竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
「ひひひ!」
目の前の巨大な鬼が、そんな気味の悪い声を出す。
聞いてない。こんな鬼がいるなんて話、誰もしなかった。
俺は邪悪な音を立てる鬼にただ震えることしかできずにいる。
そのうえ、この鬼は、炭治郎の、会話の内容から恐らく兄弟子であろう存在を喰い続けているそうだ。
「もういい。くたばれ」
その話を聞いた炭治郎の声は、凄まじい嫌悪に満ちていた。
だが、それもすぐに収まり、目の前の怪物へと悠然と構えている。
なんて凄い奴なんだと思った。もし俺の兄弟子がこいつに喰われているなんて分かったら、俺は恐怖のあまり逃げ出すだろう。
今でも、標的があくまで炭治郎に向いているから、なんとか逃げ出さずにいられる。もし、これを俺に向けられていたらと思うと……。
俺も何かしたい。
炭治郎がこの鬼に勝つために、何かがしたい。そう思っても、俺の体はちっとも動いてくれない。前へと足が動いてくれない。
誰かの役に立つ……そんな俺になりたい。なのに、現実の俺はこんなにも惨めだ。
自分で勝手に自分を追い詰め、俺はとうとう、鬼への恐怖と自分への自己嫌悪に板挟みにされ、失神した。
「シィィィィ」
だから、これは夢だ。
我妻善逸が見る、夢。自分を助けてくれた恩人の為に、一歩を踏み出す夢。
けれどその夢は、確実に恩人を救うための一手となり得る。
「……雷の呼吸【壱ノ型 霹靂一閃】」
瞬間、雷が駆ける。
突然の事だった。
俺の正面へと延びていた手が、何かに切断されたのだ。それも、ほんの瞬きの間の一瞬で。
よく見ると、傷口が電気のようなものを帯びているのが分かる。更に視線を端に向けると、腰の鞘に刀を収める瞬間の善逸を目撃した。
「はっ……? は、はぁぁぁぁぁぁぁああああああ―――ッッッ⁉⁉⁉ だ、誰だァァァァ―――ッッ⁉⁉⁉ 俺の邪魔をする奴はァァァァ―――ッッッ‼‼」
「……サンキュー、善逸」
俺は恐らく聞こえていないだろう本人へと感謝を述べ、手鬼が伸ばした腕を足場とし走っていく。
そうして距離を詰めていく俺にギョッとし、残りの腕を俺に向けてくるが、その程度では足止めにもならない。
型を使うこともなく、俺は一気に手鬼の頸元へと到達した。
「全集中、水の呼吸……」
(間合いに入られた⁉ ……いや、大丈夫だ。俺の首は固い、こいつには斬れない! 首を斬り損ねた所で頭を握り潰してやる! あいつと同じようにッ‼)
その時、俺は見た。
手鬼の頸に、線のような、亀裂のようなものがあるのを。
原作の炭治郎は、鋭い嗅覚から、隙の糸なるものを見ることが出来た。恐らくこの亀裂は、それと同質のモノだろう。
名付けるならば、”隙の亀裂”といったところか。
「【壱ノ型 水面斬り】――ッッ‼‼」
その亀裂をなぞるように、俺は一閃を繰り出した。
手鬼の頸はキレイに切り落とされ、跳ね上がる。
「……さようならだ。きっといつか、鬼なんかにならない、鬼なんかいない、そんな世界で生まれてこれますように」
頸は切った。なら、これ以上彼に憤る理由はない。
最後に彼にしてやることは、彼の来世を祈ること。ただそれだけだ。
俺が手鬼の手を握り、彼に黙祷を捧げていると、
――ありがとう。
ふと、そんな声を聞いた気がした。
俺が目を開けると、既に手鬼の死体は消失していた。
「……よし。おーい、善逸ーっ!」
「ンあっ? ……あれ⁉ さっきの奴は⁉」
「……もう倒したよ。ありがとな」
「え、何が?」
あっ、そうか。寝てるから記憶ないのか。
「……まあ、色々あったんだよ」
「………そうか。まあ、深くは聞かないよ」
善逸は俺の様子を見て何を思ったかは分からない。けど、それ以上追及はしてこなかった。
なんでこいつモテないんだ? 普通に良い奴なのに。
「さて。じゃあ行くか」
「えっ、行くってどこに?」
「東だよ。そこが一番早く日の当たる場所だから……あれ? さっきの人いなくね?」
「あ、ホントだ。逃げたのか?」
まあいいや。頑張ってもらおう。
そう思い、俺は善逸と一緒に走りだした。
「……なあ、炭治郎はどうして鬼殺隊に?」
すると、善逸が俺にそんなことを聞いてきた。
そういや、善逸は借金返済の為なんだっけ?
「……妹がいるんだ」
「?」
「鬼になった、妹が」
「⁉ それって……!」
「誤解のないよう言っておくけど、妹は一度も人を喰ったことはないんだ。俺は、妹が人間に戻れる方法を探す。それが、俺の目的なんだ」
善逸が驚愕の表情を見せる。
当然だろう。鬼を狩るのが仕事の鬼殺隊が、鬼を匿っているのだ。
「……凄いんだな」
「そうか? 一応俺はお兄ちゃんだから、これくらいは当然だ」
「だから凄いんだよ」
……なんか照れるな。
「……うっ、眩しい」
「朝か。取りあえず初日はこれで何とかなりそうだな」
俺たちは走り続けて疲れたので、近くの切り株に腰を掛ける。
だが、朝日に照らされながらも、虚脱感に耐えられず眠りについた。
そして、七日が経った。
俺たちは鬼との戦いの最中、彼らに鬼が人間に戻る方法はないか聞いたが、よくよく考えれば、そんなこと知っているならまず自分で試すであろうことに気づいた。
誰もみんながみんな、望んで鬼になった訳ではない。全ての元凶がいて、そいつに踊らされているだけなんだ。
「……随分と減ったな。最初は20人くらいいたのに、今は4人か……」
「死ぬわ死ぬ死ぬ。ここで生き残っても結局死ぬわ俺……」
あれから色々あって善逸もすっかり鬱モードになっている。
全く、しっかりしてくれよ。それ寝てる時に聞かされると夢見が悪いんだよ。
にしても結局、生き残るのは原作と変わらないのか。モブに厳しい世界だなホント。
「お帰りなさいませ」
「おめでとうございます。ご無事で何よりです」
すると、七日前に見たあの双子がそう言う。
でも、ほんとに生き残れたのか。あの二人を見ると、その実感が湧いてくる。
すると、チンピラみたいな奴が二人を見据えて言う。
「で? 俺はこれからどうすりゃいい? 刀は?」
「まずは隊服を支給させていただきます。体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます」
「階級は十段階ございます。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸……今現在の皆様は、一番下の癸でございます」
えっと、誰だっけアイツ? 全然覚えてないや。
っていうか、さらっとあの二人、モヒカン君の言葉無視しやがったぞ。
「今現在皆様は一番下の癸でございます」
「刀は?」
「本日、刀を作る玉鋼を選んでいただきますが、刀ができあがるまで、10日から15日かかります」
「んだよ……」
「その前に」
すると、白い髪の女の子が、手を二回叩くと、カラスが肩に飛んできた。
「今から皆様に、鎹鴉をつけさせていただきます」
「鎹鴉は主に、連絡用の鴉でございます」
「鴉……? これ雀じゃね?」
善逸が自分の所に来た雀を見てそう言う。
すると、鎹烏の鳴き声が辺りに響き渡る。
「ふざけんじゃねぇ! どうでもいいんだよ鴉なんて!!」
苛立ちを隠す様子もなく、白髪の子に掴みかかるモヒカン。
モヒカンに髪を掴まれ、その髪が乱れている。
「刀だよ刀。今すぐ刀よこせ。鬼殺隊の刀、色変わりの刀!!」
「やめろ」
俺はモヒカンの腕を掴み、やめるよう言う。
「あァ⁉ んだテメェは⁉」
「この手を放せ」
「……舐めてんのか」
俺は握った手に力を籠める。それこそ、腕を折らんばかりの力を。
こっちも疲れてるんだ。話を遮るな。
「ぐっ、がァっ⁉」
すると、力が籠められなくなったのか、モヒカンは手を離した。
それに合わせ、俺もモヒカンから手を放す。
モヒカンは俺を憎々しげに睨んだ後、少し下がる。
「お話は済みましたか?」
「……一応は」
「チッ」
「それではこちらから、玉鋼を選んでくださいませ」
すると、奥の机から岩のようなものを差し出される。
「鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は、ご自身で選ぶのです」
「多分すぐ死にますよ俺は……」
流石にうるさい。ちょっと静かにしろ善逸。
「……どれ選べばいいの? 全部同じに見えるんだけど」
思わず思ったことを口にした。だが、他の人も中々決めあぐねているようだ。
「……どーれーにーしーよーうー」
「それで決めるの⁉ 雑過ぎるでしょ⁉」
善逸にツッコまれたので渋々やめる。
にしても、ホントにどれを……ん?
「……じゃあ、これ」
何となく、その玉鋼が目に入った。
なので、俺はそれを手に取る。きっと、それが一番だという、自分の直感を信じて。
こうして、最終選別は幕を下ろした。
合格者5人という結果を残して。
えっ、手鬼の回想?みんな知ってるしいらなくね?
っていうか、ワイがそれかいてもただのコピペになりそう
どっちがいい?
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