竈門炭治郎になったけど妹まで同類だった 作:シスコン軍曹
「……あー疲れたー。善逸は泣きついてくるし、距離が遠いし」
あの後、善逸が「俺を置いてかないでくれよォォォォ!!」と泣きじゃくるから、説得に凄い苦労した。
こっちも疲れてるのによくそんな元気があったな。マジでちゃんと戦えやと思ったのは内緒。
「……禰豆子も鱗滝さんも待ってるんだ。早く帰らないと……!」
すると、俺は足がもつれて転んでしまう。
くそっ、これだからロクに技術の発達していない時代は嫌い……ではないけど、不便なんだ。
帰りくらい専用のバスとか電車くらい用意しろよ。
そう思いながら、俺はついに山の麓までやってきた。
「……やべ、いい加減倒れそう……ん?」
すると、俺の前方で、小屋の扉が勢いよく開かれた。
そして、その中から現れたのは、
「……ははっ、やっとか……」
「炭治郎!」
ほんと、起きるの遅いよ禰豆子。
禰豆子が俺をぎゅっと抱きしめる。やっぱり、暖かい。
その温もりに包まれて、俺はとうとう意識を失った。
「う、うぅん……?」
「起きたか」
「鱗滝さん……俺は」
「疲れていたのだろう。今はゆっくりと体を休めろ」
「……はい」
いつの間にか、布団の上で眠っていた。
隣には再び眠っている禰豆子。
「そうだ、実は……」
俺は鱗滝さんに最終選別で起きた事を話した。
手鬼の事、最終選別で出会った善逸の事。結局、鬼には何も聞けなかったこと。
「そうか。異形の鬼をやったか……ついにな。……本当によく帰ってきた。……鬼にはいくつか種類がある。血鬼術という特殊な術を使う鬼は、異能の鬼だ。今後は、そのような鬼とも戦うことになるだろう。その者達との戦いは、これまで以上に困難を極める。……だが、お前ならきっと大丈夫だ」
「はい……!」
俺を認めてくれる言葉。その嬉しさを噛みしめつつ、しっかりと返事を返す。
「あの……禰豆子は、どうして眠っていたのでしょうか?」
「……これは憶測だが、禰豆子は人の血肉を喰らう代わりに、眠ることで体力を回復しているのかもしれない」
確か、鬼になってすぐは飢餓状態で、すごくエネルギーを消費しているはず。
だから二年も眠っていたのか。
人間じゃ絶対に無理だな。っていうか、匂いとか大丈夫なのか?
まあ、鱗滝さんだしその辺のカバーもばっちりだろ。うん。
―十三日後―
「……ん? 風鈴の音?」
部屋で片付けをし、旅立ちへの準備を進めていた頃。
突如小屋の外から、風鈴の音が聞こえた。
何事かと思い玄関をの扉を開けると、
「……えっと」
「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎の刀を打ち、持参した」
「あ、どうも!」
もう来たのか。あと二日はかかると思ってたんだがな。
すると、鋼鐵塚さんが入口付近の石に腰掛け、背負っていた荷物を下ろす。
「?」
「これが日輪刀。俺が打った刀だ。日輪刀の原料は、太陽に一番近い山で取れる、猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石……それで日の光を吸収する鉄ができる。陽光山は一日中日が差している山だから」
「いや聞いてないです」
なんでこの人はこっちが聞いてもいないことをベラベラと喋るんだろうか。
すると、鋼鐵塚さんが勢いよくこちらを振り向く。
「うわっ⁉ ひょっとこ⁉」
間近で見ると怖い。
「ん? んん? あぁお前、赫灼の子じゃねぇか。こりゃ縁起がいいな」
「えっ、あ、どうも……?」
なんだっけ赫灼って?
……あ、確か縁起がいい奴だ!(うろ覚え)
「こりゃ刀も赤くなるかもしれんぞ。なぁ、鱗滝!」
「……ああ」
奥から鱗滝さんが答える。
そして、取りあえず上がってもらい、刀を渡しもらう。
「さぁさぁ。抜いてみな。日輪刀は別名、色変わりの刀といってな。持ち主によって色が変わるのよ」
色変わり……何度聞いても、原理が分からない。
まあ、それを行ったら全集中が一番意味不明か。そう思い、ゆっくりと刀を鞘から抜く。
「……おぉ……おん?」
「む?」
「あん?」
刀は確かにその刀身の色を変えた。
変えたのだが……、
「……えっ?」
「変わった……のか?」
「……分かり難いが、変わってるな……
……銀色って……鉄の色とほとんど変わらないんじゃないのそれ?
っていうか、黒色じゃないのか。てっきり黒に変わると思ってたんだが……、どういうこと?
「……銀色は……、初めて見たな。珍しい色と言うなら黒や白もあるが……」
「俺は鮮やかな赤い刀身を見れると思ったんだが……まぁ、初めて見る色ってことで勘弁してやるか」
「あ、どうも」
ふぅ……よかった絞められなくて。
そう安堵していると、窓の方に鎹鴉が飛んできた。
「竈門炭治郎、竈門炭治郎! 指令ヲ伝エル!」
「え、とりっぴー?」
「ナンダソレハ? ソンナコトヨリ、北西ノ街二向カエ! ソコデハ少女ガ、消エテイル! 毎夜毎夜、少女ガ消エテイル! ソコニ潜ム鬼ヲ見ツケ出シ、討ツノダ‼」
ついに来た。最初の任務。
でも、やれる。あの最終選別も、鱗滝さんの鍛錬も突破したんだ。出来ないはずがない。
「竈門炭治郎、心シテカカレ! 鬼狩リトシテノ最初ノ仕事デアル!」
「……はい!」
鎹烏に敬礼をし、俺は鬼殺隊の隊服に着替える。
その上にいつもの緑の羽織を纏う。
「炭治郎。お前が鬼殺隊の任務を始めるにあたって、説明しておきたいことがある」
鱗滝さんの説明は、隊服の事と日輪刀のことだった。
隊服については知っていたので適当に相槌を打っていたが、
「お前の持ってる日輪刀、持ち主によって色が変わり、それぞれの色ごとに特性がある。しかし、銀色の刀身というのは、未だかつて発現させた者はおらん」
俺は自分の傍らに置いた日輪刀を見て、鱗滝さんに言う。
「……それでも、俺はやります。この刀の変化に、どんな意味があるのかは分からないけど、俺は俺に出来ることを背一杯やります。必ず、禰豆子を……!」
「ああ、そうだな。そうなると儂も信じている。それと、これを。……昼間妹を背負う箱だ。非常に軽い霧雲杉という木で作った。岩漆を塗って外側を固めたので強度も上がっている」
そう言って、濃い茶色をした箱を渡してくる鱗滝さん。
持ち上げてみるが、本当に軽かった。大正時代の木ってすごいな。
「おーい禰豆子ー。この中に入るんだぞ」
「……分かってる」
すると、布団の中で猫のように丸まっていた禰豆子は、体を小さくして箱の中に入る。
そして、箱を背負い、俺は小屋を出た。
「……では、行きます」
無言で頷き、俺を見送ってくれる鱗滝さん。
俺は道中何度も振り返り、鱗滝さんに手を振る。そして、完全に見えなくなったところで、少し歩みを早めた。
「これ以上は未練が出るしな。早くいくか」
『誰も聞いてないよ』
「……寝てたらどうだ禰豆子?」
『暇だし、そんな簡単に寝付けない』
まあ、体力回復したから、そんなに眠る必要が無いのか。
『にしても、13日で刀が届くとはね。これはもしかして……行けるんじゃない?』
「? 何がだ?」
『忘れたの? ほら、沼鬼の時の……』
「……あ!」
思い出した思い出した。
確か、婚約してる人がいて、その奥さんが犠牲になるんだっけ……?
『忘れてるの?』
「こちとら二年間も修行漬けだったし、単行本やアニメを見返せるわけじゃないしな。所々は忘れてるぞ?」
『……仕方ない。私がその辺はサポートしてあげる』
「お、ホントか? 流石我が妹」
『はいはい』
そんな事を話し合っているうちに、北西の街らしきところに来た。
大きな建物がなく、城下町のような風貌だ。
「……でも、どうやって見つけようか……?」
俺は炭治郎のように匂いが分かるわけじゃない。
気配こそ感じられるが……昼間は鬼は出ない以上、どうやっても使えない。
「聞いた? この間も若い女の子が一人、夜中に消えたんですって」
「まあ、近頃は物騒ねぇ」
歩いていると、道の端でそんなことを言い合う女性の声が聞こえた。
さらに……、
「……近頃は本当に物騒ですね、和巳さん」
「大丈夫だよ里子さん。僕が君を守るから」
そんな話声も聞こえた。
年の頃は15,6といったところだが、この時代では別に珍しい事でもないのだろうか。
『お兄ちゃん。今の……』
「今の……? ……あ!」
『後を付けて』
「了解」
つまり、あの二人が襲われる人たちということか。
ラッキーだ。まさかこんな早い段階で出会うことが出来るなんて。
俺は周囲に人に怪しまれないようにしつつ、二人にも気づかれないように後を付ける。
「……でも、あの二人が襲われるのっていつなんだ?」
『分かんない。けど、もうすぐだと思う』
気づいたときには、すっかり暗い夜だった。
二人が家の間の、路地のような場所を通りかかる。近道だろうか? その間も、二人は談笑して、互いに幸せそうな表情をしている。
「……匂いが分かれば、幸福の匂いってのも分かるのかね」
『さあ?』
「まあでも、幸せオーラは出てるな」
『分かるの?』
「なんとなく、そんな気配がするだけ」
『それでも十分凄いと思う。いつの間にそんなハイスペックになったの?』
言われてみれば、随分と万能になった俺。
そんなことを感慨深げに思っていると、
「⁉ ……禰豆子」
『……鬼の気配……近いよ』
間違いない。最終選別で何度も感じた気配。
だが、今感じているのはそれよりも一際強い気配だ。間違いなく、人を喰った鬼。
「……行こう。初仕事だ」
『頑張ってね』
「……手伝ってはくれないのな」
まあ、禰豆子は鬼だし、むやみやたらに出てこられても困るしな。
相手が三人でも、接近戦はそこまで強くない敵だったはずだし、何とかなるか。
「あのー、すいません」
「ん?」
「はい、なんでしょうか?」
鬼の気配は里子さんの足元付近で停止している。随分と接近されたな。
「いえ、ただ、そこから動かないでください」
「? それはどういう……」
「おい、そもそも何なんだアンタ? まさか、最近流行ってる人攫い――」
強い警戒心とともに、和巳さんが一歩を踏み出した。
その瞬間、鬼の気配も動いた。今までのゆっくりな動きと違う、こちらを警戒し、迅速にことを済ませようとする動きだ。
「まずっ……! 下がって!」
「きゃっ⁉」
「おい! アンタ――⁉」
俺は里子さんを無理やり下がらせ、地面から伸びてきた腕を切り裂く。
腕からは噴水のように血が噴き出すが、直ぐに止まった。これも鬼の再生力による賜物か。
「ひっ⁉」
「な、なんだそれ……⁉」
後ろ見ると、里子さんを抱きしめる和巳さん。どうやら、俺が付き飛ばしたのをキャッチしてくれたみたいだ。
「先ほどの事は謝ります! けどどうか、今は俺の言うことに従ってください! その方が狙われています!」
「……えっ? 私……?」
「はい!」
俺は焦り気味に答えるが、内心は少し安堵していた。
彼女は本来なら死ぬはずの女性だ。それを救えるかもしれない……先ほどの幸せそうな二人を見ていると、尚の事、守りたいという思いが強くなる。
すると、完全に再生した腕が地面に引っ込み、代わりに腕の持ち主である鬼がゆっくりと出てくる。
……だが、
「お前! 歯軋り五月蠅いぞ! 近所迷惑だろうがッ‼」
「そこ⁉」
後ろで和巳さんがツッコんでくるが、言わずにはいられなかった。
どっちがいい?
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