竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
禰豆子たんぺろぺろ
鱗滝さんに認めてもらった翌日、二徹であったためかこれだけ寝ても体の疲れが取れていないような気がした。
だが、その程度で止まっているわけにはいかない。俺は鱗滝さんについていって再び山を登る。
あれから、禰豆子は原作通りに眠りについた。この調子では、最終選抜の時までは起きないだろう。
「儂は「
「はい!」
正直、日記を付けようか迷った。けど、禰豆子は多分、俺が何をしているかちゃんと理解しているだろうし、自分で言うのもなんだが、字が汚い。
日記をつけても読めないだろうし、それを書いている時間があるなら休んだ方がいいと思い、日記はつけないことにした。
(よし! 行くか!)
今日も今日とて鍛錬だ。ひたすら山を登っては下り、登っては下りを繰り返す。
正直、酸欠以前に高山病にならないか心配になるが、今のところは大丈夫だ。最近は罠の気配どころか、鱗滝さんの気配も漠然とだが分かるようになってきた。
……ただ、気のせいか、霧の奥から誰もいなはずなのに視線を感じる。けど、その視線は監視というより、見定めているものや、懐かしむようなものばかりだ。
大体予想は出来ている。恐らく、最終選別であの大型の鬼に殺された鱗滝さんの弟子たちだろう。
(けど、一々構っていられる余裕はない。俺がするべきなのは、ただ強くなること……! それも、原作の炭治郎よりも……!)
そうすれば、禰豆子が危険な目に遭う確率はぐっと減る。
俺は飛んでくる丸太を見もせず躱し、そのまま死角から飛んできた大量の
けど、もうすっかりこの訓練も慣れた。体が以前よりも軽くなって、重りから解放されたかのようだ。自分の思った通りに動き、息切れの回数も減っている。その度に、成長を感じられてより励める。
「……ふぅ」
休憩を挟むために、足を止める。呼吸を整えるためにゆっくりと息を吸い、吐き出す。
俺は左手で持つ刀を見て、ため息を吐いた。実は、先ほどまでの山登りでは刀を片手に行っていた。
正直、最初は邪魔で仕方がなかった。最近はマシだけど、まるで鍛錬を始めた初日の様に罠に引っかかり続けた。
「……戻ったな。では素振りだ」
山を下りて小屋に戻ると、鱗滝さんに次のメニューを言い渡される。
この素振りも中々キツイ。見ているのと実際にやるのとは違うというのを思い知らされた。
幾ら刀の重さになれていても、素振り1000回はヤバい。その上終えた時に時間が余っていれば回数をプラスされる。夜になっても終えていなければ続けさせられる。
だが、泣き言は言ってられない。これくらいは原作の炭治郎もやっていた。俺はそれを超えなければならない。
「刀は折れやすい」
ある日、素振りではなく、実際に藁人形を切るとき、鱗滝さんにそう言われた。
縦の力には強いけど横の力には弱い。
刀には、真っ直ぐに力を乗せること。刃の向きと刀を振る時、込める力の方向は全く同じでなければならない。
まあ、これは問題なかった。元々そのことは原作を読んで知っていたから、素振りの時の合間にそれを意識しながらやっていたので、実際にやっても特に問題はなかった。
因みに、刀を折ったらお前の骨も折ると暗に脅された。
「うぎゃぁぁぁああああ―――ッッッ!?!?!?」
今日は投げられ祭り。言い換えれば受け身の鍛錬。鱗滝さんに回転させられて転ばされ、直ぐに起き上がる鍛錬だ。目が回った。何回か吐いた。
その後、鱗滝さんと実戦をする。俺は真剣、鱗滝さんは素手……まぁ、勝てないんだが。ビックリするほど勝てない。
剣道は前世でも学校の授業でやっていたが、鱗滝さんが教えるのとはまるで違うので役に立たなかった。
「今日はお前に、全集中の呼吸、そして型を教える」
ついに来た。全集中の呼吸……水の呼吸とその型だ。これが無ければ鬼には到底立ち向かえない。
水の呼吸の型は全部で十個あり、イメージは体の隅々の細胞まで酸素を行き渡らせるというもの……らしい。体の全治癒力を高め、精神の安定化と活性化をもたらすそうだが……、全然イメージつかない。
というか、大正時代にはもう細胞の概念ってあったのか? 文系だから理科勉強してなくて分かんないけど。
「上半身はゆったりと、下半身はどっしり構える。よし呼吸!」
「はぁぁ……ぐフッ!?」
「違う!」
思いっきり腹パンされた。失礼だが、物凄いぶん殴りたくなった。
その後、なんとか呼吸法の方は具合がよくなってきた。全集中の呼吸はこの調子なら、全てを教わる前に習得できそうだ。あれ? 錆兎の出番なし?
「次、型!」
「教わってません!」
「人に聞くな。自分の頭で考えられんのか!」
「理不尽⁉」
思わず頭を抱えた。だが、どうやらタダのジョークだったらしい。
ということで、ちゃんと型を教えてもらい、実戦する。
「こうですか⁉」
「違う!」
「じゃあこうですか⁉」
「それも違う!」
「ならこうですか⁉」
「それは雷の呼吸だ! 何故できる⁉」
知らないです。
その後、滝のある崖まで連れ来られた。なんでも、水と一つになれとか。そのために今から滝の下までダイビングしろとのことだ。
俺は滝の下までの高さを目測で測り、
「ふっ、今日はちょっとお腹の調子が悪いからまた今度に――」
「早く行け」
「アァァァァァァれェェェェェェェ―――ッッッ⁉⁉⁉」
そう言われ鱗滝さんに蹴り落とされる。相変わらず鱗滝さんは今日も理不尽だ。
水泳選手の様に頭から直角に落ちればダメージも少なかったのかもしれないが、生憎、体全体から落ちてしまった。滅茶苦茶痛い。
その後は滝に打たれた。
みんな知ってた? これ凄い痛いんだぞ? 俺は知らなかったよ。知りたくもなかったよ。
「……にしても、禰豆子が目覚めなくなってもう半年か」
時間が過ぎるというのは本当に速い。禰豆子は鱗滝さんが医者に診せたが、当然異常は見られなかった。
っていうか、人間の医者に、鬼の体のことが分かるのか? その辺りどうなんでしょうか吾峠先生?
禰豆子の体は今、変化を遂げているのだろう。睡眠によって回復を行える体へと。俺に出来ることは、禰豆子が起きた時、彼女が安心できるくらい強くなること。
それから、鍛錬はより過酷なものへと変わった。
場所はより空気が薄い場所へと変わり、何度も死にかけた。けど、それを乗り越えるたびに、俺は自分が強くなっている気がした。
けど、まだ足りない。俺が得るべき強さに上限はない。禰豆子を守る為に、今のままで満足していてはダメなんだ。
そう思い、俺は鱗滝さんに内緒で、山下りの際に、重りを持ったり、より行動を制限し、鍛錬を自分で厳しくした。
今までの鍛錬を乗り越えて居なければ絶対に出来なかったであろうことが、今は出来る。
「はっ! やっ!」
飛んできた包丁を刀で切り払う。更に、背後からくる丸太を振り返るのと同時に真っ二つに両断し、両隣から落下してくる竹林を、一つ一つの竹を足場に踏み越える。
こんな動きも、前までは出来なかった。それに、最近は全集中の呼吸も完全にマスターしている。この調子なら、鱗滝さんが用意する大岩も簡単に両断できるかもしれない。
そう思うと、俺はどこか心が軽くなるのを感じた。原作の炭治郎よりも強くなっているのでは? という感覚が、心に余裕を取り戻させてくれる。
そういえば、最近は強くなることに必死で、体を酷使しすぎていた気がする。もう少しハードルを下げて、体を休めたほうが良いかもな。
「もう教える事はない。後はお前次第だ。儂が教えた事を消化できるかどうか。ついてこい」
またある日、鱗滝さんに唐突に言われた。
ついにこの日が来た。最終選別への最終試験……ややこしいな。兎に角、これを終えたら、俺は剣士となれる。
そう思い、俺は鱗滝さんの後をついていったのだが、
「この岩を斬れたら最終選別に行くのを許可する」
「……えっ?」
俺の目の前には、俺の身の丈の
……あれ? どう見ても原作の岩より大きいと思うんですがあの……。
(えっ? なんでこんなに大きいの? おかしくない?)
思わず鱗滝さんのほうを見るが、当の本人は黙って去っていった。
本気で俺を最終選別に行かせたくないのか? いや、気持ちは分からんでもないけど、流石にこれはやり過ぎというか、大人げないというか……えぇ……。
……これはあれか? 俺の力が原作よりも上だから、それに合わせて難易度も上がったのか? ……うそーん。
「……はぁぁ……」
しかし、これを切れと言われた以上、切らなければ話は進まない。
全集中の呼吸を行い、万全の状態に整える。
……行くぞ。
「はぁーっ!」
そして、俺は全力の一刀を振り抜いた。
常識的に考えれば岩を刀で切れるはずがないんだよね。
やっぱジャンプはすごい。
どっちがいい?
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