできないので、逢瀬を果たす為に男たちは競うように足繫く花街に通うのである。

 

「とまあ、そう言う訳でさ。どいつか買ってかない? 安くしとくよ?」

 

 言ったのは、鬼殺隊・音柱の宇随天元だ。

 普段の隊服や化粧は見る影もなく、サラサラの髪に高級そうな着物に身を包んでいる。

 ぶっちゃけ、普段より十倍男前だった。

 彼は今、(あらかじ)め目星をつけていた候補の店に、潜入捜査用の人員を送るために変装をしているのだ。

 傍らには、三人の女性がいる。

 一人は栗花落カナヲ。普段の隊服姿ではなく、女性用名の着物に身を包み、髪を後ろで括っている。口元に浮かぶ微笑は、妖艶な美を漂わせている。

 その隣には、彼女の師である胡蝶しのぶ。やはり隊服姿ではなく、普段結んでいる髪をおろしており、着物の上に蝶のような羽織を纏っている。普段から浮かべている笑顔が、美しい蝶を連想させた。

 最後に竈門禰豆子。髪はツインテールの形で、高級そうな着物に身を包み、元気な町娘を思わせる笑顔を浮かべている。

 

「むぅ~、選り取り見取りだねぇ。どの()も別嬪さんばかりなんだけど、先日も新しい子が一人入ったばかりだしねぇ」

「まあでも、一人くらいならいいんじゃない?」

 

 彼らと取引しているのは、”ときと屋”の女将と旦那だ。

 ここで躓いては話にならない。

 

「じゃあ、その端の、元気な子を買うよ。いくらだい?」

「毎度あり。じゃあ一人頼むよ奥さん」

「頑張ります!」

 

 禰豆子、就職決定。

 

「いやー、幸先上場だな。この調子なら、お前ら二人もすぐに売れるだろーよ」

 

 三人はときと屋を出て。

 は次の目的地である荻本屋へと向かっていた。

 

「ちょっと宇随さん。目的を忘れないでくださいね?」

「分ぁってるよ。おっ、お前ら見ろ、花魁道中だ。通ってるのはときと屋の”鯉夏花魁”だな」

「話を逸らさないでください」

「おやおや?」

 

 しのぶが宇随の態度を咎めようとすると、脇から声を掛けらた。

 知らない声だ。恐らく、しのぶの美しさに見惚れた男が手を出そうとしているのか。

 彼女は鬱陶しそうに声の主に振り返り……言葉を失った。

 

「うーむ、何処かで見た事あるような気がするんだが、どこだったかな? むぅ、もう少しで思い出せそうなんだが」

「おい兄さん。悪ィがこいつも立派な売り物なんでな。手を出すなら遊女になってからにしてくれや」

「おっと、これは失敬」

 

 宇随に止められた男は、困ったような笑みを浮かべ謝罪をする。

 奇妙な男だった。

 頭から血を被ったかのような赤い紋様のある髪に、虹色の目をした洋服の着物を着た男だ。左手には日傘を持ち、日の光を遮っている。

 右手には黄金の扇を、口元に浮かぶ笑みを僅かに隠すように持っている。

 

「まだ遊女じゃないなら、その子が売られた時、是非その店を紹介してほしいな」

「そんなに気に入ったのか? 物好きだねぇ」

「いやなに……ちょっとした気まぐれさ」

 

 それだけ言って、一瞬ちらっとしのぶを流し見た男は、人混みに紛れて消えていった。

 

「何だったんだアイツ?」

「師範、どうかしましたか?」

 

 カナヲがしのぶの身を案じるが、しのぶはやはりいつも通り笑顔を浮かべている。

 

「……いえ、大丈夫。大丈夫だから」

 

 それは、カナヲを安心させるというよりは、自分自身を自制しているかのような口振りだった。

 だが、二人ともそれに気づくことなく、

 

(見つけた)

 

 しのぶは、自身の胸に憎悪が巡るのを感じていた。

 あの男で間違いない。黄金の扇、頭から血を被ったような髪。数字こそないが、あれは間違いなく、

 

(姉さんを殺した鬼……! まさか、こんなところにいるなんて……ッ‼)

 

 本当なら、今すぐその頭蓋に毒を打ち込みたい。

 だが、ここで戦うのは危険だ。まだ人が大勢いて、戦うのに向いていない。

 待つしかない。殺すことが出来る、その瞬間まで。幸い、自分が売られた時にあの男が来るのは分かっている。決戦の場は、そこでいいだろう。

 しのぶは密かに誓った。

 必ずこの遊郭で、姉の仇を取る、と。

 

 




童磨の喋り方ってこんな感じでいいのかな?
遊郭ってちゃんと日が出るのか分からないから日傘さしてガードしてるってことでオナシャス。
……夜兎じゃんこれじゃあ
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