書記長が行く第四次聖杯戦争   作:ガチタン愛好者

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第13話~決戦 征服王イスカンダル~

「蹂躙せよ!」

 

В путь!(進め!)

 

互いの指揮官の号令のもと雪煙、砂煙を巻き上げながら兵士が駆ける。しかし

 

ズダダダダダダダダダ…………………

 

「「「ぐぁぁぁぁ!」」」

 

精々2m。投げても数十mにも届かぬ槍と有効射程数百mのアサルトライフルでは火力が違う。マガジンを入れ換える隙は生じるが人数でその隙を補う。

 

「ぐぬぅ。流石に武器の性能差がキツいか………………」

 

現代を謳歌していたイスカンダルは知っていた。銃がどれ程驚異的な武器なのかを。技量は要らず、簡単に人を殺せる。しかも生半可な盾では防げない。

 

「どうする坊主。このままじゃあ正直なところ書記長には勝てないぞ?」

 

「どうするったって…………」

 

一応兵士たちの影で銃弾を免れているウェイバー。しかしその兵士も倒れ、イスカンダル共々銃弾の雨に晒されるのは時間の問題だろう。

 

「この銃弾をどうにかするなんて奇跡でもなけりゃぁ……………あっ!」

 

「どうした坊主!?何か策を思い付いたか?」

 

「最後の手段だけど使うならここだ!ここで負けたら最後なんだからな!令呪をもって命ずる!」

 

キィィィィン

 

ウェイバーの手の甲に刻まれた赤い紋様が輝く。言うことを聞かせるために一画使った後使わずに取っておいた令呪。これを使えば例えば空を飛べない人間でも空を飛べる。

 

「この銃弾の雨を防ぐ盾をライダーに!」

 

一画紋様が消える。しかしウェイバーは再び宣言した。

 

「この銃弾の雨を防ぐ盾を同胞に!」

 

キィィィィン

 

残った二画を使いきる。勿体なく思うかもしれないがここで負けては全てが終わるのだ。そして貴重な貴重な令呪の効果は凄まじい。

 

キンキンキン!

 

小気味良く弾かれる7.62mm弾。

 

「おお!その手があったか。ならば、余もその期待に応えねばなぁ!」

 

銃弾を避けるために先頭から一歩退いていたイスカンダルが再び先頭に躍り出る。

 

「我が同胞達!この盾はいつまでも持つわけではない。今のうちに蹂躙せよぉ!」

 

「「「ウォォォォォォォ!!!!!!」」」

 

どんなに令呪が強力でもその効果は永続ではない。銃弾が効かない今こそ攻める唯一の機会だ。

 

 

 

「ほほう。あれは……………使ったな」

 

「ええ、同志書記長。いきなりAKが効かなくなった。令呪だろうな。大方銃弾を防ぐ盾とか命令したんだろう。明確な命令ほど強力に作用するからな」

 

もしウェイバーの使い方が「勝て」とか「何とかしろ」であればこうはならなかっただろう。「銃弾を防ぐ盾」と明確に使ったからこそのこの状況である。

 

「であればこれ以上は無駄な犠牲だな。いや別に彼らがどれだけ死のうと構わんが犠牲が少ないに越したことはない。引け」

 

スターリンの号令で一斉に退却を始める歩兵。しかし銃を撃つだけの戦争をする兵士と、走って殴り合う戦いをする兵士とでは身体的性能差が違う。足はイスカンダルの兵隊のが速い。

 

「あれは間に合わんな。確か令呪には時間制限があったな?」

 

「ああ、でも時間切れを狙うのは得策じゃない。あれほど明確な命令だ。時間切れの前にここにたどり着くさ」

 

「むう、銃弾が効かないのでは……………いや待て、銃弾が効かぬのならば他の攻撃はどうだ?ロケット、爆撃ならば!」

 

その号令で一斉に放たれる凄まじい数のロケットと爆弾。幸い相手は対空戦闘能力を持たぬ歩兵達。悠々と爆弾を投下するTU-95。それの着弾で一時的に視界が効かなくなる。爆炎が晴れたそこには

 

「ウォォォォォォォ!!!」

 

爆撃の巻き添えとなり、血の海となった先程までAKを握りしめていた歩兵とそれを踏み越え走り続けるイスカンダルの軍勢。

 

「効いてないだと!?いや待て。あれは……」

 

サーヴァントとなったお陰で強化された視力が捕らえた。大方守りの何かで軽減したらしいが軍勢はほんの少しだけ血を流していた。

 

「銃弾が完全無効なばかりか爆撃でさえあそこまで軽減するか…………しかし完全無効とはいかなかったらしい。ならば!」

 

更に数が増える爆撃機。

 

「こんな言葉があったな。効かぬなら、効くまで撃とう弾はある!

 

「同志書記長!?どこでその言葉を!?」

 

「はっはっは、この国の軍事愛好家からさ」

 

爆撃だけでは飽き足らず、自走砲も総動員しての制圧射撃。

 

「これだけ撃ち込めば効くだろう。効かずとも地形が変わり進軍速度が落ちる筈だ」

 

スターリンの目論みは当たった。僅かだが数を減らし始めるイスカンダルの軍勢。おまけに大量生産されたクレーターが行く手を阻む。中には混ざった不発弾を踏み爆発するものもいた。

 

「この調子ならばここに着く前にある程度は減らせそうだ」

 

スターリンに笑みがこぼれた。

 

 

 

「不味いぞ坊主!このままじゃあ無理だ!やつめ、銃以外の兵器をあそこまで溜め込んでいたとはな!」

 

「でも令呪のお陰で戦いにはなってる。どうせ不利でもやることは一つだけ。前進だろ!?」

 

「然り!余のことがよく分かっているではないか!」

 

駆ける軍勢。しかし確実に数が減っていく。つまり同胞の絆で構築するイスカンダルの固有結界が弱まるということであり

 

「不味いぞ、そろそろ寒くなってきたな。余の固有結界が塗り替えられつつある」

 

「ええ!?どうするんだよ!?」

 

「なぁ、ウェイバー・ベルベットよ。こんな騒がしいところで問うのもなんだが…………貴様、余に臣として仕える気はないか?」

 

「何で今そんな事を……………ああ、貴方こそ………我が王だ」

 

「そうか、ならば……………ふん!」

 

突然側にやって来た愛馬、ブケファラスに跨がるイスカンダル。ウェイバーは一人戦車に残されたままだ。

 

「おい、何をするんだよ、ライダー」

 

「ウェイバー、貴様はもう令呪を使い果たしている。つまり貴様に余を止める力はもうない。同時にこの状況を打開する術もない。この戦いは負けるだろう。戦っている余が一番よく分かっている。ならば、やることは一つだけ。可能な限り食らいつき、一矢報いるだけよ。最初に言ったな?ウェイバー。この戦いは余と書記長、それから互いのマスターしか知らぬと。さっき貴様は余の臣下となった。ならば生きろウェイバー。生きて余の戦いをその目に焼き付け、後世に語り継ぐのだ。それが臣たる貴様の務めである」

 

「あ、ああ。分かりました。王よ」

 

ウェイバーの言葉に黙って、満足げに背を向けるイスカンダル。

 

「行くぞ!Alalalalalalalalalalalaaaaaaaaai!!!!!!!」

 

一人飛び出すイスカンダル。それに続く兵士。降り注ぐ爆弾を切り分け、掻き分け進むイスカンダル。周りの兵士は力尽きていき倒れ、一層砂は減り、雪が増えていく。それでも止まらないイスカンダル。愛馬ブケファラスと共に最早完全なる雪原と化した大地を駆ける。どうしても食らう攻撃は持ち前の肉体で耐える。

 

「辿り着いたぞぉ!書記長!」

 

爆撃の巻き添えにならぬよう退避させたのだろう。自らと書記長を遮る物は何もない。

 

ヒヒィィン!!

 

「ぐぁ!」

 

遂に力尽きる愛馬ブケファラス。落馬の後一瞬だけ目をやるも再び書記長を見据え走り出すイスカンダル。これだけ近づいたお陰か巻き添えを恐れて爆弾はもう降ってこない。短剣を抜き放ち

 

「ふんぬ!」

 

振り下ろした。が、

 

ズダン!

 

「そういえば…………そうだった、な」

 

僅かに体をずらして避けるスターリン。そして手に握られた拳銃から硝煙が立ち上る。

 

「当然貴様ほどの人間が丸腰なわけないわな。ははっ、完敗だ」

 

「いや、私とてそうは見えんかもしれんがそなた、征服王イスカンダルには敬意を評する。歴史書では分からぬそのカリスマ、信念、篤と味わわせて戴いた。私のこれから一生涯の勲章だ。無事勝ち残り受肉した暁にはこの戦いを語らせてもらおう」

 

「ああ、そうして………くれ…………」

 

粒子となって消えるイスカンダル。ここに征服王の今回の戦いは幕を閉じた。

 

 

 

イスカンダルが消滅した後。雪原には何も残っていなかった。

 

「さては征服王イスカンダル、消滅寸前にマスターを逃がしたか、この世界から」

 

「どういうことだ?」

 

「彼がマスターから離れて突撃を開始したとき、一気に我が心象の侵食が進んだ。恐らくマスターの周囲だけを完全に彼の心象とし、それ以外を我が心象に染めることで余力を確保し、消滅寸前にそこだけ現実世界に戻したのだろう。我が固有結界を解除すれば……………」

 

シュン

 

一瞬で元の風景、公園に戻る。そこには

 

タッタッタ

 

こちらに背を向け、一目散に逃げる征服王イスカンダルのマスターの姿が

 

「どうする?あのまま放置して他のマスターだけが脱落したサーヴァントと再契約されたら…………」

 

同志(マスター)、ちょっとここで待っててくれ。護衛は付ける」

 

雁夜の側に一人だけ部下を召喚し、マスターを追うスターリン。サーヴァントと人間の差は歴然であっという間に追い付かれ、組伏せられるウェイバー

 

「ん?何故暴れる?人間がサーヴァントには敵わぬと言うのに」

 

「諦められるか!僕は、生きなきゃならないんだ!」

 

圧倒的上位の存在に生殺与奪を握られ、涙を浮かべながらそれでも目を逸らさずスターリンを睨み付けるウェイバー

 

「何故そこまで生きようとする。諦めてくれれば苦しまずに殺してやるものを」

 

「僕は、あの人の臣下だ。僕は、生きろと命じられた!」

 

「ふむ………………それで戦いが終わるや否や一目散に脇目も振らず逃げたのか。立ち竦んだり、絶望に浸ったりもせず」

 

スッ

 

組伏せていたウェイバーを解放するスターリン。戸惑うウェイバーに

 

「何故困惑している?私も敬意を表するあの征服王から命じられたのだろう?その様子では他の脱落したサーヴァントと再契約することもあるまい。どこへでも行け。行って生き延びろ。命令されたようにな。そこまで無様に涙を流しながら、それでも生きろと言う命令を忠実に守られたのでは殺すものも殺せんよ。それにここで貴様を殺したらあの征服王に申し訳が立たん」

 

そう言い残して立ち去るスターリン。マスターと合流し去る彼らをその姿が見えなくなるまで見続けるウェイバーであった。

 

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