「はぁ、なんかやっぱり普通の戦争と聖杯戦争は全く違うんだなぁって実感しました」
「だろうな。生き残るだけならば無理に戦う必要はない。戦いたいやつが潰し会うのを待てばいいからな」
何故このような話をしているのか。それは引きこもって偵察に徹しているうちにランサー陣営が脱落したからだ。
「勝つためには手段を選ばないとはいえ、一般人を避難させたとはいえホテルを一棟潰すとは」
「まあ戦術としては間違っていない。それを生き延びるランサー陣営も大したものだがな」
だがランサー陣営は脱落した。潰したのはセイバー陣営。セイバーのマスターも勝つためには手段を選ばない類いの人種だったらしく最後は契約で油断させて恨みを残さないようにしっかりとマスター共々始末していた。
「でもまぁ手段を選ばないセイバー陣営を恐れるべきなんだろうけども、未だにバレることなく諜報活動を続けるNKVDの方が恐ろしいな。アサシン顔負けだ」
「NKVDにも数多くの部隊が存在する。その中でも諜報をさせているのは最も隠密に特化した部隊だ。ただまあ隠密に長けているがゆえに戦闘能力は皆無だがな」
ここで簡単だが今まで目立たないながらもかなり活躍しているNKVDについて解説しておこう。NKVD。それはKGBの前身となる組織で治安維持などのかなり広い分野を担当した組織である。あの深夜のスターリンノックばかり注目されがちだが、いたって普通の警察としての業務もこなしておりやっていた業務は多岐にわたる。詳しく知りたければ各々で調べたまえ!by筆者
「でもまあここからどうします?決して戦闘狂というわけではないがこのまま最後の一騎まで引きこもるのは不可能だろう?」
なにせあの恐ろしいアーチャーに認められているのだ。このまま引きこもり続けた結果、会ったときにこの腰抜けが!我の期待に背きおって!と速攻で殺されてはかなわない。
「ああ、今残っているのはアーチャー、ライダー、セイバー、そして我らバーサーカーだ。まさか問答を行った全員が残るとはな」
「どうします?」
「アーチャーは放置でよかろう。セイバーも戦う様を見る限り迷いが拭いきれていなさそうだ。実際にセイバー陣営はマスターが面だって活躍していたしな」
「とすると?」
「ライダーだな。挑むならばな。幸いこちらの宝具とも相性が良い。ライダー相手ならば勝っても負けてもアーチャーの機嫌は損ねまい」
「確かにな。同志書記長とライダーは認められており、他の雑種にやられるなとも言われている。ならば、雑種ではない我らが潰しあっても文句は言われないでしょうね。では………」
「ああ、ライダーならばいつでも快く刃を交えることができるだろう。準備できしだい向かうぞ」
「了解です」
それから数日後、しっかりと以前以上に防寒対策を施して雁夜はスターリンと共にライダーが拠点としている民家に赴いた。
「同志書記長はここで待ってて下さい。流石に屈強な大男が向かえば家を借りている一般人を怯えさせかねない」
「心得た」
あの豪快極まりないライダーがマスター一人だからとはいえ殺しにかかることはないだろうという考えである。実際に出てきたライダーはただ一言こう言った。
「場所を変えるぞ」
夜、ライダーとスターリンが向き合って佇んだのは人気のない公園。どちらも固有結界を用いて戦う以上広い場所は不要である。ついでに周りへの被害を気にしての手加減も不要である。
「おうおう!今までどこに引きこもっておったのか知らんがようやく表舞台に立つ気になったか!書記長よ!」
「ああ、ライダー、征服王とならば戦いは避けて通れんと判断した。どちらが残ってもアーチャーは満足であろう」
「ああ、あの金ピカか、だろうな」
「当然負ける気はない。勝ちに行くぞ」
「それはこちらの台詞よ」
互いに他愛もない談笑をすると
「では始めるか、正直余も同じ固有結界持ちと合間見えるのは初めてでな、昂りが押さえられんわい」
「では行くぞ」
「「集え!我が同胞!(同志!)」」
そこは異様な空間だった。砂漠と吹雪荒れる雪原が入り交じり現実では考えられない恐ろしい異常な天候の平野だった。
「なるほど、余の砂漠と貴様の雪原が争えばこのようになるか。興味深い」
「だな」
お互いの心象風景がかち合った結果お互いの心象が混ざり合う混沌とした戦場が生み出されたのだ。
「聞け!我が同胞!此度合間見えるは現代において名を馳せた書記長!神秘が失われて久しい現代出身なれど奴の強さは余が保証する!正直簡単な戦ではない!ここでの戦いはここにいる者以外に知れることはない!なれど!これは征服王イスカンダルの生涯をかけた戦いである!ここにいるということは余の呼び掛けに応じ、戦うつもりで馳せ参じてくれたのだろう。貴様らには愚問だが敢えて問おう。余と、共に駆けてくれるか!?」
「「「然り!然り!然り!」」」
「それでこそ我が同胞よ」
「これは凄まじいな」
「ああ、これが私とは違う。部下を恐怖ではなくカリスマと信頼で纏め上げた真の英雄の姿か」
スターリンの固有結界がスターリンに植え付けられたソヴィエトの具現化なのに対してイスカンダルの固有結界は部下たちの信頼と絆の象徴である。両者の宝具は似ているようで全く異なる。
「だがここまで来て怖じ気づいては腐っても座に刻まれた英雄の恥!私も全力で答えよう!来い!同志諸君!」
キャリキャリキャリ………
雪を踏み分ける戦車の履帯の音
ブーン………
回るターボプロップ二軸反転プロペラの音
キーン………
甲高く響くジェットの音。そして
「「「ураааааааааaaa!」」」
ソヴィエトの軍隊で最も活躍し、散り、貢献した兵器は戦闘機でも爆撃機でも、戦車でもない。
「これが……………」
「ああ、目に焼き付けろ
史実では銃が足りず二人に一丁とかいう逸話もある歩兵部隊。しかしここは固有結界であり、歩兵部隊はスターリンによって召喚される。その為全員の手には傑作小銃、AK-47ことカラシニコフが握られていた。
「軍隊同士の正面からの衝突。現実の戦争では最も避けるべき事だが構うものか。この聖杯戦争は互いの思いのぶつけ合い。道理や定石は不要である。正面からのぶつかり合い、残った方が勝者よ」
「同志書記長………」
生前では考えられない臆病さを気合いでねじ伏せたスターリンの姿はまさしく英雄に相応しいものだった。
「では始めるか。お互いの駒は出揃った!」
「その通りよ。では行くぞ我が同胞!」
「蹂躙せよ!」
「
イスカンダルの兵隊ですが、腐っても全員がサーヴァントなので極寒の雪原などものともしません。一般人でさえしっかりと着込めば生きられる環境に薄着とはいえサーヴァントが耐えられない道理はありません。