竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった   作:シスコン軍曹

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最終選別

「……ここは」

 

 鱗滝さんの家を出て、しばらくすると、藤の花と呼ばれる花が咲く道に差し掛かった。

 どうやら、目的地に着いたらしい。

 

「……ついた」

 

 恐らくは最終選別の会場らしき場所にまで到達する。

 俺のほかにもたくさん人がいた。しかし、この中のほとんどが皆、この試験に生き残れず死ぬと思うと、少し心苦しい。

 俺の目的は、あくまでも禰豆子を人間に戻すこと。だけど、それはここで死ぬ人たちを見過ごす理由にはならない。せめて、俺が目に付く限りで、助けられる人は助けていこう。

 

「「皆様。今宵は、鬼殺隊最終選別にお集まりくださって、ありがとうございます」」

 

 すると、奥の方から子供の声二つが重なって聞こえる。

 片方は黒い髪、もう片方は白い髪の少女。顔立ちはそっくりというか瓜二つだ。

 確か、鬼殺隊の偉い人……だっけ? アニメでは詳しく言われてないと思うけど、結構偉い人……のはず。にわかだから分かんないや。

 

「この藤襲山には、鬼殺の剣士様が生け捕りにした鬼が閉じ込められており、外に出る事は出来ません」

「山の麓から中腹にかけて、鬼共の嫌う藤の花が、1年中狂い咲いているからでございます」

 

 確か、黒い方が男の娘で、白い方は女の子なんだっけ? どう見ても両方女の子に見えるから世の中って不思議。

 

「しかし、ここから先には、藤の花は咲いておりませんから、鬼共がいます」

「この中で7日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます」

「「では、行ってらっしゃいませ」」

 

 これ、食料とかはどうすればいいんだろ。一応初日の分でおにぎりは持ってきたが、初日しか持たない。

 まあ多分、森の中に木の実とかでもあるのだろう。ないなら、おにぎりを分けて、長持ちさせるしかない。

 そんなことを考えながら、俺は山の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

「さて、まずは東だな」

 

 山に入ってすぐ、俺は行動を開始した。

 鬼は日の光を浴びると死ぬ。だからこそ、彼らは皆、午前中は動かない。ならば、太陽の光が一番早く差す場所を陣取るのが、この試験での最善手だ。

 そして、それは当然、朝日が昇る東。この山の最も東の場所を目指す。

 

「⁉ 鬼の気配……!」

 

 間違いない。数は二体。……後ろ……それも上だ!

 

「いた!」

「キシャァァァァッッ‼‼」

 

 上空から奇声を上げて飛び掛かってくる一体の鬼。

 だが、それだけではない。背後からも気配がする。俺は上からの鬼の攻撃を躱し、さらに左へ跳ぶことで背後からの鬼の攻撃も回避する。

 

「てめぇ! 横取りしようとしてんじゃねぇ! てめぇは向こうに行け!」

「知るか! 貴様が失せろ!」

 

 ……ホント仲悪いなこいつ等。だから付け入る隙を与えるってのに。

 

「ヒュゥゥゥゥ……‼」

 

 行くぞ。鍛錬の成果を試す時だ!

 

「全集中、水の呼吸……【肆ノ型 打ち潮】ッ‼」

 

 入り乱れるような動きで、言い合いをする鬼たちの頸を切り落としていく。

 彼らは自分の身に何が起こったのかさえ理解できないままその命を終わらせた。

 少々卑怯かもだが、こっちも命が掛かっている。主人公補正のようなものは存在しない以上、気を抜けば死んでしまうかもしれないのだ。

 

「……鬼の攻撃を見もせず躱せた。そして奴らの頸を取れた。それだけで十分だ。あの鍛錬は、無駄じゃなかったんだ……!」

 

 感動の余り思わず涙が出そうになる。こんなにも努力が報われたことを嬉しく思ったことはない。

 だが、余韻に浸るのは後回しだ。初日の夜を越えるためにも、まずは東を目指す。

 一応、鱗滝さんに鬼なら、鬼を人間に戻す方法を知っているかもしれないと言われたが、鬼ではなく珠世さんに会うほうが手っ取り早い。

 

「……ごめん」

 

 俺は自分が殺した鬼に謝罪をし、先を急ぐ。いくら自分を殺そうした存在でも、人間と同じ言葉をしゃべり、それ以前にもとは人間だったのだ。

 人を殺した罪悪感……とまではいかない。だが、それでも幾分か申し訳なさが出てくる。

 

「うぎゃぁぁぁああああ!!!」

「⁉ 叫び声――⁉」

 

 突如、後方から叫び声が聞こえた。

 慌ててそちらに向かおうとすると、金色の物体が俺のもとに走ってくる。

 

「えっ、ちょ――⁉」

「助けてェェェェェェ―――ッッ‼‼ ベブラッ⁉」

 

 前を見ていなかったのか、俺と思いっ切り衝突し、俺を巻き込んで転がっていく。

 ある程度進んだところで、木に当たって回転は止まった。

 

「いてて……大丈夫か?」

「うぅ……あ、うん。ありがと」

「……礼を言うのはまだ早いぞ」

 

 俺は金髪の少年の後方へと視線を向ける。

 そこには、四足歩行でこちらに接近してくる鬼がいた。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ――――ッッッ‼‼」

「下がってろ! 水の呼吸【壱ノ型 水面斬り】ッ‼」

 

 金髪の少年を後ろに置いていき、俺は鬼へと走っていきながら、壱ノ型を構える。

 そして、素違い様にその頸を切り落とした。

 鬼は灰となり、消滅する。

 

「ふぅ……さて、大丈夫か――」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ―――ッッッ‼‼ ありがとォォォォォッッ‼‼」

「……うん。分かったから取りあえず離して。俺は竈門炭治郎。君は?」

 

 すると、金髪の少年は俺の服から手を放し答える。

 

我妻善逸(あがつまぜんいつ)……さっきは本当にありがとう……」

「気にするな。それじゃ――」

「待ってくれ!」

 

 先を急ごうとした俺を、善逸が引き留める。

 

「俺このままだと死んじゃう! 頼むよォ、助けてくれよォ!」

「えぇ……大丈夫だって。きっと生き残れるよ」

「無理だって! お前俺のこと舐めんなよ! めちゃくちゃ弱いんだぞ!」

「そんな自信たっぷりに言われても……」

 

 我妻善逸と言えばこれだが、正直今は邪魔だ。というか、なんでこの段階でもう出会ってる訳?

 

「頼むって炭治郎ォ……!」

「……はぁ。分かった」

「ホント⁉ やったァァァァ! これで俺は生き残れる!」

 

 全く、とんでもねえ善逸だ。

 そんなことを考えていると、

 

「……なんだ、この気配……?」

 

 先程の鬼とは比較にならない、邪悪で強大な気配を感じる。

 直後に、ズシンッ、ズシンッという地響きが鳴り響いた。まるで、大きな何かが歩いているかのような音が。

 

「ひぃぃぃぃぃぃッ⁉ 何々⁉ 何なの⁉」

「……近い。もしかして……!」

 

 この会場にいる鬼の中で、恐らくは最強と言える存在。

 それがこの近くにいる。

 

「逃げるか……戦うか。なら、答えは決まっている」

「ちょ、どこ行くの炭治郎くん⁉」

 

 俺は地響きがする方へと走っていく。善逸も俺の後を追って……というか、一人になるのが怖いんだな。

 確かに、俺も怖い。だから善逸の事はあまり責められない。

 けど、この程度の鬼も切れない様じゃ、到底、鬼舞辻無惨を倒す事など出来ない。

 

「うわぁー!! 聞いてない! こんなの聞いてないぞ‼」

 

 恐らく参加者の一人であろう人の叫び声が聞こえた。それと同時に、彼を追いかける異形の鬼の姿も。

 それを確認した瞬間、俺は迷わず走った。

 すると、異形の鬼……確か、手鬼だったか。は、その長い手を転んだ少年に伸ばしていた。

 

「させるか! 水の呼吸【弐の型 水車】ッ‼」

 

 その腕を縦に両断し、少年を庇うように前へと立つ。

 彼は俺がやられているのを好機と見て逃げ出すが、それは構わない。彼の実力ではこの鬼の前ではかえって足手纏いだ。

 すると、突然の乱入者に眉をひそめていた手鬼は、俺の頭にある狐の仮面を見てニヤリと笑う。

 

「また来たな。俺のかわいい狐が」

「ちょ、ななな、何なのこいつ⁉ 幾らなんでもデカすぎでしょ⁉」

 

 巨大な鬼の姿を見た善逸が、驚きの声を上げる。

 ……こんな時に言うのもあれだが、cv子安だと狂気度高いなマジで。

 そして、鬼が今は明治何年かと聞いてきたので、俺は今は大正だと答えると、

 

「大正…? ……うわぁぁぁぁぁぁッッ!! 年号がぁぁぁぁッッ!! 年号が変わっているぅぅぅぅッッ!!」

 

 突如叫びだし、全身を引っ掻く手鬼。

 マジで見ているこっちが痛々しいからやめて欲しい。

 

「まただッ‼ また俺がこんな所に閉じ込められている間にぃぃぃぃぃッッ‼‼ あぁぁぁぁぁッッ‼‼ 許さん! 許さぁぁぁぁん‼‼ 鱗滝め! 鱗滝めぇ‼ 鱗滝めぇぇぇぇッッ‼‼」

「……どうしてそこで鱗滝さんの名前が出るんだ」

 

 知っている。けど、一応聞いておくべきだろう。

 すると、手鬼は俺の問いに、イライラした態度を隠そうとせず答える。

 

「知ってるさ……俺を捕えたのは鱗滝だからな。忘れもしない47年前、あいつがまだ鬼狩りをしていた頃だ! 江戸時代……慶応の頃だった」

 

 今にして思えば、江戸時代から鬼殺隊はあったのか。

 一体大ボスの鬼舞辻無惨はいつから生きてるんだ?

 

「嘘だ! そんなに長く生きてる鬼はいないはずだ! ここには人間を2、3人喰った鬼しか入れてないんだ! 選別で斬られるのと鬼は共喰いするからそれで……」

「でも俺はずっと生き残ってる。藤の花の牢獄で50人は喰ってなぁ……!」

「アンタは逃げろ! こいつは俺が何とかするから!」

 

 俺は後ろの人にそう言って、じりじりと間合いを詰める。

 そんな俺の様子を見た手鬼が、沢山ある手で何かを数えだした。

 

「11、12、13……で、お前で14だ!」

「何がだ……」

「ひひひひ。俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。あいつの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ」

 

 …………。

 

「そうだなぁ……特に印象に残っているのは二人だな。あの二人、珍しい毛色のガキだったな。一番強かった、獅子色の髪をしてた、口に傷がある。もう一人は、花柄の着物で女のガキだった。小さいし力もないがすばしっこかった」

 

 ………………。

 

「その面。目印なんだよ。その狐の面がなぁ。鱗滝が彫った面の木目を、俺は覚えている。あいつが着けていた天狗の面と同じ彫り方。厄徐の面と言ったか? それを着けているせいで、みんな喰われた。みんな俺の腹の中だ。鱗滝が殺したようなもんだぁ。くひひひひ! これを言った時女のガキは泣いて怒ってたなぁ。その後すぐ動きがガタガタになったからなぁ。ひひひひひ! 手足を引きちぎってそれから――」

「もういい。くたばれ」

 

 自分でも驚くほど、低く暗い声で呟く。

 吐き気を催す邪悪というのは、こういうことを言うのだろう。九か月も俺を鍛えてくれた存在を、こんな輩が語るのが、許せない。

 この鬼も、悲劇を抱えている。それは知っている。だが、それを差し引いて尚、こいつを許すことはできなかった。

 

「ひひひ!」

 

 気色の悪い笑みを浮かべて、手鬼はその大量の手を伸ばしてくる。

 これは、ただ切るだけじゃだめだな。それに合わせ回避もしなければ。

 っていうか、今気づいたが、善逸ビビり過ぎて()()()()()()

 

「水の呼吸【参ノ型 流流舞い】ッ‼」

 

 大量の手を切り裂き、さらに回避しながら間合いを詰める。

 大丈夫だ。こいつは憎いが、呼吸は乱れていない。ちゃんと動きを見れば躱せる。

 

「ふっ、はっ!」

 

 だが、このままではジリ貧だ。

 俺は型をやめ、リスクは大きいが、一気に走って間合いを詰めることにする。

 

(⁉ 地面から鬼の気配……‼)

 

 走っていると、地面から目の前の鬼と同じ気配がすることに気づいた。

 俺は自分の勘を信じ跳躍すると、地面から鬼の手が大量に、イソギンチャクの様に飛びだしてくる。

 危ない……アニメだともっと後の段階で使っていたけど、その感覚で行ってたら今のにやられてたな。

 

「避けたか……だが、空中では躱せまい‼」

「! ……水の呼吸【陸ノ型 ねじれ渦】ッ‼」

 

 すると、手鬼は大量に腕を伸ばしてくる。

 俺は左右から向かってくる腕をねじれ渦で切り裂くが、正面から遅れてきた腕が俺に向かって伸びてきた。

 

(まずっ……‼)

 

 俺は原作の炭治郎みたいに頭が固いわけじゃない。頭突きで攻撃の回避などできないし、先ほど呼吸を使ったせいでその状態に至れない。

 このままではやられる。何かないのか、この状況を覆す何かが。

 俺はこの状況を打開する方法を模索するが、目の前を死を前に思考が上手く纏まらない。

 

「シィィィィ……」

 

 そんな俺の耳に、そんな呼吸音が聞こえた気がした。

 

 




善逸とのエンカウントが早すぎる件について

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